大阪大学の教授が、新1年生を対象に開く料理生物学講座の講義録。
毎回、何か作り・食べながらそれに関連する生物、化学などの現象を教える。
大学の講座と言っても、さすが大阪で、漫才を見ているような面白い本でした。
食や生物、化学にまつわるバラエティに富んだ話が展開して、科学エンターテインメントという感じ。
そうだったんだ!! と思うような事も満載です。
いくつか面白いと思った部分をつまみ食いすると、
・カレー
18世紀英国はインド植民地経営をしていた。その時、初代インド総督に選ばれた男が香辛料ミックスを王様への土産として持って行った。これが王妃に気に入られ、王室御用達としてカリー・パウダーという名で売り出された。
明治に日本は陸軍はフランス式、海軍は英国式を取り入れた。そこから、海軍では毎週金曜日夕食はカレーになった。
海軍基地周辺からカレーは庶民にも広がり始め、国内の漢方薬屋が調合国産化に取り組む。
東京の日賀志屋(現S&B食品)と大阪の浦上商店(現ハウス食品)が成功。
1492年コロンブスはコショーを求めてインドに出発した。ただし、逆回りを狙ったのでアメリカにたどり着いた。
しかたがないので、唐辛子を赤コショーだといってスペイン女王に持って帰った。だからコショーは英語でレッドペッパーと言う。
また、コロンブスはトマト、ジャガイモ、タバコなども持ち帰った。それによりドイツ人はジャガイモ食べられるようになり、イタリア人はトマトソースのパスタを食べられるようになった。
唐辛子は日本には宣教師が持ち込んだらしい、その後秀吉の朝鮮出兵で朝鮮半島や中国に伝わったのではないか。キムチが辛くなった。
ご飯。
デンプンはブドウ糖が長くつながったもの。ブドウ糖は体内で分解されてエネルギーになる。
ブドウ糖を分解する酵素一つにピルビン酸デヒドロゲナーゼがある。これはビタミンB1がないと働かない。
エネルギーを最も使うのは神経。 神経が働かなくなるのが脚気。診断で膝下をたたくのは、反射の神経が働いているかを見るため。
・ラーメン
小麦粉。強力粉と薄力粉の違いは小麦の種類の違い。タンパク質(グルテン)の割合。強力粉は12~15%,薄力粉は8%ぐらい。
うどん:小麦粉と半量の10%塩水を合わせてこね+踏み、その後1時間寝かせる。
スパゲティ:小麦粉に卵、オリーブ油、塩を入れてこねる。1時間寝かせる。
ラーメン:小麦粉に灌水(強いアルカリ溶液)、塩を入れこね踏み、1時間寝かせる。
うどんは、塩水を入れる事でタンパク質(アミノ酸の連鎖)の結合がふにゃふにゃになってしまう。
さらに、こねる事で生地に酸素が入り、寝かせている間に小麦粉中のたんぱく質(アミノ酸)と反応してタンパク質の架橋を進める。
その時に反応で水も生まれる。(だから粉から水が出てくるという事になる)
ラーメンでは灌水のアルカリ性で塩水と同様にタンパク質をふにゃふにゃにしてしまう。
パーマもアルカリで髪の毛のたんぱく質(ケラチン)をふにゃふにゃにして、好きな髪形にできるようにする。
スパゲッティは、卵のたんぱく質で強制的に麺を成形してしまう。
・ホットドッグ
ソーセージ:フランクフルト(豚の腸)、ウインナー(羊の腸 細い)、ボロニア(牛の腸 太い) 工場生産はコラーゲン製の人工。
燻製:保存のための殺菌。不完全燃焼した煙にはホルムアルデヒドなどが入っている。これらの毒で殺菌する。
・お茶
紅茶はガンガンに沸かした熱湯で出す。:抗酸化作用のあるタンニンを抽出するためと硬水対策。苦いけど。
緑茶は低温で出す。:旨味アミノ酸のテニアンを抽出するため。日本は軟水だし。
コ―ヒーは古くからアラビアで飲まれていた。英国も紅茶の前はコ―ヒ―を飲んでいた。
ダーウィンの母はウエッジウッドの娘。妻は孫。ウエッジウッド家がスポンサーだった。
カフェインは覚せい剤と同様にドーパミンの作用を強めるので中毒になる。チョコにも同類の物質が入っている。
覚醒剤は太平洋戦争中にパイロット等の覚醒のために大量に作った(ヒロポン:メタンフェタミン)。
終戦で大量ストックしていたヒロポンは闇に流れた。ヤクザの抗争は軍基地の傍が多かった。
・ビール
発芽させた大麦(麦芽)を粉砕して水、酵母を入れるとアルコール発酵する。(小麦や米でも同様)
そうすると炭酸ガスが出る。ビール会社は炭酸ガスを砂糖水に通して、キリンレモン、三ツ矢サイダー、リボンシトロンなどとして売っている。
パンを作るのも、小麦や大麦の粉に水、砂糖、酵母(イースト)を入れて発酵させる。
砂糖は酵母の餌としていれている。パンの気泡は炭酸ガスによる。アルコールは焼く時に蒸発して逃げる。焼きたてパンのいい香りはほとんどアルコール。
・お酒に強い人、弱い人
アセトアルデヒドは肝臓のアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)で酢酸へ変えられる。ただし、この酵素には活性のあるものと無いものの2種類がある。
両親とも活性ありだと子どもも活性あり。片親だけ活性ありだと分解活性は半分に、両親とも活性無しだと子どもも無しになる。
日本人の約40%は無しか半分。無しの人は、すぐ真っ赤になって眠くなるか気分が悪くなる。半分の人は、飲み始めてしばらくまでは代謝できるので、
つい飲んでしまう。しかし、二日酔いになりやすく、かつ肝硬変になりやすい。
等々。
デザートにまつわる話や、焼き肉についてなど、、まだまだ話題たくさんです。
息抜きと教養のためにお薦めの一冊です。