2022年1月15日土曜日

【本】医者、用水路を拓く 中村哲 石風社

 アフガニスタンで襲われて亡くなった中村氏が2007年発刊で出された本です。


中村さんの事は、新聞やニュースで聞き、お名前と医師だけど医療だけではアフガンの人を救えないと用水路を自ら重機も運転しながら作って、現地の農業や、健康度の向上に大きな成果を作られた方という知識だけを持っていました。

亡くなった時には、現地人や現地政府をあげて悲しむという非常に信頼され、尊敬されていた。



この本は、どういう気持ち、考えで無謀とも言える用水路を作っていったかというドキュメンタリーです。プロジェクトX的な面白さも抜群ですが、それとともにアフガンの現地の人の実態と、アメリカ、国連、日本政府、政治家、報道、コメンテーター(有識者?)、国際NGO等のあまりに大きな乖離に深く怒りが湧きます。


日本のニュースや政府発表等を見て、聞いている「タリバーン」は男尊女卑の原理主義者の問題山積みの様に伝えられ、それを前提とした対応施策が正義の様に語られている様に思います。


でも、現地に根付いて活動している中村さんが現地の人から見える実態は大きく違う様。


この本では、現地のマジメな農民たちから立ち上げられたタリバーン。自治的な考えでのタリバーン方式。アフガン人の誰にでもタリバーン的な意識はある。


一方、テロにおびえる米軍兵や国連派遣軍などが、テロ掃討という名のもとに、一般市民をどれだけ殺し、それにより現地人からどれだけ嫌われているか。


日本が、平和憲法と平和国家という50年の実績で作り上げてきた信頼を、「普通の国」になる。米国に貢献するという政治家や報道やそれによって作られるムードによって、どんどん崩壊させてきている事。



これらの動きは、今の日本や世界でもそのまま形を変えて続いているのだと思います。


中村さんの努力と意志を素晴らしいと思うと同時に、中村さんが感じていた悲しみ・くやしさ・むなしさにも強く共感しました。


多くの人に読んでもらいたい一冊です。

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