2017年12月30日土曜日

【本】エコ・プラント B.C.ウォルヴァートン 主婦の友社

NASAが宇宙船や宇宙ステーション、宇宙基地等の密閉空間で生きていく為に、室内環境の汚染を植物で浄化できないかという事を研究してきています。

その研究を行ったのが、著者の博士。

研究の結果、植物の種類によって驚くべき効果を発揮するものがある事が分かりました。

検討した50種類の植物各々に、
 ①気化化学物質(VOC)の除去
 ②栽培・管理の容易さ
 ③害虫に対する抵抗力
 ④蒸散作用率
の4点を10段階評価して点数付けを行っています。

総合点の1位はアレカヤシ(コガネタケヤシ、ヤマドリヤシ)。
4項目の平均点が8.5の高得点です。
総合点の高い順には
カンノンチク、カマエドレア・ザイフリッ
ツィー、インドゴムノキ(ゴムノキ)と
なっています。

①と④に注目した場合、その両方で8以上を得
ているのは、
カマエドレア・ザイフリッツィー
ボストンタマシダ
ネフロレピス・オブリテラータ
アレカヤシ(コガネタケヤシ、ヤマドリヤシ)
ポットマム
ガーベラ
になっています。

これらは、観葉樹として自宅にも、贈り物にも良さそうです。

ちなみに、数字で示すと

      ①   ④
アレカヤシ 8   9
ポトス   5   7
シクラメン 3   5
コチョウラン3   3

になります。


ヤシとかシダとか、熱帯や亜熱帯で高い木の下であまり陽の当らない所で苦労してる植物達との事で、色々な技を身に着けている様ですね。

アレカヤシ4鉢あれば加湿器いらずという書き込みもどこかで見た覚えがあります。
乾燥対策にも使えそうです。


脱線ですが、ネットを見ているとサボテンなどのCAM植物は、夜に酸素を出すのではという様な書き込みがありますが、日本植物生理学会での説明では、砂漠の過酷な条件では、二酸化炭素は夜取り込み、昼の光合成は酸素を出さない循環的電子伝達反応をしているのではとの事、但し、”少しでも水があり、気孔を開くことができる環境(早朝など)では、酸素を発生してNADPHを生産し、光合成CO2固定の増加を図っていると思われます。”とのこと。

日本で育てるなら、過酷な環境ではないと思うので、昼の光合成時に酸素を出しているではないでしょうか。
蛇足でした。

2017年12月29日金曜日

【本】ファーブル博物記 植物のはなし 岩波書店

樹木や植物について、私はあまり分かっていないな、、と思う所があり、表記の本を手にとってみました。

実は、ファーブルは生まれて初めて読みました。
勿論「昆虫記」という超有名な本がある事は知っていましたが、昆虫にあまり興味の無かった私はそれも読んでいませんでした。

今回、植物の全体像が平易に分かるのではと期待して読み始めたら、面白くて、とてもスゴイ本だという事にビックリしてしまいました。

ファーブル本と小学生の時に会っていたら自然科学者を目指していたかもしれないなと思います。

生物の時間に植物について、師管や導管、被子植物や光合成など、部分部分の用語と話しは習って、受験用にも覚えた記憶があります。
又、街の本屋で良く売っている植物に関する手軽な読み物は、ちょっと変わった植物の話 等が多いです。

でも、この本は植物の「生き方=人生?」を説明してくれています。

医学書を読んでも、人間がどう生まれて成長して、先祖と関わりを持って次世代につないでいくのか等の人生は分かりませんが、それと同じ感じでしょうか。

私の中で、今までボンヤリと理解した積りになっていたが、この本でスッキリ腑に落ちた事をいくつか書いてみます。

幼児用の絵本では、一本の大きな木は幹に顔が書いてあって、葉っぱは髪の毛の様な絵が多いので、なんとなく樹木は一本で一つの生命個体という印象を持たれているのではないでしょうか?

ファーブルに依ると、樹木は枝一本一本が個体であり、樹木はサンゴの様に沢山の個体が集まった集合体であるとの事。

枝の元は芽なので、芽が一つづつ個体で重要。

種から芽を出して幹(最初の枝)を作り、そこから又 芽を出して枝を作っていきます。

植物は地下から水分と微量栄養分を吸い上げて、葉で太陽光と二酸化炭素を使って化学処理して、植物にとっての栄養食(=樹液)を作り、各葉、枝の樹液を下に流しながら、幹や根を成長させると共に、フィトケミカル(合成物)も作っていきます。

毎年 新しい枝を作り新しい葉を茂らせ、古い枝は葉を付けなくなり世代交代を行っていきます。

幹の真ん中は古い世代ですので、死んでいくのですが、それを柱としてその周りに新世代の層を毎年作っていく。

芽にも、枝を作り葉を茂らす役目の個体もあるし、花(=種)を作り違う土地に拡散していく為の役目の個体もあります。

そうやって、脈々と繋がって行く。
昔の日本の「家」制度の様な気もしますね。

この枝=個体 という考え方は、(以前神津さんの本の記事の時にも書きましたが)桜の開花が枝毎で違っている事と合致します。 ナルホド。と思いました。


別な話では、品種改良。

人間は、野生の植物を人間の役に立つように品種改良を重ねて現在の色々な果樹などが出来ています。

これらは、基本 挿し木や接ぎ木で増やれているとの事。その方法ならば、クローンと同じように元の木の性質をしっかり再現できるから。

それを、種を用いて植えなおす事を重ねると、木はどんどん先祖返りをして野生に戻ってしまうとの事。


酸素の話。

植物は昼は酸素を出して、夜は二酸化炭素を出すと学校で習いました。

それは、どうしてか?

酸素は光合成という仕事をした時に造られる物なので、光が当たっている時にしか発生しません。

一方、動物と同じで植物も生命活動をする為のエネルギーは酸素を燃やすことで得ています。

よって、夜中でも植物は酸素が必要になります。でも、光合成で作られる酸素の量の方が、生命維持で必要な酸素の量より少ないという事。

食料を作ってくれる農家の方も、自分の作業エネルギー用に食料を食べるというのと同じですね。

他にも、色々な事が詳しく平易に子供にも分かり易い様に書かれています。

ファーブルを読んだ事が無い方には、ぜひお勧めの1冊です。

2017年12月23日土曜日

【心と身体】オルゲーの生気候図など

住みやすい家の関係の記事や本を読んでいると、人間が快適に感じる温湿度の範囲について、オルゲーの生気候図やPPD,PMVなどという言葉や絵が良く出て来ます。

オルゲーの図は図としては分かり易いのですが、日本に住む我々が本当にこの図に合致するの? という疑問がやっぱり起きてきます。

街では、冬でも薄着をしている白人の人を良く見ますし、日本は高温高湿の夏と低温低湿の冬 というかなりキビシイ環境の土地ですので、それに順応した日本人の体質では、欧米人とは違う快適(又は、許容できる)ゾーンがあるのではないかと思います。

日本でも、雪国と関東では気候は違いますけど。

又、衣類の進化でも、この辺は大きく影響を受けそうですね。

この10年でヒートテックなども当たり前になってきていて、その前提での快適ゾーンは、、等の話もありそうです。

妻と夫でも体感温度が違う事も良くある話ですし、将来的には個人温調みたいな世界になっていくのでしょうか。
(ちなみに、家では熱帯夜の私の就寝時エアコン設定29度に対して、妻の部屋の設定は25度です)

とりとめの無い記事になってしまいましたが、気になりました。


【本】エコハウスのウソ 前真之 日経BP社

最近 自然の力を本当に生かした住まい作りに興味があり、色々な本を読んでいます。

建築の世界は、どの会社もみな口を揃えてエコです、高断熱高気密です、気持ち良いです。と言うので、家を買いたい、建てたいと思っている消費者には、全く何を信じたら良いのか分からなくなってしまう(殆どはそれを狙っているのではないだろうか、、)業界です。

消費者は、しっかりしたモノサシを持って業者の言う事を取捨選択、又は、怪しい所に突っ込みを入れて、「何を言わないでいるのか?」を把握していく必要があります。

この本は、そういうモノサシの一つを持たせてくれる、読みやすいし面白い本です。

著者は最近、色々な方と一緒に「あたらしい 家づくりの教科書」という本も出されていて、こちらの方はさらにモノサシを増やしてくれます。

家を買おう、建てようと思っている人は両方を読んでおくと良いとお勧めの本です。

2017年12月6日水曜日

【本】損したくないニッポン人 高橋秀実 講談社現代新書

不思議な本です。面白い本です。

得な生き方を探っていったら、結局は皆さん「損をしたくない」という事で行動しているという事が分かってきた。

それをべースに、どういう事を主婦など消費者側も、販売側も、経済学者も、宗教までも行われているのか、どういう心理でやっているのか。

そもそも、お金とは何なの? 不動産ではどういう事が起こるの?

又、「損」とは悪い事なの?「得}とは?

という根源的な話を、堅苦しい哲学風に語るのではなく、

主婦はどうやってポイント活用を図ろうとしているのか、どういうスリルを求めるのか、家電量販店でテレビを買う時はどうハメられていくのか、松下幸之助のPHPとはどういうロジックで、本当に消費者の為になるのか? 定価ってなんだ? 会計って? 日本一住みやすい街に魅力も活気も無いのはなぜか?  などなど、

かなり具体的に著者が体当たり的に話を聞きまわって考えた事が分かりやすく具体的に書かれています。

なんとなく、皆が無意識で感じていた事を表にだしてくれていて、なにかスッキリする不思議な本です。

読んでみないとわからない。
図書館で借りて読んでみるのが「お得」な本でしょうか。