2015年3月29日日曜日

【本】誰とでも心を通わせることができる7つの法則 DaiGo ワニブックス

メンタリストDaiGoさんは、テレビで何回か見たことがあります。

読心術みたいな事をその時にはやっていました。


この本は、そのテクニックの一部を開示したもの。


心理学の一部なのだと思いますが、人間の錯覚や習性を活用した対応術とでも言うのでしょうか。

身体を使う柔術とも一部重なるような考え方の話でした。



具体的な内容をこの記事で書く事はあえてしませんが、昔から交渉術として色々言われてきた事

を今風に技術として説明しています。



同じ結論を相手から引き出すにも、普通の人の言い方とユダヤ人の言い方ではこんなに違うという

本を昔読んだことがあります。

それ以降、私は顧客との交渉での話ストーリーの持って行き方を色々考えるようになったのです

が、この本を読んでさらにジェスチャーや方向、前振りの質問など細かいテクも本当に使えるのか

チェックしてみようという気になりました。



「人たらし」の上手い人、ムード作りの上手い人というのは確かに存在します。そういう方々はこうい

う術を自然に行っているのかもしれません。



又、今後は相手が術を掛けてきていないか、交渉上で注意していく必要がある事を知りました。


対人 心理学に興味のある人にはお薦めの一冊です。

【自ら人体実験】耳鳴り対策1

先日、3年ぶりにTOEICを受けてきました。


そこで、自分の耳の変化を知りました。

TOEICのリスニングは大教室でラジカセからの声を聴きながらやるのですが、集中して聞き取ろう

として、左耳に手を当てて聞いていたのですが、殆ど何を言っているのか分かりません。



最近は海外出張やラジオ英会話の速聴もしているので、リスニング力はそこそこ大丈夫なはずと

思っていたのに、大変ショックを受けました。


焦って、リスニング問題の半分ぐらいまで来た時に、今度は右耳に手を当てて聴く事をしてみまし

た。すると、途端に声がハッキリ解像(?)して、言っている単語が聞き取れる様になりました。



TOEICの点数がメチャメチャになったのもありますが、自分の左耳がこんなに機能低下して居る事

が分かりショックでした。左耳だとくぐもった声に聞こえてしまいます。


そう言えば、左耳はかなり耳鳴りがきつくなっているなという自覚は最近ありました。


ためしてガッテンで耳鳴りは、ある周波数帯の聴力が低下すると、それをカバーしようと耳のゲイン

(頭の中のイコライザ)を上げる為にノイズが増えて起こるという話でした。


ある朝、寝床の中で左耳の耳鳴りが大きく感じられましたが、ゲイン調整は自分の体内で行われ

ている事ならば、自分で神経系をコントロールできるのでは?と思い、寝たまま指モミをしました。


その日は薬指を中心に揉んでみるとしばらくすると明らかに耳鳴りノイズの高さが変わった様に感

じました。


後でネットで見ると、中指や小指、手の甲の一点を揉めと書かれている物もあり、何が正解かはま

だ良く分からないのですが、何等かのコントロール方法がありそうです。


こいつも継続して色々実験していきたいと思います。

【シニアからの囲碁】超初心者の勉強法

いままで、図書館にある色々な囲碁入門書を借りて読んでみたのですが、どうも色々な部分的な

話や概説が多くて、いわゆる教科書的な物がなかなか無いなあ、、と思っていました。



ところが、フト 思い付いて子供の図書コーナーに行ってみると、小学生用の囲碁本のシリーズが

ありました。借りてみると順を追って分かり易く、だけど内容はかなり濃い(大人向け入門書よりもも

しかしたら高度)な事をロジカルに説明している事が分かりました。



実際、中学生でプロになる人もいるのですから、オジサン初心者よりも小学生の方がずっと上手い

子が多いのは間違いありません。その子達向けのシリーズですから悪いハズがないという事にや

っと気が付きました。



これは、メッケものでした。


ナルホド、そういう考え方だったのか、、という事もかなり多いし、これだけ分かっていれば良いんだ

という事も分かります。



中高年で囲碁をゼロから始めようとお考えの方には、ぜひ小学生向けの囲碁シリーズを図書館で

借りて読まれる事をお薦めします。

【自ら人体実験】ミトコンドリアと姿勢

かなり前のNHKサイエンスゼロでミトコンドリアがテーマになりました。

ネットの動画でその番組内容は今も見れるのですが、中高時代に習った楕円でとても簡単な構造

という図の印象とは全く異なり、細胞内でかなり活発に動き回り増殖したりする紐状生物のイメー

ジが実態の様です。



ミトコンドリアがどう機能しているのは、日本医科大学大学院の太田教授の解説文を写させていた

だきますと、


「ミトコンドリアでは、食事から摂取した栄養と、呼吸から得られた酸素を使って、ATP(アデノシン三

リン酸)というエネルギーを放出する物質を作り出します。

ジョギングを始めると、同じ距離を走っても、最初のうちはとてもきつかったのに、走るのに慣れてく

ると、それほどきつく感じなくなります。これは、運動によってミトコンドリアが増え、呼吸で取り込む

酸素量はいっしょでも、効率的に酸素を使えるようになったためです。


最初は、エネルギーを生み出すのに必要な酸素を無駄にするため、ハアハアと息を切らします。

しかし、走ることで体内のミトコンドリアが増えてくると、エネルギー代謝がよくなり、酸素を有効に

使えるようになるので、息を切らさずに走れるようになるのです。



近年の研究で、ミトコンドリアは、私たちの健康や老化の問題と、非常に深い関連があることがわ

かってきました。年を重ねるについて、ミトコンドリアの量は次第に減ってきます。

また、ミトコンドリアには、質の良いミトコンドリアと、質の悪いミトコンドリアがありますが、年をとっ

たり、悪い生活習慣などが続いたりすると、質の悪いミトコンドリアがふえていきます。

それが、私たちの老化のスピードにも大きな影響を及ぼすのです。



ミトコンドリアの数が不足したり、質が低下したりすると、作られるエネルギーが不足します。

少ないエネルギーは、まず第一に呼吸や体温調節など、生きるためにどうしても必要な部分に優

先的に使われます。この結果、若さを保つために働いている老化防止機能や、遺伝子の修復作業

などを行う長寿のためのシステムに、エネルギーが十分に回されず、それらのシステムがちゃんと

機能できなくなります。

それが、老いや、ガンなどの病気につながってくるのです。



最新の研究によれば、ミトコンドリアの生み出すエネルギーの低下が、認知症の原因の一つとなっ

ていることも分かってきています。



つまり、ミトコンドリアの量と質をよくしてやることによって、私たちは、エネルギーを作る能力をアッ

プさせることができます。それによって、体力がアップするだけでなく、年をとってもなお若々しく、健

康な体を維持することが可能になるのです。



脳の問題に戻れば、脳のミトコンドリアが増えると、脳が使えるエネルギー量がふえ、認知症を予

防するばかりではなく、集中力が増したり、発想力が豊かになったり、脳の機能全体がアップしたり

することも期待できます。」


とのこと。


そこで、ミトコンドリア量アップを試してみました。

ミトコンドリアは筋肉に最も多くいますので、筋肉量を増やす事がポイントになりますが、いくつかの

やり方が専門家の方から推奨されています。

人体の筋肉で量が多いのは、背中の筋肉と太ももの筋肉とのこと。 そこで、背筋を姿勢を良くす

る事で増やす実験を1週間やってみました。


姿勢は通勤の行き帰りの電車の中で、身体の重みは最も下になるように力を抜きつつ、頭が天か

ら吊り下げられているイメージでの姿勢を意識して取ってみました。(以前に剣の達人の方が、身

体に軸を通す時のイメージとして言われていたものです。)



月曜から始めて、金曜になるとかなり身体が軽くなる事を実感しました。

又、だらっと猫背になっているよりも姿勢の良い時の方が調子が良いぞという印象です。



ミトコンドリアが増えたからかどうかは不明ですが、もしかしたら効果あるのではと思いましたので、

これからもできるだけ継続して姿勢に注意をしていきたいと思います。


姿勢が良いと少し身長が伸びた気もしますしね。

2015年3月22日日曜日

【海外出張】パリ発 羽田行き夜便 エールフランス

今回、パリからは23:30頃の深夜 ドゴール空港を出発するエールフランスに乗りました。

なかなか良かったので書いてみます。


早めのチェックインをしたので、座席変更ができました。映画のシートの様に変更できる候補シート

をみながら、好きな席を指定できました。私は通路側が良いので、最後尾の通路席に変更しまし

た。 



最後尾での通路側だと、ギャレーにもトイレにも近く、リクライニングも全く気にしないで出来るので

便利なのです。但し、騒音は少しうるさいですが。



一番 良かったのは、食事です。

容器などはJALの方がとても機能的で進んでいますが、味は間違いなくエールフランスが上です。

イスの間隔などJALより狭いので、窮屈な姿勢で食べなければいけないのですが、味でその弱点

をカバーしてしまう感じです。


見た目だけでなく、ちゃんと料理してあるメインディッシュは嬉しいし、食前酒としてシャンペン、食

中にワイン、食後にコニャックを飲めるという呑兵衛にはシアワセなサービスです。



食事はパリ時間で午前2-3時ぐらいに出ますが、コニャックを飲んで 良い気持ちでグッスリ5-6

時間眠れます。2回目の食事は着陸の1-2時間前でした。

グッスリ寝たので、非常にスッキリした気持ちになれました。



機内のエンタメは、日本では見れない海外の映画や、あまり聞けない海外の音楽などが多くて、少

し英語が出来るならばグローバルな楽しみ方ができます。


難点をあえて言うと、キャビンアテンダントが大柄な方が多く、通路側席だとちょっとぶつかったりし

がちな事と、羽田に着くターミナルが出口までかなり歩かなければならない事。 そんなものでしょ

うか?



23時過ぎ発という事は、パリを夜まで十分に堪能してからチェックインできるという事ですので、そう

いう意味でもお得な便だと思いました。

成田発パリ行きの深夜便(パリに朝着)もあるとの事ですので、深夜便は色々活用できそうです。


チャンスがあれば、一度 お試しを。

【海外出張】春のドイツ、パリ

昨年末に訪問した二か国を再訪しました。

前回はメチャ寒くて、暗くて、でもクリスマスムード一杯のドイツでした。

今回は青空が広がり、東京と殆ど同じような気温で気持ちの良いドイツでした。



今回もヨーロッパ内の移動は全て電車を使いました。

すっかり馴染みになったフランクフルト中央駅。 相変わらず大きなトランクを引っ張った人であふ

れています。今回は、季節がらか学生っぽい旅行者が多いような気がしました。



そのフランクフルトで、EUの新ビル開所式典に関連してデモが起こり、警察ともめてパトカー何台

かが炎上。翌日の夜はすごい警戒態勢が行われていました。

近隣の各地から非常呼集された警官が電車や車でぞくぞく集まってきて、パトカーも数百台が狭い

エリアにズラリと並び、道路封鎖と装甲車の放水車が何台も戦車の様に横んでスタンバイしていま

す。夜空にはヘリがホバリング。



こんなに多くの防弾服を付けた警官を見たのは初めてでした。SF映画の1シーンの様でした。但

し、翌朝は綺麗にいなくなっていて、街は日常に復帰していました。

異次元体験の様な時間でした。



フランクフルトからパリへは、TGVを使いました。

TGVはフランスが主体ですので、中の雰囲気も乗客も乗った途端にフランスを感じます。

電車の性能はドイツのICEとそんなに変わらないのだと思いますが、アナウンスやインテリア、車

内販売のカートなど。御洒落感満載です。

速度も当然のごとく320Kmくらい出しています。でも、揺れない。



窓から見る景色も地平線まで畑が続いていて、本当にフランスは農業国だなと実感します。

到着時間は遅れましたが、それもご愛嬌か。なぜか、許せる気持ちになってします。

フランスの魔力ですね。



パリはメトロとRER、SNCFの電車を乗り回します。

相変わらず、黒人、インド系、ペルシャ風、東洋人、白人と色々な人種の坩堝です。

ちょっと危険な香りのするRERの郊外線では白人の乗客数の方が少ない印象。

RERでは女性の一人乗りは止めた方が良いかもという雰囲気はあります。


トランクをゴロゴロ引っ張りながら電車の乗り換えは、なかなかハードな時があります。エスカレー

タやエレベータがどこにあるのか分からずに、トランクを持って階段の上り下りが必要な所が意外

に多いのです。又、改札ゲートも切符を入れても開かない事もあって、

現地人はゲートをまたいで超える人もかなりいます。これもトランクを持っていてはなかなかシンド

イ。ゲートを通る時は少しハラハラします。



ドイツもフランスも切符は自販機で買いましたが、ドイツで長距離列車は前日や前々日などに買う

と安い料金で買える事があるのが分かりました。

同じ行先でも、経路や時間帯などで料金が違うようです。ドイツ内の移動で電車を予定している人

はその点 注意して買えばお得です。


列車の切符は日本で予約しなくても、ドイツについてから駅の自販機で問題なく(英語表記もある

ので)買えますので、時間があれば現地で買う事がお薦めです。自販機を時刻表替わりに使う事も

できます。



尚、駅のトイレは1ユーロ必要でしたが、長距離列車は車内にトイレがあるので、列車内ならばタダ

で使えます。



旅のTIPSでした。

【本】納豆大全  町田忍 小学館

納豆に関して、これだけまとまった本は少ないかも。

色々な納豆パワーが書かれています。どれだけ厳密な話かは分かりませんが、記してみます。



・納豆の糸1gでO157を撲滅

医学博士で倉敷芸術科学大学教授の話では、実験の結果、納豆菌は悪玉菌を殺すのではなく、

排せつさせつ役目をする。

昭和11年には京大の先生が、チフス菌に対しても納豆が有効な実験結果で、予防の為に納豆を

食べて欲しいとの新聞記事があるとのこと。



・納豆で骨粗鬆症対策も

カルシウムを吸収して骨に補給する事が重要だが、その為にはビタミンKが必要で、納豆にはそれ

が多く含まれる。納豆消費量と大たい骨骨折分布を調べると、納豆消費量の一番多い茨城県は骨

折が一番すくない。



・血栓を溶かすナットウ・キナーゼ

納豆は高タンパク食品でありながら、コレステロールはゼロ。しかも血管のコレステロールを洗い流

して血液をきれいにするリノール酸や、細胞の新陳代謝を活発にするレシチンが含まれている。さ

らに納豆のタンパク質には血管の弾力性を高める働きもある。

動物実験でも、大豆で飼育されたものと、他の食物で飼育されたものとは、成長してからの血管の

弾力性に大きな差が出ていることが証明されている。



・血圧を下げる「なんらかの効用」

動物実験では、本態性高血圧に対して納豆が血圧を下げるという結果がある。注目すべきは、製

造直後の納豆よりも熟成期間の長い納豆の方が効果的。



・便秘に下痢に食物繊維

納豆菌は食物繊維と組んで整腸作用をする。



・納豆を食べない方が良いのは、

ワーファリンという抗凝血剤を使用している人は納豆が薬効を消してしまう可能性があるので食べ

ない方が良い。

2015年3月1日日曜日

【本】平和主義とは何か  松元雅和 中公新書

裏表紙に書いてある概要、『平和を愛さない人はいないだろう、だが平和主義となるとどうだろう

か。今日では単なる理想論と片付けられがちだが、実はその思想や実践は多様である。本書は、

「愛する人が襲われても無抵抗で良いのか」「正しい戦争もあるはず」「平和主義は非現実的だ」

「虐殺を武力で止めないのは無責任」といった批判に丁寧に答え、説得力のある平和主義の姿を

探る。感情論やレッテル貼りに陥らず、戦争と平和について明晰に考えるために。』に惹かれて読

んでみました。



政治哲学として考えるという副題がついていますが、白熱教室のサンデル教授の様に、平和主義

者の視点、非平和主義者の視点の両面から考えるという姿勢の本になっています。


いままで、ぼんやり平和主義=反戦主義とイメージしていましたが、実は色々なケースと考え方が

ある事が系統的に語られています。この本を読んで、初めて「平和」に関しての様々なロジックがア

カデミックに少し整理された気持ちになれました。戦争と平和に関してモヤモヤしている方にお薦め

の一冊です。



内容が豊富な本なので、どれだけ簡単に紹介できるか自信がありませんが、ポイントと思えた点を

書いてみます。


まづ「平和主義」とは、平和的手段=非暴力的手段を持って平和という目的を達成しようとする主

義主張となる。


①愛する人が襲われたらという問いが平和主義を批判する時に使われる事がある。「たとえば凶

悪な男が銃を構えて、君の奥さんを、、殺そうとしているとする。さあ、君はどうするかね。」大半の

人はそれを黙って見過ごす事は不可能な選択肢である。批判者からすると、それ見たことか平和

主義は現実離れした考え方だ。というロジック。


この問いには色々なトリックが隠されているが、まづは「無条件平和主義」と「条件付き平和主義」

を区別する事が重要になる。多くの平和主義者は条件付き平和主義であり、その立場は、非暴力

は原則であって、原則には例外がある。非暴力の教えをある種の偶然性に委ねる。例えば、非暴

力を貫くことの被害が計り知れない程甚大ならば、その状況を勘案して、個別的に暴力手段を用

いる事も場合によっては容認しうる。但し、同時に大半の場合、暴力手段に訴えることは暴力の連

鎖を生むので、賢明な手段ではない。


二番目は、個人=私的場面と公的=国等場面では、区別する事が必要である。

私的場面では非暴力に徹する訳ではない(自己防衛)が、公的場面での暴力手段は拒絶する=反

戦というのを公的平和主義と呼ぶ。公的平和主義が禁止するのは、平和主義者が政治集団の1員

として暴力を用いる事である。


戦争と警察の違いは、暴力行為の「正統性」の有無である。ある国家が別の国家に戦争を仕掛け

るとき、前者の政府が後者の国民に対して、あらかじめ武器使用の同意を得ている事はありえそう

にない。それに対して、正統な政府は強制力を用いる事の同意を、通常あらかじめ制定された法

律を通して国民から調達している。


公的平和主義者(反戦主義者)が、「愛する人は力づくで助けるが、国策としての戦争には依然と

して賛成できない」と答える事は矛盾がない。


平和主義は大別して2種類の傾向がある。絶対平和主義と平和優先主義。


②戦争の殺人は許されるのか?

義務論と帰結主義がある。義務論者は、たとえそれが幾多の有利な帰結をもらたそうとも、その性

質に鑑みて、殺人という行為それ自体を忌避する。帰結主義者は、その行為によって引き起こされ

た事態から判断する。


サンデル教授の問いに、5人の人を助ける為に別な1人を死に至らしめるのは良いか?という物が

ある。帰結主義者はよりましな帰結として1人を犠牲にして5人を助ける選択肢をとるだろう。


殺人を禁止する事は、今日道徳的のみならず法律的にも、ほぼあらゆる文明国で原則化されてい

る。この原則に反した者は、道徳的に非難されるだけでなく、法律的にも処罰の対象となる。ただ

し、正当防衛という例外が設けられている。この例外は 権利と責任の2面から説明される。正当防

衛の殺人は、生存権が脅かされ、相手がその状況を生み出した責任がある時のみに適用される。


戦争に於いては、殆どが自衛の為の戦争と自称する。

そして、空爆などで多くの犠牲を強いられるのは民間人である。民間人にその状況を生み出した責

任があるのか? 戦争開始の決定に、犠牲になった民間人が影響を与えた責任は

政府や政府高官に比べて非常に少ない。これは、正当防衛という事は難しい。


それに対して、攻撃者が正当な軍事目標を攻撃したが、意図せざる偶然の結果として民間人を殺

害しても免責される。というロジックを言う人がいる。これを2重結果説と言う。

問題は、2重結果説は行為者の意図という曖昧で実測しがたい要素に依拠して、行為の道徳判断

を行おうとする点にある。殺人行為者は免罪符として活用する。どういう意図だったかは、結局のと

ころ本人しか知りえない事だから。 そこで、少なくとも近現代戦争に於いて、2重結果説を用いる

事には懐疑的であるべきだというのが筆者の考えである。


兵士には責任があるか? 戦争決定への関与度は民間人とさほど変わらないが、民間人に比べ

て戦争という犯罪の一端を担っているので責任があるという解釈がある。本人の生命をかけた個

別戦闘中ならば殺人も正当防衛性を持つが、戦闘中でない兵士を空爆やミサイル攻撃で殺害する

事は免責しがたい殺人が含まれている事になる。


③戦争はコストに見合うか

非暴力の帰結主義者は「最大多数の最大幸福」を求めるという事になる。功利主義者のベンサム

は、それに照らすと戦争は誰がどう見ても不合理としか考えようがないと言う。


コスト:戦争や準備に使うコストとそれだけを別な事に使ったら何が出来るかと比較する事が必要。

又、戦争は、さらに暴力は次の憎しみを生み暴力につながるという火種を残す。

最大多数:戦争は国民の多くに災害が降りかかる。又、兵士も貧しい若者とその家族などの狭い

層に最も負担が集中する。戦争は資本主義や帝国主義的野心の為になされる事が多く、どのよう

な大義を振りかざそうとも、本質的には資本家階級が労働者階級を食い物にする政策にすぎな

い。戦争によって資本家階級は利益を得、労働者階級は負担を被る搾取の一形態である。


帰結を考慮して物事の合理性を考えれば考えるほど、自ずと人々は戦争を避けてそれ以外の方

法を選ぶ事になるだろう。 


④正しい戦争はありうるのか?

戦争に正しい戦争と不正な戦争があるという正戦論がある。自衛/侵略の2つに分ける考えた方。

個人の正当防衛にあたる戦争が国家でもあるかという事がポイントになる。


国際社会での国家が、国内社会の個人と同様の権利を持っているという思考。

・自衛戦争は正戦か? 国家がその身を守ろうとするのは、ひとえに個人の身を守るためである。

個人の権利はそれ自体で価値があるが、国家の権利はそうではない。それは束の間の契約に基

づいて成立しているにすぎない。


・国家の死は個人の死と同類か? その国の政府は追放されるが、国民の権利は保全されるとい

う事はある。国民が、他の政府を望む事も起こり得る。国の死と個人の死は同じではない。


・正戦を知り得るか? どの国も戦争するときは以下の10のプロパガンダを国民に対して行う。

「我々は戦争をしたくない・しかし敵側が一方的に戦争を望んだ・敵の指導者は悪魔の様な人間

だ・我々は領土や派遣の為ではなく、偉大な使命のために戦う・我々も誤って犠牲を出すことがあ

る。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる・敵は卑劣な兵器や戦略を用いている・我々の受けた

被害は小さく、敵に与えた被害は甚大・芸術家や知識人も正義の戦いを支持している・我々の大

義は神聖なものである・この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」


戦後 国際関係の歴史は、自称「自衛戦争」のリストで満ちている。よって、何が正戦かは一般市

民には判別できない。


但し、正戦論者は、戦争が悲惨であり避けられるべきだという基本的な考えは、平和主義者と共有

している。

そして、今日の国際関係論では、正戦論でも平和主義でもなく、現実主義こそが支配的学説になっ

ている。


⑤平和主義は非現実的か?

現実主義の論理構成4つ。


・世界は中央政府が存在しない無政府状態である。(⇒正戦と判断する基準がない)

・国際関係におけるアクター(行為主体)は国家である。

・無政府世界において、国家の最大の目的は生き残りとなる。したがって、国家安全保障は国際関

係の最優先課題となる。

・パワーは、この目的を達成するための重要かつ、必要手段である。


現実主義とは、「国際関係を各国の安全保障をめぐる権力闘争として描こう」とする世界観の一種

と言える。


安全保障のジレンマがある。勢力均衡を図ろうとパワーを増強すればするほど、相手から見ての

脅威になり、パワー競争が永遠に続く。ジレンマを解く考え方としては、政治・文化・経済の信頼関

係の成立がある。アメリカの軍事増強はキューバには脅威だが、カナダには脅威ではない。安全

保障は武力だけが唯一の方策ではない。


外を強盗が横行している以上、戸締りをするのは常識。という戸締り論があるが、戸締り論では欠

けている思想がある。そもそも、強盗が横行しない世界を作るといおう事。隣人は敵にもなり、味方

にもなるかもしれない。


⑥救命の武力行使は正当か

大規模な人権侵害が起こった時に、それを阻止する為に軍事干渉を行う事態が冷戦以降増えてき

ている。PKOは当事国からの同意を前提としたが、最近は人道介入主義として同意無での介入が

出てきている。


考え方としては、前述の2重結果説を唱える人がいる。もう一つは「よきサマリア人」説がある。例え

ば飛行機の中で心臓発作の人が出て、医師がいなかったので歯医者が治療を試みたが死んでし

まったケース。そのまま放置するより、とにかくトライしてみる、それで死んでも歯医者に罪は無いと

いう物。一方で、死を免れない患者に対して、薬を投与して安楽死させる積極的安楽死は罪にな

り、延命治療を止めて自然に死ぬのを見守るという消極的安楽死は罪にならないという場面もあ

る。

積極的な介入の判断は難しい。


ただし、武力による介入以外にも介入の方法はある。人道的介入と平和主義は相いれない物では

ない。軍事介入できる事が”普通の国”ではない。


⑦筆者の主張

筆者の結論は、自由主義・功利主義・社会主義をルーツとし、19世紀以降発展してきた平和優先

主義のタイプが、国際関係の指針として魅力的かつ説得的な代替案になりうる。



以上が本書のポイント抽出ですが、私としては、人道介入も含めて武力による軍事は病気でいう

対症療法であり、本当に健康=平和を続けて行くための本質的で予防医学的な取組が重要なの

だと感じました。


病気予防にどれだけ真剣に向き合えるかが、市民全体を幸せに向かわせる人類の知恵の方向だ

と思います。