今年 NHKで放映された「人体 ミクロの大冒険」の取材班が出した本。
誕生から死までの人体の変化を、細胞の観点で最新情報を盛り込んで作られた
ドキュメンタリーです。
TV放送は見損ないましたが、ネット動画で見ました。
良く出来た番組ですが、放送では、割愛されている内容が、本では余さずに書かれています。
人体が細胞で構成されている事は現代人の「常識」ですが、細胞は部品ではなく、各々が役割をも
った生命体。という感じを得ました。
今まであまり聞いた事がなかった事実も記されており、驚きが一杯です。
例えば、
ドミニカ共和国の山間部のラス・サリーナス村では、女の子が思春期に完全な男性に変化する事
が何例も起こっていて、驚くべき事では無いとのこと。
男の子が女性に変化する事も頻度は少ないがある。原因の一つは性ホルモンの1種テストステロ
ンをジヒドロテストロンに返還する事で性別を決定する5αレダクターゼという酵素の不足によるも
ので、そういう遺伝子変異を持った人がその村には多いのだとのこと。
人体は基本は女性で、ホルモンで性差は作られるというしくみなので、女の子から男の子への変
化が多いとのこと。
思春期の身体の変化は、ホルモンによる体内各所の細胞の一斉の子づくりできる身体への変身
なので、その時期にこの現象が現れるらしい。
老い
老化はの原因の一つは、免疫細胞の老化によって起こされる。
子供の時は胸腺によって免疫T細胞が教育を受けるが、大人になると胸腺がなくなり、20代以降は
ゆるやかに免疫細胞の老化が始まる。70代では活発に動ける免疫細胞は殆どいなくなる。
老いた細胞は衰えるだけでなく、敵を見分ける力を失い、暴走してしまっている。この暴走が老化
の原因だったのだ。(暴走老人ってどこかで聞いたような、、)
一方、イタリア・サルデーニャ島では100歳を超える元気な人が多く、そこでの研究によってそこの
長寿者は免疫細胞が老化していないという研究結果があるとのこと。
TVではT細胞が出すサイトカインによって、血管のつまりや血管からの糖吸収が阻害されて糖尿
病になるという説明をしていました。そして、今後の対処としてiPS細胞による人工T細胞を作って元
に戻せないか、という話の展開をしていました。
本では、サルデーニャ島での長寿者の免疫細胞が元気な理由として、腸内に住み着く腸内細菌の
組成が非常に特徴的だったとのこと。
制御性T細胞は胸腺ではなく腸が生み出す特別なT細胞の一つだが、誤った外的情報や過剰な攻
撃指令を抑える役割を担っている。
腸内細菌と免疫細胞の関係の研究は、日本が一番進んでいて、そこでは「クロストリジウム目の腸
内細菌が多い腸は、免疫の暴走による炎症を抑え、老化を遅らせているというメカニズムが働いて
いるのでは。」との事。
島の人々は特産のペコリーノチーズを沢山食べ、ワインも沢山飲む。このように発酵食品が腸内
にいい影響を与えているのではないかと考えられている。
癌もそれを攻撃するT細胞が元気だと、増殖を止められる可能性があるので、iPS細胞によって特
別なT細胞を作って、免疫系を制御する事を京都大で研究しているとのこと。
そうすれば、難治性の感染症や、自己免疫病、アレルギーなどにも効果を生む可能性がある。
TV放送の番組も見ごたえがありますが、この本を併せて読むことで、より一層 人体と細胞の関係
が感じられると思います。
私は、この本を読んで ホルモン について、もっと知りたくなりました。