2021年2月15日月曜日

【本】「公益」資本主義(英米型資本主義の終焉) 原丈人 文春新書

 コロナ禍の為に赤字になった企業が続出していますが、それでも配当は維持しようとする所が多い様子。又、高株価が続いている事など、実態と離れた異常な経済活動が目につきます。


私は、グローバリゼーション、リストラ=人員整理、四半期決算、国内空洞化、経済格差・貧困の増大など、今の日本の(世界の?)社会が重苦しく希望の見えない状態に押し込まれている事に疑問と不満をずっと持っていましたが、この本に出合って、「まっとうな話が聞けた」、「そういうカラクリのつながり」だったのか、「未来に希望の持てる社会に変える可能性があるかも」と感じられました。


「公益資本主義」という言葉は、政治経済分野の人達にはすでに広く知られた言葉なのかもしれません。安倍前首相もスピーチの中で触れていたそうな。

うかつな事に、私は見落としていました。


著者の話では、今の閉塞感のある社会を作っている原因は、会社は株主の物であるといい世界を席巻している「株主資本主義」(グローバルスタンダード)が原因と事。


株主に得させる事が会社の使命であるという考え方から、

・ROEが重要と信じ込む。採算が悪くなったら従業員の給料を下げたり、首切りをすることで短期利益を上げて、それを配当で株主に回す。また、株価を上げる。 それが出来るのが良い経営者と評価され、ストックオプションを持っている経営者自身も大儲けできる。


・長期利益よりも短期利益で売り抜ける様にする事が大事となり、中長期投資などより、短期で結果の出る事だけに選択と集中させる。

そして、それが出来ないのはガバナンスが出来ていないといわれる。


・短期利益の動向が見たいから、3か月毎の4半期決算をやらせる。粉飾決算が多くなる。


・じっくり技術開発をするよりも、企業買収(M&A)で短期に株価や利益を上げる事を要求する。


・IFRSに乗り換えて、M&Aの「のれん代」償却をしないようにする。


・国内の従業員を切って、賃金の安い国でモノ作りする。


・モノ作りよりも、金融などの虚業で手早く儲ける事が評価される。


・減損会計と時価会計でがんじがらめ

 資産価値が下がると減損処理が必要になる。それを避けるために自社ビルを売って賃貸に切り替えるなどが起こっている。


・内部留保する金があるなら、配当で吐き出さないとダメな会社と評価される。


などが起こっている。



米国ではこれが進んで、一握りの富豪と多くの貧困層になっている。


株主資本主義を進めているのは、金融屋やウォール街、投資家、証券会社などなど。


この構造にホトホト嫌気がさしたムーブメントが、ヒラリーではなくトランプを大統領にした。

(そういえば、ヒラリーはキライ。ウォール街のやつらはキライと、当時のニュースで街の人の声が流れていた事を思い出しました。)




この米国発 株主資本主義グローバルに対して、以前の日本は 日本式経営として中長期や従業員雇用と大事にした経営をしていきた。


でも、バブル後。グローバル化に飲み込まれて、外国資本も沢山入り込み 日本企業の利益や内部留保なども全て吐き出させて吸収しようとしている。


グローバル基準が正義だ と信じ込む人も出だした。



日本を変え、グローバル化と対抗差別化していく「日本流」を作る事を著者は提案している

12のポイントがあるとの事。

・「会社の公器性」と「経営者の責任」の明確化。

・中長期株主の優遇

・「にわか株主」の排除

・株式保有期間で税率を変える。

・ストックオプションの廃止

・新技術・新産業ひぇの投資の税金控除

・株主優遇と同程度の従業員へのボーナス支給

・ROEに代わる新たな企業価値基準

・4半期決算の廃止

・社外取締役制度の改善

・時価会計原則と減損会計の見直し

・日本発の新しい経済指標



著者は政府の諮問委員会などにも参画し、公益資本主義を強く提案されているとの事。


どれだけ、現在の日本の制度が変わりつつあるのは私はフォロー出来ていないが、少なくともまだ先月・今月に沢山の会社が4半期決算を発表している。又、赤字でも配当を出す事を継続している。

 少しづつでも日本が元気になるように公益資本主義という考え方の方へ変わっていけば良いのだが。