2017年3月19日日曜日

【本】植物は<知性>をもっている ステファノ・マンクーゾ、アレッサンドラ・ヴィオラ NHK出版

著者はイタリア フィレンツェ大学農学部教授の植物学者です。

一般に、植物は動物と違って脳を持っていないので、知性があるとは思われていません。

それは、人間が動物の一種の為、動物の形が生物の基本という固定概念に囚われているから。

植物は、動物よりもずっと長い進化の歴史を持ってきている生物であり、より先輩で、進んでいると考えられる。

光合成が出来るので、自ら移動する必要がない定住民としての進化をしている。

例え、葉が食べられても大丈夫なように、動物とは違う発想で、全ての機能を各細胞に持たせるという構造を作り上げている。

「植物は動かない」という錯覚を人間は持ちやすいが、それは時間軸が違うから。

植物は20の感覚で思考する生命システム。

・視覚
光を感じる事が出来る。(ある学者は皮膚にレンズ効果を持たせて「見る」えているかもと言っている。)
光の質も量も見ている。光合成を行うエネルギー源なので、植物にとって光の質と量は一番重要。

赤色、遠赤外、青色、紫外と色々な波長を感じる。
沢山のセンサーをその身体に持っている。根にもある。
葉は光の方を向こうとし、根は光と反対へ行こうとする。

落葉樹は、寒さに晒される繊細な部部分を落として、冬は眠りにつく。「目をつぶる」

・嗅覚
植物は「におい」で周囲の情報を得たり、植物どうしや昆虫とのコミュニケーションをする。

「におい」は言葉にあたり、植物は必要に応じて色々な化学物質を体内で作る。

虫に葉を食べられ始めると、その周りの葉に有害物質を作ったりする。それでも止まらない時は、他の兄弟の木々に「におい」で警告し、植物体全体に有害物質を作ってしこんだりもする。

トマトなどは、数百メートル先にも届くほどの「におい」物質を放出する。

・味覚
根はグルメ。微量なミネラルを識別する力があり、有用な化学物質を探し回る。水も探す。的確に見つけ出す。

食肉植物(食虫だけでなく、動物も)は狩りをする。
ウツボカズラはネスミまで食べてしまう。

・触覚
オジギソウは有名。車に乗せて運ぶと、最初はその振動でオジギするが、何回もすると、それは虫の接触によるものではないと学習して、反応しなくなる。

根は石に当たると迂回する。ツルはつかまる所にとどくとしがみついて、巻き付く。

・聴覚
根で土中を伝わる音の振動(空中より土中の方が音は伝わりやすい)を聞いている。又、空中の音楽でもブドウでの実験で成熟の速さが変わる事が分かっている。低周波は発葉成長に良く、高周波は成長を抑制する。

根は音を発することもある。
重力検知、磁力検知、化学物質計測 もできる。

・体内ネットワーク
導管部、師管部を使って、電気信号、化学物質信号を伝えている。

どこか傷がつくと、大変だという信号が出て、植物の体内にある多数の情報処理センターが信号を制御処置する。
例えば、樹液を出して傷をカバーする等。

植物は空中に出される無数の化合物で会話する。

・シャイな樹冠
たとえ傍に生えていても、ある種の木は互いの樹冠が接触するのを避ける。
マツ科、ブナ科、フトモモ科。

松の木は、隣り合う木と決して触れあわず、互いの葉の間にわずかなスキマを残す。

・親族を見分ける
根や葉を使い、化学物質の交換で判定を行う。

実験で、同じ個体のタネ30粒を入れた容器と、互いに異なる母を持つタネ30個を入れた容器を作り栽培した。
異母のタネはテリトリーを独占しようと無数の根を伸ばし、他の植物に害を与え、栄養分と水を確実に自分だけのものにしようとした。
一方、兄弟タネの方は、狭い場所での共生なのに、根の数を抑え、地上部分の成長に力を注いだ。

・虫との関係
害虫が来たら、その害虫の天敵を呼ぶ化学物質を出して駆除、または予防する。

セックス(受粉)に虫を使う為に、花と蜜を用意する。
だだし、ズルイ植物もいて、ランの一種のオフリス・アピフェラはメスの蜂を完璧に真似した形、感触、フェロモンを出して、オスの蜂を騙して呼び寄せる。このオス蜂は花と交尾してしまう。
その間に沢山の花粉を浴びせられる。

タネをばら撒く為には、果実をつけて動物(人を含む)を呼び寄せる。

・根端はデータ処理センター
センシング、データ処理して根を伸ばしていく。
しかも無数の根と連携する。生きたインターネット構造。

以上が 一部の抜粋ですが、この本を読むと「あなたは、明日から植物を今までと同じ目で見る事はなくなる」こと間違いなしです。

実際、私も歩道を歩きながら、街路樹の立ち方のばらつきを見て、ああ、重力検知や、身体能力等は植物でも色々個体差があるなあ、、という見方をする様になりました。

木々の枝を見ていると、枝も電波等を感じたり、発信したりするアンテナの役目もしているかもしれないという気がしてきます。