2023年7月3日月曜日

【本】オウムアムアは地球人を見たか?(異星文明との遭遇) アヴィ・ローブ 早川書房

 著者はハーバード大学教授で、ハーバードで天文学科長を務めていた、天文学の世界のまっとうな重鎮。

ただし、ホーキング氏も賛同したレーザー+セイル小衛星で光速の20%まで加速し隣の恒星まで20年で到達させるプロジェクトを提案したり、ブラックホール・イニシアティブを創設したりしてきている非常にイノベーティブな人。


現在までに、2017年(オウムアムア)と2019年(2Iボリソフ)の2つの太陽系外から物体が来た事が知られている。そのうち、2Iボリソフは太陽系でも普通の彗星と同じ振る舞い(ガスの尾を引くなど)をしたが、オウムアムアは通常では説明できない振る舞いが観測された。


小さく

光を良く反射し(普通の彗星の10倍)

妙な自転をし

円盤状の可能性が高く(ネットやマスコミは棒状のイラストを垂れ流しているが、科学的にはパンケーキ状の可能性が高い)

太陽の重力だけで説明できる軌道から逸れて(加速して)いたが、ガス噴出は観測されなかった。それに、自転が変わらない(あれだけの加速を何か物質を噴出していたら自転に影響が出るはず)

加速エネルギーは太陽からの距離の二乗に反比例していた。

又、来たのは局所静止基準だった。



これらの症状振る舞いは、通常の小惑星などの知識では説明できない。


既に、飛び去ってしまったので検証はできないが、 現在は2つの可能性が提唱されている。


①自然起因の立場の人

  窒素氷説  窒素のガスなので観測できなかったという、、、


②異星文明により作られた(または廃棄された)物の立場

  お皿状でソーラーセイルの様な構造ならば、太陽光圧を使った加速に丁度符号する。

  反射能も金属ならば当てはまる。


アヴィさんは、②を提唱。理由もデータと解釈を細かく説明してくれています。


それ以降、彼は異星文明の物や事項を科学的証明手法で探していくエジソンプロジェクトをハーバードで立ち上げて活動中とのこと。


人間は、異星文明がある(あった)という前提で色々と検討していく方が、人類の発展により良いという考えらしい。



この本を読むまで、私はマスコミの細長い棒状の形だと思っていて、異星人宇宙船なのかとイメージしていましたが、これを読んで数々のデータを説明するのにオウムアムアは②の考えが合理的に思えました。


この宇宙に、文明が地球だけのはずもなく。


こういう物を作る文明は、どういう事をしたいたのだろう、、と想像の羽は大きく広がっていきます。


2023年5月8日月曜日

【縄文時代】 本 日本列島四万年ディープヒストリー  森先一貴  朝日新聞出版

 こういう本を待っていました。


私や妻が学校で習った時は、縄文時代は殆ど原始人の様なイメージで語られていたように思います。妻は、縄文人はマンモスを狩って暮らしていたのでは、、という認識でした。


でも、実用性よりも美術性を追求したとしか思えない縄文土器の数々や、同時期のシュメール文明やインダス文明、古代中国文明などが既に都市文明を作っているのに、日本だけ原始人は無いだろうというモヤモヤがずっとありました。



この本で、地球の変化と地域特性で、さまざまな形態の文明が世界で起こってきたことと、日本(縄文)の特徴はこうして作られた。縄文はある面では、世界に先駆けるような暮らしがあったようだという事、西欧や中国などの大陸性の視点とは異なる視点が必要だという事も良く納得できました。



この数十年の各種の研究で、地球環境は約1万1千年前より以前は、驚くほど頻繁に、しかも急激な気候変動が地球で何度も起こっていた事が分かってきています。


この気候変動があると、植生もそれに伴う動物たちもどんどん変化をせざるを得ず、そうなると、人類も「定住」は出来ず、移動式の暮らし方で狩猟や採取をしていく必要があっただろうとのこと。


気候が暖かく安定してきた1万1千年前から、世界で「定住」が始まった事が分かってきている。


「定住」といっても、地域特性によって継続的に食料を得る仕方は変わることになり、同じような植生が広がる大陸では、農耕・穀物栽培が始まる。

日本は、亜熱帯であり、かつ四季の多様性に伴い、動植物も季節により豊かな変化を起こす。よって、それらの多種の食材を獲得する事で定住を始める事ができた。もちろん、ドングリなどの栽培もおこなっている。


穀物栽培で定住するようになると、協力して耕作するなど規模を追うことになり、組織のしくみや、統率の仕組みなどが生まれてくる。人口も貧富の差なども。。 権力争いや戦争も。。


縄文は、採取型の定着が多いので、数十人単位での定住型になっていた様子。

土器に限らず、石器(石包丁や矢じり、槍なども)も精密加工されたものも出土されていて、当時から日本人気質?が垣間見られる。

非常に大きな建築物などの痕も発見された。


大陸型の政治や戦争の文明とは異なった種類の文明が、縄文にはあったのではないかと思われる。


又、これらの事が分かってきたのが1980年代以降との事なので、我々世代は教わらなかった事も納得できました。


この本は、もっと面白い事満載です。日本人のルーツを考える上でも、お薦めの一冊です。





2023年3月18日土曜日

【宇宙】本 銀河宇宙観測の最前線 谷口義明 海鳴社

 宇宙には銀河が沢山ある場所とほとんど無い空間とがある事が分かり、宇宙の大規模構造と呼ばれています。



1998~2005年にスローンデジタルスカイサーベイというプロジェクトで宇宙地図が作られたことは有名です。

これは全天の25%の領域を可視光で20億光年彼方までを調べたものでした。



しかし、この大規模構造がどのようにして生まれてきたのかを知るには、もっと昔の情報が必要になります。つまり、もっと遠くの銀河まで調べる必要があります。



そこで、ハッブル宇宙望遠鏡も活用して、範囲はせまいが80億光年先まで見える星域調査を世界規模のプロジェクトで行う事になったとのこと。名前をコスモス プロジェクトと言う。


その中で、著者の谷口氏が日本が持つ「すばる望遠鏡」を使った調査のリーダーとなって奮闘されました。


「すばる望遠鏡」はスプリーム・カムという広視野角で世界最高水準の撮影ができる機能を持っており、それを最大活用してデータ取りを行ったとのこと。


遠くの暗い天体を撮影しなければならないために、本当に沢山の苦労をされた事が良く分かりました。


天文学者は、具体的にどういう活動を、どんな風にやって暮らしているのか。


地上からの撮影は、限られた使用可能時間で天気や装置のコンディション等との闘いでもあり、大変に苦労されて撮影されました。



しかし、対象エリアの詳細な画像を取りデータ提供できたため、世界中の他の波長で観測しているデータやハッブル画像等と組み合わせてみる事で、新しい知見が沢山生まれたとのこと。


世界初の宇宙の暗黒物質(ダークマター)の3D地図を作る事に成功したことは有名です。


又、新しく 銀河は誕生後20~30億年が創星のピークで、それ以降は創星ががくっと減っていくという事も分かり、減り始めている銀河を見つける事も出来たとのこと。なぜ、がくっと減るのかという新しい謎も生まれました。



この本は天文学の世界で、テレビ番組のプロジェクトXを地球規模で行った詳細記録という感じです。


最先端の学問的な内容も当然ありますが、それ以前に ワクワク ドキドキする スリリングな成功物語です。


宇宙に興味のない人にも、楽しめる本ですね。


【宇宙】本 アンドロメダ銀河のうずまき 谷口義明 丸善出版

 銀河という言葉を聞くと、真っ先に頭に浮かぶのはアンドロメダ銀河の写真です。

小中学校時代の教科書や、学習ノートに載っていた写真もアンドロメダだったと思います。


あのレンズ状の形の美しさは、富士山の美しさに近いものがあるように思えます。


この2年、時々 国立天文台がやっている市民ボランティアのすばる望遠鏡画像からの銀河分類作業(ギャラクシークルーズ)に参加させてもらっています。


その作業で、銀河といっても一つ一つは本当に色々な境遇のものなんだという印象です。

渦巻銀河といっても、スマートなカッコイイものから、ガタガタになったり歪んだりした形のものも沢山見ました。でも、総じて若々しいエネルギーを感じます。

楕円銀河というレンズ状でない銀河も沢山あって、それらは落ち着いて、しずかなたたずまいを感じます。



この本は、そんな銀河達がどのように発生してきたのかを丁寧に教えてくれえるます。


又、アンドロメダ銀河は 本当は 渦巻型ではないという話にビックリしました。


言われてみて、改めて写真を見ると、、ナルホド!! となります。



そして、それは如何して作られたのか?? 犯人は誰だ? を解きほぐしてくれます。



天文学は、推理小説みたいだ、、、と思いました。



天空の星や銀河は、「変わらない永遠に輝いているもの」というイメージがありましたが、この本を読んで 実にダイナミックに変化を続けている世界なのだという事が良く分かりました。


アンドロメダは双眼鏡でも見えるようなので、見てみようと思います。


【宇宙】本 マルチメッセンジャー天文学が捉えた新しい宇宙の姿 田中雅臣 講談社ブルーバックス

 天体望遠鏡は大幅な進歩をとげつつあります。

可視光の大口径や宇宙望遠鏡ができたのに加えて、電波、赤外、紫外、X線、ガンマ線などの各種望遠鏡で、電磁波(光)の広い波長域での分光観察ができる様になってきています。


それら電磁波に加えて、ニュートリノ、重力波を使った測定装置も動き始め、それら全てのシグナルを組み合わせて宇宙の謎を探るマルチメッセンジャー天文学が始まりつつあるとのことです。


2015年宇宙からやってきた重力波が初めて捉えられ、それが宇宙のどのエリアから来たのかを推定する事ができました。そのエリアを他の望遠鏡で調べていくと、、、 という様な事が分かったり。


ニュートリノの速度に関して、重力波シグナルや光シグナルとの時間差を知ることによって始めて検証できたりしています。



特に宇宙の爆発現象の謎をマルチメッセンジャーが解くカギになると期待されています。


太陽クラスの星は、水素→ヘリウムの核融合が終わるとヘリウム→炭素の核融合になり、その時期は星の外層が膨らんで赤色巨星になります。そして最後は白色矮星になります。

白色矮星同士の合体などで核爆発型超新星になることがありますが、そのメカニズムはまだ分かっていません。


太陽の10倍質量以上の星は、炭素→ネオン・ナトリウムの核融合、ネオン→酸素、と核融合は鉄まで進む可能性があり、最終的にはコア鉄の周りにケイ素、ネオン+マグネシウム、炭素+酸素、ヘリウム、水素というたまねぎ構造ができます。

その先は 重力崩壊して 超新星爆発を起こし中性子星(またはブラックホール?)が生まれます。そして超新星爆発では大量のニュートリノが放出されることで爆発になると考えられています。


重力崩壊でブラックホール(中性子星合体などでも出来る)が出来ると、その周りに円盤構造が出来ると思われ、それらが高速で回転しながら落ち込むことで相対論的ジェット(光に近い速さで動く物体によるジェット)が出来ると考えています。その時にガンマ線(バースト)も起こると思われます。


中性子星合体で鉄よりも重い元素は作られると考えられています。又、重力波が出ます。

重力波が検出できれば、その強度から距離を推定する事ができます。



これらの爆発現象から天文物理の色々な事を解き明かしていく事ができそうです。


著者(または、天文研究者は)は、これらの新しい道具を使って新しい事が色々できるのではないかとワクワクしている様子がこの本から良く伝わってきます。 まるで、新しいオモチャをいくつも貰った子供の様に。。。



彼ら研究者にとって、面白い時代になってきているようです。

2023年3月4日土曜日

【難民問題】本 故郷の味は海を越えて 安田菜津記 ポプラ社

 安田さんは、テレビのコメンテーターに出ておられるのを見ていて、しっかりされている人だなと思っていますた。


たまたま、この本を見つけて 読んでみました。


戦争や紛争によって実家を破壊され、国を脱出して、身寄りもなく日本に来ている難民の人がかなりおられる様子。


それらの方々が、慣れない日本で苦労しながら生きている状況を、安田さんが訪ねて、各々の故郷の家庭料理を作ってもらい、それを一緒に食べながら、日本に来ざるを得なかった経緯や、来てからの日本での状況を聞くというルポになっています。



とても、悲惨な人生を歩まれてきている方ばかりですが、安田さんの寄り添う姿勢が引き出したのだと思う素晴らしい笑顔の写真の方々です。


人間、どんな苦しい事、悲しいん事がある状況でも、生きる強さを感じられるお話と写真です。



日本の入管が大変に酷い対応をしていることは、昨年の事件でも公になってきていますが、この本を読むと世界的に見ても、異常な対応を日本はしている事が良く分かりました。


政府にも官僚にも、「人権」という意識が本当に低い国だという事に、怒りと悲しみを感じます。


世論と選挙で変えていかなければなりません。



難民の何名かの方は、日本で祖国の料理や飲み物のお店を小さく開いている方々もおられることを知りました。



今まで私は、街でアジアや中東のXX料理 というお店を見ても、単なるレストランのバリエーション程度にしか思っていませんでしたが、もしかしたら難民の人が必死に開いている店の可能性もあると思うようになりました。



私にできる小さな事として、今後 そういう各国料理で「外国人」の方がやっている店を見たら、そこへ食べに行ってみようと思います。


2023年2月27日月曜日

【自民党】本 自民党の女性認識 安藤優子 明石書店

 なんで自民党は家父長制の考えに固執するのか?


夫婦別姓やLGBTQ問題、森元首相の発言など、自民党の議員の発言は明治時代か戦前から全く変わっていない様に見える。


しかも、似たような発言が色々な議員から何度も何度も繰り返す。



自民党を見ていると、国会議員は国民の代表 とはとても思えないと感じていましたが、 それが構造的にそう作られているという事を安藤優子さんの本で初めて分かりました。


自民党は、その内部での教科書として、家父長制(妻は家庭長として家の事をやり、夫は外に働きに行く。)が家族のあるべき姿としているとのこと。


そして、議員は 自民党の議員の血族や、息のかかった地元の有力者しか候補者にしない仕組みになっている。


女性候補も、議員の父や夫が亡くなった後に、後援会が妻や娘を担ぎ上げて作っている。


後援会が集票マシンなので、その構図は変わらない。


彼らは、2世、3世となっていき、”職業は政治家です” というバカげた発言を堂々と言いきる。




つまり、自民党内の「常識」の基で、暮らしてきた人しか立候補させない。


当選者は必然的に、その「常識」を世間一般だと思い込んでいる人ばかりになる。



この本で、この国の変な政治のしくみが良く分かりました。



国会は国民の代表などという話は嘘っぱち。



今日現在 衆議院の465人の議員のうち、自民党議員は260人もいる。


そんな2世、3世候補者に投票してしまう事はマズイと言う事に国民は気が付かないと、この社会は変えられないと痛感しました。