2019年10月29日火曜日

【本】死都日本 石黒耀 講談社NOVELS

これは、九州のカルデラ噴火により日本がどうなっていくかのサスペンス小説です。

今までの日本の災害多発国という性質を無視した政治や行政の問題点をするどく指摘しながら、古来から何回も起こり、これからも起こる九州でのカルデラ噴火が、日本人の生活に、国土に、経済にどういう影響を与えていくのかが圧倒的な迫力で描写されています。


鬼界カルデラの噴火で、古代の西日本の縄文人が破滅的な事になり、日本中に縄文人が広がったという話は、以前に縄文についての本を読んだ時に知りましたが、それ以外に沢山のカルデラ噴火が九州では起こっており、眠っている事をこの本で知りました。


火砕流は海上を渡っていくという事も、頭では知っていましたが、どういう風にそれが起こるのか、火砕流の前後や周辺では何が起こるのかは、この本で初めて想像が少しできるようになりました。


火山の大噴火は本当に恐ろしい。


最近の台風の大風による災害、大雨洪水による災害など頻発、連発している日本ですが、地震、噴火もそろそろ起こって来ることが予見されていますので、日本は一体どうなってしまうのか。どういう暮らし方をするのが良いのか、途方にくれます。


台風の大停電に備えて太陽光発電システムが良いと言っても、噴火の火山灰が降れば全く用を成さない様になるでしょう。大地震に免震構造だと言っても、洪水で免振体にダメージを受けたり、火山灰で動作範囲が狭くなれば性能を発揮する事が出来なくなるでしょう。洪水に備えて高層階が良いと言っても、停電でエレベータが止まればになれば暮らしていけない。。。


一筋縄ではいかないのが、災害列島日本なのだと考えさせられました。


この本では、噴火で大ダメージを受ける日本で、総理大臣が「災い転じて福となす」政策を打ち出すという事になっていますが、内容はともかく、その様な大胆な発想の転換をもって国造りに臨まないといけないのだろうという気持ちになります。残念ながら現在の政権では、そこまで肝が据わっているいる人と長期の視点を持っている人はいないと思いますが。


2007年発刊の本ですが、今でも全く古びていないし、現実味がますます強まってきているテーマの本だと思いました。

2019年10月23日水曜日

【本】震災列島 石黒耀 講談社

これは2004年11月に売り出された本です。

ですが、2011年の東日本大災害を経験して、大津波とはどういう事になるのか、原発はどういう事になるのかを目の当たりにして、にわか学習した日本人が今読むと、この本の正確な、あまりに正確な予測に驚きます。


私は読んで、本当にビックリしました。


こういう事を予測できる知見が、既に日本にはずっと前からあったという事実にも驚きました。


こんなにクリアに原発のリスクと不合理が明確になっているのに、まだ政府が原発を推進しようとしているという現実に、また、関西電力の原発ワイロ元助役のニュースであるように原発の利権ドロドロの世界がますます深まっている状態に 本当にやるせない思いと落胆を感じます。


内容を書く事はしませんが、地震・津波・原発の世間の常識と現実の差を非常にリアルに描き切っている事に加えて、サスペンス小説としてもとても魅力的な面白い内容という事に感動を覚えました。


読み始めたら、どんどん引き込まれて止められない。
ベッドに入っても止められなくて、深夜まで読みふけってしまう。。。


東日本大震災の前に読んでいたら、きっと作者のフィクションが沢山入っている絵空事と感じながら読んだろうと思いますが、今の日本人が読んだら、そのリアリティと緻密な考察に改めて感心し、かつ非常によくできた小説と感じるのではないかと思います。


とにかく面白かったです。万人にお勧めな1冊です。

2019年10月9日水曜日

【バレーボール】俄然 面白くなってきた男子バレー

リオ五輪以来見ていなかったバレーボールのTV中継を、このワールドカップは見ています。

2010年の世界バレーからロンドン、リオへと女子バレーばかりを見てきました。男子バレーは弱いし、ラリーがないのでつまらないという認識でした。


ところが、今年のワールドカップは、男子が非常に強くなっていて面白い。すっかり男子バレーファンになって連日見ています。


今年の男子バレーは、各選手のキャラがしっかり出来ていて、各々がいろいろなエキスパートになっている様に見えます。リベロの選手も頑張っていて、ラリーもある。強力なサーブで崩せる。そして今まで見たことの無いようなバックアタックしようとしていた選手が空中で急にトスを上げてサイドヒッターが打つというような、私から見たら驚きのコンビまで出てくる。


ロンドン五輪の時の女子バレーチームも、非常にキャラや特徴の際立った何人もの選手がいて、彼女らの有機的な組み合わせと、驚異的なレシーブの粘りでとても魅力的な試合をしてくれました。


今の男子バレーはそれに近い気がします。


まだまだ強化しなければいけない点(リベロ力やサーブミス、チームの結束力など)はありますが、それらが強化されれば東京五輪でも、かなり強いチームとして世界で戦えるのではないかと感じます。


思い起こせば、ミュンヘンへの道の男子バレーの8年間がバレーボールに興味を持った始まりです。あの時の 興奮やスリル感などが、今の男子チームを見ているよみがえります。


今、全日本男子バレーが面白い!

2019年10月1日火曜日

【本】フューチャー・オブ・マインド ミチオ・カク NHK出版

副題が「心の未来を科学する」。

物理学者で一般人へ科学の前線を語る、科学の伝道師的な著者の翻訳本。


2015年の日本発刊なので、内容的には2013年までの科学について書かれていると思えばよさそうです。

という事で、本当に最前線かと言えば、既にそうではない(例えば、AIやディープラーニング等についてはこの本の後で大いに盛り上がっていますね)という事を認識しながら読む必要があります。

でも、そうだったのか!と思う内容も沢山書かれていて面白い。

欧米本の翻訳なので、日本人には冗長で長すぎる記述は我慢しても、我慢のしがいがある本だと思いました。

そうだったのか!と思った点を簡単に上げておきます。


脳の事をキチンと調べられ始めたのは、MRIや脳磁気センサ、PET等が発明されて普及してきたこの20年ほどの事。それまで、脳や精神などについては、哲学や思い込みなどで語られているだけだったのが、つい最近から科学できる様になってきた。


今は、世界中でデータ集めや実験などが進められている状態。きっと、近い将来かなりの事が分かってくるのではないか。


脳には右脳と左脳がある。それをつなぐ脳梁という部分があるが、それが切断されて左右が独立になった人には何が起こるか。通常は左脳(論理的に考える)が右脳をコントロールしているが、独立脳になったら右脳と左脳は違う考え方をするらしい。例えば右目(左脳)だけに見えるようにして何になりたい?と質問した時の答えと、左目(右脳)だけに質問した時では答えが異なる。また、右手と左手が勝手な動きをしてしまい、片手でもう片手を抑えていなければならない時があるとの事。


誰でも、右脳と左脳で本当は二重人格になっているという事なんですね。


それ以前に、自分の一人の考えと思っている事は、実は脳で多様な信号がせめぎ合っていて連続的ではない。それを円滑につながっていると自分で勝手に認識しているらしい。


BMI(ブレイン マシン インターフェース)を研究しているところが多い。脳の信号を読み取ってコンピュータに入れて解釈したり、機械を動かしたりする。


脊髄損傷で全身不随の人でも、コンピュータを介して他の人とコミュニケートしたり、道具を動かしたりする事ができる。又、どんな夢を見ていそうなのかも読み取れる可能性がある。


記憶を消したり、書き込んだりも動物実験ではある程度できつつある様子。


サヴァンの人は、左脳にダメージを受けてなる事が多いらしい。右脳に潜んでいた才能が一気に出てくるのかもしれない。


1953年CIAは巨額を使って、マインドコントロールの研究をした。
自白剤の開発、記憶の消去、催眠術や各種薬物での行動コントロール、即効性の催眠剤、薬物によって従順な人間にする人格改造など。
色々研究したが、どれも不安定で確実性がないという結論。


ただし、脳の島(脳深部の前頭前皮質と側頭皮質の間にある)の活動を鈍らせれば、麻薬、アルコールなどの依存症から離脱しやすいという事はわかった。


そう鬱病は左右脳のアンバランスから来ている可能性がある。左半球が強いと妄想やそう状態になる。右半球が強いと悲しみなどの否定的感情=うつ状態になる。


重度脳障害を受けて昏睡状態になっている人に、脳の視床まで電極を入れて電気を流す事(DBS:脳深部刺激術)で深い昏睡から目覚めさせる事ができた。


これ以外にも、心とエネルギーや幽体離脱、ロボット、AI、エイリアンについてなど盛沢山な内容が書かれています。

興味のある方は、ぜひ一度 読まれると面白いかもしれません。