藤田さんは免疫の第一人者。腸内細菌関連など腸にまつわる啓蒙本やエッセイ本を沢山出されています。酢タマネギなどでも有名ですね。
だだ、この本は今まで読んできた腸内細菌叢や腸のリズム、寄生虫などとは違った、もっと根源的は? 内容の1冊です。
腸と脳、遺伝子とその使い方について述べられています。私には なんとなく感じていた事をハッキリ言いきってくれる目からウロコの内容でした。
驚いた点を記します。
*腸と脳
・「恐怖」と「恐怖に対する不安」は分けて考える必要がある。
「恐怖」は、車でスピードを出しすぎてカーブを曲がる時に感じるもの。
「恐怖に対する不安」は脳が勝手に作りだした架空のもので、失恋したらどうしようとか、もしも試験に落ちたらどうしよう、、など風評被害もそうだし、それをあおる事でビジネスにする保険業やサプリ業界なども沢山ある。
・腸の声を無視して暴走する脳
マウスの実験:無菌マウスと正常マウスを比べると、無菌マウスの方が不安を感じている行動が多くみられる。
本来恐れる必要のない物に恐怖を感じる。
例えば、腸はより多くてバランスの取れた腸内細菌叢を欲しがっているのに、それに反して脳は自分の快楽だけを優先して、清潔徹底をやらせて腸内細菌を減らすような環境を作り上げてしまう。
現在の日本は、栄養状態も衛生環境も良いハズなのに、年間で3万人もの自殺者を出している。
対して、戦前の日本は腸内細菌の保有数が現在よりはるかに多く、自殺者は少なかった。
<藤田先生の例はすぐに腸内細菌に行ってしまいますが、 身体に悪いと分かっていても深酒する。太ると分かっていても甘い物を食べてしまう。
ゲームなど与えられた娯楽だけやっていたらダメと分かっていてもやってしまう、、等身体に悪いと分かっていても、”今日だけは”と言いつつやってしまう事って沢山ありますね>
精神面で、腸内細菌が重要な役割を果たしている事は先に挙げた無菌マウスと正常マウスの比較実験をはじめ多くの研究でも明らかにされている。
脳は私達が素朴に感じることだけを存在するように思わせ、短絡的な判断を下してしまいがちです。
聞き間違いや意思疎通のすれ違いなどで、怒りを感じたり悲しくなったり、それが原因でケンカしたりということがよくありますが、それも脳の単純な判断のせいです。
・脳はいいかげんなやつ
脳だけで考えることはいかにいい加減かを知るために、例を挙げると、
・このガンは手術で助からない確率は10%です。
・このガンの手術で10人中9人が治癒しています。
この二つはよく考えると内容的には全く同じ事をいっているのですが、最初の言い方だと不安を感じ、二つ目の言い方だと少し安心します。
言い方によって脳が勝手に不安を感じてしまうのです。
いとも簡単な事で脳は騙されやすく、偏った考え方をしやすい事が分かります。
ちょっとした質問の仕方や言い方で、脳はステレオタイプな考え方をしてしまいがちです。
最近、心理学でも「相手をおもいどおりに操る方法」のような本が売れていますが、脳の盲点を突いた方法をうまく使えば、簡単に相手を誘導することもできてしまうのです。
・野生動物はなぜ太らないのか?
とても空腹にしているサルにいつもの4倍(400g)のふかし芋を与えると、当然サルはガツガツと芋を貪るように食べますが、いつもの分量(100g)程度を食べ終えると、後は芋に見抜きもしなくなりました。
しかし、また同じように空腹にさせた後、ハチミツとバターを加えて蒸した芋を与えると、400gを超えて際限なく芋を食べ続けたのです。
これは、人間と野生動物は同じような満腹中枢を持っているのに、どうして人間は肥満になり、野生動物は太らないのかを探るための実験でした。
自然に棲む野生動物が普段食べている餌は、甘い辛いの味付けはされていません。
そういう人工的な味付けのないものを食べている限り、満腹中枢は正常に働くのです。
本来は狩猟民族であり、新たに農耕民族となった私達日本人は、タンパク質の摂取量が極端に低くなりました。
その代わりに糖質を大量に摂取するようになり、徐々に糖質を消化する能力も増してきたのです。
それはちょうど、人間が家畜化されてきたことになります。私達は脳が欲するままに、人間の味覚を刺激する食費んを次々に開発しました。
そして、そうした食生活は本来、脳をコントロールするはずの腸を傷つけることになります。腸が疲弊し、結果的にそれが肥満を誘導したばかりでなく、脳の暴走を許してしまい、頭人間ばかりを作ってしまったというわけです。
つまり、家畜化した人類の食生活が脳の暴走を導いたのです。
・心の病気は脳でなく腸が癒す
生物の歴史を遡ると、もともとは腸だけで立派に生きてこられたのです。問題は脳を作った事です。
おかげで私達は、不安や怒りなどを感じるようになってしまいました。
なぜ、何でもない事で不安を感じ、それが連鎖的に膨らんでいたのだろうかと考えてみると、「脳が勝手な思考をめぐらすからであって、腸でじっくりと現実を観察して気づけばいいんだ」と実感しました。
・腸内細菌叢があなたを太らせる
高食物繊維・低カロリー食で育ったアフリカの子供の腸ではバクテロイデス門に属する細菌が優勢だったのに対して、低食物繊維・高カロリー食で育ったイタリアの子供では、フィルミクテス門に属する細菌が優勢。
フィルミクテス門は太った人の腸内に多く存在し、高カロリー食を摂取する事で死亡の吸収効率が最適の状態に分解し、腸壁はぐんぐん脂肪を吸収します。
ワシントン大の研究では、太ったマウスから採取した腸内細菌を別のマウスに植え付けたところ、普通の体格のマウスから採取した腸内細菌を植え付けた場合と比べて、同じ量の餌を食べているにも関わらず、肥満になりやすかった。
・不安感のやわらげ方
文明社会で生活していると、腸内細菌が減少してきます。
その減少した腸内細菌を増やす様に努力することで、不安を和らげることが出来るという研究報告が最近、相次いでみられるようになりました。
私達が感じる不安は、腸内環境を整える発酵食品を摂る事で減らせるのです。
2につづく