2020年3月29日日曜日

【非常時の対応】東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと 菅直人 幻冬舎

2011年3月 東日本大震災とそれによって引き起こされた東京電力・福島原発事故。初めて聞いた時に、学生時代に少し物理を齧った身として、これは本当に日本全滅まで行くかもしれない危機だと感じました。


大学の物理学科にいた時、当時の物理学生の間では核分裂方式の原発は核廃棄物の最終処理ができないのだし何かあったら取返しが付かないのだから行ってはいけない物だという認識で一致していました。なんで、日本は原発を推進するのか意味が分からない。大人の社会は納得できない事が沢山ありすぎだと思っていた事を思い出します。


ちなみに、当時は核融合方式ならまだクリーンに出来るかもしれない(本当はトリチウムが出るので無害ではない)けど、何十年も先だよね。という意識でした。



前置きはこれぐらいにして、

本書は首相の目から見た事故発生からの7日間と、その後の政局等が書かれています。


原発事故後も数年、後処理に関する報道が何度もあり、その中で東京電力という会社の閉鎖的な体質、原子力安全保安院の無能さなどがかなり分かりました。そういう後追い知識も踏まえたうえで、この本を読んでみました。


読んでみて感じたいのを、→で書いてみます。

・当時 首相にまともに情報が上がってこない。また、上がってきた情報が信用できない。ものすごく時間がかかり、タイミングを失する。との事。
→東電と原子力安全保安院ならば、多分 そんな事になっていたのではと感じていたとうりの事態になっていたらしい。


・そうなると、実際には何が起こっているのか事実に早く直面する必要があるので現地に飛んだとの事。又、独自のセカンドピニオンを出してくれるメンバーを組織した。
→本気で対応しようとしたら、当たり前の行動に思う。


・現場の吉田所長という、頼りに出来る現場指揮官がいてくれた事に本当に感謝し、全面的に信用し支援したいと感じた。 だが、中間に入る東電本社や原子力保安院の風通しの悪さ、気概の無さで現場要望と支援が寸断される。 東電は東電で出来る範囲の努力をするが、政府を動かせばもっと良い結果が出る事案でも、そういう提案をしようとしない。東電は私企業として現場からの撤退を考え、国としてはそれは許さなかった。政府と東電の統合本部を作った。


・本当に偶然にも助けられて、最悪状態は避けられた。それでも、原発ので事故の被害は非常に大きく規模になる。日本は、危機一髪を生き延びることができた。ただ、どれだけギリギリだったのかを、一般国民も永田町の政治家たちも実感しなかった。現場と対策前線だけが理解できていた。吉田所長や対策メンバーは、何度も死地に立ち向かっていってくれた。それでも、それだけでは回避できなかった。偶然に建物の一部が崩壊して自然ベントができた事に助けられた。
民間人に死地に行くように命令した初めての総理大臣だった。総理大臣にしか出来ない事だった。


・当時の政権や各省庁は、7日間 不眠不休に近い働きをした。


・理科系の菅首相も、事故前までは原発安全神話を信じていた。


・しかし、現実を知るに従い、原発はしてはいけない技術だと実感した。そして、脱原発を決心した。でも、原発推進は長年の日本政府の方針だったし、利権関係、政治関係も官庁も原発推進の構造が出来上がっていた。脱原発を掲げたとたん、菅降ろしの大合唱が 永田町、経産省、マスコミ、経済界、身内のはずの小沢一郎等から始まった。


・菅首相は、再生可能エネルギー法案成立と引き換えに、退陣した。


以上ですが、勿論 筆者視点で、しかも筆者にとって都合の良い様に編集された本だとは思いますが、そこに書かれた具体的な内容と時系列は事実なのだと思いました。

今後、関連する他の書籍も読んで整合性も含めて見ていきたいと思いますが、こういう状況だったら、私自身も菅氏と同じような動きをしただろうなと思いました。


危機対応を進める緊急コミニュケーションにおいて、言葉足らずや言い方の問題、受けとり側の思い違いなどが沢山起こったという話も、ありがちな事だと思います。


それでも、その時点が菅ー枝野チームの政府であったのは幸いだったと私は思いました。

【非常時の対応】大地震と原発事故の時の経験から

現在の新型コロナでの政府の後手後手対応を見ていると、
非常時の危機対応の仕方でその時のリーダーの考え方や
実務能力が露わになってしまっている様に思えます。

現在の与党は、国会でも過半数を持っていますので、色々な
緊急施策を果敢に実施しやすい状況にありますし、野党も
協力の姿勢を示しているので、足を引っ張っているのは、
単純に政権自身の対処能力だと思えます。


危機時にリーダーは、先の展開可能性(最悪時、成り行き時など)
を推測して、最悪にならない様にするにはどういうアクションを
先々に取っていかなければいけないかを考えて、臨機対応や、
事故処理、先手の仕込みをしていく事になります。


今回のコロナ禍では、日本全滅になる様な話ではありませんが、
危機対応が必要な事は確かです。


一方、9年間前の大地震・大津波とそれに伴う原発事故発生時は
まさに日本半滅が現実に起こっておかしくない事態でした。


その時の菅直人内閣で、官房長官をしていた枝野氏は、連日連夜
記者会見を行い、当時のtwitterで「枝野寝ろ」(非難ではなく、
そんなにガンバリすぎずに少しはお前も睡眠取れ という応援)
メッセージが沢山出ていたことを思い出します。


その枝野氏が何週間か前の国会で、安倍内閣のコロナ対応に対
して、政府として本気で対応しているのか? 


本気でしていれば各省庁から、自分分野ではこういう先手対応を
して行くという提案や、官邸から各省庁に施策だしを迫る事をし
なくてはならないが両方とも全く出来ていないのはどういう事か?

と追及をしていました。


本当の危機の経験者としての、指摘だと思いました。


菅直人政権は、原発対応で現場視察を無理やりして現場の足を引っ
張ったとの非難や、マスコミやは自民党だけでなく当時の民進党内
の小沢一郎一派による強烈な足のぴっぱり等でもボロボロになりま
した。


当時、日本の最大のピンチで、日本が一致して立ち向かって
いかなければならない時なのに、永田町の政治家やマスコミは
ああいう政局闘争などをするのか、とても不信と異様さを感じて
いました。


前回の究極に近い危機時に何が起こっていたのか、どういう動きが
起こったのかを改めて学ぶ必要があるなと感じます。


という事で、いくつか関連本を読んでみようと思います。

2020年3月22日日曜日

【物理屋の養生訓】医学常識はウソだらけ 三石巌 祥伝社

物理学者の三石氏が「自分の健康は、自分自身で管理しよう」と考え、独自の研究の結果を自身で実践していってたどり着いた話。 

食生活で病気を予防、治す。

「医学常識」は「科学の非常識」と断言。


例えば、

①「食塩を摂り過ぎると高血圧になる」のウソ

健康診断で高血圧ぎみの数値が出ると、塩分を控えてくださいと大抵指導されます。

又、長野や東北地方で塩分を摂り過ぎていたから高血圧が多かったという説明も良く聞きます。


でも、冷静に 食塩摂取の多い県 1、岩手、2、長野、3、山形 と10万人あたりの高血圧患者数が多い県は1、山梨、2、島根、3、青森 となっていて、整合しないとの事。



三石氏の考えでは、体内でのナトリウムとカリウムのミネラル比率 6対10 になるように摂取するのが健康に良いとの事。

東北でもリンゴの生産地では高血圧が少ないのは、リンゴを食べてカリウムをしっかり取っているから。


やみくもに食塩制限をすると、重要なナトリウムが減ってしまい良くない。

同様に、カルシウム対マグネシウムも2対1の比率で摂るのが良い。


ナトリウムがとれるのは、ハム、ミソ、パン、塩
カリウムは リンゴ、ソラマメ、ホウレンソウ、バナナ
カルシウムは牛乳、海藻(ひじき)、マメ類、小魚
マグネシウムは海藻(こんぶ)、小魚、ココア・抹茶、ゴマ、ナッツ、果物

血圧降下剤は血栓の原因にもなってしまう。


②コレステロールは悪玉

コレステロール自体は身体に非常に重要なもの。

悪玉と言われるのは、LDLが活性酸素等に遭遇すると酸化されてしまうから。


よって、コレステロールを摂らないのではなく、活性酸素等を退治する物質(スカベンジャー)を摂る事が重要。


スカベンジャーとなるのは、沢山の種類がある

ビタミンC(水溶性) レモン、イチゴ、ミカン、トマト、ブロッコリー、ピーマン、、、

ビタミンE(脂溶性) アーモンド、大豆、落花生、ウナギ、シジミ、カツオ、アユ、、

カロチノイド(脂溶性) ベータカロテンやキサントフィルなど。緑黄色野菜(ニンジン、カボチャ、トマト、、)、かんきつ類、赤身の魚、海藻、卵黄、魚卵

ポリフェノール(脂溶性) 煎りゴマ、低温で入れた緑茶、赤ワイン、コーヒー、ショウガ、、


③動脈硬化は治らない

弾力を与えるのはエラスチンというタンパク質。体内合成するには、ビタミンB群が必要。

イワシ、豚肉、バナナ、大豆を食べよう。


④痛風

痛風と言えば尿酸値。 でも尿酸自体は身体に有益。

ただし、尿酸がナトリウムとくっつくと針状の結晶になって悪さをする。

尿酸がナトリウムとくっつかないで、糖タンパクとくっつく様にすれば良い。

そこで必要なのはタンパク質とビタミンA.

ビタミンAは 肝油、レバー、バター、チーズ、牛乳、卵黄、、



全てにおいて、最も重要なのは、良質のタンパク質。 これをしっかり摂るべし。卵がベスト。


これ以外にも、三石理論が満載です。


食生活で予防や治療をする。という考え方はとても共感しますし、そうなのか と思わせる内容です。


ただし、裏付けとなる証拠はお医者さんではないので、ご自身での人体実験結果しかありません。


三石さんは95歳でもスキーを毎年され、50代の筋肉レベルを保ち、白内障の進行も止めたとの事。


江戸時代に、本人と奥さん自身で色々試してみて健康法を詰めていった「養生訓」がありますが、三石さんのこの本も 平成の養生訓 なのでしょう。


読者も、自身の人体実験で効果を確かめていくのがよさそうです。

この本の中で、私の人体実験と合致していたのは、ビタミンCの大量摂取。

ビタミンCを沢山飲み始めてからは、身体の抵抗力がかなり高まった実感があります。

折角なので、しばらく毎日1個は卵を食べてタンパク質追加実験をしてみようと思います。

【暗闇と希望の絵本】レッドツリー ショーン・タン 今人舎

絵本で、こんなに暗く、つらい物は見たことがありません。


子供だけではなく大人でも、理不尽につらい目にあって生きざるを得ない人が沢山います。


落ち込んで、落ち込んで、どう生きたら良いのか分からない。


辛い気持ちを絵と文で表しています。


そして、最後にどうしたら希望に会えるのかも。


人は 生きていく上に、誰でも落ち込んでしまう時があります。


小さな出来事で起こる事もありますし、自然災害や事故などで突然 そういう状況に放り出されてしまう事も。


この絵本は、そういう状況への共感と、希望 を伝えるために書かれている物だと感じます。


副題が「希望までの360秒」。


翻訳は早見優さん。


なんで、早見さんがこの本の翻訳をされたのか知りませんが、とても心に響く言葉になっている。


辛い時を迎えている人(大人でも若者でも、子供でも)への応援となる本だと思いました。