事件での目撃証言や被害者証言は正しいのか?
もし、自分の記憶が書き換えられていたら??
映画のような事は本当に起こりえるのか?
元科捜研で現在大学心理学科教授の著者が、「記憶」の不確かさを研究データに基づき、科学的に説明してくれている本です。
表題に興味を惹かれて、読んでみたら 少し私の世界が変わりました。
・目撃証言について
目撃証言は必ずしも正確ではない。
事件後に見たものや、例えば刑事からの質問のされ方で記憶は容易に変容してしまうらしい。
また、頭の中で自分で何度も想像(イメージ)していると、元の記憶が上書きされるなど変容する。
目撃者の自信(確信度)は正確性を保証しない。
・実際には体験していない出来事の記憶(フォールスメモリー)
実際には存在しなかった出来事の記憶を人に植え付ける事が可能とのこと。
それは、その記憶がもっともらしい出来事とその人に思わせられる内容で、かつ、さまざまな記憶の断片をその人が再構成し、視覚的イメージとして反復想起させる。
植え付けられやすい人(暗示にかかりやすい人)がいる。
この種の実験の参加者は、記憶を植え付けられたあと、実はそれが架空のものだったと種明かしされると、大体は非常に困惑してしまうとのこと。
・生まれた瞬間という記憶は本物か?
人間はまだエピソード記憶ができないので、誰でもほとんど3歳よりも幼い記憶は持てない。
催眠による年齢退行と言う話があるが、これは実際に記憶を想起しているのではなく、その様に催眠をかけられている人が振る舞う様になっただけ。
出生時の記憶は、フォールスメモリー現象の可能性が大きい。
・前世の記憶は本物か?
催眠によって前世の記憶を話だし、それが事実と合致した事例はいくつもある。
ただし、詳細に調べていくと、実は以前読んだ本などの内容を語っているだけだということが分かっている。
実験室でも、フォールスメモリーを形成しやすい人が、前世の記憶を想起しやすい事が分かっている。」
・エイリアンに誘拐された記憶
米国などでは、それを訴える人がかなり出た。
「未知との遭遇」など、エイリアン物の映画やマスコミがあると訴える人が急増する。
人々がエイリアン誘拐を語る理由のひとつは、自分が感じているさまざまな心理的な問題をエイリアンのせいにできるから。
・昔は良かったは本当か?
私たちの持つ「過去の私」の記憶は今の私の影響を受けている。
高齢者は自分の人生をよきものと考えるために、過去の出来事を良いとゆがめて思い出す。
のでは、
そして、記憶は過去の自分のアルバム(貯蔵庫)というよりも、現在の自分を支えたり、方向づけるために存在しているのではないか。
そのために、記憶を書き換えるということは、自然で正常な機能のひとつかもしれないとのこと。
現代は、容易に動画や写真をデジタルで残せる様になったので、特にこの10年ぐらいはそういう記録が身近に沢山あります。
少し前の記憶を思い出しながら、動画を見直してみると、一部しか覚えていなかったとか、結論が微妙に違う という事が感じる時がありました。
この本を読んで合点がいくと同時に、陰謀論や洗脳などが容易に起こっていく事があるしくみも分かった気がします。
人は、思い出したくない体験も背負って人生を歩かなければならないので、こういう記憶の柔軟性は著者が言われるように、重要な生命現象として備わっている機能なのかもしれませんね。