2017年6月25日日曜日

【心と身体・本】サブリミナル・インパクト 下條信輔 ちくま新書

この本の説明書きは「現代社会は過剰な刺激に満ちている。
直接快楽を刺激する音楽と映像。
絶え間なくメッセージを投げかけるメディアやコマーシャル。
それらは私たちの潜在脳に働きかけて、選択や意思決定にまで影を落とすが、私たちはそれを自覚しない。」というもの。

著者は現カリフォルニア工科大学の知覚心理学の教授。
心身体の関係を分かりやすく説明してくれると共に、その関係を使った人心操作(操縦?)がどう行われつつあるのかを教えてくれます。

騙されたくないですから、彼らの手口を知るのは良い防御方法でしょう。

この本は非常に盛り沢山な内容ですが、その一部を書いてみたいと思います。

・習うより馴れろ
新しい事を習う時、最初は色々な動きを意識して身体を細かく制御します。
それは前頭葉が感覚野、運動野、連合野を使って行うのですが、だんだん馴れるとそのプログラムが小脳に移されます。そうなると、考えなくとも出来る様になるとのこと。
つまり、潜在意識で対応できる様になります。

人間の行動の多くは実は潜在意識が行っているという事は他の本にも書かれていました。潜在意識は人間にとって非常に重要な存在です。

・消費者は自由か
広告はだんだんと潜在意識に刷り込む事を狙うものが増えている。
簡単なものは、何度も見せるという事で刷り込みの条件つけをしている。

又、最近はお勧め商法も流行っている。(ネットなどでは、あなた向きのお勧め!というのが山の様に出てきますよね。私はキライです)
ここで問題なのは、お勧め商品以外には目が行きにくくなってしまう、つまり選択肢がやんわりと(しかし現実的に)狭められている点。
売りたい側に都合の良いように選択肢を管理制御しています。

テレビや新聞・雑誌などの紙媒体では、広告と記事や番組の中身が混じらせるボーダーレス広告やインフォマーシャル、ドラマーシャルなどもどんどん増えてきています。

現代コマーシャルの戦略は、「狭める」「誘発する」「気づきにくくする」の3つ。
これにより、消費者が自らの自由意志で企業側の望む選択をしてくれるという構図が見事に成立するとの事。


・政治に於いて 無意識への働きかけ
政治でも大衆誘導が沢山行われています。

例えば、自衛隊の海外派遣という具体的な問題を考えてみると、政府が国民の同意を混乱なく、すみやかに取り付けたいと考えたとします。
あえて中身が曖昧なままでも、とりあえずの大義名分に大筋の合意だけ取りつけてしまう。
そうすれば、細部や具体的な法整備にも合意を得やすくなるかもしれません。
そこには「最初のコミットメントに愛して後の行動の首尾一貫性を保つ」という潜在心理のルールが働くからです。
又、最近の米国では、セキュリティ=国防=愛国という反応図式が政治的に使われています。
イスラム原理主義=テロリストというステレオタイプと相まって、ますます戦略的に利用されている観があるのです。
繰り返しタイミングよくこのチャンネルに働きかけられると、この「愛国」反応図式はますます人々の情動・認知過程に刷り込まれ、思考や批判が停止してしまう恐れもあります。

虚構の恐怖や危機を煽り立てて、それが1週間後に誤報だったと撤回されたとしても、恐怖心を潜在意に刷り込む事には1週間で十分で、これらの怪しげな発言や情報が訂正されても完全に記憶から消え失せる事はなく、世論に一定の持続的影響慮力をもってしまいます。

日本でも戦後の世論は、理想主義的な平和志向がきわめて根強かったはずです。
特に平和憲法の維持「ノイローゼ」と、国防、自衛隊の海外派遣などに対する「アレルギー」が、失言と訂正の繰り返しの中で、いつのまにか効果的に「治療」されてきた経緯も思い出されます。

メディアは簡単に印象操作をする事も出来る。
政府とつるんでさらに効果的にあおりたてるもことも。

・快適という名の制御
現代の「快適」という言葉は「さりげない制御」と同意なのではないか。
実際、若い世代の政治に対する態度や、コマーシャリズムに踊らされていつると知りつつ受け身の自由を謳歌する態度。そういう態度を見ていると、こう思わないではいられません。
かくのごとく、「自由」は「快適」に取って代わられつつあります。かつて盤石の重石だった自由が、希薄化し拡散していくのです。

以上

この本は2008年出版の本ですが、現実はこの本で警鐘している通りに、さらに加速して進んでいる様に思えます。

露骨にマスコミも含めて世論操作しようとしている安倍政権やトランプ政権。北朝鮮も同様ですね。
ネットビジネスもどんどんエスカレートしている様に思います。

自分が見て聞いている情報が、心理操作されているものかを絶えず気にしながら暮らさなければならない社会というのは、本当に悲しいものだと感じます。

【本】宇宙少年 野口聡一 講談社

少年向けの本ですが、宇宙に出た時のとても素敵な印象が書かれていますので、抜き書きしてみます。

以下 抜粋

宇宙船のハッチを開けて、初めて宇宙空間へ泳ぎ出た瞬間。僕を包んだのはそれまで感じたことのない静けさでした。

宇宙には空気がありません。
空気がなければ、音もしません。
そういうことは知識として知っているけど、実際に宇宙に行き、本物の無音を経験してみると、想像以上の驚きが走りました。

「ここは命が存在しない場所だ」。そんなふうに、僕の身体は感じました。
本能が危険を察知し、シグナルを発しているのが分かります。
宇宙服を着ているから大丈夫だとはわかっていても、本能は反応するんです。

「音がない」ということ、ただそれだけのことが、これほど鮮やかに感じられるとは!
予測したり想像したりすることと、体感することとの間には、じつに大きな開きがあるものなのだと思い知りらされました。

知っているつもりでいたけれど、本当には知らないこと。世の中にはそういうことが山ほどあります。

僕は宇宙飛行士として長い間訓練を積んできました。
宇宙で撮影された地球の写真ももちろん何枚も見てきました。
ですから地球が美しいということは、写真を通してよく知っていたはずでした。けれども宇宙に出て気が付きました。僕は知っている「つもり」だったのだと。

 広い宇宙にぽつんと浮かんでいる、宇宙服を着た僕。その僕に向き合うように、地球はありました。 大きくて、丸い地球。
ゆっくり回転し、青く、白く、輝いている。ここの生命があるんだ!と主張しているような、力強さを。

命の気配がしない宇宙空間のなかで、地球だけが大きく光り輝き、生きているよと訴えているのです。

そのとき僕と地球は、対等な1対1の存在でした。
地球を見つめている僕と同じように、地球もまた、宇宙のただなかにひとりで存在している。

「地球さん、こんにちは」。僕はそう呼びかけたくなりました。
地球は僕と同じ、ひとつの命だ。僕も地球も、同じように宇宙に浮かんでいる。
そう実感したら、地球が親しい友達のように思えました。

ふるさとも、思い出も、家族も友達も、なにもかもがあの地球のなかにあるんだ。
僕はそこで暮らし、そこで死ぬ。僕は間違いないく地球の一部だ。
命は地球で生まれ、地球に戻る、、、。


こんなこと、わざわざ宇宙に行かなくてもわかる人もいるでしょう。
でも僕は、宇宙に出てみなければわかなかった。

地球が「いきもの」であることや、同時に広大な宇宙のなかのひとつの「もの」であること。
そして自分自身も地球に属する小さな「いきもの」で、宇宙を構成するひとつの「もの」であること。

地球をひとつの生命体として感じ、こんなふうにいのちを実感するなんて。
それは、頭で理解するというより、感じてわかる、という体験でした。

以上

最近、ネットで調べて、「何でも分かったつもり」になってしまいがちな事を自分でも感じていたので、この野口さんのみずみずしい体験記は、忘れていた事を思い出させてくれた気がしました。

2017年6月20日火曜日

【本】ブラックホール・膨張宇宙・重力波 真貝寿明 光文社新書

この40年程の間でも、新しい知見や考え方が起こっているので、科学雑誌などは一般の人には馴染みの薄い用語が飛び交っています。

「ビッグバン」などは経済用語にも転用されたりしていますが、インフレーション宇宙とか、超紐理論や11次元世界とか、ボゾン、重力波などなど。

新聞の科学記事などで、断片的には聞きかじっていても、一貫した流れの中で、それらの言葉や現象がどうつながって来ているか、私には良く分かっていませんでした。

この本は、そういう流れをアインシュタインの学生時代から始めて相対性理論から一般相対性理論へ、量子力学と合わさって、それが宇宙の新しい考え方や、実験、発見にどうつながって行っているのかが、物理や天文に少し興味のある人にとっては、とても分かり易く書かれてあります。

アインシュタインがなぜ、相対性理論ではノーベル賞を取れなかったのかの理由も分かりました。
物理の世界では有名な人達が、どういう人物でどういう役回りをしていたのかという物理史としても面白い読み物です。

学校で習った物理の話から、現代の宇宙論へ一貫した流れをや内容を理解したい人にお勧めの一冊です。

この本が出た翌年に、実際に重力波が初めて観測されました。

2017年度から、日本のKagraという高感度の重力波検出システムも稼働を始めます。

次の数年で、宇宙の本質についてどんどん新しい事が分かってきそうです。

そういう意味では、今 この一冊を読んでおいて理解しておけば、次の数年で起こるだろう科学の進歩を内容を理解しながら見ていく事が出来そうです。

【科学】まだまだ人間の知らない事ばかり

大学の恩師に久しぶりにお会いする事ができました。
そこで又、刺激的なお話を聞きました。

大学時は物理学科で学んでいたのですが、今回恩師から突然「地球は回っていると思うか?太陽の方が回っていると思うか?」と聞かれました。

勿論、地動説です。と答えましたが、「どうしてそう思う?」と重ねて聞かれると、ケプラーの法則で、、とか実測値で証明されているから、、とか教科書で習った知識でしか答えられない事に気がつきました。実感はないですよね。

中世の科学者もバカではなかった。世界中の科学者が天動説を唱えていたのは、当時の自然に対する各種の測定データが、天動説で考えた方が良く説明できたからだ。とのこと。

その後、測定技術等が上がって来て地動説に有利なデータが揃う事で、皆の考え方が変わったとのこと。

これは、私にとってはちょっと衝撃的な話でした。

言われてみれば、そうだろうな、、と思うのですが、今まで私は何となく中世の学者達は宗教的な思い込みでデータを無視した科学的態度が出来ていなかったと勝手にイメージを作ってしまっていました。

自然は、まだまだ人間の知らない事が沢山あって、現代の学者達が これが科学的な事実だ と言っている事も、鵜呑みにしてはいけない。新しい実験や試みによって、常識が覆る事が今でも、これからも沢山起こるだろうとのこと。

例えば、

去年、今年と 計3回の重力波が初めて検出がされた。
重力波の存在が確認できたという事は、素晴らしいが、実はそこで観察された重力波は太陽の数十倍質量のブラックホール2個が合体する時のエネルギーによる事が分かった。

一昨年までの現代科学の常識では、恒星が最後にブラックホール化した時は、太陽の10倍程度の質量が限界というものだった。

宇宙が出来て、ビッグバンのあと星が出来て、星の中で核融合が進み鉄までの元素がだんだんと作られる。

そして、超新星になる時に鉄以上の元素が作られるという順番で進んできている。

現在の太陽や地球は第3世代と言われていて、沢山の重い元素を持っている。
その世代(金属元素を持つ)だと太陽の10倍程度の質量のブラックホールしか作れないというのが常識だった。
天体観測でもそれぐらいの物しか見つかっていない。(銀河中心の超巨大なブラックホール等は別物)

という事で、重力波で観測されたのは初世代の恒星(水素とヘリウムぐらいの元素しかない時代)から出来たブラックホールが初めて観測された。

こういう人類初体験の様な事は、まだまだ起こっていく。新しい事実が見つかる度に、沢山の仮説理論は破棄されて、新しい仮説が考えられて行く。

とのこと。

人類の科学技術はかなり進んでいるという思い込みは捨てないといけないようです。

いつでも、事実は常識よりも奇なり。 かな。

2017年6月17日土曜日

【本】意識をめぐる冒険 クリストフ・コッホ 岩波書店

著者は、米国でマサチューセッツ工科大学(MIT)と並ぶ理系の最高峰大学のカリフォルニア工科大学(CALTECH)の生物物理学科教授でアレン脳科学研究所所長のコッホ氏。

意識は脳のどういう仕組みで起こるのかを、探求中。

350ページを超えるボリュームのある本で、話も沢山の話題が書かれているので、要約というのは難しいのですが、へー と感じたポイントを書いてみます。

コッホ氏は意識はニューロン群の結びつきが意識を生むと予想しています。

人間の脳には、非常に沢山のニューロンがあり、それらが複雑にネットワークを作っているのですが、殆どが意識に登らないで活動をつかさどっている。

眼で見ている物、聞いている音が意識にのぼるとは限らない事は皆感じているはず。
でも、それらの情報は脳にはインプットされている。

脳やニューロンの仕組みを調べる中で、特定の有名人にだけ発火するニューロンもあることが分かった。
その有名人の写真や、絵、声などにしか発火しなく、名前を見ても発火する。

数学を趣味とするエンジニアには、ピタゴラスの定理で反応するニューロンが見つかった。

人間の大脳は左右に分かれていて、脳梁でつながっているが、脳梁が切れた場合、左右の大脳に別々に意識が生じる。
だから、自分の左手と右手でジャンケンすると本人にはコントロールできなくなる事があるとのこと。

脳幹や視床組織がわずかに損なわれても意識は永久に失われる。

自分による自由意志での決定。は、本当に意思で決定しているのか難しい問題。

意識の上で決定したと思った時よりも前に、脳内ではその決定結果に向けた動きが観測される。
脳が決定している事を後追いで、自分の意志で決定したと感じている主観的な感覚。

情報間のネットワークが複雑になれば、意識は自然に発生する可能性があるのでは、だから、機械などにも意識が生まれるのでは という考えている人もいる。

一方で、原子や分子などの微小単位にも意識があるのではという説も、、

などなど。

そういえば、誰かと話しをしていて、自分の思っている事と違う内容を口走っている自分を発見する事があります。
その時は、エー 自分(の身体)はそんな風に考えていたのか。。と思ってしまう。

この分野は、面白そうですが まだまだ常識が変化していきそうに思います。

身体と心の関係   まだまだ深そうです。

2017年6月11日日曜日

【囲碁】気持ち良く学べて、打てる所

囲碁を楽しみながら、学んで行ける良い所に巡り会えるのは幸せな事ですね。

囲碁はルールは単純ですが、奥が深いので自分の実力が少しずつ上がると、同じ教則本を読んでも、今までは気が付かなかった新しい発見を得る事が多いものです。

当然、上手い人に教えてもらえれば、本を読むよりももっと多くの気付きを効率良く得る事ができます。

私は全く囲碁を知らない状況から学び始めました。

初心者、級位者にとって、街の碁会所はとっても入りにくい場所です。
高段位者がたまっている感じで、級位者は邪魔になるだけなのではと思ってしまいます。

勇気を出して、入って行って席亭さんに打ってもらって、アドバイスも頂けるのですが、「ココはこうした方が良かった」という事は教えてもらえても、系統的に一貫性を持った教育はしてもらえません。
又、なかなか質問も出来ません。

教えるプロではありませんので、当然ではありますが。
又、小さい時から囲碁をやってきた人はセンスで打っていて、ロジックで手を説明できない事もある様です。

そういう意味では、初心者や級位者は路頭に迷ってしまいやすい、、というのは言い過ぎでしょうか。

こういう事が「囲碁はとっつき難い」という印象を与える一因になっているのでは。

系統的に学べて、いつでも質問できて、置き碁だけでなく、同レベルの人と互先で本気の実戦をする事もできる環境を見つけられればベストです。

そういう意味で、知り合いの囲碁教室は初心者、級位者に理想的な環境を提供してくれています。

新百合囲碁学園という所で、子供クラス、女性クラス、初段を狙っていく大人クラスがあります。
http://web-asao.jp/hp2/shinyuriigo/

教えてくれるのが、早稲田大学囲碁会の現役学生でアマチュア8-9段格の強豪。

大人クラスでは、年間カリキュラムに沿った講義1時間、指導碁1局、クラスメンバー間のガチンコ対戦1局を行います。月2回の開催。

通っているのは、強くなりたい女性、定年後の楽しみに囲碁を学び始めた人、子供や父と打ちたいと学び始めたばりばりの現役社会人。と様々。

講義で習った事や、本で自習した事を指導碁やガチンコ対局の中で試してみる事や。その中での質問をどんどん聞いていく事も出来るとのこと。

いつでも参加できる。というのも忙しい人に向いているようです。
小田急線沿線の人はラッキーですね。

新百合囲碁学園では時々「ゼロから始める囲碁講座」というセミナーも開催するとのこと。

全く囲碁を知らない人も、そこから入門する事ができますね。

こういうシロウトが気楽に学べる場が、色々な所に出来てくると良いのですが。そうすれば、もっと囲碁が普及すると思います。

2017年6月9日金曜日

【音楽】癒す力

この2週間ばかり、プライベートや仕事でストレスの溜まる事が続き、すっかり疲れた倦怠感を感じながら、帰宅の電車に乗っていました。

通常は、本を読んでいるのですが、今日は文字を追うのもシンドイ心境。

ふと、心地良い音楽が聴きたくなりました。

ユーチューブで心が思いつくままに選曲しました。

クリストファー クロスの「ニューヨーク シティセレナーデ」。

聴いているうちに、心身の重しがいつの間にか取れているのに気が付きました。

続いて、イングランド ダンとジョンフォードの「キープ ユア スマイル」。
乾いたサウンドが元気を引き出してくれました。

〆は、八代亜紀の「おんな港町」。
どうしてこの選曲になるのか自分でも分かりませんが、独特の絶妙な八代節に感動。

きっと、過去の自分の楽しい記憶と結びついている曲達だったのでしょう。

人それぞれに、こういう自己回復できる音楽がきっとありますね。

音楽の力。改めて見直しました。

2017年6月6日火曜日

【本】きずなと思いやりが日本をダメにする 長谷川眞理子 山岸俊夫 集英社インターナショナル

社会心理学者と進化生物学者の対談本です。

最初にこの本を読むと、世間知らずの学者が好きな事を言っている と思う人もいるかもしれません。
でも、読み返して見ると 実はそうだったのか と感じさせる内容の本です。

気になった点をいくつか書き出してみます。

・「おばあさん」がいるのは人間だけ。

ヒト以外の動物では、繁殖能力の無くなったメスはその時点で寿命を迎えるのが通例。

ヒトは脳が大きいので、小さい未熟児の内に産む必要がある。(本当なら妊娠期間3年が妥当らしい)

ヒトは未熟児の上に、成長に時間がかかる生き物で、子育てに非常に手間がかかるので、母親一人で育てる様には出来ていない。
「おばあさん」や社会を含めて共同繁殖をしていく生き物。

つまり、”母性が足りない”とか政治家が良く言うお説教は意味を持たない。もともと、ヒトの子育ては「母性だけでは全く足りない」のだから。

政治は説教ではなく、共同繁殖できる仕組みを作るべき。

海外では、妊婦に話しかけ、激励し、安心させる役割の人がいる事があり、その人が付くだけで正常分娩率が一桁良くなる。

・少子化の原因
ヒトの一生のエネルギー分配は「自己投資」「配偶者選択」「子育て」の3つに分けられ、現代は女性の活躍の場が増え、自由恋愛も理想の相手を探したいとなっている。
となると、「自己投資」「配偶者選択」にエネルギー分配が多くなり、「子育て」に振り向けるエネルギーは少なくなる。
又、「子供のペット化」も起こっている。

今の官僚、政府、政治家は「心でっかち」の話ばかりしている。スローガンや説教ばかりを言っていて、それで問題が解決する様な事を言う。

彼らがしなければならないのは、お説教ではなく制度設計。

1950-60年代は、日本人の出生率は4ぐらいあり、人口爆発になりそうだった。それを止めるために当時の官僚達は「移民の奨励」「2DK住宅の普及」を進めた。

団地で家電製品に囲まれて暮らすのが文化的と宣伝し、ブームを作ってあっという間に出生率は2へ下がった。

お説教ではなく、こういう制度設計で現実を変えていく事が必要。

・脳はコンピュータとは異なる。
良く脳をコンピュータに例えて、何にでも対応できる万能の物を様に言う人がいる。

でも、脳はヒトの臓器の一つで、進化の過程で当時のヒトの直面した課題への対応する能力を獲得して来ているだけで、万能ではない。

その脳には、進化の過程で埋め込まれている(プログラミングされている)事がある。

ー「心の理論」
 相手には自分と同じ様な心があると仮定してして
 つい考える。
 人間社会はこれにより”心の読み合い”をお互いに
 する事で一種の安定状態を得ている。

ー「共感する力」
 相手の痛みをついシミュレートしてしまう。
 だから、いくら怒っても相手を思いっきり殴れない。
(このプログラムが壊れている人も世の中にはいて、
 残忍な事を平気でしてしまう)

ー「利他行動」
 集団生活をする事で、ヒトは生き延びてきた動物な
 ので、互恵的な本能がある。
 同時に、裏切り者を探知する高感度の本能もある。
 裏切り者を見つけたら、集団から追い出す。

ー「他人の眼」
 他人が自分をどう思うか考えてしまう。
 他の人と相対的に考えたり、先を考えたりして
 しまうので、絶望したりする。
 チンパンジーは絶望しない。

ー「集団内の空気を悪くしたくないと考える」
 日本の文化は「和」ではなく、ネガティブな協調性
 で事を荒立てない。荒立てると損する環境にある。
 日本の社会は いい子 を強制される。ビクビク系文化。

 でも、文化は環境で変わる。終戦の時は、1日で皆の
 言う事、考え方がひっくり返った。

 それも分からずに、「気配り」は日本の文化伝統など
 と本気で信じている人がいる。

ーヒトが理屈抜きで守ろうとする道徳律 
 <すべし/するべからず>
   ケア/危害
   公正/欺瞞
   忠誠/背信
   権威/転覆
   神聖/堕落
   自由/抑圧
 以上が進化の過程で刷り込まれている道徳律。

 これに、グローバル化の現在は、
   平等/差別
 が必要になっている。
 
数百万年の間で生き延びて、進化してきた脳のままで、この短い期間で何もかも変わってしまった現代の環境を対応しているというのが現実の姿。

そこを、よく認識すべし。

という感じ。

ヒトには刷り込まれている心の動き方があり、それに動かされているという事を知りました。

言われてみれば、凶悪犯なども肉体的には大したことは無くとも、「残忍な事が平気で出来る」という事だけで、周りに恐怖を与えるという事を納得できました。