2022年12月17日土曜日

【趣味】65歳からの山歩き

 コロナ禍で、あまり出歩かない生活が2年続きました。

そのせいで、すっかり運動不足を感じました。


そこで、人も少ない(と思っていた)山歩きを今年から始めてみました。



山は小学生の時に、父に奥多摩に何回か連れられて行っていたようです。

本人はあまり覚えていないのですが、アルバムに写真があります。


でも、その後の50年以上、全く山とは無縁の生活。



山歩きの知識も経験もゼロでしたが、とにかく始めてみました。


3月から12月頭までやってみて、とっても好きになりました。


非日常、自然の中を歩くのは、気持ち良いし、リフレッシュできます。


身体が良い方向に変化していくのも分かるし、全く知らなかった事を沢山知ることもできました。


65歳から始めるのでも、十分楽しめます。

来春からの山歩き再始動が楽しみです。


自分にとって新発見ばかりでしたので、これから少しづつ書いていきたいと思います。

2022年11月12日土曜日

【本】つくられる偽りの記憶(あなたの思い出は本物か?) 越智啓太 化学同人

 事件での目撃証言や被害者証言は正しいのか?

もし、自分の記憶が書き換えられていたら??

映画のような事は本当に起こりえるのか?


元科捜研で現在大学心理学科教授の著者が、「記憶」の不確かさを研究データに基づき、科学的に説明してくれている本です。


表題に興味を惹かれて、読んでみたら 少し私の世界が変わりました。


・目撃証言について

目撃証言は必ずしも正確ではない。

事件後に見たものや、例えば刑事からの質問のされ方で記憶は容易に変容してしまうらしい。

また、頭の中で自分で何度も想像(イメージ)していると、元の記憶が上書きされるなど変容する。

目撃者の自信(確信度)は正確性を保証しない。



・実際には体験していない出来事の記憶(フォールスメモリー)

実際には存在しなかった出来事の記憶を人に植え付ける事が可能とのこと。

それは、その記憶がもっともらしい出来事とその人に思わせられる内容で、かつ、さまざまな記憶の断片をその人が再構成し、視覚的イメージとして反復想起させる。

植え付けられやすい人(暗示にかかりやすい人)がいる。


この種の実験の参加者は、記憶を植え付けられたあと、実はそれが架空のものだったと種明かしされると、大体は非常に困惑してしまうとのこと。



・生まれた瞬間という記憶は本物か?

人間はまだエピソード記憶ができないので、誰でもほとんど3歳よりも幼い記憶は持てない。

催眠による年齢退行と言う話があるが、これは実際に記憶を想起しているのではなく、その様に催眠をかけられている人が振る舞う様になっただけ。

出生時の記憶は、フォールスメモリー現象の可能性が大きい。



・前世の記憶は本物か?

催眠によって前世の記憶を話だし、それが事実と合致した事例はいくつもある。

ただし、詳細に調べていくと、実は以前読んだ本などの内容を語っているだけだということが分かっている。

実験室でも、フォールスメモリーを形成しやすい人が、前世の記憶を想起しやすい事が分かっている。」



・エイリアンに誘拐された記憶

米国などでは、それを訴える人がかなり出た。

「未知との遭遇」など、エイリアン物の映画やマスコミがあると訴える人が急増する。

人々がエイリアン誘拐を語る理由のひとつは、自分が感じているさまざまな心理的な問題をエイリアンのせいにできるから。



・昔は良かったは本当か?

私たちの持つ「過去の私」の記憶は今の私の影響を受けている。

高齢者は自分の人生をよきものと考えるために、過去の出来事を良いとゆがめて思い出す。


のでは、


そして、記憶は過去の自分のアルバム(貯蔵庫)というよりも、現在の自分を支えたり、方向づけるために存在しているのではないか。

そのために、記憶を書き換えるということは、自然で正常な機能のひとつかもしれないとのこと。



現代は、容易に動画や写真をデジタルで残せる様になったので、特にこの10年ぐらいはそういう記録が身近に沢山あります。

少し前の記憶を思い出しながら、動画を見直してみると、一部しか覚えていなかったとか、結論が微妙に違う という事が感じる時がありました。


この本を読んで合点がいくと同時に、陰謀論や洗脳などが容易に起こっていく事があるしくみも分かった気がします。


人は、思い出したくない体験も背負って人生を歩かなければならないので、こういう記憶の柔軟性は著者が言われるように、重要な生命現象として備わっている機能なのかもしれませんね。



2022年9月23日金曜日

【本】サピエンスの未来  立花隆 講談社現代新書

 立花氏の本を読むといつも、私の持っている個別知識の点と点の間の埋めてくれる情報を教えてくれると感じて面白いです。


今回の本は1996年に東大で行った講義録という事ですが、立花氏が亡くなる前月に発刊されています。最後の新刊本。


内容はかなり盛沢山だが、一貫しているのは、全世界は進化(変化)の途中であるという視点が重要という事。


物質も進化中、生物も進化中、人類も進化中 という意識で過去・現在・未来を見る。





立花氏が何かの結論を出そうとしているのではなく、その視点につらなる事柄、人物を紹介していく。



特に テイヤール・ド・シャルダンという、神父でありながら古生物学者で科学哲学者の人を紐解く中で、科学と宗教との関係や、彼の考える人類の今後の進化について紹介してくれる。


彼の考え方が、ガイアという思想や、アシモフの小説、EEスミスの小説などにも影響を与えているのかなと感じました。



現在の日本の政治などを見ていると、良き時代を取り戻せ 的な発想でいる人、 過去の歴史に学んで繰り返さないように進化させていきたいという発想でいる人、という点は、同時代に生きていたネアンデルタール人(力で戦う)とクロマニオン人(知恵で戦う)を見ているように感じる。


人類も進化をしていかないといけない。旧人は消え去る事は歴史が教えてくれる。



シャルダン氏は人類の次の段階は、個々人皆が繋がって有機的に、人間中心から人類中心へ変わるだろうと言っている。

科学も精神も手を取り合って進化していくとのこと。


この100年間の通信や放送技術の進化や、の今のネットを使ったSNSなど、科学技術は名違いなくその方向に動いている。


人間も徐々にそういう行動にうつりつつあるように感じる。



地球温暖化対策などは、全地球視点・全人類で未来を考えて行動するという良いキッカケになりつつあるようにも思える。



この本を読んで、地球温暖化対策の取り組み方次第では、個別のナショナリズム政治ではなく、全地球政府というような形に進化させていく事ができるかもしれないという希望を感じられました。






【対立を解いた者】 ネルソン・マンデラ

 マンデラ氏(2013年死去)は現代の偉人として知られています。

南アフリカのひどい人種差別(アパルトヘイト)を解いた人だと。


どういう対立をどうやって解く事ができたのか、改めて関連本を読んでみました。


南アフリカ共和国の大きな成り立ちは、


・アフリカの現地人が暮らしていたところに、17世紀 東インド会社が喜望峰は航海上の要所として中継基地を作り、オランダ人の移民が始まった。

・オランダ人は植民地を作り、現地人を侵略。奴隷制を行っていった。

・18世紀末に金が埋蔵されている事が知られ、英国が出てきてケープタウンを占領した。以降 植民オランダ人と何度か戦争し、英国が支配するようになり、植民オランダ人は2級国民という扱いをされる事になる。(現地人はさらに3級)

・徐々に英国は経済的利権等は確保しながら、その他の政治や運営面は植民オランダ人

 にが行うように変化した。

・植民オランダ人は、20世紀中頃アパルトヘイト政策(白人と非白人との人種隔離政策)を実施。

・世界は脱植民地化のトレンドの中、アパルトヘイトのひどさを非難し、経済制裁を行ったが日本は取引を続けたため、日本人は”名誉白人”として処遇された。。。

・英国からもアパルトヘイト政策を非難されたため、英連邦を離脱。

・1990年代、デ・クラーク大統領(植民オランダ人政府)とマンデラ氏が組みアパルトヘイト政策撤廃。

・1993年 二人はノーベル平和賞を受賞。

・1994年 マンデラ氏が大統領に就任。


という事。


マンデラ氏自身は地方の首長の子として生まれ(現地人)、英国式教育を受けて育った。

原住民による現地人のための初めての弁護士事務所を開き、アパルトヘイトと闘う。

ANCという組織に属し、抵抗運動。 30年弱に及ぶ投獄をされる。


ANCという組織は、いわゆる民族主義の主張(現地人の国を作ろう等の)ではなく、現地人・植民アフリカ人、英国人皆で和を作る国を作ることを目指していたとのこと。


マンデラ氏は長い投獄中にオランダ語を勉強する事を自らに課して、収容所の役人達とも交渉や話合いができる様になっていく。


また、植民オランダ人たちも、すでにオランダに帰るという選択肢はなく、彼らの故郷もすでにアフリカである事を知る。(だから、追い出される恐怖を払拭するために、アパルトヘイト政策をとったりしている)


次第に、マンデラ氏は 現地人からの信頼に加えて、植民オランダ人からも、あいつとならば話ができるという信頼を得ていく。


そいう状況を作り出し、また国民内の気運を導き、デクラクーク氏とともにアパルトヘイトの終結に持ち込む事ができた。との事。



・対立する双方の心情を理解し、信頼を得る。

・また、双方が両立できる世界を目指したこと。


この2点が 対立を解いた 鍵だった様です。



なお、マンデラ氏は大統領になっても、権力に固執する事なく、1期で退任した。

(大統領時代では、白人と現地人の融和を行っていくキッカケにと、サッカーのワールドカップを南アフリカで開催したりしました。選手は白人でしたが、全国で応援するという事で)


2022年8月15日月曜日

【本】日本会議の正体 青木理 平凡社新書

 自民党政権を裏で牛耳っているのではと感じていた「日本会議」とは何者なのかを知りたいと思い読みました。


やはり、戦前の天皇中心の社会に戻すべしという旗印でうごめいている偏った思想と思える人たちの集団の様子。

それらの内訳は、明治天皇を祭っている明治神宮をスポンサーとして日本中の神社を束ねている神社本庁や新興宗教と、

生長の家の創始者である谷口雅春氏の教えを信奉する人達とのこと。(キーマンは椛島有三という人か)


当時の生長の家は、信者2世の若者を教育する機関でもあったとのこと。


彼らの思想のルーツや、その運動形態の変遷を政治家を含む多様な人へのインタビューを元に描きだしてくれています。

本書は、インタビュー部分では話者の発言を出来るだけ忠実に記し、著者(青木氏)の意見は別に分けて書かれている

とのことで、色眼鏡の無い実態の雰囲気を感じられる様に思います。


彼らは、国民主権や民主主義は日本には合わない。日本は尊王皇国の戦前のやり方が良いという考えの様子。

また、神社本庁が大きく入って言える事もあり、政教分離は廃止すべしという考え。(これも戦前と同じ)


明確には書かれえていないけれど、きっとこれらの状態に退歩させると、彼らにとって非常に大きなメリットが

あるのではないかなと思いました。


日本会議の活動手法の部分を書き写すと、何かテーマを決めると 中央で「xx国民運動」という組織を立ち上げ、神社本庁などの協力

を得て(人集めなどもできるので)波状的に集会を開き、これと同時並行する形で全国に”キャラバン隊”を派遣、地方議会での決議や

大規模な署名集めなどを行いつつ、意を通じた国会議員らが議員連盟を発足させて政府や野党を突き上げていく、、。ということ。


暗闇で操る陰謀論というよりも、民主主義的なしくみを逆手に使って草の根的な(一部の)実績を持って、これが国民の気持ちだと突

き上げていくという事らしい。



こういう国粋主義の思想に共感する議員たちが(たとえ全面共感では無いにしても)多い事。

さらに、それらを、間違っているだろうと規制する動きがなくなっている組織や社会の現状に対してマズイと感じます。



安倍政権下で起こった各種の、憲法や民主主義を踏みにじる変化、活動の意味や訳、しくみがこの本で少し理解できた気がします。


憲法改正が必要と声高に言っている第1目標が、実は9条云々以前に20条(政教分離)というのが実態なのかもしれません。


憲法改変投票が起こる前に、沢山の人に読んでもらいたい本だと思いました。


一方で、これだけ信者を集めたという谷口雅春氏とはどいう人だったのか、もう少し知ってみたいとも思いました。

2022年8月11日木曜日

【本】実況 料理生物学 小倉明彦 文春文庫

 大阪大学の教授が、新1年生を対象に開く料理生物学講座の講義録。

毎回、何か作り・食べながらそれに関連する生物、化学などの現象を教える。


大学の講座と言っても、さすが大阪で、漫才を見ているような面白い本でした。


食や生物、化学にまつわるバラエティに富んだ話が展開して、科学エンターテインメントという感じ。


そうだったんだ!! と思うような事も満載です。


いくつか面白いと思った部分をつまみ食いすると、


・カレー

18世紀英国はインド植民地経営をしていた。その時、初代インド総督に選ばれた男が香辛料ミックスを王様への土産として持って行った。これが王妃に気に入られ、王室御用達としてカリー・パウダーという名で売り出された。

明治に日本は陸軍はフランス式、海軍は英国式を取り入れた。そこから、海軍では毎週金曜日夕食はカレーになった。


海軍基地周辺からカレーは庶民にも広がり始め、国内の漢方薬屋が調合国産化に取り組む。

東京の日賀志屋(現S&B食品)と大阪の浦上商店(現ハウス食品)が成功。


1492年コロンブスはコショーを求めてインドに出発した。ただし、逆回りを狙ったのでアメリカにたどり着いた。

しかたがないので、唐辛子を赤コショーだといってスペイン女王に持って帰った。だからコショーは英語でレッドペッパーと言う。

また、コロンブスはトマト、ジャガイモ、タバコなども持ち帰った。それによりドイツ人はジャガイモ食べられるようになり、イタリア人はトマトソースのパスタを食べられるようになった。

唐辛子は日本には宣教師が持ち込んだらしい、その後秀吉の朝鮮出兵で朝鮮半島や中国に伝わったのではないか。キムチが辛くなった。



ご飯。

デンプンはブドウ糖が長くつながったもの。ブドウ糖は体内で分解されてエネルギーになる。

ブドウ糖を分解する酵素一つにピルビン酸デヒドロゲナーゼがある。これはビタミンB1がないと働かない。

エネルギーを最も使うのは神経。 神経が働かなくなるのが脚気。診断で膝下をたたくのは、反射の神経が働いているかを見るため。


・ラーメン


小麦粉。強力粉と薄力粉の違いは小麦の種類の違い。タンパク質(グルテン)の割合。強力粉は12~15%,薄力粉は8%ぐらい。


うどん:小麦粉と半量の10%塩水を合わせてこね+踏み、その後1時間寝かせる。

スパゲティ:小麦粉に卵、オリーブ油、塩を入れてこねる。1時間寝かせる。

ラーメン:小麦粉に灌水(強いアルカリ溶液)、塩を入れこね踏み、1時間寝かせる。


うどんは、塩水を入れる事でタンパク質(アミノ酸の連鎖)の結合がふにゃふにゃになってしまう。

さらに、こねる事で生地に酸素が入り、寝かせている間に小麦粉中のたんぱく質(アミノ酸)と反応してタンパク質の架橋を進める。

その時に反応で水も生まれる。(だから粉から水が出てくるという事になる)


ラーメンでは灌水のアルカリ性で塩水と同様にタンパク質をふにゃふにゃにしてしまう。

パーマもアルカリで髪の毛のたんぱく質(ケラチン)をふにゃふにゃにして、好きな髪形にできるようにする。


スパゲッティは、卵のたんぱく質で強制的に麺を成形してしまう。



・ホットドッグ

ソーセージ:フランクフルト(豚の腸)、ウインナー(羊の腸 細い)、ボロニア(牛の腸 太い) 工場生産はコラーゲン製の人工。


燻製:保存のための殺菌。不完全燃焼した煙にはホルムアルデヒドなどが入っている。これらの毒で殺菌する。



・お茶

紅茶はガンガンに沸かした熱湯で出す。:抗酸化作用のあるタンニンを抽出するためと硬水対策。苦いけど。

緑茶は低温で出す。:旨味アミノ酸のテニアンを抽出するため。日本は軟水だし。

コ―ヒーは古くからアラビアで飲まれていた。英国も紅茶の前はコ―ヒ―を飲んでいた。


ダーウィンの母はウエッジウッドの娘。妻は孫。ウエッジウッド家がスポンサーだった。


カフェインは覚せい剤と同様にドーパミンの作用を強めるので中毒になる。チョコにも同類の物質が入っている。


覚醒剤は太平洋戦争中にパイロット等の覚醒のために大量に作った(ヒロポン:メタンフェタミン)。

終戦で大量ストックしていたヒロポンは闇に流れた。ヤクザの抗争は軍基地の傍が多かった。


・ビール

発芽させた大麦(麦芽)を粉砕して水、酵母を入れるとアルコール発酵する。(小麦や米でも同様)

そうすると炭酸ガスが出る。ビール会社は炭酸ガスを砂糖水に通して、キリンレモン、三ツ矢サイダー、リボンシトロンなどとして売っている。


パンを作るのも、小麦や大麦の粉に水、砂糖、酵母(イースト)を入れて発酵させる。

砂糖は酵母の餌としていれている。パンの気泡は炭酸ガスによる。アルコールは焼く時に蒸発して逃げる。焼きたてパンのいい香りはほとんどアルコール。


・お酒に強い人、弱い人


アセトアルデヒドは肝臓のアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)で酢酸へ変えられる。ただし、この酵素には活性のあるものと無いものの2種類がある。

両親とも活性ありだと子どもも活性あり。片親だけ活性ありだと分解活性は半分に、両親とも活性無しだと子どもも無しになる。

日本人の約40%は無しか半分。無しの人は、すぐ真っ赤になって眠くなるか気分が悪くなる。半分の人は、飲み始めてしばらくまでは代謝できるので、

つい飲んでしまう。しかし、二日酔いになりやすく、かつ肝硬変になりやすい。



等々。


デザートにまつわる話や、焼き肉についてなど、、まだまだ話題たくさんです。


息抜きと教養のためにお薦めの一冊です。




2022年8月1日月曜日

【本】つむじまがりの神経科学講義 小倉明彦 晶文社

 この本を読むきっかけとなったのは、同志社大学の「ようこそ心理学部へ」を読んだから。


「ようこそ心理学部へ」という本も、大学が心理学部の学生に行う何種類かの講義を本の

上で再現したもので面白かった。


その中で、脳内の信号伝達でシナプスやニューロンという説明がありました。

今までも色々な本で同様の説明があり、伝達物質を使って信号を伝えているということは

分かっている気がしていました。


でも、ふと、この信号はどういう変調方式なのだろうか?と疑問が起こりました。

強度なのか、周波数なのか、はたまたシナプスが動くのか、成分かも、、、と色々な

可能性が考えられますが、ネットなどちょっと調べたただけは答えにたどり着けません

でした。


そこで、ちょっと専門的な本を読んでみようと思い、この本を手に取りました。



読んでみたら、とても面白いし、具体的な最前線も知ることができる科学エンター

テインメント本でした。


なんというか、大阪人の良いノリで書かれているなあと思いました。

教授と学生の闘いなど、爆笑しました。



まじめな先端研究の結果も紹介されていて、そうか!と思ったのは

記憶を定着させる方法。


動物の脳切片を使った実験結果ですが、短期記憶を長期記憶に変えるには、


前回から3時間以上24時間以内の間隔をあけて3回繰り返すことで、

シナプス結合が増えて定着する事が発見できた。とのこと。

RISE(Repetitive LPT-Induced Synaptic Enhancement)と名付けられた

現象です。


実験で、目に見える物理現象として分かった事なので、全国の学生は知っておくと

良いと思います。



もう一つ面白いのは、透明化技術。

最近、脳(に限らず臓器を)透明にする技術が注目を集めている。

組織・細胞の内外を屈折率が同じ物質に置き換えて、反射を起こす細胞膜は溶かして

しまう。


とはいえ、とても実現できないだろうと最近まで思われていた。ところが、本気でやって

みたら、案外簡単にできてしまった。今は脳や臓器といわず、動物を丸ごと(ほぼ)透明

にすることもできる。


ただし、生きた状態では無理です。



あとがきもショッキングでした。著者は10代の頃はカメラの様な映像記憶ができたとのこと。


教科書を開いてしばらくじっと見ていると、そのページが頭の中に映像として保存される。

試験の時は、頭の中でそのページを思い出し、そこに書いてある事を写せばよかった。

しかし、この記憶は思考問題になるとむしろ不利で、理解して覚えたわけではありません

から、試験中にもう一度教科書を読み直して考えるわけで、時間もかかりますし、ときには

試験の最中に初めて「へー、そうだったのか!」と知って感心する事もあったとのこと。


だんだん、物事(や彼女の事)を考えるようになるにつれ、その能力は失われたとのこと。


でも、実は同程度の映像記憶の持ち主は、世の中に結構たくさんいるとのことで、実は私も

そうでしたという人に何人も出会っているそう。



そうでした、この本を読むきっかけとなった信号の変調方式はFM変調とのこと。

ぱーと放出したり、ぱ、ぱ、ぱ、と放出したりする。(伝達物質はすぐに失効する)


なんで 神経伝達物質など使っているのかというと、単細胞生物の時の方法がそのまま踏襲

されているからなのでは、とのこと。

信号は多対多で行われるし、色々な物質使われている。

ポスト細胞(信号を受ける側)は色々な物質へのセンサーを持っているとのこと。


かなり学問的にも深いところまで書かれていますが、ついついエンターテインメント部分に

きが取られ、思わず先に先にと読んでしまいました。


もう一度、じっくり読み直したら、理解が深まりそうです。


脳に興味のある人に、お薦めの一冊です。


2022年6月5日日曜日

【本】秘闘 私の「コロナ戦争」全記録 岡田晴恵 新潮社

 この本は、図書館に予約したら数十人待ちで4か月待ってやっと読む事が出来ました。


新型コロナが発見された2019年年末から2021年年末までの記録。



私は、コロナのニュースショーでの岡田さんの出演とその話しをこの間

ずっと見てきました。

岡田さんの言われる内容は、感染症素人の私たちにも、当然そうだよな

と納得できる、理にかなった説明と思っていました。


一方で、政府や専門家会議・分科会の発する話があまりに変な事に国民

の多くは気が付いていたと思います。


これは、岡田さんの話を聞いて、比較して考えられたから。


揶揄する人もいた様ですが、私の周りでは岡田さんがこう言っているの

だからそれに沿った行動に変えようとした人を沢山知っています。



政府や尾身氏の説明や要請をんニュース等で聞いた時は、そうか、彼ら

の言っている事の反対の事をすれば良いのだな。と分かって、そういう

面では、非常に分かりやすかったとの言えます。



厚労省は伏魔殿なんだと薄々感じていましたが、この本を読んでやっぱり

そいういう構図だったのだとスムースに納得できました。



勿論、岡田さんの視点で書かれていますので、糾弾されている尾身氏、岡部氏

達専門家会議の人たちからの記録があるのならば、読んでみたいと思います。


自分に都合の悪いことは一切残していないかもしれませんが、、



岸田内閣になって、厚生労働大臣もコロナ担当やワクチン担当の大臣が

代わりましたが、全く彼らが何をしているのか伝わってきません。


顔もわかりません。

報道しないマスコミの責任もあるのかもしれませんが、彼ら自身も積極的に

表に出ようとしていないのだろうなという事は良く感じられます。



こんな事で今年の冬は本当に大丈夫なのか。

次に備えた事をどう進めているのか??



日本の政治家、医系技官を含む官僚に本当に失望します。


田村氏の水面下の働きは、そんな政治文化の中で少しの救いでした。



*岡田さんとは、10年程前 鳥インフル騒ぎの時に、一度お会いしてその

メカニズムや恐ろしさ、どういう対策が考えられるかを教えてもらった

事があります。

岡田さんが感染研を辞められて、すぐ位の時だったのだと思います。

そこで、サイトカインストーム という現象を初めて知る事ができたのを

覚えています。


当時も、非常に熱心に教えていただき、鳥インフルを防止するためならば

私の会社にも出張説明に行っても良いとまで言ってくれました。

本当にずっと、熱く感染症と戦ってこられている戦士だと思います。


2022年1月30日日曜日

【本】安倍晋三と菅直人 尾中香尚里 集英社新書

 東北大震災+原発惨事の時の菅直人首相と、新型コロナパンデミックでの安倍首相の行った行動の比較を分かりやすく書かれた本です。


災害発生時の深刻度は、原発惨事の方は短期X巨大マグネチュード、一方新型コロナの方は長期X大マグネチュードだと思いますが、国民の命をどう守るか、被災者をどう救済するか、国民にどう寄り添うか、一方、強制的な行動抑制など、危機時の責任者は決断し実行しなければならない場面になります。


そういう時に、二人の行動は現実にはどうだったのか。


行動の事実を、その時々の状況と共に比較する事ができます。


判断は、読者がすべきですが、二人には明らかに国民に対する向き合い方が違っていたことが良く分かりました。



コロナ禍になってから安倍政権、菅義偉政権の会見を沢山見てきましたが、うすうす感じていた事を明確に書いてくれており、おもわず頷いていました。


部分を写すと、

「記者会見における安倍政権の情報発信を振り返ると、①政権の「成果」を誇示する。②政権の「責任」ははぐらかす。③政権の「責任」が生じた場面では、「誤解」などの言葉を使い、国民全体を含む他者に責任を押し付けるーーという特徴がうかがえる。」


菅直人政権が最高だったと言うつもりは全くありませんが、客観的にみて、本当の日本国の危機だった原発惨事時に、安倍首相ではなく菅直人首相だったことは良かったと感じます。



当時、あれだけの本当の国難だったにもかかわらず、同じ民主党内からも政府の対応の足を引っ張る動きが出たこと。マスコミもそれに輪をかけて困難を克服していく事を第1にせず、憶測や観念的な批判の大合唱をした事。 私は、あまりに異常な政治とマスコミだと感じていました。


先日読んだ中村哲さんの本でも明快に書かれていましたが、この体質は、今も変わっていないのだろうなと悲しい気持ちです。


尚、この本では、明確な書き方はされてませが、どの国でも首相や大統領が病気で辞める時には、医師団からの説明発表があるのが当然です。安倍首相の2回目の退陣では、安倍氏が自身で体調が悪いと言っただけで、医師団からは一切ノーコメントだったと思います。


安倍氏が今も自民党の中で、権勢をふるっているらしいニュースを聞くと、「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉を思い出します。

【本】紙屋 ふじさき記念館 ほしおさなえ 角川文庫

 たまたま、ほしおさなえさんの活版印刷三日月堂を読んでから、ほしおワールドにはまっています。


活版印刷三日月堂は、昭和時代の懐かしさのある活版印刷を新しい感覚で広げていくお話。


菓子屋横丁月光荘は、古い家の声が聞こえる主人公が織りなす物語。


紙屋 ふじさき記念館は、和紙の魅力を現代に生かしていく話。


どれも、ゆったりとした時間が流れ、昭和の記憶とつながる懐かしさのある話ばかりです。


悪人は出てきません。


温故知新というのでしょうか。 アナログの良さの再発見というのでしょうか。


世知辛く、デジタルで速さを求められる現代の中で、これらの本は 安らぎの時間を取り戻せた気にさせるものです。


夜、寝る前に読むのに最適です。


幾つかのシリーズが、皆 舞台は現代で、各々の話にでてきる登場人物や事象が他の話に自然とリンクして登場し、話が紡がれていくという面白さもあります。


読むときは、出版が古い作品から読むのがお勧めです。

2022年1月15日土曜日

【本】医者、用水路を拓く 中村哲 石風社

 アフガニスタンで襲われて亡くなった中村氏が2007年発刊で出された本です。


中村さんの事は、新聞やニュースで聞き、お名前と医師だけど医療だけではアフガンの人を救えないと用水路を自ら重機も運転しながら作って、現地の農業や、健康度の向上に大きな成果を作られた方という知識だけを持っていました。

亡くなった時には、現地人や現地政府をあげて悲しむという非常に信頼され、尊敬されていた。



この本は、どういう気持ち、考えで無謀とも言える用水路を作っていったかというドキュメンタリーです。プロジェクトX的な面白さも抜群ですが、それとともにアフガンの現地の人の実態と、アメリカ、国連、日本政府、政治家、報道、コメンテーター(有識者?)、国際NGO等のあまりに大きな乖離に深く怒りが湧きます。


日本のニュースや政府発表等を見て、聞いている「タリバーン」は男尊女卑の原理主義者の問題山積みの様に伝えられ、それを前提とした対応施策が正義の様に語られている様に思います。


でも、現地に根付いて活動している中村さんが現地の人から見える実態は大きく違う様。


この本では、現地のマジメな農民たちから立ち上げられたタリバーン。自治的な考えでのタリバーン方式。アフガン人の誰にでもタリバーン的な意識はある。


一方、テロにおびえる米軍兵や国連派遣軍などが、テロ掃討という名のもとに、一般市民をどれだけ殺し、それにより現地人からどれだけ嫌われているか。


日本が、平和憲法と平和国家という50年の実績で作り上げてきた信頼を、「普通の国」になる。米国に貢献するという政治家や報道やそれによって作られるムードによって、どんどん崩壊させてきている事。



これらの動きは、今の日本や世界でもそのまま形を変えて続いているのだと思います。


中村さんの努力と意志を素晴らしいと思うと同時に、中村さんが感じていた悲しみ・くやしさ・むなしさにも強く共感しました。


多くの人に読んでもらいたい一冊です。