2023年3月18日土曜日

【宇宙】本 銀河宇宙観測の最前線 谷口義明 海鳴社

 宇宙には銀河が沢山ある場所とほとんど無い空間とがある事が分かり、宇宙の大規模構造と呼ばれています。



1998~2005年にスローンデジタルスカイサーベイというプロジェクトで宇宙地図が作られたことは有名です。

これは全天の25%の領域を可視光で20億光年彼方までを調べたものでした。



しかし、この大規模構造がどのようにして生まれてきたのかを知るには、もっと昔の情報が必要になります。つまり、もっと遠くの銀河まで調べる必要があります。



そこで、ハッブル宇宙望遠鏡も活用して、範囲はせまいが80億光年先まで見える星域調査を世界規模のプロジェクトで行う事になったとのこと。名前をコスモス プロジェクトと言う。


その中で、著者の谷口氏が日本が持つ「すばる望遠鏡」を使った調査のリーダーとなって奮闘されました。


「すばる望遠鏡」はスプリーム・カムという広視野角で世界最高水準の撮影ができる機能を持っており、それを最大活用してデータ取りを行ったとのこと。


遠くの暗い天体を撮影しなければならないために、本当に沢山の苦労をされた事が良く分かりました。


天文学者は、具体的にどういう活動を、どんな風にやって暮らしているのか。


地上からの撮影は、限られた使用可能時間で天気や装置のコンディション等との闘いでもあり、大変に苦労されて撮影されました。



しかし、対象エリアの詳細な画像を取りデータ提供できたため、世界中の他の波長で観測しているデータやハッブル画像等と組み合わせてみる事で、新しい知見が沢山生まれたとのこと。


世界初の宇宙の暗黒物質(ダークマター)の3D地図を作る事に成功したことは有名です。


又、新しく 銀河は誕生後20~30億年が創星のピークで、それ以降は創星ががくっと減っていくという事も分かり、減り始めている銀河を見つける事も出来たとのこと。なぜ、がくっと減るのかという新しい謎も生まれました。



この本は天文学の世界で、テレビ番組のプロジェクトXを地球規模で行った詳細記録という感じです。


最先端の学問的な内容も当然ありますが、それ以前に ワクワク ドキドキする スリリングな成功物語です。


宇宙に興味のない人にも、楽しめる本ですね。


【宇宙】本 アンドロメダ銀河のうずまき 谷口義明 丸善出版

 銀河という言葉を聞くと、真っ先に頭に浮かぶのはアンドロメダ銀河の写真です。

小中学校時代の教科書や、学習ノートに載っていた写真もアンドロメダだったと思います。


あのレンズ状の形の美しさは、富士山の美しさに近いものがあるように思えます。


この2年、時々 国立天文台がやっている市民ボランティアのすばる望遠鏡画像からの銀河分類作業(ギャラクシークルーズ)に参加させてもらっています。


その作業で、銀河といっても一つ一つは本当に色々な境遇のものなんだという印象です。

渦巻銀河といっても、スマートなカッコイイものから、ガタガタになったり歪んだりした形のものも沢山見ました。でも、総じて若々しいエネルギーを感じます。

楕円銀河というレンズ状でない銀河も沢山あって、それらは落ち着いて、しずかなたたずまいを感じます。



この本は、そんな銀河達がどのように発生してきたのかを丁寧に教えてくれえるます。


又、アンドロメダ銀河は 本当は 渦巻型ではないという話にビックリしました。


言われてみて、改めて写真を見ると、、ナルホド!! となります。



そして、それは如何して作られたのか?? 犯人は誰だ? を解きほぐしてくれます。



天文学は、推理小説みたいだ、、、と思いました。



天空の星や銀河は、「変わらない永遠に輝いているもの」というイメージがありましたが、この本を読んで 実にダイナミックに変化を続けている世界なのだという事が良く分かりました。


アンドロメダは双眼鏡でも見えるようなので、見てみようと思います。


【宇宙】本 マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿 田中雅臣 講談社ブルーバックス

 天体望遠鏡は大幅な進歩をとげつつあります。

可視光の大口径や宇宙望遠鏡ができたのに加えて、電波、赤外、紫外、X線、ガンマ線などの各種望遠鏡で、電磁波(光)の広い波長域での分光観察ができる様になってきています。


それら電磁波に加えて、ニュートリノ、重力波を使った測定装置も動き始め、それら全てのシグナルを組み合わせて宇宙の謎を探るマルチメッセンジャー天文学が始まりつつあるとのことです。


2015年宇宙からやってきた重力波が初めて捉えられ、それが宇宙のどのエリアから来たのかを推定する事ができました。そのエリアを他の望遠鏡で調べていくと、、、 という様な事が分かったり。


ニュートリノの速度に関して、重力波シグナルや光シグナルとの時間差を知ることによって始めて検証できたりしています。



特に宇宙の爆発現象の謎をマルチメッセンジャーが解くカギになると期待されています。


太陽クラスの星は、水素→ヘリウムの核融合が終わるとヘリウム→炭素の核融合になり、その時期は星の外層が膨らんで赤色巨星になります。そして最後は白色矮星になります。

白色矮星同士の合体などで核爆発型超新星になることがありますが、そのメカニズムはまだ分かっていません。


太陽の10倍質量以上の星は、炭素→ネオン・ナトリウムの核融合、ネオン→酸素、と核融合は鉄まで進む可能性があり、最終的にはコア鉄の周りにケイ素、ネオン+マグネシウム、炭素+酸素、ヘリウム、水素というたまねぎ構造ができます。

その先は 重力崩壊して 超新星爆発を起こし中性子星(またはブラックホール?)が生まれます。そして超新星爆発では大量のニュートリノが放出されることで爆発になると考えられています。


重力崩壊でブラックホール(中性子星合体などでも出来る)が出来ると、その周りに円盤構造が出来ると思われ、それらが高速で回転しながら落ち込むことで相対論的ジェット(光に近い速さで動く物体によるジェット)が出来ると考えています。その時にガンマ線(バースト)も起こると思われます。


中性子星合体で鉄よりも重い元素は作られると考えられています。又、重力波が出ます。

重力波が検出できれば、その強度から距離を推定する事ができます。



これらの爆発現象から天文物理の色々な事を解き明かしていく事ができそうです。


著者(または、天文研究者は)は、これらの新しい道具を使って新しい事が色々できるのではないかとワクワクしている様子がこの本から良く伝わってきます。 まるで、新しいオモチャをいくつも貰った子供の様に。。。



彼ら研究者にとって、面白い時代になってきているようです。

2023年3月4日土曜日

【難民問題】本 故郷の味は海を越えて 安田菜津記 ポプラ社

 安田さんは、テレビのコメンテーターに出ておられるのを見ていて、しっかりされている人だなと思っていますた。


たまたま、この本を見つけて 読んでみました。


戦争や紛争によって実家を破壊され、国を脱出して、身寄りもなく日本に来ている難民の人がかなりおられる様子。


それらの方々が、慣れない日本で苦労しながら生きている状況を、安田さんが訪ねて、各々の故郷の家庭料理を作ってもらい、それを一緒に食べながら、日本に来ざるを得なかった経緯や、来てからの日本での状況を聞くというルポになっています。



とても、悲惨な人生を歩まれてきている方ばかりですが、安田さんの寄り添う姿勢が引き出したのだと思う素晴らしい笑顔の写真の方々です。


人間、どんな苦しい事、悲しいん事がある状況でも、生きる強さを感じられるお話と写真です。



日本の入管が大変に酷い対応をしていることは、昨年の事件でも公になってきていますが、この本を読むと世界的に見ても、異常な対応を日本はしている事が良く分かりました。


政府にも官僚にも、「人権」という意識が本当に低い国だという事に、怒りと悲しみを感じます。


世論と選挙で変えていかなければなりません。



難民の何名かの方は、日本で祖国の料理や飲み物のお店を小さく開いている方々もおられることを知りました。



今まで私は、街でアジアや中東のXX料理 というお店を見ても、単なるレストランのバリエーション程度にしか思っていませんでしたが、もしかしたら難民の人が必死に開いている店の可能性もあると思うようになりました。



私にできる小さな事として、今後 そういう各国料理で「外国人」の方がやっている店を見たら、そこへ食べに行ってみようと思います。