2016年12月25日日曜日

【うねり】先進国のナショナリズム傾向

新聞に、トランプ次期大統領がロシアに対抗
して核軍拡をするという発言をしたとの報道
がありました。

最近の先進国の政治では、スコットランドの
独立可否投票に続いて英国自身のEU離脱
への政権交代。米国のトランプ氏の当選。
欧州での移民排斥の動き、中国の領土拡大
侵攻、ロシアによるウクライナ分断。
日本の集団的自衛権のなし崩し解禁など。

直接の原因は色々異なりますが、方向として
はナショナリズムに流れてきていると思い
ます。

EU離脱もトランプ現象も、もしかしたら
個々の投票者は、全体の流れは従来のまま
だろうから、私だけはチョット反対側に投
票してみるか、、的な感覚で投票してみた
ら思いもかけずにそれが過半数になってい
たという事なのかもしれません。


でも、多くの先進国の国民の心に、従来の
延長ではあまり幸せではないという気持ち
が強くなっているのは確かなのではないで
しょうか?


私の理解では、人間はいつも相対的な関係
で幸せ・不幸せを考えがちです。
30年前に比べたら、日本国民の生活水準は
大きく向上していて、もし当時の人が見たら
桃源郷に見えるのではないかと思います。

でも、そこで暮らす人間は不幸せ、不公平
感が募る。「もっと、もっと」「右肩上がり」
が素晴らしい事という思想が流布されて、
社会のしくみもそうなってきています。


大きな要因は、戦争を実体験した人が殆ど
いなくなって来ているという事によるの
ではないでしょうか。

戦争という、人間として最も不幸な状況
をベースに相対的に感じている人の目指
すべきと考える世界と、実体験がなく、
それを学ぼうとしない人の目指す世界は
別物になっていくのでしょう。

第2次大戦の終戦の年に生まれた人でも
すでに72歳。

大戦で苦しみながら暮らした当時成人の
人は90歳台以上になってしまっています。
その人から話を聞いて育った子供世代も
現役から引退し始めています。


この5年で先進国の世論が変わってきて
いる流れは、こう考えると合点がいきます。

きっと、現在のシリアやアフリカ、ベトナム
など、実体験としての戦争経験者が多い
国は又違った世論なのではないでしょうか。


人間が何度も戦争を繰り返すのは、こう
いうサイクルによるのでしょう。

断ち切る術が何か無いのでしょうか?
人類の知恵が試されいる気がします。

2016年12月18日日曜日

【食料問題】国連WFPの講演会

上智大学で行われて国連WFPの講演会を
聴講に行きました。

WFPのNo.2であるRasmussonさんの話と、
パネルディスカッションでした。

WFPが取り組んで来た、現在取り組んで
いる活動の紹介がありました。その成果
もあり1990年には11億人いた飢餓人口が
2016年には8億人弱に減少してきている
との事でした。

今は、2030年に飢餓人口をゼロにすると
いう目標の下、活動をする。

国からの拠出、個人からの寄付、企業と
のコラボなどによって具体的な活動は行
われています。

実に多様な関係者(拠出国、国連、途上
国政府、企業や大学、NGO等)とのパート
ナーシップを作って実現に向けて進めて
いくとの事。

特に、2015年の国連サミットにて

「持続可能な開発目標」(Sustainable
 Development Goals:SDGs)を中核とする
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
が採択されました。

これは、世界が一つとなり、2030年までに

1. 貧困の撲滅
2. 飢餓撲滅、食料安全保障
3. 健康・福祉
4. 質の高い教育
5. ジェンダー平等
6. 水・衛生の持続可能な管理
7. 持続可能なエネルギーへのアクセス
8. 包摂的で持続可能な経済成長、雇用
9. 強靭なインフラ、産業化・イノベーション
10. 国内と国家間の不平等の是正
11. 持続可能な都市
12. 持続可能な消費と生産
13. 気候変動への対処
14. 海洋と海洋資源の保全・持続可能な利用
15. 陸域生態系、森林管理、砂漠化への対処、
  生物多様性
16. 平和で包摂的な社会の促進
17. 実施手段の強化と持続可能な開発のため
  のグローバル・パートナーシップの活性化

を行うという事。

WFPは2.の飢餓撲滅、食料安全保障を担います.。


お話を聞いていると、本当に真剣に現実問題
と日々直面しながら進めている熱意のある
活動だという事をヒシヒシと感じました。

この講演会は高校生・大学生の聴講者が多かった
のですが、熱い意思でゴールに向けて活動した
いという想いを持った子も多かったのではない
でしょうか。


パネルディスカッションの質疑の中で、WFPの
アフリカ担当の方が、「アフリカに関する報道は
ネガティブ面ばかり多い(大衆受けするから)。
しかし、アフリカはこの20年でどんどん良く変
わってきている面も多い。ぜひポジティブな面
も知ってほしい。」と強く訴えられていたのが
印象的でした。


あと、国連WFP日本大使の知花くららさんも
聞きにこられていて、最初に突然振られてスピーチ
をされました。
ご自身がWFP活動に関わった経緯や、その中で感
じている事、若い学生へのメッセージなど非常に
クリアかつ丁寧なお話をされました。
とても聡明で、かつ目が覚める様な美人。会場に
花が咲いた様でした。

知花さんが、色々な所で食料問題についての声
を上げてくれている事が、日本の様々な企業が
WFP活動に賛同してくれるきっかけにもなって
いるとのこと(現在500の日本企業とWFP日本は
コンタクト持てるようになった)。重要な
役割を果たされています。


短時間の講演会でしたが、色々 知恵を絞り
ながら世界を変えようと頑張っている現場が
実際にここに在ると感じられました。

【バレーボール】丸山亜季選手

久しぶりにVリーグの生観戦をしてきました。

東レ、NEC、トヨタ車体、岡山シーガルズ
の皆さんの試合を堪能できました。

木村沙織選手、迫田選手、近江選手、
島村選手、山口選手などなどTVでお馴染み
の皆さんを見られたのは勿論良かったので
すが、最も驚いて かつ嬉しかったのは
丸山選手のプレーでした。

本当に久しぶりにリベロのスーパーレシーブ
を見る事ができた気がしました。
しかも、一つのセットなかで3回も。

往年の佐野選手を見ている様な印象です。
無駄なく、素早く、的確な位置取り。

次のセットからは、相手チームが丸山選手
を外して打ってくる事を徹底した為に
試合自体は厳しいものになりましたが、
佐野選手の時の様に、相手にプレッシャー
を与えられるリベロなんだと感じました。

リオには行きませんでしたが、これからの
ご活躍が実に楽しみです。

【本】(2)世界の農業と食料問題のすべてがわかる本 八木宏典監修 ナツメ社

<世界の食料問題>
世界70億人の人口の内、飢餓で苦しんでいる
のは9億人。一方、太りすぎは14億人いる。

食料の偏在化が起こっている。

但し、例えば米国では「貧困」と「肥満」
は同義語になりつつある。
貧困だと高カロリー、低栄養の安いジャンク
フードばかり食べて、栄養不良の肥満が
蔓延っている。米国企業の進出による肥満
を生むフードシステムが世界に広がって
いく。

又、世界で飢えにあえぐ9億人の内、7~8割
が食料を生産しているはずの農業生産者だ
という。多数の小規模農家が、少数の食品
流通企業(ウォルマートやテスコの様な多
国籍スーパーなど)に実質支配されている。

又、「緑の革命」の様に増収を目指す動き
の中で、化学肥料を多用する事により、虫
や雑草も増えて、除草剤など農薬を多用し
しなくてはならない事になってきている。
遺伝子操作も同様。

この様に、食料にまつわる問題は非常に
複雑かつ多岐に及ぶ。

<食と農の問題に対する取り組み>
人間の生命維持に欠かすことができない
食料を、必要な時に安定的に入手できる
権利を「食料安全保障」という。

*国連機関の取り組み
WFP 国連世界食糧計画
飢餓問題を根本から解決する事を目的
とし、「緊急食糧支援(災害等が発生し
たら世界どこでも48時間以内に食料を届
ける)」「復興支援・自立支援」を行う。

場合によっては、飛行機で食料を落下さ
せる事もあるし、ゾウを使って運搬する
事もあるというのは有名な話。
国連で最もアクティブな組織と言える。

開発支援では、空腹状態で学校へ通う
世界のすべての子どもへの給食の配給
を目指した学校給食プログラムを行っ
ている。

日本のODAの考え方とWFPの考え方は
近く、日本とWFPは戦略的パートナー
の関係にある。

FAO 国連食糧農業機関
こちらは、助言者の立場で各国に中立
的な討議の場(世界食糧サミットなど)
を提供したりする。

*さまざまな取り組み
フェアトレード
開発途上国の農産物や雑貨などを、
適正な価格で継続的に輸入・消費
する取り組みの事。経済的・社会的
に弱い立場の途上国の人々を搾取す
る事なく、貧困解消や経済的自立を
促し、経済格差を解消する事を目指す。

フードバンク
賞味期限は十分にあるにもかかわら
ず、パッケージ不良や形状が規格外
であるなどの理由で、品質には問題
がないのに売り物にならなかった食
品を企業から提供してもらい、食べ物
に困っている人々に配布するシステム。

スローフード
ファストフード等の席捲に危惧して、
食料供給の多様性を守る為に活動し
ている。
①伝統的な食材や料理方法を守る、
②質のよい食品やそれを提供する小
生産者を守る。
③子供たちを含め、消費者に味の
教育を進める。
というテーマを掲げている。

ファーマーズ・マーケット
地産地消 生産者と消費者が直接触れ合え
る場。

食農体験
生活の中に、さまざまな形で「農」の要素
を入れる。
農につて学んだり体験したりする機会。
週末農業体験やグリーンツーリズム等
がある。


この本には出ていませんが、先日書いた
ユーグレナ社による、ミドリムシの培養
によって飼料やエネルギーを作る事で
穀物を飼料やバイオエネルギーではなく
人間向けに使える様にしていく取り組み
なども、「世界の食料問題を救うビジネ
ス」として取り組みが始まっています。

【本】(1)世界の農業と食料問題のすべてがわかる本 八木宏典監修 ナツメ社 

ナショナリズムや保護貿易主義が台頭
し、戦争が起こり易すそうな世界情勢
ですが、命の基本となる食料問題につ
いて、この本を読みました。
2回に分けて書いてみます。

<世界の農業>
第2次世界大戦後、植民地が独立して
いき、そこを食料供給基地としていた
欧州各国は一気に食料難になりました。

欧州農業は、自給自足から保護を経て
自立へ向かうのですが、EUの前進のEEC
における最初の大きな成果の一つとし
て1962年に農産品の共通価格水準を設
定(保護)をしました。それにより、
今は自立へ向かいつつあります。

米国は大戦前から農産物輸出大国とし
て食料市場を席捲してきました。

アジアは人口が急増して、食料難にな
りましたが、「緑の革命(品種改良、
肥料、かんがいの3点セットで米、
小麦、トウモロコシの生産を倍増さ
せる事に成功)」し、危機を克服。
その後、工業化への成長軌道に乗せた。

アフリカはいまだ食料不足が深刻
なまま。但し、ネリカ(New Rice
 for Africa)米などのアフリカ版
緑の革命への動きは少し出てきつ
つある。

アメリカは北米大陸の真ん中を縦に
通る西経100度線の東西で農業が変
わる。東に行くほど降水量が少ない
のでトウモロコシ、綿花、酪農が
多く、西側は湿潤なので小麦や牧畜
地中海式農業が行われる。

もともと、リンカーンがホームステ
ッド法で未開発の土地64Ha(800m四方)
を無償で払い下げるという法律を作り、
移民達は木を伐採、開墾し家族労働で
耕作していった。
これが「フロンティア・スピリット
(開拓者精神)」の起原。

広い土地は家族労働で行うには限界
があるので、機械化が進み生産性が
大きく向上した。

強大なアメリカ農業だが、3つの
問題を抱えている。(地下水の枯渇、
土壌の劣化、塩類集積)

世界の穀物収穫面積は1961年から2004年
で殆ど変わっていない。農地開発が行わ
れている一方、砂漠化が進んでいるから。

単位面積あたりの収量は増加しているの
で、総生産量は増加している。

巨大穀物商社(穀物メジャー)も5大
メジャーから今は、カーギルとADM(両方
とも米国企業)の二強体制になっている。

畜産では、1980年から2005年の間、先進国
での食肉需要はあまり変わらないが、中国
で一人当たりの消費量が食肉4倍、卵8倍
に増えた。今後も開発途上国での潜在需要
が起こってくる。

水産物への需要も1980年から2005年で倍増。
特に、今まであまり食べていなかった中国
が1980年代後半から食べる様になり、世界
の水産物消費の30%に達する。

養殖は中国を中心に増加中。生産量は漁業
生産量と同じぐらいになってきている。

サケは1990年代にノルウェーとチリが本格
的に養殖に乗り出したので、一気にグロー
バル食品になった。

農産物は人が食べる物以外に、肉を作る
為の飼料需要(大豆の最大輸入国の中国で
は、飼料向けが急増)、バイオ燃料向け需
要増などもあり、取り合いになってきている。

特に、肉を作るためには、直接 穀物を
人間が食べるより大量が必要(牛肉1Kg作る
為にはトウモロコシ11Kg,ハンバーガー1個
分の肉には、おにぎり65個分の米が必要)で、
非常に効率の悪い方向に向かう。





2016年12月4日日曜日

【本】「国際協力」をやってみませんか? 山本俊晴 小学館

著者の山本さんは、国境なき医師団などで国際協力
活動をやられ、NPO法人 宇宙船地球号 も主催さ
れていた方です。

国際協力の表も裏も知った上で、国際協力をどう
考えて進めて行けば良いかを、初心者向けに書いて
くれています。

ボランティアや国際協力とは何か?から書かれて
います。

国際協力は「緊急援助」と「開発援助」の2つが
あるとのこと。

「緊急援助」は自然災害や戦争などが起こった時
に、水や食べ物、服やテント、医療などを緊急に
行って”外国人が”支援してあげる”というもの。

「開発援助」は比較的安定している状態の所に
行って、外国人が現地の人に必要な事はあり
ませんか?と相談して、お金や技術などをお手伝
いするというもので、途上国の人たちが主役。

日本政府も国連もその90%以上は「開発援助」
をしています。

日本の新幹線や首都高速なども、海外からのお金
で作られ、1990代までその返済をしていました。

「緊急援助」は瞬発的に動かなくては意味がない
ので、政府が1年半かけて法案を通してから、、で
は遅すぎる。だから、民間のNGOが主役になってい
る。国連で緊急援助はつの組織(世界食糧計画WFP,
国連難民高等弁務官事務所UNHCR、国連平野維持活動
PKO)だけ。

国際協力は、「考える人(何をするか決める)、
つなぐ人(実行計画に移す)、やる人(実施する)」
の3つから成り立つが、国連や日本のJICAなどは
皆「つなぐ人」の役割を担っている。やる人は
基本的に現地の人が行う。

国際協力は、純粋な人道的な見地という表の顔
だけではなく、当然 裏の顔も持つ(世の中の殆
どがそうですね)。

国連は、5大国(安全保障国=第2次大戦の連合国)
にとってメリットが無いと動かない。
日本のODAも国益になる様に行う(日本企業が現地
進出しやすいようにインフラ作り支援をしたり、
それらの工事は日本企業が請け負ったりする)。
「開発援助」は、現地のエライさん=大金持ちに
とってメリットのある事を要望してくるので、
貧困層にメリットがあるかは分からない。逆に
インフレになって、貧困層は苦しむ事になると
いう事態も起こりえる。

支援する方、支援される方ともにWinWinでない
と持続的な支援は成り立たない。

今の世界で起こっている色々な問題の根本的な
原因についての山本さんの考えは、

①世界人口の増加
 人間の本能、宗教(旧約聖書には「産めよ
 増やせよ、大地に満ちよ」と教えている)、
 天敵がいなくなったの3点によって、留まる
 所を知らない。

②自己実現の欲求、果てしなき欲望
 資本主義はいつも右肩上がりを要求される。
 貧富の差の拡大、競争社会の導入など。

世界の人口数が今のままでも、途上国の人々が
皆、現在の日本人と同じような生活をしよう
とすると、エネルギーや資源など全く足りなく
なる。

開発援助を行って、進んで行く先は結局 地球号
の破滅に向かう とも考えられる。

先進国は消費レベルをもっと下げ、途上国も
含め、ある程度のレベルで我慢するという事が
必要になるのでは との事。

それらの問題に対して、新しい形の経済活動の
模索が必要ではないかとの事。

一つが「自然資本主義」 再生可能資源だけを
使う仕組みにする。石油などの使ったら無くな
ってしまう様な資源は使わない様にする。

もう一つが、「レンタル」にする。
全ての機器とか物をレンタルにしたら、リサイ
クルが浸透する。ユーザーは物に金を出すので
はなく、サービスに対して金を出すという仕組み。
サービスならば、資源が枯渇したり、ゴミが出た
りする事はないでしょうとの事。

又、「国際協力」は現地で活動する人の事が
イメージされやすいが、日本に居ても出来る事
は沢山ある。

省エネ生活をする事。社会貢献をしている企業
の商品を選んで買う事、会社員は会社で「社会的
責任」への行動をしていくこと。国内で「つなぐ
人」として協力(例えばNGOのイベント協力など
でも)する事、国際協力について勉強して、
状況を他の人にも知らせてあげる事などなど。

勿論、国連や青年海外協力隊などに参加して
国際協力師(プロ)として活躍するという道
もあり、その道への進み方も記されています。

国際協力は表も裏も矛盾もある、難しいもの
ですが、進めて行かないと人類はダメになって
しまうという気持ちでやっておられるとの事。

この本は、本音で、難しさや世の中の仕組みの
実態を現場を踏まえて分かりやすく説明して
くれます。

人道的イメージだけで国際協力を考えている
人にはショックな本かもしれません、しかし
その上でも、山本さんが人類や地球を何とか
して行きたいと考えられている想いが、強く
伝わってきます。

本気で、国際協力を考えている人には絶好の
本だと思いました。