宇宙には銀河が沢山ある場所とほとんど無い空間とがある事が分かり、宇宙の大規模構造と呼ばれています。
1998~2005年にスローンデジタルスカイサーベイというプロジェクトで宇宙地図が作られたことは有名です。
これは全天の25%の領域を可視光で20億光年彼方までを調べたものでした。
しかし、この大規模構造がどのようにして生まれてきたのかを知るには、もっと昔の情報が必要になります。つまり、もっと遠くの銀河まで調べる必要があります。
そこで、ハッブル宇宙望遠鏡も活用して、範囲はせまいが80億光年先まで見える星域調査を世界規模のプロジェクトで行う事になったとのこと。名前をコスモス プロジェクトと言う。
その中で、著者の谷口氏が日本が持つ「すばる望遠鏡」を使った調査のリーダーとなって奮闘されました。
「すばる望遠鏡」はスプリーム・カムという広視野角で世界最高水準の撮影ができる機能を持っており、それを最大活用してデータ取りを行ったとのこと。
遠くの暗い天体を撮影しなければならないために、本当に沢山の苦労をされた事が良く分かりました。
天文学者は、具体的にどういう活動を、どんな風にやって暮らしているのか。
地上からの撮影は、限られた使用可能時間で天気や装置のコンディション等との闘いでもあり、大変に苦労されて撮影されました。
しかし、対象エリアの詳細な画像を取りデータ提供できたため、世界中の他の波長で観測しているデータやハッブル画像等と組み合わせてみる事で、新しい知見が沢山生まれたとのこと。
世界初の宇宙の暗黒物質(ダークマター)の3D地図を作る事に成功したことは有名です。
又、新しく 銀河は誕生後20~30億年が創星のピークで、それ以降は創星ががくっと減っていくという事も分かり、減り始めている銀河を見つける事も出来たとのこと。なぜ、がくっと減るのかという新しい謎も生まれました。
この本は天文学の世界で、テレビ番組のプロジェクトXを地球規模で行った詳細記録という感じです。
最先端の学問的な内容も当然ありますが、それ以前に ワクワク ドキドキする スリリングな成功物語です。
宇宙に興味のない人にも、楽しめる本ですね。