2019年6月29日土曜日

【本】地球46億年気候大変動 横山祐典 講談社 ブルーバックス

地球が誕生してから、その表面の気候は絶えず変化を遂げてきた。それを、最新(2018年発刊)の知見で説明してくれる本です。


隕石が絶え間なく降り注ぐマグマオーシャンから始まって、全球凍結したスノーボールアースなどを経て、現時点はどういうタイミングになるのか。


どうやって大昔の事を推測するのか等、科学知見の辿った筋道含めて説明してくれています。


何故 地球には酸素があって、火星や金星には無いのかなどは、今までは生物が誕生できる水の問題かと漠然と思っていましたが、それだけではない(火星にも以前 水はあったし)という理屈を初めて知りました


へー と思った点を書き出してみます。

・気候を考えていく上で、数百万年までの短い(!)時間スケールで重要な大気海洋雪氷圏を「エキソジェニックシステム」と呼び、1000万年を超える超長期スケールで、バックグラウンドで気候の形成を担っている固体地球(核、マントル、地殻など含む)を「エンドジェニックシステム」と呼んでいる。
この2つの作用がいつも同時に働いている。


・過去の気温もある程度分かってきている。
 46億年~25億年前の太古代、20億年前の頃、10億~5億年前のカンブリア紀、おルドビス紀、4億年前デボン紀、1億年前白亜紀(恐竜がいた)などは、現在よりも10度ぐらい気温が高かった。
 直近の過去65万年では、気温の上下は色々あるが、氷期と氷期の間に間氷期が短くあり、現在は第5番目の間氷期。


・地球を「生命の星」にした2回の酸化イベント(GOEとNOE)があった。
金星、火星の大気には酸素はほとんど無く、二酸化炭素が95%以上を占めている。
地球も40億年前は酸素濃度は現在の10万分の1だった。
それが、GOE(great oxidation event)が25~20憶年前の期間に起こって一気に現在の100分の1のレベルまで増加した。次は5~7憶年前にNOE(Neoproterozoic Oxygenation Event)が起こり、ほぼ現在の酸素濃度になった。

GOEは、プレートテクニクスによって引き起こされた。
プレートテクニクスは金星、火星では起こっておらず地球独特のメカニズム。
地殻がマグマから出来た時は、苦鉄質岩(玄武岩)だった。それは鉄やマグネシウムを多く含むので、シアノバクテリアが発生する酸素も直ぐに酸化反応で地殻に取り込まれてしまう。ところが、プレートテクトニクスでプレートが沈み込むと同時に大量の水をマントルに運び込むのでマントルにて苦鉄質岩からケイ素や酸素に富んだケイ長質岩(花崗岩や流紋岩)が生成され、大陸地殻がケイ長質岩にとって変わられた事で岩による酸素吸着が急速に減少したため。

NOEもプレートテクトニクスによって、大陸とその周りの広い浅瀬が出来た事により有機物が分解せずに地表近辺に蓄積され、そこから二酸化炭素が沢山供給される事でさらに光合成が活性化されて起こった。


・NOEが終わり大気に酸素が増えた5億年前に、生物進化が一気に加速するカンブリア爆発が起こった。


・恐竜の時代は超温暖化時代だった。南極にも北極にも氷がないグリーンハウス・アース状態。炭酸ガス濃度は現在の3~6倍。
白亜紀は特異的に火山活動が活発な時期だった事が海底火山で分かる。その火山性炭酸ガス。又、海面が上がっていたために非常に広い浅瀬地域が出来、そこで作られた炭酸塩岩(サンゴなどから)が、マグマと合わさって炭酸ガスの放出もある。


・でもその後、急激な寒冷化が始まった。
これも地殻変動で、造山活動によりできた新しい岩達の風化により二酸化炭素が吸収された為と考えられる。


・ミランコビッチサイクルーーこれは有名な話なのでここでは割愛。
地球公転軌道の離心率、自転軸の傾き、歳差運動により、2,4,10年サイクルで気候に変動を与える。


・海は熱輸送だけでなく、二酸化炭素を捕集しておく大きな器。
深層海流などで熱の分配がおこり気候に影響を与えている。(熱塩循環)
グリーンランド沖と南極近郊で海水が冷やされ+塩分濃度アップ=比重アップで海水が深層に流れ込む滝を作っている。
グリーンランドの氷河が溶けて、真水が沢山供給されるとこの熱塩循環が弱まり、北半球は寒冷化、、南半球は温暖化 が起こる。


以上

現在の気候や酸素生命圏を生み出しているのがプレートテクトニクスの作用だというのは面白いと思いました。

一方で、なぜ地球だけにプレートテクトニクスが起こったのか、起こり続けているのかも知りたくなりました。月の存在が関係するのかな?

2019年6月27日木曜日

【心と身体】コーヒーショップだと集中して読める。 BGMの効果

以前から、家の自室で本を読むのと街のコーヒーショップで本を読むのでは、コーヒーショップの方がはるかに集中して、早く読める事を感じていました。


自室で読んでいると、もっと楽な姿勢があるのでは?とか、ついスマホやパソコンに逸れてしまったり、コーヒーもがぶ飲みしてしまったりとか、兎に角 1冊の本を一度に読み切ってしまう事がなかなかできません。


でも、コーヒーショップだと、1-2時間で1冊以上読み終わってしまう事も。


自分はケチだから、料金を払っているお店では元を取らなくてはと潜在意識の中で思っているのでは? などど分析してみたりしていました。


でも、ある時フト、これはカフェの雑音が逆に集中力を上げてくれているのでは?と考えました。

そこで、ユーチューブで日本のカフェの音という動画があるので(本当にユーチューブには色々な物がありますね9、それを自室で再生しながら本を読んでみました。


すると、、、集中力が上がるのです。
途中で、他の事に気を取られる事も少ない。


それが分かってからは、もうお金を払ってカフェで本を読むのではなく、自室で自分で好きに入れたコーヒーを飲みながら、カフェの音を流して読むようになりました。

BGMの効果は凄いです。


寝る時も、海岸の波の音(これもユーチューブ)を耳元で小さく流すと、本当に1分もたたないうちに寝てしまいます。


色々なシーンで、どういう音が効果を出すのか 今後も見つけていけるかもしれませんね。楽しみです。

2019年6月26日水曜日

【本】理化学研究所 山根一眞 講談社ブルーバックス

科学技術系の文を沢山書かれてきている山根さんが理化学研究所を訪問してその「今」を明らかにする。との事。


勿論、理化学研究所はこんなにスゴイ、魅力イッパイだとPRする様に書くという狙いの本である事は間違いないと思うのですが、それでも そんな事もやっているのか、出来るかもしれないのか、、と驚きのある本でした。


何にも知らなかったので理化学研究所って、何となく特定の企業とつるんでいる印象の、官だか民だか分かり難い研究機関というイメージを私は持っていました。


その歴史をこの本で知りました。以前のトップが研究成果を商品化して、そのライセンス料で研究費を稼いで自由に独立して研究できるようにしていこうという発想で、取り組んで来た組織とのこと。

理研ビタミン社の「ふえるわかめちゃん」
株式会社リケンのピストンリング
株式会社リコーの複写機
など

理化学研究所からの商品や企業が生まれてきました。

今も、色々な企業や機関との共同研究も盛んにやられている様子。


現在の理化学研究所でのトピックスとしては、、

・世界1の規模のサイクロトロンを保有
新しい元素を発見できる。周期律表で113番目の元素を合成、ニホニウムと命名。
研究を進めると原子力発電所での使用済み核燃料も、中性子をあてて放射線を出さない物質に消滅処理を行える可能性がある。
生物に重イオンビームを照射して、突然変異を多発させて色々な品種を作る事ができる。

・世界最強の放射光施設 スプリングエイトを持つ =スーパー顕微鏡
光合成を担う触媒の姿が明らかになった

・X線自由電子レーザー施設SACLAを持つ
太陽の光の100億倍x10億倍の強力光パワー。超解像度。
光合成の触媒の原子構造も解析できた。

・スパコン「京」を持つ
放射光分析と京の計算能力を使い、住友ゴムはとんでもなく省エネなタイヤを開発。

・バイオリソース拠点を持つ
細胞や遺伝子を凍結保存等して集め、保管、増殖し販売する。
実験用マウス 7818系統
細胞 1万855株
微生物材料 2万5176株
遺伝子材料 380万8264株

・IPS細胞を使って、再生医療の目途。加齢黄斑変性症。
 3次元の臓器作成。--ハゲ、歯の再生医療の目途。

・固体の水 アクアジョイント

等。

これ以外にも、テラヘルツとか量子コンピュータとか、ポピュラーなテーマの技術研究もしているらしい。


本 1冊を通して、とにかく 理研は元気! というイメージを持ちました。

理科系の中高生あたりが読むと啓発されそうです。


私は、核廃棄物を無害化できる可能性という話が目からウロコの驚きでした。

2019年6月25日火曜日

【本】アメリカの大学の裏側 アキ・ロバーツ 竹内洋 朝日新書

最近、日本の大学の入試裏操作や、博士取得がどんどん減っていたり、研究者は非常に不安定な生活を送っている等の話を良く聞きます。一方、ノーベル賞を取った研究者はアメリカに渡った人が多かったり、アメリカの大学と研究は質が高そうというイメージがあります。


この本は、親娘での共著になっており、アキさんはウィスコンシン大学のテニュア(終身雇用)准教授をされています。米国大学事情をマスコミ的に伝えるのではなく内側から見た赤裸々な姿として教えてくれます。


この本を読んで、アメリカの大学ビジネス(?)の事情が理解できたのと同時に、ボンヤリ今まで持っていたイメージの裏側が見えてきました。


読んで、私が エッ! そうだったの?と思った点を書いてみます。


・アメリカ人は大学教授にあまりいい印象を持っていない。
終身雇用がほぼ約束されるテニュアを持つ大学教授に風当たりが強い。アメリカの一般企業は解雇が日常茶飯事で行われる。雇用が不安定なアメリカではテニュアは特権階級的にとられるのも否めない。又、インテリ層の大学教授は浮世離れしていて、大学の講義内容なども現実社会では全く応用性がないと思っている人は多い。
テニュアを排斥しようとしている州もある。


・大学世界ランキングが発表されているが、TOPは英語圏の欧米で占められている。審査では論文の「引用度」が大きな割合を占めるが、英語が公用語でない日本は圧倒的に不利になる。引用頻度の審査対象とされる学術誌は殆どが欧米で占められている。


・アメリカの学部生にとっての「名門」大学は、アイビー・リーグ。ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学の8校、全て私立。


・1975年ではテニュア教授が45%いたが、今は25%以下に減っており、非常勤講師などが4倍に増えている。テニュアの募集には非常に大人数が集まるので、エリート大学出身者以外が足切りされる事が多い。結果、テニュア職員間のネットワークはエリート大出身者になって行き、さらに有利になる。


・優秀な人材を確保する為に、「配偶者雇用」を実施している大学もある。


・アメリカの大学の授業料はどんどん上がってきている。アイビーリーグげは平均年5万$=500万円。カナダの大学の方が安く、内容も悪くないので、アメリカの高校生はカナダの大学に行くことも。


・国や州からの公的資金が減らせれてきているのも、授業料高騰の原因の一つ。LGBT対応など新しく付加しなくてばいけないサービスも増えている。


・エリート私立大学は、巨額の寄付金を集めるので裕福。
それらは気前よく奨学金を出す。低所得家庭出身の学生の大学資金を支援する事で、裕福な学生ばかりを優先入学させて階級の再生産を促しているという悪いイメージを払拭しようとしている。しかし、低所得という定義は世間離れしており、アメリカの平均世帯所得が5万$なのに、6万5千$を基準としている。授業料だけでなく大学生活にかかる費用は全額カバーしてくれる。返済不要。


・通常の大学は破産しはじめる所もでてきている。又、一般学生は2/3が奨学金ローンを抱えて、ローン地獄に。


・名門大学では、学業の成績が良くないといけない。しかし、それだけとは限らない。学力だけでなく、学生の個性や人物の全体像を評価するホリスティック入試をおkなっている。ホリスティック入試では、貧困層出身者(親が大卒でなく、初めて大学に進学せうる世代=First Generation)、運動や芸能に優れた才能、リーダーシップ力、ポランティア活動など、ユニークな人生経験、親や近い親戚にその大学の卒業生がいる事などが有利とされる。それに加えて、「アフォーマティブ・アクション」と呼ばれる積極的差別是正措置でマイノリティ人種入学を優先する所もある。


・親や近い親戚にその大学の卒業生がいるのは「レガシー」と呼ばれて、合格率は一般生に比べてハーバードでは5倍になる。さらに、お金持ちの子供は、運動、芸能、ボランティア、色々な経験などをするゆとりがあり、有利になる。


・アメリカの政財界のリーダーの半分はわずか12校の名門大学卒で占められている。
そして、過去、名門校はWASP(アングロサクソン系プロテスタント白人)と呼ばれる支配階級の白人が占めていた。ところがユダヤ系やカトリックの生徒が高成績で入ってくる様になり、それらに乗っ取られないようにホリスティック入試を考え出したという経緯がある。


・ホリスティック入試で実際に一番威力があるのがスポーツ選手、次がマイノリティ人種、レガシーと早期決断応募者、ファーストジェネレーションの学生の順で、貧困層出身というのは殆ど恩恵がない。
ちなみに、アジア系は勉強が出来るのでマイノリティではなく白人扱いになっている。


・”アメリカの大学は入学は簡単だが、卒業が難しい”と言われるが、それは勉強が難しいからという事ではない。エリート校にマイノリティ枠で入って学力が劣る生徒たちも、しっかり奨学金をもらって生活して白人とかわらない90%以上の卒業率になっている。一方、一般大学の学生は、途中で経済的に続けられなくなり卒業できないというのが実態。


・アメリカの大学では、ABCDFの成績評価で、C以上が合格だが。殆どはAしかとらない。これは「成績のインフレ」。Bとか付けると生徒から先生が問い詰められる。そいうクレームが先生の大学からの評価にも影響するという事で、インフレさせて丸く収める風潮とのこと。4年生大学で、42%の成績がAになる。
学生は「お客様」扱いになってきている。


ポイント抽出は以上


これらの中で、特に驚いたのは「入学は簡単だが卒業は難しい」というのが経済的理由だったという話。私は、てっきり厳しい勉学を習得しないと卒業できないという制度なのかなと誤解していました。 ナーンダという印象。


アメリカの大学は、商売=ビジネス の色が濃いのだとこの本で良く分かりました。


現在の日本の大学はどうなのか? 公費支給を削って削って、期限付き雇用がどんどん増えてきている日本の大学も、アメリカ化まっしぐらに進んでいるのではという気がしました。

2019年6月22日土曜日

【進化途中?】最近の路線バス

最近の路線バスに乗ると、とても使いづらいと感じます。
乗りたくないな、、と。


いわゆるノンステップバスというやつですね。

シニアが使い易い様に、低床にして前半部はシニア向けの座席や車いすスペースを作っています。その反面、後半分は段々と高くなる床で狭い2人掛け用ベンチシートが並んでいる。


考え方は、理解はできます。

昼間の乗客の大半はシニア層なので、シニアが乗りやすい構造にしているというのですね。しかし、現役世代はそうとう出入りや居住性の悪い座席レイアウトを強いられる事になっています。

でも、シニアの人数は益々増えて、後半分にもシニアが座る様になりつつあります。
そいう人を見ると、ただでさえ危ない足元が本当に危ない。


全世代が気持ちよく乗れる路線バスに早く移行して欲しいなと思います。


技術としては、電気自動車(EV)化して、インホイールモータ等を採用すれば全面低床で、電車の様に長いベンチシートの構造のバスが今でも十分作れるはず。
そうなれば、全てがシニア向けかつ現役向けの席として使えます。


経済性で、、とかバス会社側の理屈はあるのだと思いますが。

高齢者免許返納のムーブメントもありますし、良いバスが走ればお客数も必ず増えると思います。

まだまだ進化途中という事ですね。

【本】すべては救済のために デニ・ムクウェゲ あすなろ書房

2018年ノーベル平和賞に「戦争や武力紛争の武器としての性暴力の撲滅を目指す取り組み」が評価されて受賞されたコンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)の医師の書いた自叙伝です。


300ページほどの本ですので、普通ならば1日で読めてしまう厚さの本ですが、その内容の重さ、深刻さに1回で2章読むのがやっと。2週間近くかかってやっと読み終えました。

バイオレンス小説ではなく、これが今、現実にコンゴで起こっている事実という事が心に重くのしかかって来ます。


彼のノーベル賞の受賞のニュースは日本でもずいぶん流れていましたので、存在を知っている人も多いのではないかと思います。

ただ、ニュースで聞くのは、レイプ、性暴力の撲滅を目指し という言葉。

日本で普通使われる 「レイプ」は、性欲による性行為という内容が殆どですが、デニさんが直面している性暴力は、そういう次元の話と、内容ではではない事が分かりました。

同じ単語で表しては、伝わらないのではと感じます。


コンゴでの部族間の民兵による(政府軍も?)部族抗争に於いて、その地域の社会を内部から破壊して制圧するための「金のかからない武器、作戦」としてのレイプ。

コンゴは非常に天然資源に恵まれた、本来ならばとても裕福にもなりうる国なのですが、400もの部族があり、部族主義を扇動し、資源を元に暴力で奪い合う行為、政治が満ち溢れている。欲と恐怖、利己主義とナショナリズムの坩堝になっている様です。

具体的な悲惨な内容や、コンゴ国民がどういう状況を強いられているのかが、つい最近から現時点まで続く現実を赤裸々に描かれています。


具体的な内容は、ここに引用する事もためらってしまう内容です。
その代わりに、デニさんの考えのまとめにあたる部分の一部引用をさせてもらいます。


ここから、

コンゴが必要としているのは公益を重視する起業家だ。そうした起業家の存在こそ、国家が立ち直り、国民が誇りを抱かせる国への生まれ変わるための条件の一つだろう。その夢の実現を望む国民は大勢いる。

 と同時に、ほかの分野でも変化が必要だ。たとえば私は、伝統のいくつかを部族主義に類似するものとしてとらえている。性暴力被害者のために働いていると、つねに直面するのが男性優位主義だ。この地では男性が女性を支配する文化が幅を利かせている。女性を”押し潰し”、二次的役割に押し込める文化だ。キリスト教徒が多いコンゴの国民は、強姦は女性を穢し、さまざまな問題を引き起こすと考えている。そのため、そうした”穢れた”女性を家族や教会のコミュニティから排除しがちだ.会衆の面前で赦しを乞うよう女性に強いることもある。

 私は事あるごとに、そのような時代錯誤の慣行をやめるよう説いている。この地域で猛威を振るっているレイプは性欲とはまったく関係がなく、強姦を働く者たちの動機の大半はそうした欲望とは別物だと強調しながら。

 「それは快楽を得ようとする性的な行為ではなく、獣じみた残虐な行為です。レイプをおこなう人々は、そうすることで権力や鉱物資源を手にできると考えている。あるいは、腹いせにレイプをする人もいる。なぜなら軍が兵士にきちんと給与を払わず、彼らを貧困の中に打ち捨てているからです」

 そうしたメッセージを強かいの指導者たちが理解すれば、たくさんの物事が変わるだろう。そして実際、私は変化を感じている。教会の多くが、とにかく以前よりは女性たちの境遇を暗示はじめた気がするのだ。

引用終わり


コンゴでは2019年に新大統領が誕生したが、今までのこの現実から目を背けてきたカビラ前大統領の勢力が沢山残っている。

良い方向に向かうかは全く分からない状況。国際社会からの一層の支援が必要だろう。紛争鉱物を使わないという取り組みも先進国企業に広がりつつあるが、もっと踏み込んだ事が必要なのだろう。


インドでも女性の虐げられる犯罪の話を沢山聞きます、世界ではこういう悲惨な事が沢山残っているようです。


まずは、この現実は皆がちゃんと知る事が重要だと思います。
内容の重い本ですが、沢山の人に読んでもらいたいと思います。

2019年6月9日日曜日

【心と身体】スマホとガラケー

今まで使ってきたiPhoneを止めて、ガラケーでの生活に戻しました。
(家ではタブレット等でネットにはつなげられます。)

最初の数日は、「何時でも検索できる」、「何時でもニュースを見られる」、「地図サービスが使える」などが無いのでちょっと不便かなという気がしましたが、すぐに慣れてしまいました。

ガラケーは1週間 電池が持つし、軽いから楽だなあと再認識。
料金も安い!!

電車やバスの中でも、久しぶりに文庫本等を読み始めました。

”時間のゆとり” をかなり感じられます。


それで3か月過ごしました。


たまに外出中に検索をしたい時はガラケーのiモードを使いましたが、ガラケーで使えるサイトの数がかなり減っている事が分かりました。世の中はすっかりスマホ前提に動いている事が感じられます。


災害時の連絡のつきやすさなどは、ガラケーの人数がかなり減ってきているので回線容量的にはより安心になって来ているのではと思います。


でも、来年から始まる5G世代が普及していくと、機械間の通信が一気に増えて行き、政府もキャッシュレスを無理やり進めるなど、デジタルでないとコントロールしにくく損をする社会がいよいよ始まりそうな予感もします。


そこで、やはりガラケーからスマホに乗り換える事にしました。

格安スマホも含めて色々調べて契約しましたが、それでもガラケーよりは料金高い。


スマホを再度持ち始めて2週間経ちました。

でも、以前と違って電車やバスでの文庫本は続いています。
スマホを持っても、すぐにいじるという事は無くなりました。

断食と同じ様に、悪化していた体質(気持ちの生活習慣)が回復した様に感じます。
新しい気づきです。


時々、禁スマホ、禁ネットという期間を意識的に作るのが良いのかもしれません。

2019年6月2日日曜日

【本 心と身体】心の潜在力 プラシーボ効果 広瀬弘忠 朝日選書

前回、システマティック・レビューの記事を書きました。

その中で、二重盲検査でないと客観的な分析が出来ないという話がありました。
処方する先生の微妙な表情が、患者へ影響を与えてしまうから、、というのがその理由です。

純粋に薬効を評価するという意味では、二重盲検査手法は良いと思います。

ただし、治療するという観点では心の作用と合わせられれば、さらなる効果が期待できるのではと思いました。


心の効果として有名なのは、プラシーボ効果ですね。
ただの砂糖でも、薬と信じ込んで飲むと薬効に近いものが発現するという事。
昔から知られていますよね。

物質的なものを飲んだりするだけでなく、ダミーの手術や、担当医の説明の仕方一つで治療結果が変わって来るという例は色々と報告されています。

この本は、そういうプラシーボ効果について、具体事例やどういう状況だとプラシーボが起こりやすいのか、活かせるのか、逆にマイナス効果を生む事もあるなどを説明してくれます。


私自身、何を飲んでも直後から効いた感じに好転してしまう事が多くプラシーボ効果が出やすいと感じています。なので、高価な薬など買わずとも、小麦粉+これで大丈夫という思い込み で大抵の事は治ってしまえるのではと思います。

何か真剣に信じて思い込める物事を一つ作っておけば、そこで心の力を引き出せる様にできるという事かもしれません。

宗教なども、その一つになりえるのでしょう。


高度医療や高額な新薬開発などよりも、プラシーボ効果を上手く活用する医術の普及などの方が、QOL向上や医療費低減に大きく貢献しそうな気がします。

製薬会社や医師会(それをバックに持つ政府)などは利害関係があるので、決してそちらに向かおうとはしないのだと思いますが、プラシーボ研究がもっと発展して草の根的でも広がっていけば良いと考えます。

【本】あざむかれる知性 村上宣寛 ちくま新書

サブタイトル ー本や論文はどこまで正しいかー

著者は認知心理学等を研究した大学名誉教授の方。

いきなり骨子となる部分を抜き書きさせていただきます。

「科学が進歩したので、なんでも正しく理解できる様になったかと言えば、そうでもない。職業的科学者が爆発的に増加したので、科学論文も爆発的に増加した。研究成果を宣伝しないと研究費が取れなくなる。それで、マスコミに売り込むためには手段を選ばない研究者もいる。まじめな研究者の科学論文でさえ、さまざまなバイアスから自由ではない。

研究論文は星の数ほどある。実証科学では、ある特定の仮設を支持する研究が100%ということはあり得ない。支持する研究はあるが、支持しない研究もある。ウエブや書物の科学記事の大部分は、自分の意見に添う研究のみを取り上げ、他を無視するという方法で書かれている。つまりは、つまみ食い的評論で、自分の意見を科学的に装っているだけである。無料で読める記事はそれなりの内容である。結局、記事の大部分は疑似科学にすぎない。

幸い、良心的な研究者たちが数多くの研究論文を評価し、まとめ上げたレビュー論文がある。その中でもっとも信ぴょう性が高いのは、ランダム化比較試験をメタ分析という統計技法でまとめたレビュー論文(システマティック・レビュー)である。特定の仮説がどの程度支持できるかに関して多くの論文を効果量という数字でまとめ上げている。それで、つまみ食い的でない、比較的公正な結論が得られる。どんなトピックでも、メタ分析の論文をいくつか読めば、科学の最先端の結論が簡単に手に入る。逆に言えば、メタ分析の論文を読まない限り、つまみ食い的評論に左右され、結論を誤ってしまう。

最近は、多くの重要なメタ分析の論文はオープンアクセスになっていて、PubMed経由で無料で読める。したがって、専門外の分野でも、検索キーワードを入れ、システマティック・レビューというフィルターを付けると、多くの論文が出てくる。そこで、関連する論文をいくつか読めば、ただちに最先端の知識に辿り着く。せっかく良い時代になったのに、読む人は少ないのだろうか。少なくともベストセラーの著者や大衆的なウエブ記事を書く人は読んでいないようだ。」


つまり、実験のやり方やサンプルに偏りや意図的改ざんのある論文も多い。人間がからむ事項の場合は、薬の世界で良くやられる2重盲検査のようなやり方をしないと正しい科学的結果は得られないと考えられます。

これらの事実を前提として、各論文の信ぴょう性を評価しながら網羅的に全体をレビューするシステマティック・レビュー(研究を網羅的に調査し,同質の研究をまとめ,バイアスを評価しながら分析・統合を行う。日本語では系統的総覧?)でないと科学的な証拠性の高い結論は分からないという事を言われています。

その後は、色々なシステマティック・レビュー結果を述べてくれています。


・BMIと死亡率
 アメリカでは20・30才代でBMI=20前後、40才代で22、50才代で24、70才代で26ぐらいが最も死亡率が低い。日本を含むアジアでは、3位減らした数値で考えた方が良い。つまり、40代台で19ぐらい、50代で21、70才代で23ぐらい。

・塩と血圧
 塩分摂取を減らすと血圧も下がる。

・コーヒー摂取量と死亡率は負相関
 1日3杯飲む人は死亡率が21%低い。

・睡眠と死亡率
 最も低いのは7時間睡眠。 その上でも下でも死亡率は増える。

・プロの投資家と結果
 プロ投資家の結果は市場平均と同じ

それ以外に、ダイエットについて、就職面接について、優秀なビジネスマンについてなどなど沢山の項目が出ています。


この本を読んで、なるほどシステマティック・レビューというのは客観性が上がりそうだと思いました。
商業的なダマシを排除して、大まかな傾向はこれで分かりますね。


ただ、こと人間に関する事はこのレビュー結果も鵜呑みにはできないなとも感じました。
色々なパラメータの交互作用がきっとあると思いますので。

生活スタイルや活動の癖、勿論遺伝なども、きっと効いてくるでしょう。
こと健康に関する事は、自分で試して自分で見つけていくという事が必要そうです。


例えばこの本に抗酸化物質のコーホート分析結果で、ビタミンCサプリ多量摂取が高齢で白内障に悪影響を出たので飲むのを筆者は止めたと書かれています。
でも、元情報をあたって見ると加齢黄斑には逆に好影響という報告もあり、要はそこそこの量にしておけば良いのではという事になる気が私はします。


システマティック・レビューを紹介した本ではありますが、この本にも著者のバイアスが当然かかっているのですからね。