以前 寄生虫でアレルギー防止という事の研究で有名になった先生の本です。
この本は寄生虫について書いてあるのではなく、腸内状況がどう心身に影響するか、それはどうや
れば整えられるのかを分かり易く書かれています。
脳内で「幸せを感じさせる物質」として、ドーパミンやセロトニンという神経伝達物質の名前を聴いた
事のある方は多いと思います。通常それらば、脳内で作らるという様な理解がされていると思いま
すが、それらの作っている「工場」は実は腸内にあるのです。
例えば、セロトニンは食物の中に含まれるトリプトファンというたんぱく質から合成されますが、食物
でそれを摂っても、たくさんの腸内細菌がいないと、セロトニンが脳内に増えない事が、最近の研
究で明らかになっているとのこと。
”ドーパミンは「幸せを記憶する物質」。ドーパミンの具体的な働きについて、興味深い実験結果が
明らかになっています。それはアメリカ・フロリダ州立大学のB・アラゴナ博士が草原ハタネズミを使
った実験です。ハタネズミは一度、交尾をした相手とずっと関係を続ける事で知られています。ネズ
ミに限らず哺乳類ではめずらしい「一夫一婦制」です。実験では、一度交尾したオズの脳液からド
ーパミンを取り出し、もっと若いオスのハタネズミにそれを移植しました。すると、そのネズミは同世
代の若いメスのネズミには目もくれず、ドーパミンの”宿主”の相手だったメスを追いかけ続けたの
です。何と言う一途さ、愛情の深さでしょうか。この実験は「ドーパミンは幸せを記憶する物質」とい
う事を実証することになりました。”
一方、セトロニンは逆境の中で役立つ「幸せ物質」。人は誰でも不遇なときや、不運なときがありま
す。どこからどう見ても健康そうで、体力がある人が病気になることもめずらしくありません。こん
な”逆境”の時に、気持ちを奮い立たせ、やる気を起こしてくれるのがセロトニンなのです。いわば
不幸を蹴散らしてくれる「元気の素」ともいえるのですから、これほど貴重な「幸せ物質」はありませ
ん。ただし、セロトニンには弱点が2つあります。一つは時間の経過と共に量が減少すること。もう
ひとつがセロトニンの生産量はストレスに弱いとのこと。セロトニンが不足すると、睡眠障害やうつ
病に代表される心の病気に進んでしまいます。
日本は先進国の中でも自殺率が際立って高いのですが、最近の日本人の腸内細菌の減少によっ
てセロトニンが脳内に増えていないことが、自殺数高止まりの大きな原因だと思えます。
セロトニンは食物に含まれるトリプトファンという必須アミノ酸から摂らない限り、体内では合成する
ことができません。又、ドーパミンも同様に必須アミノ酸のフェニルアラニンがないと合成できない
のです。たとえ、必須アミノ酸を多く含んだ肉類を沢山食べても、腸内細菌がいない状態ではセロト
ニンやドーパミンが増えない事が研究で分かっています。トリプトファンやフェニルアラニンなどから
セロトニンやドーパミンを合成するには、ビタミンM(葉酸)、ビタミンB6などが必要です。これらの
ビタミンは腸内細菌が作っているのです。そればかりか、腸内で合成されたセロトニンやドーパミン
の前駆体は腸内細菌がいないと脳に送れないのです。
さまざまな腸内細菌が、その種類と数を増やす事により、セロトニンやドーパミンという「幸せ物質」
が増え、うつ病や自殺などとは無縁の幸せな人生が可能になるのです。幸せは脳がもたらしてくれ
るのではありません。実は、腸が幸せを作っていたのです。
「幸せ物質」の事ばかり書いてきましたが、腸内細菌の働きは
①病原菌を排除する。
②消化を助ける。
③ビタミンを合成する。
④「幸せ物質」の前駆体(セロトニン・ドーパミン)を脳に送る。
⑤免疫力をつける。
という重要な事を行っています。
腸内バランスを良くするには。
・食物繊維を含んだ食材を摂る。特に植物性食品(大豆、季節の野菜、海藻類など)を活かした伝
統的日本食が良い。食品添加物が多く入った加工食品は腸内細菌の発育や増加に悪影響を及ぼ
す。(便の量が多ければ、腸内細菌が元気な証拠。戦前、戦中世代の人は、現代の人の2~3倍
の量の便をしていました。)
・体を温めれば温めるほど腸内細菌も増える
子供の低体温が問題になりつつあるが、それを生んでいるのは、「不規則な生活」「冷暖房の効か
せすぎ」「食事事情」の3つ。
・過剰な”清潔志向”がアレルギーを招く
日本人は世界でも類をみないほどアレルギー体質になっている。長男長女にアレルギーが多い。
近年、ますます清潔志向が高まり、その”副産物”として、かつては体の中に棲んでいた寄生虫や
細菌を駆逐してしまったのです。困惑したのは免疫細胞です。本来、攻撃すべき相手がいなくなっ
てしまったのですから、毎日が「不戦勝」のようなものです。しかし、これは免疫細胞のあるべき姿
ではありませんから、微妙がな狂いが生じ始めます。こうして、これまでは相手にしなかった花粉や
ホコリを相手に闘うようになり、その結果としてアレルギー反応が起きてしまったのです。
その他、もっと詳しく腸内が元気にする方法や考え方がこの本には書かれています。日本人にこ
の近年何がおこってきつつあるのか、、こういう切り口で読んでも面白い1冊です。