2022年9月23日金曜日

【本】サピエンスの未来  立花隆 講談社現代新書

 立花氏の本を読むといつも、私の持っている個別知識の点と点の間の埋めてくれる情報を教えてくれると感じて面白いです。


今回の本は1996年に東大で行った講義録という事ですが、立花氏が亡くなる前月に発刊されています。最後の新刊本。


内容はかなり盛沢山だが、一貫しているのは、全世界は進化(変化)の途中であるという視点が重要という事。


物質も進化中、生物も進化中、人類も進化中 という意識で過去・現在・未来を見る。





立花氏が何かの結論を出そうとしているのではなく、その視点につらなる事柄、人物を紹介していく。



特に テイヤール・ド・シャルダンという、神父でありながら古生物学者で科学哲学者の人を紐解く中で、科学と宗教との関係や、彼の考える人類の今後の進化について紹介してくれる。


彼の考え方が、ガイアという思想や、アシモフの小説、EEスミスの小説などにも影響を与えているのかなと感じました。



現在の日本の政治などを見ていると、良き時代を取り戻せ 的な発想でいる人、 過去の歴史に学んで繰り返さないように進化させていきたいという発想でいる人、という点は、同時代に生きていたネアンデルタール人(力で戦う)とクロマニオン人(知恵で戦う)を見ているように感じる。


人類も進化をしていかないといけない。旧人は消え去る事は歴史が教えてくれる。



シャルダン氏は人類の次の段階は、個々人皆が繋がって有機的に、人間中心から人類中心へ変わるだろうと言っている。

科学も精神も手を取り合って進化していくとのこと。


この100年間の通信や放送技術の進化や、の今のネットを使ったSNSなど、科学技術は名違いなくその方向に動いている。


人間も徐々にそういう行動にうつりつつあるように感じる。



地球温暖化対策などは、全地球視点・全人類で未来を考えて行動するという良いキッカケになりつつあるようにも思える。



この本を読んで、地球温暖化対策の取り組み方次第では、個別のナショナリズム政治ではなく、全地球政府というような形に進化させていく事ができるかもしれないという希望を感じられました。






【対立を解いた者】 ネルソン・マンデラ

 マンデラ氏(2013年死去)は現代の偉人として知られています。

南アフリカのひどい人種差別(アパルトヘイト)を解いた人だと。


どういう対立をどうやって解く事ができたのか、改めて関連本を読んでみました。


南アフリカ共和国の大きな成り立ちは、


・アフリカの現地人が暮らしていたところに、17世紀 東インド会社が喜望峰は航海上の要所として中継基地を作り、オランダ人の移民が始まった。

・オランダ人は植民地を作り、現地人を侵略。奴隷制を行っていった。

・18世紀末に金が埋蔵されている事が知られ、英国が出てきてケープタウンを占領した。以降 植民オランダ人と何度か戦争し、英国が支配するようになり、植民オランダ人は2級国民という扱いをされる事になる。(現地人はさらに3級)

・徐々に英国は経済的利権等は確保しながら、その他の政治や運営面は植民オランダ人

 にが行うように変化した。

・植民オランダ人は、20世紀中頃アパルトヘイト政策(白人と非白人との人種隔離政策)を実施。

・世界は脱植民地化のトレンドの中、アパルトヘイトのひどさを非難し、経済制裁を行ったが日本は取引を続けたため、日本人は”名誉白人”として処遇された。。。

・英国からもアパルトヘイト政策を非難されたため、英連邦を離脱。

・1990年代、デ・クラーク大統領(植民オランダ人政府)とマンデラ氏が組みアパルトヘイト政策撤廃。

・1993年 二人はノーベル平和賞を受賞。

・1994年 マンデラ氏が大統領に就任。


という事。


マンデラ氏自身は地方の首長の子として生まれ(現地人)、英国式教育を受けて育った。

原住民による現地人のための初めての弁護士事務所を開き、アパルトヘイトと闘う。

ANCという組織に属し、抵抗運動。 30年弱に及ぶ投獄をされる。


ANCという組織は、いわゆる民族主義の主張(現地人の国を作ろう等の)ではなく、現地人・植民アフリカ人、英国人皆で和を作る国を作ることを目指していたとのこと。


マンデラ氏は長い投獄中にオランダ語を勉強する事を自らに課して、収容所の役人達とも交渉や話合いができる様になっていく。


また、植民オランダ人たちも、すでにオランダに帰るという選択肢はなく、彼らの故郷もすでにアフリカである事を知る。(だから、追い出される恐怖を払拭するために、アパルトヘイト政策をとったりしている)


次第に、マンデラ氏は 現地人からの信頼に加えて、植民オランダ人からも、あいつとならば話ができるという信頼を得ていく。


そいう状況を作り出し、また国民内の気運を導き、デクラクーク氏とともにアパルトヘイトの終結に持ち込む事ができた。との事。



・対立する双方の心情を理解し、信頼を得る。

・また、双方が両立できる世界を目指したこと。


この2点が 対立を解いた 鍵だった様です。



なお、マンデラ氏は大統領になっても、権力に固執する事なく、1期で退任した。

(大統領時代では、白人と現地人の融和を行っていくキッカケにと、サッカーのワールドカップを南アフリカで開催したりしました。選手は白人でしたが、全国で応援するという事で)