2022年8月1日月曜日

【本】つむじまがりの神経科学講義 小倉明彦 晶文社

 この本を読むきっかけとなったのは、同志社大学の「ようこそ心理学部へ」を読んだから。


「ようこそ心理学部へ」という本も、大学が心理学部の学生に行う何種類かの講義を本の

上で再現したもので面白かった。


その中で、脳内の信号伝達でシナプスやニューロンという説明がありました。

今までも色々な本で同様の説明があり、伝達物質を使って信号を伝えているということは

分かっている気がしていました。


でも、ふと、この信号はどういう変調方式なのだろうか?と疑問が起こりました。

強度なのか、周波数なのか、はたまたシナプスが動くのか、成分かも、、、と色々な

可能性が考えられますが、ネットなどちょっと調べたただけは答えにたどり着けません

でした。


そこで、ちょっと専門的な本を読んでみようと思い、この本を手に取りました。



読んでみたら、とても面白いし、具体的な最前線も知ることができる科学エンター

テインメント本でした。


なんというか、大阪人の良いノリで書かれているなあと思いました。

教授と学生の闘いなど、爆笑しました。



まじめな先端研究の結果も紹介されていて、そうか!と思ったのは

記憶を定着させる方法。


動物の脳切片を使った実験結果ですが、短期記憶を長期記憶に変えるには、


前回から3時間以上24時間以内の間隔をあけて3回繰り返すことで、

シナプス結合が増えて定着する事が発見できた。とのこと。

RISE(Repetitive LPT-Induced Synaptic Enhancement)と名付けられた

現象です。


実験で、目に見える物理現象として分かった事なので、全国の学生は知っておくと

良いと思います。



もう一つ面白いのは、透明化技術。

最近、脳(に限らず臓器を)透明にする技術が注目を集めている。

組織・細胞の内外を屈折率が同じ物質に置き換えて、反射を起こす細胞膜は溶かして

しまう。


とはいえ、とても実現できないだろうと最近まで思われていた。ところが、本気でやって

みたら、案外簡単にできてしまった。今は脳や臓器といわず、動物を丸ごと(ほぼ)透明

にすることもできる。


ただし、生きた状態では無理です。



あとがきもショッキングでした。著者は10代の頃はカメラの様な映像記憶ができたとのこと。


教科書を開いてしばらくじっと見ていると、そのページが頭の中に映像として保存される。

試験の時は、頭の中でそのページを思い出し、そこに書いてある事を写せばよかった。

しかし、この記憶は思考問題になるとむしろ不利で、理解して覚えたわけではありません

から、試験中にもう一度教科書を読み直して考えるわけで、時間もかかりますし、ときには

試験の最中に初めて「へー、そうだったのか!」と知って感心する事もあったとのこと。


だんだん、物事(や彼女の事)を考えるようになるにつれ、その能力は失われたとのこと。


でも、実は同程度の映像記憶の持ち主は、世の中に結構たくさんいるとのことで、実は私も

そうでしたという人に何人も出会っているそう。



そうでした、この本を読むきっかけとなった信号の変調方式はFM変調とのこと。

ぱーと放出したり、ぱ、ぱ、ぱ、と放出したりする。(伝達物質はすぐに失効する)


なんで 神経伝達物質など使っているのかというと、単細胞生物の時の方法がそのまま踏襲

されているからなのでは、とのこと。

信号は多対多で行われるし、色々な物質使われている。

ポスト細胞(信号を受ける側)は色々な物質へのセンサーを持っているとのこと。


かなり学問的にも深いところまで書かれていますが、ついついエンターテインメント部分に

きが取られ、思わず先に先にと読んでしまいました。


もう一度、じっくり読み直したら、理解が深まりそうです。


脳に興味のある人に、お薦めの一冊です。


0 件のコメント:

コメントを投稿