2019年12月30日月曜日

【本】いきものがたり 水野良樹 小学館文庫、いつでも心は放牧中 山下穂尊 KADOKAWA

いきものがかりの男二人が各々本を出しています。
水野さんの”いきものがたり”は放牧後の追記をして文庫になったもの。山下さんの”いつでも心は放牧中”は放牧期間中に発刊されたもの。

水野さんの文庫追補版が出たので読んでみるのと併せて、山下さんの本も再度読み返してみました。


いきものがかりの同じ歴史を生きて生きたので、ダブるネタも当然ありますが、お二人の違いもはっきり感じられます。


水野さんは、自分と「いきものがかかり」というチームがどう成長していったか、音楽面とビジネス面・マネジメント面と関係者へのお礼、宣伝も兼ねた書き方。印象的には有限会社いきものがかりの社長が自叙伝とを書いたという感じを受けました。


水野さんは、音楽ビジネスで成功したい。そのためにすべき事はという事は何かを何時も強く意識されて考えているのだと思いました。真面目で、一生懸命だという事も良く分かりました。


山下さんの本は、あくまでも一人称で、自分の人生とその中で「いきものがかり」という活動の意味、自分の考え方、生き方を書いてみたという感じ。


山下さんはTVやステージ上ではつまらなそうに無表情にサイドギターを弾いて、トークでも自分視点でちょっと的外れな話をする人。 という印象を持っていました。


でもこの本を読んで ビジネス的成功というよりも、自分を自由に、自分にとって価値のある生き方をしたいと思っている方なんだなと分かりました。


今年 TVで「BSいきものがかり」という番組をやっていますが、山下さんは殆どしゃべる部分がない(カットされているかもしれませんが)と思っていましたが、ビジネス的ではなく自分のしたい事を自由にやっている若者やミュージシャンがゲストの時は、沢山の質問を発しています。


又、キャンプの場面では、ゲストの芸人達とも普通の友達トークで興味シンシン何やってんの?という感じで生き生きしています。
なるほど、オフステージで友達が多いのはこういう人柄が出ているからなんだな。と思いました。


たぶん、所謂世俗的なビジネスの話や慣習などには関心ないという事なのでしょう。でもきっと本人は、ビジネス面でも失礼な事をしてはいけないと思っているのでトークも控えめになってしまう。という事なのかなと思いました。



水野さんは、放牧中も沢山の作曲、楽曲提供をしていたとの事で、音楽業界でのプレゼンスや人脈を戦略的に着々と作っているのだと思います。

ちょっと気になるのは、集牧後にリリースされた水野さんの曲を聴いていくと、まとまりは良いけれど、なんとなくどこかで聞いた事のあるメロディーラインや詞の組み合わせ感があること。沢山の楽曲提供をするためには、自分の中で効率的な作曲方法を勿論作り出しておられるのだろうと思いますが、それが平板感を生んでいるのかもしれません。



新アルバムの「スピカ」、「あなたは」や「太陽」もいいですね。
放牧後の”いきものがかり第2楽章”は山下さんや吉岡さんの創造性がより輝く事になるのかもしれませんね。
又、吉岡さん一人で歌うばかりでなく、3人のハモりの曲も増えていくといいな。


ずいぶん勝手な書き方をしてしまいましたが、「いきものがかり」は大好きですので、変わらず大成功(商業的というよりも、自分達が実現したと思っている事を)を収めていってもらいたいと願います。

2019年12月21日土曜日

【防災】NHK体感首都直下地震ウィーク パラレル東京 (感震ブレーカー)

12月の第1週。NHKが体感首都直下地震ウィークと名打って、発災から4日間のドラマを4日間かけて放送するという事がされました。

番組自体については色々書きたい事がありますが、かなりリアリティを感じさせるドラマになっていた事と、生きるためのヒントという番組も直ぐその後の時間に放送され、家庭でできる具体的な防災行動や準備についての教育という感じになっていました。

沢山の事をまとまって、各事項のつながりを見せてくれながら説明してくれるので、暮らし方の見直しレビューにはありがたい番組でした。


早速 我が家の防災強化として感震ブレーカーと感震ライトの設置をしました。


感震ブレーカーは市でも住宅過密地域向けには、無償で配布をしている事を知りました。残念ながら我が家は対象外地域。

ただ、無償で配られる物は、簡易型の重り式などの感震ブレーカーのみ。

でも、重り式等の簡易感震ブレーカーは地震が起こると直後にブレーカーを落としてしまうので、真夜中に地震になったら頭を守って地震に耐える最初の数十秒に対して、真っ暗闇で対応しろ。地震が過ぎて、部屋や家から脱出や点検をする時も真っ暗闇からスタートせざるを得ない事になりそうです。

チラシを見ると小さな字で懐中電灯等も用意する事と書いてありますが、大震災で物が吹っ飛びまわっている状態で手探りで懐中電灯を探せるのか?という疑問があります。


配電盤に組み込み、地震発生後3分たってからブレーカーを落とすという良さそうな機能の物も売られていますが、それらは電気工事が必要で資格を持った人につけてもらう必要があり、どうしても高いものになってしまいます。


迷いましたが、空いているエアコン用コンセント(アースがついている)に、後付けで刺せるタイプ(地震が起こったら疑似漏電を起こしてブレーカーを落とす)で発災後3分後に落とせる物をネットで購入しました。これは、自分で取り付けられるし、価格も1万円強ぐらいで買えます。

又、同時に 乾電池式の感震ライト も必要な部屋の数だけ購入しました。こちらは数百円/個。 コンセントに刺しっぱなしの充電式というものが沢山売られていますが、コンセントに刺しっぱなしは内臓されている充電池の寿命で、たぶん数年で装置ごと買い替える必要があると考えました。


又、感震ライトは真夜中に発災+停電(ブレーカーが落ちるのではなくて、外部からの電気が来なくなる停電)で真っ暗になる状況でも、部屋の中の状態や緊急に行動すべき避難ルート等が見える様にしなければなりません。その為には、ライトの位置はなるべく高い位置にあるのがより光が回りやすい事と、転倒物で覆われないという2点で望ましいと思います。コンセントに刺しっぱなしの場合、コンセントはたいてい壁の下のほうに付いていますので、ライトの位置も必然的に低くなり非常時に十分働かないという事も予想できます。

乾電池式ならば、年に1度 点灯テストし、電池がヘタッていれば電池だけ取り換えれば良いので装置の買い替えは不要です。取り付け位置も柱や壁の高い位置につける事ができます。また、ホルダから取り出せば、普通の懐中電灯としても使用できます。

NHKでは感震ブレーカーの話は何度も出てきましたが、感震ライト等の話は殆ど強調されませんでした。(市の無料配布のチラシなどでも同様です)


建物火災の数を減らしたいという行政視点での放送や施策なのだなという感じを強く受けました。被災者視点は弱いかも。


情報の鵜呑みはせずに、自分でイメージしてみるという事が重要ですね。

2019年12月1日日曜日

【本】バカまるだし 永六輔+矢崎泰久 講談社

永六輔と言っても今は若い人は知らないのだと思います。「上を向いて歩こう」の作詞家と言えばまだ通じるかもしれませんね。

永さん、矢崎さんでまるで居酒屋談義のような、ぶっちゃけ話のぶつけ合いみたいな対談?です。2005~2006年の本。

こんな見方をしているのか、とか 思わずそうそうと頷きながら読んでしまう所があったりしてとても面白く読みました。


その中でいくつか、そうだったのか と思ったところがあるので少し書き出してみます。


①国会ってこうなっているのかという点。
矢崎さんは中山千夏さんが参議院議員をしたときに秘書を務めていたそうです。その時の話で、

永:気になっていたことだけど、たとえば予算委員会なんかで、野党の議員が首相とか大臣に質問するじゃない。あの質問って、あらかじめ出しているの?

矢崎:出してる。

永:じゃあ、みんなどういう質問がくるか、知っているわけね。

矢崎:出来試合みたいなもんだね。質問する議員のところには、事前に官僚がレクに来る。三・四人の官僚が書類抱えてきてさ、いろいろ説明するわけ。おかしいのは、アイツら「この質問はこういう角度でやると、大臣は返答に困ります」なんて言うんだよ(笑)。

永:そこまでレクチャーするんだ。そのレクは、与党・野党関係ないの?

矢崎:関係ない。野党の議員にも与党にもやる。野党議員のところへ行って、攻め方をレクする。次に今度は、質問される大臣のところにも行く。で、「議員にこう聞かれるから、こうお答えになったらいかがでしょう」ってやるわけ。だから、書類の棒読みにもなる。

永:へーえ。貧乏芝居だね。

矢崎:ほんとだよね。しかも、質問する議員のところを立ち去るときに、必ず「お手柔らかに」なんて言いやがるんだよ(笑)。

永:要するに、官僚の手のひらに乗せられているわけね。



②ジャーナリスト?

矢崎:ぼくは一度だけ、すごく褒められたことがあるんですよ。

永:アハハハ、テレているわけじゃなかったのね。どうぞ続けて。

矢崎:あの田中角栄の秘書で早坂茂三っていたでしょう。彼に、日本のジャーナリストで、こいつだけはすごいと思ったヤツが一人いる、矢崎泰久だって。

永:それ、ほんと?

矢崎:死人に口なしだけど、ホントですって。ある日、早坂を通じて、田中角栄が会いたいと言ってきたんですよ。このオレに。田中角栄は嫌いだったけど、ジャーナリストですからね。お目にかかったほうがいいと思って会ったんですよ。会ってびっくりしたのは、田中角栄ってとても魅力のある男なんですよ。

永:ミイラとりが、、、、

矢崎:そう。だから、オレは危ないと思った。ここで親しくなったら、もう一回彼を復権させてやろうなんて思いかねない。その頃、田中角栄はロッキード事件で日本中から袋叩きにあっていたからね。

永:で、早々においとましたの?

矢崎:いやそれが、、。自分でもダメなヤツだと思ったんだけど、ご馳走になった。帰りに、お車代ってね(笑)。包まれたわけですよ。ズシッと重いのを。

永:アハハハ、受け取っちゃったの?

矢崎:文字通りお車代だったら、せいぜいが1万円とかタクシー券じゃないですか。でも、ズシッと重い。だから、ちょっと待ってくれと。見ていいかと訊いたら、どうぞと早坂さんが言うからね。見たらこれが、百万円くらい入っているんだ。オレ、早坂さんに言ったんだよ。「あなたね、百万円をタクシーで使ったら、もしかしたら九州とか北海道まで行っちゃうじゃないか。お車代というのは、こういうものじゃないだろう」と。

永:エライ! 断ったんだね。

矢崎:今から考えれば惜しいことしたと思うけどさ、きっぱり断ったんだよ。そしたら、早坂が雑誌の座談会かなんかでさ、そのことをしゃべったの。「矢崎はすごいヤツだ。他のジャーナリストはみんなもらった」って(笑)。

永:アハハハ。でも、お車代じゃなければ、もらった?

矢崎:もらわないですよ。たぶん、、。田中角栄のところから出てきたカネじゃなければ、もらったかもしれないけども(笑)。まぁ、似たような経験は、新聞記者時代にも何回かあるんですよ。たとえば、三越デパートの屋上から、突風でテントが落っこちて、その時に下を歩いていた人が落ちてきた鉄パイプに当たって死んだんですよ。

永:三越なら大事件だね。

矢崎:当時オレがいたのは、「内外タイムス」っている小さな新聞社だったんだけど、早版で大きく「三越デパートからテント降る 一人死亡」と出たんですよ。他の新聞はベタ記事で「屋上からテント降る」なんてかいてるだけ。本当は、テントが落ちたのが事件なんじゃなくて、それで人が死んだのが大事件なわけですよ。でも、最初にそう書いた「内外タイムス」も、二刷からは出ない。次の日に三越の広告あドーンと出ているわけ。ふだん「内外タイムス」なんてちっぽけな新聞には、三越の広告なんて入らないですよ(笑)。その取材に行ったとき、対応したのが、あの「なぜだ!」と言って社長を辞めさせられた岡田茂ですよ。当時は、広報部長だった。

永:あぁ、なるほど。

矢崎:彼は新聞記者みんなに、お車代を配ってた。ほとんどの記者がもらってましたね。もちろん、断った記者もいましたよ。だけど、もらっちゃうような記者が横行しているのが現実です。田中角栄が外国に行って帰ってくると、貴社にお土産を買ってくる。そういうものはいただくのが当たり前、と思っている新聞記者たちがいっぱいいるわけですよ。



③天皇陛下 バンザイの起源

矢崎:さすが永さん、良く知ってるね。ついでにもうひとつ聞きたいんだけど、マンザイって、もともと「萬歳」でしょ?

永:あれは吉本興業が昭和の初め頃に、「漫才」に変えたんですよ。漫談とか漫画の「漫」の字を当てて、「歳」も「才」と簡単な字になった。

矢崎:もとの「萬歳」は、あの両手をあげてやる「ばんざーい」と同じでしょ?

永:そうそう。昔は日本にはあんな習慣はなかったの。時代劇には出てこないでしょ。明治二十二年からあの言葉が出てくるんです。なぜか知ってる? 憲法発布の年ですよ。

矢崎:あぁ、そうか。じゃあ、韓国で「マンセー」と言っているのは?

永:あれも同じ。もともとは、向こうから来たものですからね。それを、明治政府が憲法発布のときに、何か祝い方はないかというので、「マンセー(萬歳)」を三唱するようになった。

矢崎:じゃあ「天皇陛下バンザイ」というのは、ずいぶん後の習慣になるわけね。

永:そうそう。時代劇だと「イヤサカ!」


それ以外にも、うんちくや本音トークが満載の本でした。今読んでも面白い。

2019年11月27日水曜日

【マスコミ】フランシスコ教皇のメッセージと各新聞の伝え方

フランシスコ教皇の日本訪問。特に、長崎、広島での核廃絶と政治に対するメッセージには、よくキッパリと言い切ってくれたと感動してしまいました。

いつもつい現実的には、、という言い訳とどっちつかずになりがちな自分の気持ちをスパッと切り、力強く後押ししてくれるという気がしました。


教皇のメッセージシーンはNHKテレビがリアルタイム中継で放映したので、無編集のスピーチを多くの人が聞いたと思います。

翌朝、それらが朝刊ではどう伝えられたのかを読売、朝日、毎日の3紙を買って読み比べてみました。各社の意図的な編集が入るはずなので。


1面ので見出し比較

読売:ローマ教皇 核廃絶訴え 「多国間主義の衰退」懸念
   長崎・広島で演説

朝日:ローマ教皇 核廃絶訴え 長崎・広島で
   「核の威嚇に頼り 平和提案できるか」「武器開発 テロ行為」

毎日:核保有「途方もないテロ」 ローマ教皇 長崎訪問
   広島でも訴え

長崎のメッセージで、もっとも耳に残っている武器の開発、製造、販売等に係る事はテロ行為である というメッセージが、読売新聞だけカットされている事に驚きました。
読売新聞は記事本文の中にもテロという言葉は一切使っていません。


メッセージの具体的文章は、

読売:長崎演説の全文、広島演説の要旨

朝日:長崎、広島共に要旨

毎日:長崎、広島共に要旨 スピーチ全文と動画はデジタルプラスで

という事で、読売が全文を載せているというのは良いなと思ったのですが、その内容を読むと、又 唖然としてしまいました。


カトリック中央協議会が発表しているフランシスコ教皇のメッセージ文と読売新聞の”全文”というものを少し比較してみます。以下(カ):カトリック中央協議会の文、(よ):読売新聞の全文という文です。


(カ)
愛する兄弟姉妹の皆さん。
この場所は、わたしたち人間が過ちを犯しうる存在であるということを、悲しみと恐れとともに意識させてくれます。近年、浦上教会で見いだされた被爆十字架とマリア像は、被爆なさったかたとそのご家族が生身の身体に受けられた筆舌に尽くしがたい苦しみを、あらためて思い起こさせてくれます。

(よ)
親愛なる兄弟姉妹のみなさん
私たち人類が互いに対してどれほどの苦痛と恐怖を与えられるものなのか、この場所ほど意識させられるところはない。
長崎の教会(浦上天主堂)で被爆した十字架とマリア像は、被爆者とその家族が味わった筆舌に尽くしがたい恐怖を今一度、思い起こさせる。


(カ)
人の心にあるもっとも深い望みの一つは、平和と安定への望みです。核兵器や大量破壊兵器を所有することは、この望みに対する最良のこたえではありません。それどころか、この望みをたえず試みにさらすことになるのです。わたしたちの世界は、手に負えない分裂の中にあります。それは、恐怖と相互不信を土台とした偽りの確かさの上に平和と安全を築き、確かなものにしようという解決策です。人と人の関係をむしばみ、相互の対話を阻んでしまうものです。

(よ)
人間は、平和と安定を心の底から熱望している。核兵器や他の対象は買い兵器の保有は、この望みをかなえる回答にはならない。それどころか、この願いをいつまでも試練にさらす。
私たちの世界は、ひどい分断の中にある。それは、恐怖と相互不信に基づく偽りの安全を土台にして、平和と安定を守ろうとしているためだ。その結果、国民同士の関係が損なわれ、どんな対話も妨げられてしまっている。


(カ)
 国際的な平和と安定は、相互破壊への不安や壊滅の脅威を土台とした、どんな企てとも相いれないものです。むしろ、現在と未来のすべての人類家族が共有する相互尊重と奉仕への協力と連帯という、世界的な倫理によってのみ実現可能となります。

(よ)
世界の平和と安定は、恐怖や相互破壊、相手を壊滅させる威嚇といったものに基礎を置くいかなる取り組みとも相いれない。平和と安定は、団結と協力に支えられた世界的な道徳観からしか生まれない。今日および未来の全人類が相互に尊重し合い、共通の責任を果たしていける未来を築くために団結と協力が欠かせない。


(カ)
ここは、核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町です。そして、軍備拡張競争に反対する声は、小さくともつねに上がっています。軍備拡張競争は、貴重な資源の無駄遣いです。本来それは、人々の全人的発展と自然環境の保全に使われるべきものです。今日の世界では、何百万という子どもや家族が、人間以下の生活を強いられています。しかし、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、築かれ、日ごと武器は、いっそう破壊的になっています。これらは神に歯向かうテロ行為です。

(よ)
この都市は、核爆弾による1回の攻撃が、人類と環境にどれほど破滅的な結果をもたらすか示す証人だ。
軍拡競争への反対を私たちがどんなに叫んでも十分ではない。無駄遣いされている貴重な資源は本来、人類の発展や自然環境の保護に使うはずのものだ。今日、世界には、人間らしい暮らしが送れない何百万もの子供や家族がいる。それなのに、破壊力が一段と増している武器の製造や近代化、保守や販売に巨万のカネを費やすのは、天罰に値する違反行為にほかならない。


(カ)
 核兵器から解放された平和な世界。それは、あらゆる場所で、数え切れないほどの人が熱望していることです。この理想を実現するには、すべての人の参加が必要です。個々人、宗教団体、市民社会、核兵器保有国も非保有国も、軍隊も民間も、国際機関もそうです。核兵器の脅威に対しては、一致団結して具体性をもって応じなくてはなりません。それは、現今の世界を覆う不信の流れを打ち壊す、困難ながらも堅固な構造を土台とした、相互の信頼に基づくものです。1963年に聖ヨハネ23世教皇は、回勅『地上の平和(パーチェム・イン・テリス)』で核兵器の禁止を世界に訴えていますが(112番[邦訳60番]参照)、そこではこう断言してもいます。「軍備の均衡が平和の条件であるという理解を、真の平和は相互の信頼の上にしか構築できないという原則に置き換える必要があります」(113番[邦訳61番])。

(よ)
核兵器のない平和な世界をあらゆる場所で、何百万の男女が熱望している。この理想実現には、全員の参加が必要だ。個人個人に加え、宗教コミュニティーや市民社会、核兵器の保有国も非保有国も、軍事部門も民間部門も、国際機関もーー。私たちは核兵器の脅威に対し、一致結束して向き合わなければならない。この世界を支配する相互不信を断ち切り、信頼を築く不断の努力を、困難であっても続けなければならない。
1963年、ローマ教皇ヨハネ23世は、回勅「地上の平和」で核兵器の禁止を訴え、「真の永続的な平和は、軍事力の均衡によってではなく、相互の信頼の上にしか構築できない」と述べた。


まだこれで半分ぐらいですが、疲れるのでここで止めます。読売新聞のこの”全文”と呼んだ文章は、ポイントをいろいろと変えて表現することで意図編集をしているようですね。


広島での要旨というものも、それに相当する教皇のメッセージと少し対比してみます。


(よ)
確信を持って、改めて申し上げたい。今日、戦争のために原子力を使用することは、犯罪以外の何ものでもない。人類とその尊厳に反するだけでなく、私たちの共通の家の未来を台無しにする。原子力の戦争目的の使用も核兵器の保有も同様に道徳に反する。
思い出し、ともに歩み、守ることーーこの三つは、倫理的な命令だ。これらは、まさに
ここ広島において、一層強く、より普遍的な意味を持ち、平和への道を切り開く力がある。
現在と将来の世代が、ここで起きた出来事を忘れることがあってはならない。何世代にもわたって「二度と繰り返してはならない」と言い続ける。


(カ)対応する部分のスピーチ全文
 確信をもって、あらためて申し上げます。戦争のために原子力を使用することは、現代において、犯罪以外の何ものでもありません。人類とその尊厳に反するだけでなく、わたしたちの共通の家の未来におけるあらゆる可能性に反します。原子力の戦争目的の使用は、倫理に反します。核兵器の保有は、それ自体が倫理に反しています。それは、わたしがすでに2年前に述べたとおりです。これについて、わたしたちは裁きを受けることになります。次の世代の人々が、わたしたちの失態を裁く裁判官として立ち上がるでしょう。平和について話すだけで、国と国の間で何の行動も起こさなかったと。戦争のための最新鋭で強力な兵器を製造しながら、平和について話すことなどどうしてできるでしょうか。差別と憎悪のスピーチで、あのだれもが知る偽りの行為を正当化しておきながら、どうして平和について話せるでしょうか。
 平和は、それが真理を基盤とし、正義に従って実現し、愛によって息づき完成され、自由において形成されないのであれば、単なる「発せられることば」に過ぎなくなると確信しています。(聖ヨハネ23世回勅『パーチェム・イン・テリス――地上の平和』37〔邦訳20〕参照)。
 真理と正義をもって平和を築くとは、「人間の間には、知識、徳、才能、物質的資力などの差がしばしば著しく存在する」(同上87〔同49〕)のを認めることです。ですから、自分だけの利益を求めるため、他者に何かを強いることが正当化されてよいはずはありません。その逆に、差の存在を認めることは、いっそうの責任と敬意の源となるのです。同じく政治共同体は、文化や経済成長といった面ではそれぞれ正当に差を有していても、「相互の進歩に対して」(同88〔同49〕)、すべての人の善益のために働く責務へと招かれています。
 実際、より正義にかなう安全な社会を築きたいと真に望むならば、武器を手放さなければなりません。「武器を手にしたまま、愛することはできません」(聖パウロ6世「国連でのスピーチ(1965年10月4日)」10)。武力の論理に屈して対話から遠ざかってしまえば、いっそうの犠牲者と廃墟を生み出すことが分かっていながら、武力が悪夢をもたらすことを忘れてしまうのです。武力は「膨大な出費を要し、連帯を推し進める企画や有益な作業計画が滞り、民の心理を台なしにします」(同)。紛争の正当な解決策として、核戦争の脅威による威嚇をちらつかせながら、どうして平和を提案できるでしょうか。この底知れぬ苦しみが、決して越えてはならない一線を自覚させてくれますように。真の平和とは、非武装の平和以外にありえません。それに、「平和は単に戦争がないことでもな〔く〕、……たえず建設されるべきもの」(第二バチカン公会議『現代世界憲章』78)です。それは正義の結果であり、発展の結果、連帯の結果であり、わたしたちの共通の家の世話の結果、共通善を促進した結果生まれるものなのです。わたしたちは歴史から学ばなければなりません。
 思い出し、ともに歩み、守ること。この三つは、倫理的命令です。これらは、まさにここ広島において、よりいっそう強く、より普遍的な意味をもちます。この三つには、平和となる道を切り開く力があります。したがって、現在と将来の世代が、ここで起きた出来事を忘れるようなことがあってはなりません。記憶は、より正義にかない、いっそう兄弟愛にあふれる将来を築くための、保証であり起爆剤なのです。すべての人の良心を目覚めさせられる、広がる力のある記憶です。わけても国々の運命に対し、今、特別な役割を負っているかたがたの良心に訴えるはずです。これからの世代に向かって、言い続ける助けとなる記憶です。二度と繰り返しません、と。


2019年11月17日日曜日

【体験史】人生最高のキーボード

スマホのタッチスクリーンをいじっていると、なんだか馴染めないなあという感覚がずっとあります。タッチしている途中で表示がずれて行って違うコンテンツが出てしまうなど、なんだか安心感がありません。


その点、キーボードは安心できる。


又、ノートPCもタッチパッドは安心できなくて、マウスかスティックが安心できます。だから、持ち運びするノートPCはスティックのついているシンクパッドばかり使っています。


という事を思っていたら、ふと 自分にとってのコンピュータ体験史が蘇ってきましたので、書いてみます。


私が高校に入った頃に、カシオミニという電卓が発売されました。

当時それは画期的で、乾電池で動くパーソナルな電卓。安い。しかもテレビコマーシャルで宣伝している。 多分 55歳以上の人は、「答え一発 カシオミニ」というフレーズをメロディも含めて皆言えると思います。インパクトがありました。

お店屋さんは計算が楽になると大喜びだったのではないかと思います。

確か6桁表示だったと思うので、100万以上は表示できません。


私が高校3年生の頃には、関数電卓というものも発売されていて、三角関数がそれで計算できるとあこがれでした。(当時は、まだ計算尺を使ったり、関数表を見ながら筆算したりというのが高校生です)

大学合格祝いは関数電卓を買ってもらった気がします。確か1万円以上したのではなかったかな。そんなデジタル黎明期の時代でした。


大学2年でひょんな事から大学のコンピュータクラブに入る事になりました。
とは言っても、まだパソコンの時代ではなく、エアコンの効いた(当時は普通の教室にはエアコンなんて無い!)特別造りの大部屋に、いかつい大型装置が並んでいる大型コンピュータか、ミニコンという中型コンピュータの時代です。

ちょうど大学の授業でコンピュータ概論という講義があって、面白いかもとクラブに参加した気がします。

自分でコンピュータ関連の資料(当時はサイバネティックス科学と言っていたプログラム理論みたいな本)を読んだりしました。プログラムはFORTRANという科学技術用の言語や、COBOLという事務処理用の言語を自習して覚えていきます。PL/1やアセンブラも齧りました。


クラブ部員は毎月部会費を払っているのですが、その代わりに毎月パンチカードという紙カードを100枚ぐらい貰えました。

それを使って、カードパンチ室のパンチマシンでプログラム1行を1枚にカードに穿孔していきます。

ポログラム自習用に、例えば素数を1000個プリントしてみるなどという課題を自分で設定して、アルゴリズムを考え、フローチャートを作って、プログラムを書く。

大体数十行以内のプログラムなのでそれをパンチして、出来たカードの束を大型計算機室の実行依頼箱に入れておく。すると夜の間に計算機にかけてくれて、翌日にはプリントアウト(ラインプリンタの連続紙)がされているので回収する。という流れです。

大型コンピュータは貴重な計算資源なので、色々な人からのプログラム依頼をまとめて、一気に処理するというバッジ処理でした。


プログラムが間違っていたり、パンチミスしていたり、カードの順番を間違えていたりするとちゃんとした答えが出てきません。

あちゃー! とか言いながら、修正してもう一度依頼箱に持っていくという繰り返しをして覚えていきます。 牧歌的でしたね。


カードパンチマシンはIBMの物だと思うのですが、その感触と音がたまらなく好きでした。

押し込みストロークや感触、指への馴染み具合、カシャンと言ってカードに穴をあけるメカ動作、反応の速さも 気持ちいい!!といつも思いました。
通常の電動タイプライタも使った事がありますが、それとはレベルが全然違う。
事務机くらいあるマシンでしたので、高い装置だったのだとは思いますが。


貴重なカードをミスタイプしては勿体ない!とドキドキしながら打っていたので、もしかしたら”つり橋効果?”が効いていたのかもしれませんが。


その後のPCの発展に伴って色々なキーボードを使いましたが、あのパンチマシンのキーボードが人生で最も打ちやすく気持ちが良かったキーボードであることは間違いないと思います。


今でも、PCやキーボードコーナーに行くと、まずはキータッチを真っ先に見ます。
ずっと、あの感触を探し続けています。

ああいう感触のキーボードがあれば、高くても買いたいなと思っています。

2019年11月16日土曜日

【本】樹の上の忠臣蔵 石黒耀 講談社

石黒さんの本を読むのは、「死都日本」「震災列島」「昼は雲の柱」につづく4冊目です。

「死都日本」は巨大カルデラ噴火の話で、精密な地学の科学知識に裏付けされた破局的クライマックスSF小説。ただし、日本の在り方に対する、著者の提案が随所に盛り込まれていて面白い。科学読み物という性格も持っています。火山学者からも内容に折り紙付きです。


「震災列島」も地震という地学知識を基にしたストーリーですが、どちらかと言うと刑事ものに近いサスペンス推理劇場で、ハラハラしながらどんどん引き込まれていきます。


「昼は雲の柱」も地学知識で富士山噴火をベースにした話に、神話を組み合わせた小説。富士山噴火ってそうなんだと、科学読み物の性格も少し入ったSF.



そして、今回の「樹の上の忠臣蔵」は、お笑いかつ歴史の裏の人間模様や社会の因果関係を緻密に描く、お笑い実録小説とでも言うのでしょうか?



4冊のどれも、そうだったのか、、という新知識欲を満たしてくれた上で、各冊違った面白さがある本なのですが、私には、特にこの本がハマリました。


漫才小説としても抜群に面白いし、忠臣蔵から明治維新につながる新しい話にも、なるほどと思わせるものがいっぱい。

石黒さんの本、特に前記3冊は、緻密な調査や知識をベースに書かれている物が多いのですが、この歴史小説はどこまでが事実で、どこからがフィクションなのかが分かりません。もしかしたら、人物表現以外の各種イベントは事実なのかもしれないと思いながら、でもフィクションはどこだ?というのが気になります。


4冊 どの本も、”読者自身でもっと調べてごらんよ” と著者に言われているような気になります。

学術的エンタメという分野を石黒さんは開拓されてきているのかと思いました。


この本が出版されてもう10年以上。

石黒さんの次回作を心待ちしたいと思います。

【本】安倍政権を笑い倒す 佐高信、松元ヒロ 角川新書

松元ヒロさんって芸人ですが、お名前も知りませんでした。

政権の笑い倒す事で抗議するという芸をやってこられたとの事で、テレビマスコミには出させてもらえない芸人とのこと。

でも、ユーチューブなどで見るとメッチャ面白くて、そうだよねと頷ける話ばかりで痛快です。

自民党の中にも実はファンが多くて、日頃思っていても党内で言えない事をズバズバ言ってくれるので、何度も見に来るとの事。


この本自体も面白い話が満載です。


政権への抗議の仕方で、怒り倒す、デモをするなどがありますが、笑い倒すという方法もあるのかと感心しました。


日頃からイッパイ笑い倒して、選挙で抗議するという民主主義はいいなと思いました。

政権・官僚側もマジメの皮をかぶって、裏でコソコソするのではない動き方をせざるをえなくなるかもしれません。


ヒロさんの話を聞いていると、日本に住んでいて、なんだか変だぞとボンヤリ感じるところをスッキリ説明してくれたように感じます。


TVに出る芸人や有名人は、TV局が出しても大丈夫(毒にも薬にもならない話しかしない。または、お上の方針に沿った話をする)と判断した人のみ。TV局の編集もありますし、いくら、知識人ぶったり、ご意見番、毒舌を売りにしていても、操られた発言だけが放映されているという事をしっかり意識しながら見ないといけませんね。

なんて、マジメ腐った事を書いている事自体がダメ。もっと笑い飛ばして書かないといけないのしょうねと反省。

2019年10月29日火曜日

【本】死都日本 石黒耀 講談社NOVELS

これは、九州のカルデラ噴火により日本がどうなっていくかのサスペンス小説です。

今までの日本の災害多発国という性質を無視した政治や行政の問題点をするどく指摘しながら、古来から何回も起こり、これからも起こる九州でのカルデラ噴火が、日本人の生活に、国土に、経済にどういう影響を与えていくのかが圧倒的な迫力で描写されています。


鬼界カルデラの噴火で、古代の西日本の縄文人が破滅的な事になり、日本中に縄文人が広がったという話は、以前に縄文についての本を読んだ時に知りましたが、それ以外に沢山のカルデラ噴火が九州では起こっており、眠っている事をこの本で知りました。


火砕流は海上を渡っていくという事も、頭では知っていましたが、どういう風にそれが起こるのか、火砕流の前後や周辺では何が起こるのかは、この本で初めて想像が少しできるようになりました。


火山の大噴火は本当に恐ろしい。


最近の台風の大風による災害、大雨洪水による災害など頻発、連発している日本ですが、地震、噴火もそろそろ起こって来ることが予見されていますので、日本は一体どうなってしまうのか。どういう暮らし方をするのが良いのか、途方にくれます。


台風の大停電に備えて太陽光発電システムが良いと言っても、噴火の火山灰が降れば全く用を成さない様になるでしょう。大地震に免震構造だと言っても、洪水で免振体にダメージを受けたり、火山灰で動作範囲が狭くなれば性能を発揮する事が出来なくなるでしょう。洪水に備えて高層階が良いと言っても、停電でエレベータが止まればになれば暮らしていけない。。。


一筋縄ではいかないのが、災害列島日本なのだと考えさせられました。


この本では、噴火で大ダメージを受ける日本で、総理大臣が「災い転じて福となす」政策を打ち出すという事になっていますが、内容はともかく、その様な大胆な発想の転換をもって国造りに臨まないといけないのだろうという気持ちになります。残念ながら現在の政権では、そこまで肝が据わっているいる人と長期の視点を持っている人はいないと思いますが。


2007年発刊の本ですが、今でも全く古びていないし、現実味がますます強まってきているテーマの本だと思いました。

2019年10月23日水曜日

【本】震災列島 石黒耀 講談社

これは2004年11月に売り出された本です。

ですが、2011年の東日本大災害を経験して、大津波とはどういう事になるのか、原発はどういう事になるのかを目の当たりにして、にわか学習した日本人が今読むと、この本の正確な、あまりに正確な予測に驚きます。


私は読んで、本当にビックリしました。


こういう事を予測できる知見が、既に日本にはずっと前からあったという事実にも驚きました。


こんなにクリアに原発のリスクと不合理が明確になっているのに、まだ政府が原発を推進しようとしているという現実に、また、関西電力の原発ワイロ元助役のニュースであるように原発の利権ドロドロの世界がますます深まっている状態に 本当にやるせない思いと落胆を感じます。


内容を書く事はしませんが、地震・津波・原発の世間の常識と現実の差を非常にリアルに描き切っている事に加えて、サスペンス小説としてもとても魅力的な面白い内容という事に感動を覚えました。


読み始めたら、どんどん引き込まれて止められない。
ベッドに入っても止められなくて、深夜まで読みふけってしまう。。。


東日本大震災の前に読んでいたら、きっと作者のフィクションが沢山入っている絵空事と感じながら読んだろうと思いますが、今の日本人が読んだら、そのリアリティと緻密な考察に改めて感心し、かつ非常によくできた小説と感じるのではないかと思います。


とにかく面白かったです。万人にお勧めな1冊です。

2019年10月9日水曜日

【バレーボール】俄然 面白くなってきた男子バレー

リオ五輪以来見ていなかったバレーボールのTV中継を、このワールドカップは見ています。

2010年の世界バレーからロンドン、リオへと女子バレーばかりを見てきました。男子バレーは弱いし、ラリーがないのでつまらないという認識でした。


ところが、今年のワールドカップは、男子が非常に強くなっていて面白い。すっかり男子バレーファンになって連日見ています。


今年の男子バレーは、各選手のキャラがしっかり出来ていて、各々がいろいろなエキスパートになっている様に見えます。リベロの選手も頑張っていて、ラリーもある。強力なサーブで崩せる。そして今まで見たことの無いようなバックアタックしようとしていた選手が空中で急にトスを上げてサイドヒッターが打つというような、私から見たら驚きのコンビまで出てくる。


ロンドン五輪の時の女子バレーチームも、非常にキャラや特徴の際立った何人もの選手がいて、彼女らの有機的な組み合わせと、驚異的なレシーブの粘りでとても魅力的な試合をしてくれました。


今の男子バレーはそれに近い気がします。


まだまだ強化しなければいけない点(リベロ力やサーブミス、チームの結束力など)はありますが、それらが強化されれば東京五輪でも、かなり強いチームとして世界で戦えるのではないかと感じます。


思い起こせば、ミュンヘンへの道の男子バレーの8年間がバレーボールに興味を持った始まりです。あの時の 興奮やスリル感などが、今の男子チームを見ているよみがえります。


今、全日本男子バレーが面白い!

2019年10月1日火曜日

【本】フューチャー・オブ・マインド ミチオ・カク NHK出版

副題が「心の未来を科学する」。

物理学者で一般人へ科学の前線を語る、科学の伝道師的な著者の翻訳本。


2015年の日本発刊なので、内容的には2013年までの科学について書かれていると思えばよさそうです。

という事で、本当に最前線かと言えば、既にそうではない(例えば、AIやディープラーニング等についてはこの本の後で大いに盛り上がっていますね)という事を認識しながら読む必要があります。

でも、そうだったのか!と思う内容も沢山書かれていて面白い。

欧米本の翻訳なので、日本人には冗長で長すぎる記述は我慢しても、我慢のしがいがある本だと思いました。

そうだったのか!と思った点を簡単に上げておきます。


脳の事をキチンと調べられ始めたのは、MRIや脳磁気センサ、PET等が発明されて普及してきたこの20年ほどの事。それまで、脳や精神などについては、哲学や思い込みなどで語られているだけだったのが、つい最近から科学できる様になってきた。


今は、世界中でデータ集めや実験などが進められている状態。きっと、近い将来かなりの事が分かってくるのではないか。


脳には右脳と左脳がある。それをつなぐ脳梁という部分があるが、それが切断されて左右が独立になった人には何が起こるか。通常は左脳(論理的に考える)が右脳をコントロールしているが、独立脳になったら右脳と左脳は違う考え方をするらしい。例えば右目(左脳)だけに見えるようにして何になりたい?と質問した時の答えと、左目(右脳)だけに質問した時では答えが異なる。また、右手と左手が勝手な動きをしてしまい、片手でもう片手を抑えていなければならない時があるとの事。


誰でも、右脳と左脳で本当は二重人格になっているという事なんですね。


それ以前に、自分の一人の考えと思っている事は、実は脳で多様な信号がせめぎ合っていて連続的ではない。それを円滑につながっていると自分で勝手に認識しているらしい。


BMI(ブレイン マシン インターフェース)を研究しているところが多い。脳の信号を読み取ってコンピュータに入れて解釈したり、機械を動かしたりする。


脊髄損傷で全身不随の人でも、コンピュータを介して他の人とコミュニケートしたり、道具を動かしたりする事ができる。又、どんな夢を見ていそうなのかも読み取れる可能性がある。


記憶を消したり、書き込んだりも動物実験ではある程度できつつある様子。


サヴァンの人は、左脳にダメージを受けてなる事が多いらしい。右脳に潜んでいた才能が一気に出てくるのかもしれない。


1953年CIAは巨額を使って、マインドコントロールの研究をした。
自白剤の開発、記憶の消去、催眠術や各種薬物での行動コントロール、即効性の催眠剤、薬物によって従順な人間にする人格改造など。
色々研究したが、どれも不安定で確実性がないという結論。


ただし、脳の島(脳深部の前頭前皮質と側頭皮質の間にある)の活動を鈍らせれば、麻薬、アルコールなどの依存症から離脱しやすいという事はわかった。


そう鬱病は左右脳のアンバランスから来ている可能性がある。左半球が強いと妄想やそう状態になる。右半球が強いと悲しみなどの否定的感情=うつ状態になる。


重度脳障害を受けて昏睡状態になっている人に、脳の視床まで電極を入れて電気を流す事(DBS:脳深部刺激術)で深い昏睡から目覚めさせる事ができた。


これ以外にも、心とエネルギーや幽体離脱、ロボット、AI、エイリアンについてなど盛沢山な内容が書かれています。

興味のある方は、ぜひ一度 読まれると面白いかもしれません。

2019年9月27日金曜日

【本】ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか 熊谷徹 青春出版社

ドイツ人の考え方、風習、しくみが良くわかります。


日本でも、有給休暇を年5日が義務化されました。法制化しないと有休をとらない、とりにくい社会がまだまだ日本では続いています。


メーカーでは80年代や90年代のモーレツ時代に比べたら、国内の事業所は殆どの人がホワイトカラー的にパソコンとニラメッコして過ごすようになった現代は、リモートやフレックス、裁量も含めて仕事の仕方の自由度がかなり広がったと思いますが、スパっと休むという事がまだまだ苦手な気がします。


対して、ドイツではその年にとれる有休の完全消化が上司から強制されるとの事。


このギャップが何から来るのか、それが成り立つ仕事の仕方はどうなっているのか?
そんなに休んでも、ドイツの成長率は高く、国としての借金もゼロになり、黒字化できています。


考え方一つで、社会は変わるという事ですね。


ドイツ人の休みの取り方は2週間以上連続が当たり前。
1週間目はどうしても会社の事が頭にこびりついていて、本当にリフレッシュできるのは2週間目からという事。


皆 職場の全員が有休を取るので、誰が休んでいても仕事が止まらないように、誰でも資料を見つけられるようなファイリングや仕事の進め方が徹底されている。文房具のバインダーも、標準化が徹底されているので、どこでどの商品を買ってもそのまま使える。


部下が有休をとれていないと、上司への評価は悪くなる。上司も部下に有休取得させることに必死。


一人ひとりの労働時間が短くても国として成長できるように、国が方向を決めて成長戦略を進めている。現在は「インダストリー4.0」。物や機械をデジタルでつなぎ、少量多品種などでも柔軟に人手をかけずにできる仕組み作りなどを進めている。


ドイツ国も多額の借金があったが、今では借金解消し黒字にもなっている。


ドイツがEUの中で今 経済的成功を得ているのは、2003年からの行き過ぎた社会保障をやめ、非就業者を職につける(人材派遣形態など)施策を打った事が実を結んでいる。これにより、失業率は大きく減ったが、低賃金労働者が増えた。


ドイツは解雇もしにくい法律がある。その代わり、会社の調子が悪いときは従業員をリストラするのではなく、就業時間を減らす事で人件費を減らす。給料が減らされた人は
減らされた分の60%以上を政府が補助するという仕組みがある。


こういう様に、社会保障が手厚くなっており、ドイツは社会的市場主義経済といわれている。


米英は純粋な資本主義なので、小さな政府=社会保障が薄い→健康保険制度なども薄い→何かあった時のセーフティネットがない→訴訟して金をとるしかない→訴訟社会となり弁護士が沢山いる。 という構図になっている。


又、10歳のテストで子供の将来の進路がかなり決まってしまうというドイツの仕組みも、この有休や時短の考え方に影響を与えているとの事。


この本を読んで、どういう暮らし方をしたいのか、それを実現するにはどいうやり方が必要なのか。という考え方ひとつで社会のしくみを政治で作っていくことができる良い例のように思いました。

2019年9月22日日曜日

【本】イスラエルがすごい  熊谷徹 新潮新書

この15年ぐらい、日本のメーカーもオープンテクノロジーと言って、自前主義ではなくて、社内にない技術は積極的に社外から導入しようという話が出てきています。

企業買収という話も一時盛んでしたし、大学との連携というような話、異分野の企業とコンソーシアムの様なものを組むというのも流行りました。

シリコンバレーでのベンチャーの勃興というのが一つのきかっけだと思います。

その流れはすっかり定着してきていますが、その先端技術、面白い技術としてイスラエル発という案件もこの5年ぐらいかなり耳にしたり、実際にコンタクトして付き合ったりもしてきています。

自動車の安全システムに関連する仕事をしている人は、数年前にモービルアイという自動認識カメラ(前方の物体を車か人かなど判別できる)がその世界をあっという間に席巻したことを知っていると思います。このモービルアイがイスラエルの技術で、インテルに巨額で買収された事も。


最初にイスラエルと聞いた時には、中東の小国だけど、どうしてハイテク? という疑問を持った記憶があります。でも、軍隊での習得した軍事技術を使って、退役した人がベンチャーをやっていると聞いて成程とボンヤリ思っていました。

この本を読んで、どうしてイスラエルが中東のシリコンバレーになっているのかが良くわかりました。



イスラエル国防軍に8200部隊という電子諜報部隊があるそうで、そこの出身隊員たちがベンチャーを色々と始めているらしい。(勿論、その他の部隊卒でベンチャーをやっている企業もあるらしいが)

よって、セキュリティ関係(民間企業のセキュリティファイアウォールや、コネクテッド自動車のセキュリティ専門など)のベンチャーも多いとの事。

そして、イスラエスのベンチャーは20社に1社ぐらいは大手企業に買収されるexitができているとの事。これはなかなか高確率。

買ったり、投資したりしているのは、欧米のみならず中国からも膨大な資金が動いているらしい。

ドライビングフォースになっている8200部隊は、徴兵制(18-20歳)で若者に国防を直接担わせる。そのために16歳の時から、素質や能力、創造性、適正に関するスクリーニング検査を行い、ITに関する豊富な知識や他の人とは違った発想法など、特殊な才能を持つ若者だけが8200部隊に配属する。ここに配属されるのは、0.01%という選りすぐられた者だけ。8200部隊は米国の世界最大の電子諜報機関NSA(国家安全保障局)に引けをとらない内容を持っている。

そして、イスラエルのベンチャー大国となった理由の一つに「規制の考えにとらわれない自由な発想」「自分の頭で考え、知恵を絞れ」という考え方がある。

8200部隊に配属された若い兵士たち(男女)は、上官から極めて難しい課題を与えられる。上官は課題を与えるだけで、どのように解決したらよいかの指導は一切しない。
「自分の頭で考え、知恵を絞れ」である。赤ん坊を水の中に投げ込んで、自分で泳ぐことを体得させるような教育法。


この経験は、除隊後 ゼロから始めるベンチャー企業をスタートさせる時に大いに役に立つ。


つまり、8200部隊の強さの秘密は、常識や伝統を超えた発想ができる若者を集めているから。

「8200部隊に入れる若者は、ITの天才だけではない。軍は、若者が従来の常識にとらわれない発想ができるかどうかを、最も重視する。つまり、通常人には見えないような、現象や相関関係を見ることができる人々だ。この要件を満たさないと、8200部隊には入れない」

又、「自分の頭で考える」という事はユダヤ人の、さんざん周囲が豹変して苦しめられてきた歴史に元ずく価値観に結びついている。

「我々イスラエル人は、あらゆる権威を疑う。政治や企業の上司などのいう事を絶対に鵜呑みにせず、疑ってかかり、質問攻めにする。我々は、権威に対する畏れを持っていない」

イスラエル国防軍の兵士たちは、上官の命令が不合理だと思ったら、「その命令はおかしい」と言って別のやり方を提案する権利がある。兵士たちが命令に服従するのは、上官の命令が理にかなっていると思った時だけだ。なぜならば、上官も誤った判断をしている可能性があるからだ。「すべてのことを疑い、質問せよ」というイスラエル人の大原則がここに生きている。


もう一つ、イスラエルがベンチャー国家になれた理由は、ソ連の崩壊に伴い、ソ連で高等教育を受けた者や技術、科学等での優秀なユダヤ人がイスラエスに一気大量に1990年台に移民してきた事。

又、イスラエルは周りを敵国に囲まれた四面楚歌の状態であり、不毛な砂漠の地から国を作る必要があるという事で、すべてを自分たちで作り上げる必要があるから。

軍事技術も、生活技術も。


現在、米国(特にトランプなどは)、欧州、中国から熱い視線と投資を浴びて親密な関係を作っているが、それでも何時でも何物にも包含されずに、自分自身の独立性は維持確保する。 それがイスラエルという国との事。


日本の、長いものには巻かれろ 主義とは真逆で、非常に興味深い国だという事が良くわかりました。

2019年9月21日土曜日

【本】人類、宇宙に住む ミチオ・カク NHK出版

著者はニューヨーク市立大学の理論物理学教授で、米国でTV等を通じて最新科学を一般聴取者に情熱的に伝える人との事。

2019年4月に発刊されたばかりの本です。


予備知識もミチオ・カク博士という名前も知らずに読み始めたのですが、400ページ以上もある分厚い本を引き込まれる様に読んでいました。


アポロ計画を踏まえて、現在の地球でおこなわれつつある、宇宙技術(スペースX等民間の動きや、各国の機関の動き)の現状や、月や火星目指した各種プランについて、ロケットエンジン技術に今と今後について、などホットな話題が分かりやすく書かれています。


そこまでの内容だと、他にもいろいろな本やニュースサイトもあると思うのですが、この本の良いのはその次として、宇宙に人類が進出しようとしたら直面するだろう課題とそれに対するいろいろなアイデア・検討についての最新が詳しく書かれている事。

また、さらに他の星系に進出する具体ステップや、最後に銀河的に発展するにはどういう文明が必要か、どういう文明になっているのかを人類に限らずに考察が述べられている事です。


銀河レベルに進むには、宇宙の構造を理解する必要があり、そのためにはまだ解明されていない理論物理(統一場理論や ひも理論の可能性など)の課題などへのつながりも良くわかるように書かれています。


部分部分の単語などは、今までも耳に入ってきたものばかりかもしれませんが、それらが人類の宇宙進出に於いてどういうつながりを生むのかが考えられる絶好の一冊と思いました。


私の知らなかった事、例えば太陽系を包み込んでいるオールトの雲(小惑星などが沢山浮いている空間)が、隣の星系までの真ん中ぐらいまで広がっているとの事。となると、そこに浮かぶ小惑星を伝っていくことで4光年先の隣の星へ渡っていくことが現実解として具体的にできる可能性があるらしい事。などはとても興味をそそられました。


この本は、中高生の方々に読んでもらいたいなと思いました。

科学と人類の未来に対する夢を持てる、久々にポジティブな本です。
こういう話をTVで聞く米国の少年少女達は、ハッピーだなとも思います。

NHK出版の本なのですから、ミチオ・カク博士を呼んで科学番組を作って日本でも放送してくれれば良いのに。 

日本の科学技術力回復には、小中高生が科学への夢を持てるかにかかっていると思いますので。

2019年9月1日日曜日

【本】ドイツは過去とどう向き合ってきたか 熊谷徹 高文研 2

<教育面>
・教科書
 筆者がドイツの小学校の教科書を見てみると、ナチスがドイツを支配していた時代に関する記述が細かく、子供には残酷すぎるのではないかと思われるほど、生々しい写真や証言が載せられていることに驚いた。

又、中高での教科書でも、ナチスが権力を掌握した過程や原因、戦争の歴史を詳しく取り上げ、ドイツ人が加害者だった事実を強調している。

例えば、第1次世界大戦後の窮乏にあえぎ、ベルサイユ条約で重い賠償請求を突き付けられたドイツ国民が、選挙という合法的な手段で、ナチスを政権につけたいきさつ、そしてナチスが、人種イデオロギーに基づいて周辺諸国に与えた被害が、いかに甚大だったかがわかりやすく説明されている。

・歴史の授業は「暗記」ではなく「討論」が中心
 ドイツでは歴史的事実をどう解釈するか、そして自分の言葉で考えを表現して討論することが重視されている。

歴史の授業を通じて、若者たちにナチスの犯罪と取り組ませることは、「過去との対決」の中で最も重要な部分の一つである。こうした教育の結果、大半のドイツ市民の間には、ナチスの思想や軍国主義、武力による紛争解決を嫌悪し、平和を愛する心が深く根付いている。こうした現代史を学ぶ事は、被害を受けた周辺諸国に安心感を与える原因の一つになっている。

・国際教科書会議
 1945年から1965年までドイツが他国と開いた教科書会議の数は146回。そのうち83回が二か国間会議との事。最も多く教科書会議を行ったのはフランスとポーランドとである。現在までほの毎年教科書会議が開かれている。

2006年にドイツとスランスの歴史学者たちが、初めて共同で歴史教科書を執筆し、発行した。ドイツ語とフランス語で書かれた同じ内容の教科書が、両国の高等学校で使われる。

・加害責任の追及に積極的なマスコミ報道
 ドイツに暮らしていると、戦争が終わってから60年以上経った今でも、テレビ番組や新聞記事、本、雑誌、映画のテーマとして、ナチスの犯罪や第二次世界大戦が頻繁に取り上げられる事に気が付く。

こうした情報に触れて、さらに知識を深めたいと思った若者は、政府から情報を簡単に取り寄せることができる。ドイツ政府とマスコミは、犯罪が繰り返されることを防ぐには、ナチズムの邪悪性について、国民に積極的に情報を与えなくてはならないと考えているのだ。政府とマスコミが繰り返し、ナチスの犯罪についての注意を喚起するため、戦争中の記憶の風化の度合は日本よりも低い。

<司法面>
・アウシュビッツ裁判
 1963年12月から2年間に行われた「アウシュビッツ裁判」で、西ドイツの多くの国民が、絶滅収容所におけるドイツ人の蛮行のディテールに初めて触れ、大きな衝撃を与えた。

この裁判が、過去との対決を一種の社会運動にし、歴史を心に刻む姿勢を、市民のアイデンティティーとする上で、大きな役割を果たした。

・ナチス犯罪追及センター
 1958年に検察庁が「ナチス犯罪追及センター」を設置し、10万人以上の容疑者を捜査した。 2000年に役目を終えた。

・障害者安楽死計画
 ヒトラーが、病気や障害の治療が不可能と診断された市民を殺すよう命じている。介護費用を節約しようと考えた。関連して1987年に2人の老人に有罪判決をくだした。

被告の弁護士は、「ナチスに騙されて、犯罪に加担させられたのであり、大きな機械の中の歯車の一個にすぎません。彼は良心の呵責に悩みましたが、ヒトラーが命令したのだから、殺害は合法だと考え、義務を遂行しただけです」と述べた。これに対して、判決を下した裁判官は、「二人は狂信的なナチスではなく、もともと道徳心を持った人間でした。しかし、”どんな場合でも人を殺してはならない”という自然法を無視しました。義務だからという理由で、殺人に加担することは許されません。だから私は彼らを有罪にしたのです」と語った。

ドイツの司法界や社会は、「ナチスの時代に生きた、ドイツ市民全員に罪がある」という集団責任は否定している。裁きの基準になるのは、個人が「どんな状況でも、人を殺してはならない」という自然法に違反したかどうかである。

もちろん、当時は戦争が行われていたのだから、いわるゆ軍事作戦中の戦闘行動には、この自然法はあてはまらない。いわゆる人道に対する罪を犯したかどうか、また捕虜の射殺や虐待を禁止しているジュネーブ協定に違反する行為をしたかどうかである。

つまり、「個人の罪」を追求する。

このドイツの原則は大変は勇気を必要とする。戦後に生まれた我々は「命令に背くべきだった」と簡単に批判できるが、実際に、戦争という異常事態に直面した人々にとって、上官の命令にそむいても、自分の道徳心に従うということは、大変な勇気を必要としたに違いない。

だが戦後、西ドイツの司法が「集団の罪」を否定し、「個人の罪」という概念を使ったことは、「西ドイツは、ナチス体制と完全に決別した、新しい国である」という線引きを行う上でも大いに役立った。ドイツ人全員が悪人だったわけではないという論理を使えば、「一億総懺悔」は必要なく、再出発は比較的容易になる。

ドイツと異なり、わが国では戦前・戦中の日本を「絶対悪の体制」とみる考え方は主流ではない。このことは、ドイツと日本の「過去との対決」が、大きく異なる道を歩んできたことの原因の一つとなっている。

・時効廃止で、一生追及されるナチスの戦犯

<民間の取り組み>
・賠償基金「記憶・責任・未来」
2000年8月ドイツ政府50%、企業50%で総額5000億円の表記基金を立ち上げた。
ウクライナ、ロシア、ポーランドなどに住む165万人の強制労働者に対して、また強制収容所で人体実験の被害者ら、財産の没収などで経済的な損害を受けた人、生命保険が支払われていなかった人などに賠償金が支払われた。

1998年に米国に住む強制労働者がシーメンス、VW,ベンツなどの大手企業に対して損害賠償の集団訴訟を提起した。それ以降、米国の原告弁護士が大手企業に次々と訴状を送り、欧米のマスコミがドイツやスイスの企業がナチス時代に果たした役割について、集中的に報道し、企業にとって不利な事実が次々と明るみに出てきた。

ドイツ企業は、経済のグローバル化が進む中、訴訟の標的となることによって、特に米国での活動に支障が出ることを恐れ、政府に協力して、賠償基金に出資することを決めた。 ドイツのメーカーの70%、保険会社、銀行の90%、小売企業とサービス企業の60%が出資している。

・元被害者との交流・支援を行うNGO「償いの証」
 ドイツの若者に元被害者の生の話を聞かせる場を提供するなど。

<過去との対決。今後の課題>
・極右勢力の伸長
 旧東ドイツでは、「過去との対決」が不十分だった。又、手に職を持った人などはみな西ドイツに移ってしまい、旧東ドイツ地域では失業率も高い。そういうところでナオナチなど極右勢力が伸長してきている。


抜粋は以上です。

ドイツは「ナチスがドイツの名のもとでひどいことをした」。ナチスの罪は徹底的に追及するとともに、二度と繰り返さないように心に刻む。悪いのはナチスとそれに従った個人であり、ドイツ市民全体に罪はない。というスタンス進められているという事をこの本で初めて知りました。ナチスに対する反省という形で、戦争行為を包含させた。 

日本の現在の考え方との違いに驚くと共に、考えさせられます。

【本】ドイツは過去とどう向き合ってきたか 熊谷徹 高文研 1

”とてつもない「負の歴史」を背負ったドイツは、いかにして被害者や近隣諸国の信頼を取り戻そうとしたきのか。在独17年のジャーナリストが、政治・教育・司法・民間における取組の現場を訪ね、ドイツ人の「過去との対決」について報告する。”という副題がついた本です。2007年4月発売のもの。1989年~1990年のベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統合から10年以上たった時点でのドイツの状況という事になります。

この本を読んでみて、単なる敗戦国という事に加えて、戦闘行為とは別なホロコーストという事の2つの負の歴史にどう対応して、現在EUという欧州連合の重鎮となってきているのかが良く理解できました。

イデオロギー的な色を持った本ではなく、一つ一つ現場を訪ねて作られた 久しぶりジャーナリストのすごさも感じる事ができました。

おかれている状況や背負っている物はちがいますが、過去との向き合い方におけるドイツと日本は大きく異なっているだろうと感じます。

逆に、日本の過去への向かい方も良く知っていない自分に気が付き、対比できる様に次は日本についても調べていく必要がありそうです。

簡単な要約等をすべき本ではないですが、自分がポイントと思った点を記します。

<政治面>
・ベルリン・ホロコースト犠牲者追悼碑
戦後60年にあたる2005年にドイツ政府が40億円強をかけて「ナチスドイツの犯罪の記憶を世代から世代へ伝えていくため」に完成させた。1万9000平米の敷地に、まるで黒い棺のように見える大きな石の立方体2700個が覆いつくしている。高さが微妙に違うので、まるで石棺の列が波打っているような印象を与える。人々は黙りこくって、石棺の森を歩き回っている。

 場所は、日本でいえば銀座4丁目か有楽町に相当する首都で最も目立つ場所に自国の恥部に関するモニュメントを建設した。ここはナチスの権力中枢だった地域で、ドイツ国民がナチスという犯罪者の集団を、選挙によって合法的に権力の座につけたために、欧州全体に引き起こした惨禍の根源を、何よりも象徴する場所とのこと。

資料館には、12歳で殺されたユダヤ人少女の、父親に宛てた手紙が展示されている。

「死ぬ前にお父さんに別れを告げるためにこの手紙を書きます。私はもっと生きたいですが、もうだめです。私たち子どもは、生きたまま溝に投げ込まれて殺されるので、とてもこわい。お父さん、さようなら」

このモニュメントを建設したことで、ドイツ政府の歴史認識と過去と対決する姿勢がはっきり示されている。黒い石板の列は「ナチスの犯罪を忘れず、若い世代に語り継いでいく」というドイツ人の決意表明。


・賠償の出発点・ルクセンブルグ合意
1939年時点でドイツ、ソ連、ポーランドなど20か国に830万人のユダヤ人が住んでいたが、そのうち約600万人が殺害されている。この600万という数字は加害側のドイツと被害側のユダヤ人との間で一種のコンセンサスが出来上がっている。
しかも、アウシュビッツなどで、工場のような殺人施設を作って、流れ作業で市民を大量に虐殺するちう悪質な手法は「ポロコーストに比べられる犯罪は、ナチスの前にも後にもない」という点でドイツ側とユダヤ側の間の理解も一致している。

しかし、1949年西ドイツ建国直後のドイツ首相演説ではユダヤ人への賠償は触れられなかった。批判を浴びて2年後にユダヤ人に対する謝罪の姿勢を示したが、”ナチスの時代でも、宗教的な理由や良心の呵責、また恥の気持ちから、ユダヤ人を助けたドイツ人はいた”という事も言い、ドイツ人の責任を軽減しようとしたいた。

ドイツの「過去との対決」は、敗戦直後から現在の水準に達していたのではなく、60年の長い歳月をかけて深化してきたのである。

1952年ドイツとイスラエルは「ルクセンブルグ合意書」に調印。西ドイツは12年にわたり、ホロコースト生存者50万人が住んでたイスラエルに30億マルク払った。さらに、イスラエル国外に住む被害者を代表する「ユダヤ人賠償請求会議」に4億5000マルクを払った。当時の価値では莫大な金額だった。

イスラエルの右派は血塗られた金を受け取るなと批判し、西ドイツでの世論調査では賠償金支払いを前向きに評価したのは11%だけで、68%は額が多すぎると批判的だった。
でも、アラブ諸国との戦争で疲弊していた当時のイスラエル政府にとってはドイツからの経済援助は貴重だった。

これとは別に、1961年からイスラエルに対して毎年秘密裡に資金供与を行ったほか、1962年からは軍事物資の提供も行い始めた。1965年に両国の外交関係が樹立した背景には、ドイツ側の賠償努力があった。

・ドイツの払った賠償金 だんだん賠償対象を拡大してきている。

1956年に「ナチスに迫害された被害者の賠償に関する連邦法」(=連邦賠償法)を制定した。この法律の特徴は被害者の対象を広くしている事。例えば、ナチスによって創作活動を妨害された芸術家や、ユダヤ人と親しかったために博大された人々にまで請求権を認めている。

2002年末までに賠償請求438万件、430億ユーロが支払われた。さらに、ドイツ連邦議会は1996年に、ドイツ系ユダヤ人で、中東欧地域からアメリカやイスラエルに移住していた3万5000人のホロコースト生存者にも年金を支払う事を決めた。

以上のような包括的な賠償とは別に、西ドイツ政府は1959年から今日まで、欧州15カ国、アメリカとの間に2国間協定を結び、連邦賠償法の対象とならなかった被害者に対しても賠償を行ってきた。

冷戦が終わった1990年代には、ドイツ政府が主導する形でドイツ企業とともに基金を設立して、戦争中にドイツ企業のために強制労働をさせられた被害者に対して、賠償金の支払いを始めた。

2003年11月時点で連邦財務省は「ナチスの犯罪に関する賠償の支払いは、被害者が生きている限り続く」としている。

ドイツ政府は、金による償いが不可能であることは認めながらも、迫害のために健康を損なったり、トラウマ(精神的な傷)に苦しんだりしている人に対して、経済的な支援を通じて謝罪し、生活の負担を少しでも軽くしようとしている。したがって、ドイツ政府も金銭による賠償についてはあまり対外的に強調しない。

・1970年ブラント西ドイツ首相は、ポーランドのワルシャワ・ゲットー追悼碑の前でひざまずいた

 当時のポーランド国民の600万人が殺され、ユダヤ人は85%の人が殺された。
一方、敗戦時にヤルタ会談、ポツダム会談にて米英ソの連合国はポーランドの西国境をドイツよりに動かす(オーデル・ナイセ川まで)事を決定し、シレジア地方はドイツ帝国からポーランド領となった。この結果多数のドイツ人が追放されて逃避行した。

 この為、戦後 両国民間では憎しみの感情が強かった。そんな中、ブラント首相は追悼碑を訪れた。そこは、ナチスに武装蜂起して鎮圧破壊された市民を追悼するために作られた。西ドイツ首相がユダヤ人を追悼する碑の前で膝を折った映像は全世界をかけめぐり、謝罪の気持ちを全身で表現する「新しいドイツ人」の姿を、被害者に対して印象づけた。

後日ブラント氏はこう言った、<私は、ドイツ人が何百万人ものユダヤ人、ポーランド人を殺した惨劇に直接は加わらなかった。しかし、惨劇を引き起こしたドイツ人のために、自分も責任の一端を負うべきだ。この気持ちをひざまづく事で表現した>

「過去」と対決する必要性は2つある。一つはなぜこのような事が起きたのか、将来繰り返すのを防ぐにはどうすればよいのかを若者たちに伝える事。もう一つは周辺諸国に今後のドイツの政策が国益だけでなく、道徳をも重視することをはっきり示すため。

自国の歴史に批判的に取り組めば取り組むほど、周辺諸国との間に深い信頼関係を築くことができると思います。例えば、現在のフランスとドイツの間のように。

同時に過去の重荷を必要以上に若い世代に背負わせることには反対です。ドイツは、悪人に政治を任せた場合に、悲惨な事態が起きる事を心に刻む作業については、かなり成果をあげていると思います。周辺国の人々には、「我々の過去を批判的にしか捉えないという態度は、いつかはやめてください」と言います。

若者たちには、父や祖父がしたことについて責任はありません。しかし、彼らは同時に、自国の歴史の流れから外に出る事はできないということも知るべきです。そして若者は、ドイツの歴史の美しい部分だけでなく、暗い部分についても勉強しなくてはならないのです。 それは、他の国の人々が、我々ドイツ人を厳しく見る理由を知るためです。そして、ドイツ人は過去の問題から目をそむけるのではなく、たとえ不快で困難なものであっても、歴史を自分自身につきつけていかなければならないのです。


・歴史リスク
 戦争中に被害を与えた国から、歴史認識について批判されて、外交関係、経済関係に悪影響が及び、国益が損なわれる事がある。これを著者は「歴史リスク」と名付けた。

ドイツの行ってきている歴史と対峙する事は、この歴史リスクを減らす努力を行ってきたという事でもある。

現在のドイツは、イスラエル、アラブの両方から信頼されている。

又、過去との対決により信頼関係が築かれたので、ドイツからの国外派兵が周辺諸国との間に摩擦を起こさない。
さらにドイツは一人歩きを避け、NATOや国連など国際機関が定めた枠済みの中で、他国とともに行動していることも重要である。彼らは、国外派兵が憲法に違反していないかどうか、徹底的に議論する。他国から軍事貢献を求められても、直ちに同意する事はせず国内法と照らして検討する。最終的には連邦憲法裁判所の判断を仰ぐ。こういう真面目な態度が、かつて被害を受けた国々にとっては安心感の源となっている。

日本が本格的憲法論議を行わずになし崩しで派兵した事などは、ドイツ人は「憲法を形骸化するものだ」として激しく反発するだろう。

2019年8月24日土曜日

【本】現代ドイツの社会・文化を知るための48章 田村光彰、村上和光、岩淵正明  明石書店

この本は2003年4月発刊の本です。少し前の本ではありますが、ドイツが戦争加害に対してどう取り組んできたのかを知る一つの参考になると思い読んでみました。

ポイントになると思う幾つかの章を抜粋しますが、これを書かれた後の16年間でどういう風になって行ったのかは、ネットで今の姿を調べてみるのが良さそうです。

19章 強制労働とドイツ企業

 1939年9月、ドイツはポーランドに侵略を開始した。ヒトラーはこの約2年前に、陸海空3軍の首脳を前にドイツの「生存権」構想を発表した。食料と土地の確保、そして領土の獲得には暴力の道しかない、と。さらに1941年6月対ソ戦争を開始する。目的は「第1に征服、第2に支配、第3に搾取」(ヒトラー)である。
男子が兵隊にとられたため、特に1942年以降は、労働力不足に陥る。これを補ったのが、①戦闘により捕まえた戦時捕虜、②占領した各国から連行してきた民間人、③強制収容所の収容者たち、である。この人たちが強制労働をさせられた現場は、私企業、ナチス親衛隊所有企業、自治体、教会、農家、一般家庭など、社会の全分野に渡っており、1944年夏の段階で780万人、終戦までで述べ1000万人が働かされた。

 強制労働の目的は、男労働力の補充、企業の軍需生産維持、工場等の地下への移転や地下新工場の建設、企業からみると経費の節約、若さと労働生産性の向上、戦後に備えての資本蓄積。
強制労働者たちは、こうした目的で酷使され、自分たちの味方である連合軍から空爆される危険にさらされながら、ネチスや収容所監視員の残虐な扱いに苦悩し、さらには恒常的な寒さと飢えに襲われていた。ダイムラーベンツやフォルクスワーゲンなどで働かされていた。
保険業界もナチスと絡み、こうして強制労働の現場は「秩序正しく清潔」に運営された。業界は、守るべきは人の生命と安全ではなく、強制労働とその先に待ち構えているガス室での殺戮体制、すなわり生死の境目の手前で行われる強制労働と向こう側へ抹殺する制度を「安全に保障」した。
企業だけでなく、一般家庭、自治体、教会、小規模農業でも強制労働者の労働力に依存した。多くの場合、賃金は支払われていない。

20章 強制労働の補償

 歴史の真相の解明に向けた努力がとりわけ1990年代以来世界的レベルで続いている。国連はルワンダ、ユーゴスラビアでの大量虐殺をめぐり、臨時の戦犯法廷を開き、真相の解明と加害者の処罰を目指している。南アの「真実和解委員会」には、アパルトヘイト政策のもとで行われた人権侵害や政治的弾圧の解明に、加害者と被害者双方が参加した。2000年8月国連人権促進保護小委員会は、「従軍慰安婦」問題で、日本政府が損害賠償などの法的責任を果たしていない。とする報告書を全会一致で歓迎する決議をした。ドイツは、戦後補償問題では日本よりも確かに進んだ側面を持っている。ただし、ドイツ統一前の西ドイツは、前章で取り上げた強制労働の問題では、補償の対象者を主として西側のみに限っていた。その原因は、第1に東西の冷戦構造である。西側陣営に属する西ドイツは、量的にも質的にも最も被害が深刻で、大きかった東側の被害者を放置した。

 第2は、強制労働の実態と歴史の真相の解明が進んでいなかった点が挙げられる。ドイツ企業は、強制労働者はナチスから強いられて雇用した、と主張していた。例えば、「政府により、不足する労働力を強制労働により補うよう強いられた」(シーメンス社)。外国人は確かに強制労働させられたが、企業もそれを強制させられた。従って強制労働者も企業も共に被害者なのだという。今日、こうした「企業も強制させられた」とする説を支持する証拠は全く存在しない。逆に、企業はナチス詣ですることで強制労働者の投入を積極的に要請していた真相が次々と明るみに出て来た。真相の解明を可能にした契機は以下の3点である。①ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一されるにつれて、資料館の公開が進んだ。②市民、労組、強制労働の生存者達、学生運動経験者、教会、緑の党、社民党、民主社会主義党などの粘り強い運動は、子会社やその関連産業に資料の開示を約束させ、親会社はナチス時代の過去を隠せなくなってきた。又、この運動は、企業に自らの企業史を書かせた。企業は自分の「暗い過去」と向き合わざるを得なくなった。③アメリカで起こされたドイツ企業に対する集団訴訟。1997年、在米200人の元被害者は、アリアンツ社以下7保険会社を相手取りニューヨーク地裁に訴え、補償請求の声を挙げた。イメージダウンと市場喪失を恐れるドイツ企業は、「被害者」を装う事はできなくなった。

 自らの過去に目を向けざるを得なくなってきた企業から明るみに出て来た事実は多い。中でも、強制労働者の取り扱いは、各企業の自由裁量に任されていたことが分かってきた。労働者を飢餓と寒さのなかで、生死の境目で酷使し、ガス室に送った責任はナチスだけにあるのではなかった。少数の例外を除いて、多くの工場では企業が、食料、労働環境の改善に関心をまったく払わなかった。ナチスの人種理論は、特に東欧スラブ民族を最劣等民族と位置付ける。体制批判者への弾圧、殺戮、ユダヤ人へのポグロム(ホロコースト)が日常化しているなかで、企業幹部や工場責任者に、とりわけ東欧出身の強制労働者の人権に配慮する感覚が皆無だった。こうして放置されてきた東欧出身の強制労働者への補償問題が、真相の解明という世界史的な潮流のなかで浮上していきた。しかし、キリスト教民主同盟・社会同盟と自由民主党との連立からなる中道右派のコール政権は、補償問題に聴く耳をもたなかった。1998年に成立した社民党と90年連合・緑の党の左派新連立政権の努力で、東側の強制労働者を対象にした補償基金『記憶・責任・未来』が設立され、6300の企業と政府がそれぞれ50億マルクずつ拠出した。すでに補償給付が開始され、2002年7月段階で86万7千人が第1回目の補償金を得た。ポーランド人約38万人、ウクライナ人約19万人となっている。被害者の主張は、①未払い賃金の支払い、②被害実感と苦悩の認知、③謝罪と補償、である。

 基金の特徴は以下の点にある。①基金は苦しみの緩和のための、「ささやかな寄与」であり、謝罪や補償になっていない。虐待の法的責任も認めていない点で、極めて問題ンが多い。②ドイツの全企業約20万社が拠出を呼びかけられた。その理由は、強制労働がドイツの全社会を潤し、それにより戦後のドイツ社会が支えられている、という認識に基づくからである。③企業側の最大の恐れは、米国などでの市場喪失、企業の提携や買収が出来なくなることであった。そのため、基金は、幣国で提訴されていたドイツ企業を相手取った集団訴訟をすべて却下し、再提訴も不可能にする条項を含んでいた。こうして今後、新たな資料が出てきて、真相の解明がさらに進んだとしても、裁判の道は一切閉ざされた。④基金には、その後自主的に、自治体、日刊紙「TAZ」、作家ギュンター・グラスらが拠出し、参加者は当初の政府、企業を超えて広がっている。


21章 戦後賠償とギリシャでの残虐行為

 1997年10月、ギリシャの地方裁判所はドイツ政府に対し5400万マルクの補償金をギリシャの遺族に支払うよう命じた。ドイツ政府は、外国の裁判所から始めて補償金支払いを求める判決を受けた。

 ドイツ政府は、なぜ補償の支払いを要求されたのか。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツはギリシャを占領した。ドイツ軍により処刑されたり、強制収容所送りとなったギリシャ市民は約13万人、うち6万5000人はユダヤ人であった。例えばテッサロニキではユダヤ人社会は全滅し、欧州でも最重要のシナゴーグ(ユダヤ教会)の一つが破壊された。64の地域で市民に対する大量殺戮がなされ、5万6000人が射殺され、占領政策により数十万人が飢餓状態に陥り、壊された市町村数は1000にのぼった。社会インフラの半分が壊滅した。こうした行為には、ナチス親衛隊よりも、正規軍であるドイツ国防軍が積極的に関わった。1947年、パリの戦勝国会議で、ギリシャ政府は賠償額を70億ドル以上と算定している。

 大量殺戮と都市の破壊以外に、強制貸付の問題がある。ドイツ軍は、占領中、ギリシャの銀行に35億ドル貸し出すよう命じた。ドイツ占領軍は当時文章にて返却を約束したが、今日に至っても約束は果たされていない。1966年、ギリシャ政府は、これを「強制国債」問題として取り上げ、ドイツ政府は未決着であることを告げている。以来、ギリシャ政府は戦後史のなかで繰り返し賠償を請求しているが、ドイツ政府は応じていない。

 1953年3月当時の西ドイツ政府は、西側諸国で、第二次世界大戦中ドイツと交戦状態にあった国々と「ロンドン債務協定」を締結した。その核心は、ドイツの賠償支払いは、まず東西ドイツが統一され、その後に各国と平和条約を結ぶまで延期されるという内容であった。東西ドイツの統一とは、この時代は訪れることのない夢物語であった。夢物語を利用し、各国に賠償の<受取りの延期>を「、しかし実態は、<受取りの断念>をさせた。交渉委員はヘルマン・アブスであった。1950年代以降の「ドイツ経済の奇跡」は、この支払の先延ばしにも一因がある。

 ナチス時代、彼を頭取とするドレスデン銀行は、親衛隊へ資金を提供し、また収容所が大量殺戮の国際裁判で、米側検察官から「真の戦争犯罪者」の一人に名を挙げられている。アブスはこれを反省しないばかりか、西側被害国に賠償の受取りを断念させることに成功した。被害者たちは、ドイツ国家が被害国に賠償(国家賠償)をしないならば、せめて被害者個人にドイツ政府が補償(個人補償)をするよう運動を起こした。この結果、ギリシャには1960年3月総額で1億1500万マルクが支払われ、13万人が、一人当たりわずか900マルク弱の個人補償を受けた。ところが、1990年、アブスが口実とした夢物語は突如実現した。両ドイツが統一され、統一された両ドイツは、米英仏ソと平和条約を結んだ(両ドイツと4か国で締結されたので「2+4条約」という)。アブスの約束通り、賠償の支払いが始まるはずであった。しかし、コール政権はこれを拒否し続けた。

 そこでギリシャの遺族や被害者は、ドイツ政府に対し強制国債の払戻しやホロコースト(大量虐殺)への個人補償を求めて、ギリシャ全土で訴訟を開始した。これに対し、ドイツ政府は、ギリシャの裁判所には、国境を越えてドイツ政府の問題を裁く権限はないと主張してきた。しかし、冒頭で触れたようにレヴァディア地裁は、補償金の支払いを命じた。ドイツ政府は、これを不服としてギリシャ最高裁に上告をした。しかし、2000年5月、最高裁は地裁判決を支持、理由の一つは、行われた殺戮は、軍隊の戦闘中になされた兵士同士の殺戮ではなく、ドイツ軍による市民に対する大量殺戮であり、これは国境を越えて裁くことができる、とするものであった。ここにみられるのは、今後国際社会は、国の内外に関係なく、また戦時中であろうと戦前であろうと一般の市民に対する組織的、大規模な殺戮は<人道に対する罪>として、国境を越えて、許さないとする姿勢である。

 ドイツ政府が賠償支払いを拒否する姿勢は続いている。そこで遺族や被害者たち200人は、ギリシャに存在するドイツの外国資産を差し押さえ、その資産を競売にかけ、補償金や慰謝料を捻出しようとした。差押えの対象となった3施設のうち一つが、アテネのドイツ文化センター(ゲーテ・インスティテュート)である。差押えられていた施設の競売は2001年9月に予定されていた。しかし、アテネ上級裁判所は競売の数日前に「ギリシャ司法省の同意が必要」という判断を下した。司法省は、同意をしなかったために、競売は今のところなされていない。


24章 ドイツの平和教育

学習指導要領の姿勢
 日本と同様に特別な過去を歩んだドイツでは、歴史との対話が平和を考えるために欠かせない要素となっている。このため学校での歴史教育は平和教育の一環として位置づけられ、近現代史学習、とりわけ第3帝国時代(ナチス時代)の学習にはかなり集中的な取り組みがなされている。
 
 学習指導要領の面から見てみると、地方自治主義の徹底するドイツでは、学習指導要領も州ごとに編成されるが、それぞれ若干の違いがみられるにしろ、歴史に対する基本的な姿勢は共通する。例えばハンブルグ市の学習指導要領では、歴史を学ぶ目的として民主主義的思考の獲得を挙げている。その際以下の2点に重点が置かれている。第1に過去のドイツ人の価値基準や行動を分析することで、民主主義の成立条件を探ることである。とりわけ「戦争」を学ぶことの意味は、「残虐で非人道的な体制とともに歩んだ歴史的体験から、民主的な人権国家が不可欠であるとの認識を獲得し、この立場からドイツ連邦共和国における民主主義の維持発展に取組む」ためとされている。加害者としての立場を明確にしつつ、戦争の歴史から平和について学び取ろうという姿勢がうかがえる。第二に歴史学習の方法として、過去と現在との連続性に着目し、歴史を追体験できるような授業の進め方を求めている。このため歴史への大局的なアプローチに限らず、日常史の採用が奨励されている。また強制収容所跡といった歴史の現場を訪ね、現実と出会う体験も重視されている。

教育現場からーハンブルグの事例ー
 ドイツの学校教育現場の歴史教育は、日本のように「日本史」と「世界史」にわけて何度も繰り返す形の学習ではなく、ドイツ史のみ、あるいは広く見てもヨーロッパ史にとどめた内容の通史を最低学年から最高学年までかけて1度だけ学ぶ。そのぶん一つひとつの事項に対する取り組みは豊富で密度の濃いものとなる。第3帝国時代にさしかかるのは、日本の中学3年生にあたる9年生の学年末頃であるが、実際には10年生の初めに持ち越してじっくりと時間と労力をかけて取り組むケースが多い。

 ハンブルグ市のあるギムナジウムで実際に行われた歴史授業を紹介すると、筆者が見た10年生のクラスはすでに4年間にわたり同一教師が担任するため、前学年から少しずつ段階を踏んで第3帝国学習のための下準備が行われてきた。歴史学習の枠外でも、例えば国語の授業で戦争を題材として教材を取り上げ、戦争について話し合った。また合宿などで、戦争に限らずあらゆる形態の暴力について話し合う機会を設け、戦争の根本である「暴力」の概念の理解に努めてきた。さらにそこまでで得た知識をもとに、生徒各自が戦争に関するテーマで小論文を仕上げた。以上の準備段階をへて、実際の歴史授業で第3帝国が取り上げられた。授業は講義形式ではなく、あらかじめ与えられたテーマについて下準備してきた生徒が議論する形で進められた。授業での教師の役割は、生徒から出された意見に関連を与え、議論にある程度の筋道をつけることに終始していた。特徴的だったのは、教師から生徒に対して出される質問のほとんどが、「なぜ」「どのように」を問うものであったことだ。生徒は、知識の蓄積だけでなく、自分で分析し、自分のことばで説明できるようにならなくてはならなかった。指導要領にある第2の重点項目である過去と現在の連続性に関しては、当時の状況に自分をおいて考えることが要求された。このことによって、生徒はプロパガンダに踊らされずに真実を見つめることの難しさと、自分のなかにも「長いものに巻かれる」要素があることを認識させられるのである。また、このギムナジウムではハンブルグ郊外にあるノイエンガンメ強制収容所跡のほか、ハンブルグ歴史博物館を見学し、加害、被害、抵抗運動など、あらゆる角度から展示に関するレポートをまとめるといった試みも行っている。

 このような様々な取り組みを通じて、歴史の学習という枠を超えた平和教育としての歴史教育は、学校現場でかなりの密度とレベルの高さをもって達成されている。しかし、紹介例は生徒の大半が大学入学資格を取得する高等教育学校の一例にすぎない。密度の濃い平和教育はすべての学校にで行われるわけではなく、高学歴層と低学歴層の間には明らかな歴史観のギャップがあり、学歴が低い層ほどホロコーストを相対化したり、ナチズムを肯定しようとしたりする傾向が指摘されている。今後の平和教育の課題は、このギャップをいかにして埋めていくかという点にかかっている。

以上 抜粋ですが、戦後のドイツの状況がよく分かりました。
その後、これらがどう転換していっているのかは、別な本で確認していきたいと思います。

2020年にならんとしている今の日本と韓国でも、似たような話がまだ続いている事に驚くとともに、歴史的な事実としっかり向き合うという姿勢(教育含む)は大事ということを改めて思いました。

2019年8月22日木曜日

【本】海外で研究者になる  増田直紀 中公新書

日本の若手研究者は、期間雇用の職ばかりで例えば5年ごとに色々な大学や研究所を渡り歩いて職を探さないといけない。

という話を沢山聞きます。

又、日本の大学で博士課程に進むのは留学生の方が多くなっていて、日本人は研究者離れが進んでいるという話も。


そんな流れの中で、日本を飛び出して海外で研究者としての職を得ている方々もいます。

この本の著者はその一人、東大准教授(終身雇用権有)の地位を捨てて、英国の大学に移た研究者で。今週は更にニューヨーク大学に移った方。


海外で研究者PI(Principal Investigator.自分のしたい研究を行う権限を持ち、一方で論文精算や研究費獲得などに責任を持つ 研究室のボス職。日本で言うと 大学の教授や准教授、研究機関の主任研究者など)になるには、どういう事をしたのか。又、現在 各国で活躍している17人の日本人研究者へのインタビューも含めて、海外への転出はどういう状況なのかを最新情報で説明してくれます。

2019年6月末に発売になったホヤホヤの本です。


海外で職を得るためのノウハウやポイントという話も多いのですが、各国の学生がどういう動きをしているのか、各国の学術研究に対する考え方や取り組み方がどう違うのかが詳しく、実感を持って語られています。



印象としては、アメリカ系(日本も)の大学は、競争的外部資金をどれだけ獲得できるか、重要な論文をどれだけ出せるか。というのを評価軸にしている様子。

一方、中国などは、科学技術振興の為にお金やチャンスはフンダンに与えられる様子。
スイスなどは、少し落ち着いた感じで研究できる環境の様子。

研究者と言っても、大学の職員の場合は教育者という顔も勿論持つ必要があるので、2つの顔についてのバランス配分なども国や大学によってかなり違うみたい。


17人の方は、状況は様々なようですが、総じて海外に飛び出した事でかなり視野や自由度を広げられたらしい。

彼らからのメッセージは、学生のうちからでも海外での研究経験や人脈を作っておくのが兎に角 良いとの事。
数年計画で行動をおこせば、成功できる可能性が上がる。中国の学生は既に始めているらしい。


現在の大学生におすすめの一冊です。得る所が多いと思います。

2019年8月16日金曜日

【映画】主戦場

吉祥寺で上記の映画を見てきました。

慰安婦問題に対して、日系アメリカ人が作ったドキュメンタリー映画。


日米韓の右翼、左翼の両キーマンにインタビューしていった映像が対比されて出てきます。アメリカ大学院生として英語でインタビューをしたとの事。

どんな要素と思惑と嘘が錯綜しているのかという事がかなり網羅されていて面白かった。

硬い内容だけど、一見の価値ありました。


街の若者のインタビューシーンも入っていますが、日本の若者が文言や近代歴史に関して知識が本当に乏しいという事に危機感を感じました。


この映画が通常の映画館で上映されないのも、政治的な圧力があるのでしょうね。

2019年8月15日木曜日

【本】天ぷらにソースをかける日本人 斉藤隆 家の光協会

副題が”誰も知らない食卓の真実”。

NTTデータが、10年間以上も首都圏360世帯365日の食材データを収集した「食MAP」からの分析です。


私が大阪に就職して初めて行った時、寮の夕食に天ぷらが出た日があり、先輩寮生がソースをかけて食べているのを見て、衝撃を受けました。

関東育ちの私の人生で、天ぷら+ソースという組み合わせは想像外の出来事だったのです。 

恐る恐るまねして、ウスターソースをつけて食べてみると、それはそれでナルホドという印象でした。

ソースはそれまでブルドックの中濃ソース 一本で人生を暮らしてきましたので、大阪にてウスターソースとの出会いやおたふくソース、いかりソースという物の存在を知るなど、違う世界がそこには広がっていると感じたものでした。

(当時は、関東では”おたふくソース”というブランドは売っていなかったし、お好み焼き・たこ焼きも縁日フードというぐらいの印象しかありませんでした。この30年程の間の様変わりには驚きます)


それ以外にも、カレーにウスターソースをかけてから食べるという人もいる事にも驚いた事を覚えています。今では、私も外食カレーにソースをかけて食べる時もあります。


という事で、この本の表題に引き寄せられる様にして読んでみました。


どういう料理がどういうシーズンで家庭で食べられているかとか、人気メニューは何かなど面白い事が沢山でている本です。

主題である天ぷらにソースをかける出身地域は、中国地方生まれの夫婦では15~18%ぐらいがソースをかけています。四国地方も6~8%。北海道、感動、北陸、甲信越、東海地方は1%未満。東北、近畿、九州地方は1%ぐらい。との事。


寮の先輩は、中国地方文化の人だったのかもしれませんね。

これが分かったから、どうだ という話では無いのですが、何となく心の中で一区切りついた気がします。

2019年8月7日水曜日

【不耕起栽培の家庭菜園】不耕起での土作り 1年たって

昨春、突然 家庭菜園をしてみようと思い、庭の一部に土をいれてもらいました。

黒土なのだけれど、入れて3か月たっても変なキノコが少し生えるだけで雑草一本も生えない変な土。 雨が降ってガンガンに硬くなって、ショベルで手掘りが出来ないぐらいに硬い。虫もミミズも一匹もいません。


これを畑にするにはどうするか。普通だと とにかく耕して、肥料等をすき込んで、、という事になるのですが、たまたまその時期に読んだ不耕起栽培の本に惚れて、不耕起で土作りをしようと考えました。


3年ぐらいはかかるのだろうという前提を置いて、焦らずにやる事に。

結果、昨年に植えたトマトもナスも全然上手く育ちませんでしたが、今年は土がフカフカになって、トマトもナスもキュウリも非常に良く育っています。


1年でこんなに変わるものなんだという事を実感している毎日です。


この1年でやったことは、

エンバク(野生種)のタネを撒き、ビッシリ育てた事。
穂が付き始めたら、地際で刈って、刈った麦はそのまま地表面に置いておきました。
(地面に漉き込んだりはしていません)

又、クローバー(赤やクリムソン)のタネも撒いて、生える所はボーボーに茂らせて(エンバクの間は、エンバクに光が遮られて育たない)、大きくなったらこれも地上5cmぐらいの所で刈って、地表面に撒きました。

庭の選定枝の葉っぱや、雑草などもしっかり乾かしてから、畑の土の上にどんどん置いていきます。


地面の上の有機物は、半年ぐらいするとかなり腐食して消えていきます。
一方、小さな虫はだんだん現れてきました。

地面の下の根っこは、そのまま放置です。


エンバクの成長は3~4か月ぐらいなので、育てて、刈って、地面に敷いて1ヶ月待つ。
というサイクルを2回行いました。

すると、今年の土はエッと驚くほどサクサク(フカフカと言っても良い)になりました。地面を少し掘るとミミズもいます。

雑草も沢山 生えてきました。


昨年も上記をしながらその一部にトマトやナスの苗を植えたりしましたが、元気に育たず。虫の被害もひどかったです。


それが、今年はトマトもナスもキュウリも本当に良く成長します、肥料は本に書いてあるものの半分以下です。

雑草が増えて、虫やナメクジも沢山出ているのですが、それらに対しても抵抗力があるというか、全く負けません。(勿論 無農薬です)


こんなに、1年で変わるの?というのが実感です。 1年は辛抱ですが、自然の力を信じていたら土は変わるのだという事が良くわかりました。


不耕起栽培での土作りは3年が目安と思っているので、今年もできるだけ沢山の有機物を畑の表面に置くようにしていきたいと思います。作物の収穫が終わったら部分には、エンバクを又 生やしていこうと思います。雑草も地表5㎝で刈って、生きたマルチとしての活用を進めていきます。


来年はもっと良い土になっていくのではと楽しみです。


最終的な狙いは、無農薬、無肥料、本来の野菜の旨味を引き出す状態に持っていく事です。多品種、適量、多毛作にもしたいと思います。

不耕起は作業が少ないので、手間もお金もかけずに上記が出来る理想的なメソッドですね。

2019年8月6日火曜日

【本】韓国の中学校歴史教科書 三橋広夫 明石書店

この本は「国定韓国中学校国史教科書」の翻訳本とのことで、2005年に発刊されています。

日韓問題を理解する一つの材料として、どういう教育がなされているのかを垣間見えるかと思い見てみました。


ザっと目を通したのですが、先史の石器時代から2003年までが載っています。
殆どが政治がらみの話で、文化面などがあまり出ていない事と年表が少ない事にアレっと思いました。文化面は副読本があるのかもしれません。

日本の日本史の授業はXX年に○○の乱で誰それが、、というのがメインだった気がします(それはテストにしか関心がなかった私だけの印象?)。

それに比べて年号の記述は少ないなと思いました。一方で、誰がどういう考えで何をしたのか、それは政治外交的にはどいう意味を持っていたのかという事はかなり細かく書かれています。ですから、暗記教科というよりも、歴史の流れ理解教科なんだと思いました。


大陸の一部である朝鮮半島は、絶えず隣国との勢力争いで翻弄される歴史を持っていて、主権を誰がどう持ったのか、誰がどう横やりをいれて動いていったのかという事がずっと書かれています。 島国の日本に比べて、絶えずシビアな状況で暮らしてきたという事が分かります。


340ページぐらいの厚い教科書なのですが、日本でペリーが開国を迫った頃、朝鮮に対しても欧米が開国を迫っています。その明治維新ぐらいの事項のかかれているページが188ページ目。そこからの近・現代史で、教科書の半分弱を使っています。
日本の敗戦、大韓民国成立(1948年)は296ページ目になります。



朝鮮半島の中で分裂や統一という歴史がずっと続いてきますが、日本の朝鮮併合時代は、年表上「日帝強占期」という表現で翻訳されいます。


当たり前ですが、抗日の志士とその活動について詳しくかかれています。


民族の受難という章では、

・皇帝を強制退位させた日帝は、親日派を使い、日本に併合して欲しいという請願書を発表させた。これにより合邦条約を締結した。

・国権を強奪した日帝は憲兵警察統治をし、あらゆる政治活動を禁止。彼らの植民地支配におとなしく従う韓国人をつくる教育政策を推し進めた。

・3.1運動がおこると、韓民族の文化と慣習を尊重し、韓国人の利益を大事にするという、いわゆる文化統治を掲げた。しかし、このような日帝の新しい政策は親日派を養ってわが民族を仲たがいさせ、分裂させようとする狡猾な政策であり、韓民族の団結を抑え独立運動をくい止めようとする方針に変わりがなかった。

・土地の収奪を積極的に推し進めた。土地調査事業という事で、地主の所有権は認められたが、耕作権や開墾権など農民がもっていた各種権利は徹底して否定され大多数の農民の急速な没落をもたらした。

・産業の侵奪
日本の金融機関が入り、韓国人が会社を設立する時に必ず朝鮮総督の許可を受ける様に規定した。朝鮮人参、塩、タバコなどは専売制度を実施して朝鮮総督府の収入とした。莫大な森林も朝鮮総督府と日本人の所有となり、森林資源が略奪された。金、銀、タングステン、石炭などの鉱山と韓国沿岸の主要漁場も、日本人がほとんど独占的に支配した。こうして、日帝は韓国の産業に対する侵奪を積極的におし進め、韓国を大陸侵略の足掛かりとするため、鉄道を道路、港湾と通信などの施設を整えた。

・食料収奪  略

・民族抹殺政策
太平洋戦争に戦時動員体制を発動して、わが民族を戦場に動員した。日鮮同祖論を主張し、韓国語の使用を禁じ、名前までも日本式に変えるように強要。

・物的・人的資源の収奪
日帝の侵略戦争(太平洋戦争)によってわが国は戦争物資を補給する兵站基地に変わった。日帝は物資を生産するため韓半島に金属、機械、化学系統の軍需工場を建設し、鉄、石炭、タングステンなど地下資源の増産を促した。また、供出という名で食料ばかりか各種の物質を強制的に略奪した。戦争の終盤にはくず鉄、真鍮の器、さじとはし、くぎなど武器を作る材料は何であれ奪い、飛行機の燃料として使用するため松の皮をはがして松脂をとらせるまでした。
物的な略奪だけをほしいままにしたのではなかった。日帝は韓国人を強制徴用によって連行し、鉱山や工場で辛い労働を強要し、志願兵制度と学徒兵制、徴兵制を実施して多くの青年たちを戦場に追いやった。
日帝は女性たちも勤労報国隊、女子勤労挺身隊などの名で連行し、労働力を搾取した。さらに多くの数の女性を強制的に動員して、日本軍が駐屯しているアジアの各地域に送って軍隊慰安婦として非人間的な生活をさせた。
(軍隊慰安婦とは韓国、中国、フィリピンなど、日本の植民地や占領地で日本軍によって強制的に戦場につれていかれ、性奴隷の生活を強要された女性たちをさす言葉である。1930年代はじめから行われたこのような蛮行は、1945年に日帝が敗北するまで続いた)


朝鮮戦争後の韓日協定の所は、

朴政府は祖国の近代化を掲げ、工業化を第一の課題とする成長中心の経済政策を積極的に推し進めていった。また、民主友邦との結びつきを強化する一方、中立国と外交関係を樹立するため努力するなど、積極的な外交活動を展開した。そうして長い間宿題となっていた日本との関係を改善して韓日協定を締結し、ベトナムに国軍を派兵した。(賠償金の話はどは一切でていない。)


という感じで記載されています。


どの国も、自国から見た歴史、政権にとって都合の良い書き方をすると思うので、こういう記述になっている事自体は理解できます。
但し、この教科書で勉強した韓国の学生は、日本は極悪かつ、お詫びも補償も何もしていないと思っても無理はないです。


日本人からすると、日本国内で日本人に対しても同様な事が行われていたのでは、、という感想も持ちますが、他民族から強要されたというのは感じ方が全く事なるでしょう。そういう視点を持つことは必要ですね。


とにかく、韓国の歴史教科書は近代・現代史に比重を置いた書き方になっている事が最も大きな印象です。
今だ朝鮮戦争が休戦という形で継続している朝鮮の人にとっては、近代・現代は「歴史」ではないのでしょう。

【本】再考! 縄文と弥生 国立歴史民俗博物館・藤尾慎一郎 吉川弘文館

この本は2019年3月発刊のもので、最近できる様になってきた厳密な年代測定(C14)で分かってきた知見をもとに、縄文と弥生を見直すという内容です。


昔もC14を使った年代測定がされてきたのですが、分析試料が1g程度必要でしたのが最近は1㎎という少量で出来る様になり、試料のコンタミ(他の付着物)を排除できる様になってきたとの事。

それを元に、縄文物を調べると、今まで思われていたものよりもずっと以前の年代のものだった事などが分かって来た。


細かい学術的な記述が多いのですが、私がほーと思った事を書いてみます。

・今までは縄文は気温上昇と、それに伴う植物相の変化により縄文人が栄え始めたというのが定説でした。でも、最古の縄文土器はもっと以前の最終氷期時期にあたる事が分かってきた。

・弥生は稲作文化で、BC500年ぐらいからというのが我々が子供の時に習った歴史ですが、実はBC1000年~500年の間でも西日本では稲作が行われていた。

・朝鮮半島と北九州等との交流(貿易や人の行き来)は縄文の相当昔からあった。

・琉球諸島の古代人は、BC4000年ぐらいは島の高台(森)に暮らしていてタンパク質は貝や猪を取っていたが、BC5000年ぐらいからは貝と魚類中心の生活になった。AC1000年ぐらいのグスク文化時代では豚や鶏などが増えた。
これは、温暖化に伴って琉球諸島の周りに珊瑚礁が出来てきて、魚などが豊富になり、取り易くなり、浜辺に住居を移したからだと推測される。


学術上の分類や、資料の各種比較、朝鮮半島や他の世界との関連分析なども詳しく書かれていますが、私が感じたのは学校で習ったXX時代という区分がはっきりある訳ではなく、日本各地の自然も人も文化も徐々に色々と変化していったんだという当たり前の事。

変化の流れの中のある断面で議論されているけれど、宇宙、太陽系、地球の絶え間ない変化の中で必然的に起こった支流なんだという印象を得ました。

2019年8月5日月曜日

【本】美と楽の縄文人 小山修三 扶養社

久しぶりに国立東京科学博物館に行ってみました。

そこに、石器時代人、縄文人、弥生人の頭蓋骨と、そこからの復元顔モデルが展示されていました。

石器時代人の顔はまるでアテネの時代の目鼻立ちくっきりギリシャ人の様な印象。
弥生人は、中国人の印象の顔。
縄文人は、彫の深いハーフ美男美女顔。

縄文人や弥生人、江戸人などの等身大で着物も着た人形も展示されています。
縄文人は本当に簡素な服を着て、竪穴式住居に住んで、いかにも未開です。という感じ。


一方、火炎土器などを見ると、縄文人はデザインセンスに溢れている躍動感や、文化的余裕を感じます。 それと簡素服の展示がどうもシックリきません。

縄文人は実はもっと豊かで高度な暮らしをしていたではないのか? という疑問の下、この本を読んでみました。1999年発刊の本です。

ちょうど青森県の三内丸山遺跡の発掘で、縄文人に関する今までの認識が改まろうとしている時に書かれた本です。

面白いなと思った点を書き出します。


・縄文人の主食はドングリだった。ドングリを粉にして水にさらしてタンニンを抜き、それをパンの様にして食べていた。パンには山菜等の具を入れたオシャレなパンも作られていた事が分かっている。
ドングリは稲作よりも、うんと楽に収穫できるし貯蔵も効くので、労働はかなり少なくても暮らしていける。1週間山に出て働けば1年分の主食を蓄える事ができたはず。
あとはオカズの狩猟や採取をすれば良い。
だから、稲作の弥生人よりもゆとりがあった。

縄文土器は、鍋として使われた。「煮る」という事に使ったので鍋料理をしていた。
「煮る」料理法は、地球上で縄文人が初めて行った調理法。
酒を造るワイナリーも縄文人は持っていたらしい。


・建物も、博物館に展示したあるような竪穴式住居ではなく、中に中二階を作ってそこをベッドルームにするような設計建築をしていた可能性がある。
三内丸山遺跡では、明らかに35㎝単位での設計建築がされていて、高さも非常に高い建物や、大きな長屋の建物なども作られていた事が分かっている。
人口も三内丸山遺跡では数百人以上も住んでいる町だった。


・ファッションも、糸や皮の扱いが上手い縄文人なので、かなりファッショナブルな衣服を作っていたと思われる。Vネックやボートネックの服、ズボンなど。色もカラフル(赤や黒など)。装飾品も色々発掘されており、男も着飾っていた様子。


・ヒスイ球を使って貨幣として使っていた可能性あり。
出土品を見ると、遠方の地の物も沢山でてきており、貿易や交易がかなり盛んにおこなわれていた事が推測できる。
海外とのやり取りもしていただろう。航海術も出来ていたという事ですね。


・縄文人は多くが東日本~北海道に住んでいた。気温も現在から数度高く。温暖湿潤。
落葉広葉樹が多いので、ドングリなど沢山とれる。


・北九州の縄文人は、渡来人をベンチャー的に呼び込んだ可能性あり。
それにより、弥生初期、西日本の人口が30倍に膨れ上がった。



以上ですが、未開人と言うよりも、想像以上に優雅で科学的、文化的な生活をしていたのかもという気がしました。但し平均寿命は30才ちょっと位の短命です。

数度 温暖化している時代だと、西日本は豪雨や暑さで住みにくかったのもあったの
か、鬼界カルデラの噴火で壊滅的な打撃を受けたのかもしれませんね。


同時代に、中国では古代帝国の作りや戦争が始まったりしていますから、日本列島でも同じような民度で人々が暮らしていても当然ではあります。


ちなみに、DNA鑑定で縄文人と同じDNAを持っているというチベットの人の写真を見てみると、やっぱりハーフ的な顔立ちの人が多そうですし、色々な装飾品も付けていそうですね。



【政治】ホワイトリストから始まった日韓問題での素朴な疑問

ニュースを見ていると両国ともヒステリックな様相を示してきている様に感じます。

一般市民は報道された情報にしか接せる事ができないので、本当の事は何が起こっているのか分かりません。

でも、日韓のマスコミが触れない様にしているのでは、と思える素朴な疑問がいくつか湧いてきますので、書いてみます。


1.今回の日本が理由としている輸出管理上の見つかった問題について、具体的な説明が日本政府からされないのは何故か? 韓国側も、徴用工問題にすり替えてこの問題について一切話そうとしないのは何故か?

輸出管理の実務者間説明会は開かれましたが、その内容やその後の展開の報道が両国とも無いのは何故なのか?
米国が積極的うごこうとしないのにも理由があるのでは?


2.徴用工の問題において、日本政府は法律論争では負ける可能性が高いのに国際司法裁判所(ICJ)に持ち込もうとしているのは何故か?(負ける可能性が高いという内容は、「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明 」を読む限り)
韓国側も、法的にはICJに行けば勝てると思っていそうなのに、行こうとしないのは何故か?


3.レーダー照射問題に関する報道や政府による蒸し返しが、この時期にこれほど少ないのは何故か?


4.ロシアと中国の合同竹島上空飛行があったのは何故か? 北が短距離発射をいくつもするのは何故か?




ちなみに、勝手なシロウトの穿った見方をしてみると


1と3は連動しているのかも。韓国と北朝鮮の間で公にできない関係があり、かつ米国がそれを今は隠したい何かがある?


2は、主観的な「真の謝罪がされていない」という言い方でいつまでも問題化しようとする韓国に対して、第3者の判断を入れて決着をつけようと安倍首相は考えているのかも。たとえ裁判で負けても、その賠償等を行えばそれ以上は韓国がむし返せない状況を国際的に作れるという事か。韓国としては、今後 政治的に使えなくなるのは困ると考えている??


4は、日本との関係が悪化した韓国に対して、北朝鮮にはロシアと中国というバックがしっかりついているぞというのを見せつけ、周りは敵だらけという孤立化を感じさせる事を狙っているのかも。となると、次は何らかの融和作戦を北は韓国に出してくるのか。


いつか、今回の騒動の真相が歴史として分かる日がくるのでしょうか?

2019年8月3日土曜日

【本】仏教・神道・儒教 集中講座 井沢元彦 徳間書店

日韓問題に関係する儒教の教えとはどういう物なのか知りたくて、この本を読んでみました。すると、仏教も神道についても、全然 分かっていなかった事を知り、愕然。この年になってそうだったのか、、と。


私にとってポイントと思えた点を書き出してみます。


『仏教』
・仏教は一神教ではなく自由な考え方をする。その為に同じ宗教でありながら、その中に正反対の考え方をそのまま包含してしまっている。これは仏教の大きな特徴。

・お釈迦様は生きり事は苦しみ(生、老、病、死)から逃れられないと考えた。
 四苦八苦は上記4つの苦しみに、愛別離苦、怨憎会苦、五蘊盛苦、求不得苦の4つが加わって八苦となった。

人間が苦しむのは執着するからだと気が付いた。執着が苦しみを生むのは、この世のことはすべて無常だから(諸行無常)。あらゆるものは必ず滅びていくが、それをまるで永遠に存在するかのように錯覚して守ろうとしたり続けようとしたり執着するから苦しみが生まれる。だから、全ては無常である事を認識する事が大切でそれを「悟り」と呼んだ。

無常を悟り煩悩の炎を消した状態を涅槃という。(これが転じて死んで煩悩に執着しなくなる事も涅槃という様になった)

もう一つの考え方が「輪廻転生」。生命は永遠。もとは古代インド哲学。六道という形に整理されて天道(天上界)、人道(人間界)、修羅道、畜生道、餓鬼道、地極道という順に存在する6つの世界で転生する。天上界に行ったとしても生きている事になるので苦しみから逃れる事は出来ない。その輪から抜け出すのが「解脱」。

悟りを開き人間を超えた優れた者になれば、輪廻の輪から解脱できると考えた。悟りを開いた人間を「如来」あるいは「仏陀」と呼ぶ。

・お釈迦様の仏教は基本的に個人の救済を目的にしたもので、個人が悟りを開かなければどうにもなりません。ですから、どうしても出家して修行をする主義となります。

それに対して、沢山の人間を悟りの方向に連れて行く事ができる大きな乗り物の様な仏教を目指すという「大乗仏教」という考えが後に出て来た。これは出家しなくても良いというもの。 そして、今までの仏教を侮蔑的に「小乗仏教」と呼んだ。
(これは、キリスト教徒がイエスを信奉するあまり、同じ聖書でもイエスの言葉が乗っているのを「新約」と言いて、それ以前の神の言葉が載っている聖書を「旧約」と言ってバカにするのと同じ発想)

・それまではお釈迦様は尊敬すべき先輩という事でしたが、大乗仏教では「お釈迦様を拝め」となった。それは、お釈迦様の超人的な力にすがって助けてもらおうという思想だから。(でもお釈迦さまはそんな事は言っていない、、)

大乗仏教は、それは方便であると言って、色々仏典を創作していった。そういう仏典の頂点にあるのが「法華経」(みょうほうれんげきょう)。

大乗仏教では釈迦以外にも如来が居る事にした。その中で、阿弥陀如来は「多くの人を救える事」という誓いをして如来になったとお経に書いてある。救い方は、「我を十念すれば」私はあなたたちを私の支配する極楽浄土(輪廻転生から外れた世界)に生まれ変わらせてあげる。とのこと。 浄土は全ての仏様にある(仏国土)が、「極楽」と言った場合は阿弥陀さまの浄土を指します。

阿弥陀さまを信仰すればまずは極楽浄土に生まれ変わる。これを「往生」と言う。そして往生してから、仏国土で修行して、最終的に仏陀になる。これが「成仏」。凡人には自力修行での悟りは難しいので、お釈迦様の力、つまり他力をに頼って往生して、そこで修行して仏になるという二段階のプロセスを経て悟りを開くのです。(他力本願)

阿弥陀信仰は日本に浄土教として入ってきた。「南無阿弥陀仏。」
最澄の天台宗はお経の総合大学。比叡山延暦寺。
空海の真言宗はお経になっていない口伝=密教を教えるという宗派。高野山金剛峯寺。

やっぱり他力本願は違う。自分で修行して悟りを開くべきとの考えが禅宗を生んだ。曹洞宗。
一方、親鸞はお経を読まんでも「南無妙法蓮華経」と唱えるだけで良いとした。でも、これは法華経以外は全部偽物だという意味にもなる。太鼓をたたきながら大声で唱える。創価学会。

鎌倉時代の仏教大衆化に伴い、日本独自の大きな変化「本時垂じゃく説」が生まれる。日本の神道の神と仏様は実は同じものなのだ、、という説。これにより神仏混淆の状態になり、大き神社には必ず寺があり、神官とお坊さんでそれぞれユニフォームは違っていても、実は同じ人が管理していたのです。

この神仏混淆状態が崩れるのは明治になってから。欧米の一神教が迫って来るのに対抗する為に、無理やり神道を切り離して「国家神道」を作り、多くの仏教寺院を焼き払う廃仏毀釈を行いました。

寺も大きな武装兵力を持ち利権をむさぼるのが当たり前の時代が続いていたが、信長が比叡山焼き討ちで武装解除し、以降 寺は丸腰になった。

徳川家康は檀家制度を導入して、寺を役所の一部として機能するように政策に組み込んだ。これにより300年。仏教は惰眠をむさぼった。そのため、葬式の時にしか一般の人と接点がないようなものに堕落してしまっている。
日本の仏教は危機的状態が続いている。


『神道』
神道は分かりにくい。それは、聖典が無いという事と、「本来の神道」と明治政府によって無理やり作られた「国家神道」という二つの別物があるから。一般国民はこの違いを殆ど理解していない。

神道は基本的に多神教なのだが、「国家神道」は欧米に対抗する為に日本人がある意味で一神教的に強化させた神道。無理やり一神教的な強化をしたので、それまでにない神道になってしまった。

本体の神道は、全ての宗教の中で排他性、独善性が最も少ない宗教です。でも国家神道は一神教の影響を受けているのでどうしても排他的、独善的になる傾向がみられます。

神道は卓越しているものを祭る。良い神も悪い神も。悪い神も丁寧にお祭りすれば機嫌を直して善なる神に転化するというのが神道。徹底的な性善説とい言われる事もある。
菅原道真は理不尽な扱いをされて恨みの神となったが、それを祭ったのが天満宮。

現生肯定の神道、現世否定の仏教(諸行無常)。
聖徳太子の十七条憲法では第1条が「和」になっている。「和」は仏教にも儒教にもなく。古来神道の考え方。
そして、「穢れ」 とそれを取り除く「禊」と「祓い」。

国家神道は、一神教に対抗する為に天皇を押し立てて行こうという事にした。そこで、日本中の神社をすべて国家の統制下に置き、国家の機関として、その神を祭る地位のトップに天皇を据える事にしたのです。これは明らかにローマ法王を意識していると思いますが、天皇はこの世の神 現人神であって、すべての日本人はそれを信仰しなければならないとしました。戦前の軍隊は、天皇を守る事が日本の文化を守る事であり、国を守る事であり、国民を守る事だったのです。天皇と国民は一体であるというかたちをもって、西洋の原理に対抗しようとしたわけです。


『儒教』
ルーツは先祖崇拝。
”位牌”というのは儒教の考え方。仏教ではない。(仏教は輪廻転生なので位牌は使わない。)
孔子が先祖崇拝というものを一つの体系にまとめたもの。関連して、儒教には、どんな場合でも子孫を絶やしてはいけない、という思想がある。(先祖をお祭りする人がいなくなってしまうから)もし養子を取るなら男系からとらなければいけない。

もう一つの特色は「得」というものを重んじる事。個人が得をもって身を修める。次にそのことを拡大し、個人が所属する家族を整える、家庭が整えばその集合体である国が治まり、天下が平たくおさまる。という考え方。

儒教で最も重要な第1義は「考」(子供の親に対する忠節)。
民間の物語では、親の為に自分の子を殺すのは正しいという事としている。それが「考」。そして、「和」という考え方は無い。あるのは、
「義」:臣下の祝に対する忠節。主君が道徳に背く行為をしていたら、いさめなければならない。
「悌」:弟の兄に対する忠節


儒教では、賊というのは、どこまで行っても賊なのです。死んでも埋葬してはいけない。先祖崇拝なので死んで魂になっても個性はかわりません。その為、罪人として死んだ人間は、未来永劫「罪人」なのです。


抜粋は以上。

仏教に関してはかなり細かい説明がある本ですが、儒教に関しては自分の意見を沢山書いてある本という印象でした。

もう少し、他の本等で勉強が必要そうです。

2019年8月1日木曜日

【本】日本コンプレックス(2) 高月靖 バジリコ株式会社

・41才 女 出版社勤務
韓国は海外旅行ブームで、突出して日本旅行が多い。韓国ウォンと円の為替が後押ししている。こうした日本旅行熱は和食人気を高め、日本語の看板を掲げる日本料理店が急増している。
「韓国で一番人気がある日本の都市は大阪、次に福岡や東京が並ぶ。大阪は安いLCCが増えた事、テレビで大阪のストリートグルメ紹介が良い、USJや京都奈良へのアクセスも良くて、若者が大好きなグルメも遊びも満足できて、なおかつ安く行けるから。

慰安婦問題について
「慰安婦問題はこれから外交的に解決されなくてはいけない問題ですし、私もそれを願っています。日本からきちんとした謝罪があってしかるべきだと。そうした考えも明確に持っています。」「少女像についてですか? 世界各地にたてられているのがやりすぎという声があるようですが、私はそうは思いません。ドイツのアウシュビッツ強制収容所は、同じ過ちを繰り返さないという決意の象徴として保存されているでしょう。慰安婦問題も韓国だけでなく世界全体の歴史として、記憶していくべきだと思います。それは韓国がかつてベトナムでやったことも同じです。韓国政府はきちんと謝罪、賠償すべきでしょう。同じように私たちもかつて慰安婦だった人たちの後継としてその名誉回復に努めていくべきだと思います。」


・43才 男 アンティーク商
「子供の時は、日本に愛してい否定的なイメージがありました。過去の歴史、侵略とか。そういう境域がありますからね。日本は何かあるたびに謝っていると言いますが、真摯な謝罪とはほど遠い。いったいなぜそうなのか、そんなことをたくさん考えたりもしていました。」「韓国人が日本について否定的に考える要因は、いま大きく2つあると思います。一つは靖国。なぜ分祀しないのか。もう一つが慰安婦問題」「何年か前、日本が元慰安婦のおばあさんたちにお金を払うという話があったでしょう。あの時、韓国人の反発がすごかったんです。ちゃんとした謝罪と賠償がなくてはいけないのに、政府同士がいくらで手を打ちましょう、申し訳ないという言葉もないまま、これでフタをしてしまいましょうと勝手に決めてしまう、そんなやり方でいいのかと。。。」
「私が思うにはこれは金銭的な問題ではなく、まず首相なり立場の高い人が来て、きちんとしたお詫びをすればいいのではないかと。そしてそんなに大きな金額でなくてもかまわないので、所定の補償が行われたら、韓日関係がいい方向いいくのではないでしょうか。いまいつ慰安婦のおばあさんたちも、多くは望んでいないのではと思います。10年もすれば多くがなくなられるでしょう。その前にそんな謝罪があれば、両国の友情がいまよりずっと深まると思います」

こどもの時は日本製とは知らずにアニメを見て、プラモデルで遊んでいました。大人になって「あ、これも日本製だったのか」と、我々世代はそうした驚きを経て、日本への憧れを少し抱くようになったものです。

・51才 男 日本の大学での教員 イさん
妓生観光=買春観光が盛んだった1970年代、80年代。イさんはソウル育ちの大学生。ラジオでオールナイトニッポンを聴いたり、薬師丸ひろ子のファンだったりした。

慰安婦問題について
イさんは大学時代、日本人観光客の妓生パーティーを見た事がある。通訳のアルバイトをしていた恋人がそこに同席する事になり、頼まれてついて行ったそうだ。場所は現在も各国からの観光客で賑わうソウルの観光地、仁寺洞たっだ。「その時、私は日本人に対する反感というのはありませんでした。妓生とはそういうものだと思っていましたから。これは朝鮮王朝時代からずっとそうだったんですが、中央政府の官僚が地方へ視察に行くとするでしょう。すると各地の地方官史が妓生を動員して、接待するわけです。こうした習慣、伝統は根深く、私が学生の頃も普通に残っていいました。主な宿場町にはそんな妓生たちがいたんです。少なくとも1980年代くらいまでは、そのほか人心売買とか、身売りのようなこともまだ横行している時代でした。」
「売春をする女性たちに対する視線も、当時は違っていました。いまなら借金で仕方なくという事情もあったりするにせよ、結局は自分の意思でやっていることでしょう。でも昔は儒教的な道徳のせいで、一度汚れてしまった女性はもう普通の生活に戻れないという社会通念があった。そうした女性たちが社会に受け入れられず、売春婦となるしかなかったわけです。」「つまり韓国では、こうした一連の文化が最近まで受け継がれてきた歴史がある。それを棚に上げて、慰安婦問題をあそこまで非難できろのだろうか。当時みんなあれを黙認していたはずなんです。なのにああいったアンダーグラウンドで生きて来た人達の歴史を、なかったことにしていいのか、と。もちろん慰安婦問題には私もシンパシーを感じますが、こう考えると複雑な気持ちになります。」


・49才 女 旅行会社経営
日本に留学し、そのまま日本に骨を埋めるつもりの人。

両国関係について
「韓国が歴史問題か何かで日本に執着しているように見えるとしたら、それは政治とメディアのせいだと思います。特に若い層にとって歴史問題は子供の頃に教科書で習った話にすぎないし、さほど関心もありません。」「もちろんそこを突き詰めて言えば、こんな考えもあります。被害を与えた加害者は、一度誤ればそれで済んだ気になれますよね。でも取り返しのつかに傷を負った被害者の側は、トラウマのように一生背負いながら生きていくのが普通でしょう」「でもそれが歴史問題として騒がれる時、私は政治家たちが自分に都合よく利用している部分があるのではないかと思います。対立を煽って国民を結束させるのは、自分たちの支持率を上げるのに役立つでようから。こうした意味で私は、韓国の政治家も日本の政治家も両方問題があると思っています。」

北朝鮮について
「北朝鮮には地下資源が沢山あるでしょう。また統一すれば釜山からヨーロッパまで鉄道でつながるので、物流コストも安くなるんじゃないでしょうか。それに北朝鮮のインフラ建設も必要ですから、建設業界も潤うのではないかと思います。そのほか観光開発もできますしね。」「さらに韓国は日本と同様、人口問題を抱えています。私の時代は小学校1クラス60~70人くらいいました。それが今では30人程度。韓国もこれから労働人口の減少など、難しい問題に直面していくことになります。でも北朝鮮と一つになれば、労働人口が増えるというメリットがある。やはり国が大きく成長していくには、人口が必要だと思うんです。」


・42才 女 公企業勤務 日本とのかかわりの深い業務を担当。
対日感情は多面的だ。「日本の政治家や右翼がやっていることに対して、嫌悪する感情は確かにあります。熱にいつもそんなことを深く考えているわけではありませんが、、。でも独島問題、歴史認識問題、旭日旗の問題などで日本がやってくること、そのほか安倍首相がやっているようなことを見て、あれは間違っている。日本は歴史を正確に認識する必要があると、こんな思いはなっきりとあります。」「学校で韓国史を習うと、植民地時代の話が当然出てくるでしょう。そこから高校の時、日本や近隣国の歴史に関心を持つようになって、大学に入ってからは日本語を学んでみたりもしました。大学ではまた日本が韓国に対してとても大きな過ちを犯した歴史も学んで、、。ですから当時は日本という国に対しては、いい感情を持っていませんでした。もっともそれは実際に日本へ行ってみたこともなく、日本人と会って対話したりしたこともなかった時期の話です。社会人になってからは実際に日本を訪れ、日本人の友達もできて、また違った認識が深まっていきました。」

慰安婦問題について
「少女像が世界各地に作られるのも、そういう状況を自ら作り出したのは日本だと思います。ある国が別のある国を侵略して、よくないことが沢山起これば、それに関心を持つのは当然のことでしょう」「慰安婦問題にしても韓国が、日本がという立場を離れて、ちゃんとした謝罪があって然るべきだという部分について、多くの女性たちが共感しています。実際に米国や中国など海外の女性たちが元慰安婦の女性たちに共感したからこそ、その体験が忘れ去られてはいけないと。各地に記念碑を建てるようになったわけでしょう」「温かく誠意を持って向き合えばいいだけなのに、彼女たちが声を上げるのを防ごうとしたりとか、知らないふりをしたりとか、、。これでは私たちがもっと関心を持たなくては、と思うのも無理はありません」「領土問題もそうです。日本も尖閣諸島を巡って、韓国にとっての独島のような問題を抱えているでしょう。なのにどうして韓国に対していちいち敏感に反応するのか、、。そこは立場を逆にして考えたら、韓国の気持ちも分かる様になるんじゃないでしょうか」「慰安婦問題がなかったかのように宣伝する歴史修正主義は、自国の若い世代に歪曲された歴史を刷り込むことになり、虚しい憎悪や反感を招く結果にしかなりません。韓国でも軍事独裁とか、ベトナムでの”蛮行”とか、恥ずかしい歴史が沢山あります。自国に都合のいい歴史だけを教えても、そんな教育を受けた世代の将来が心配ですよね。何も知らずに育って大人になってから事実を知った時、自国に対する自負心が傷つくのではないでしょうか」


・52才 男 出版社代表  灰谷健次郎の著書を多数韓国語に翻訳して出版している
「韓国人が日々の生活の中で、日本に何か特別な感情を持っていることはあまりありません。ただし私が思うに、政治的、歴史的な話になると、韓国人の多くが日本に対して否定的な感情を抱いています。それは実のところ日本がどうこうといういうよりも、韓国国内の事情でそうなったのではないかという思いもあるんです。なぜなら早い時期から日帝時代に関する歴史を通じて、否定的な教育を受けていますから。だから本人もそうと気づかないうちに、日本に対して否定的な感情を抱くようになるんだと思います。」「今でも年配の人は特にその傾向が強いですね。私が中学生、高校生の頃もそうした教育が盛んでした。でもいまは教育も変わり、若い人は以前ほど否定的に考えないようです。うちの娘はダンスをしているのですが、その勉強のため1ヶ月日本で過ごしてきました。これも教育が変化したおかげといえるでしょう」 否定的な感情は3つの要因がある。「解放後に樹立された李承晩政権は、植民地地時代の対日協力者を大勢起用して要職に就かせました。彼らは理研を通じて裕福な暮らしを送った一方、独立運動家らは冷遇されました。つまり韓国はきちんと植民地時代に審判を下して精算する、過去を断ち切って新しく出発する事ができず、社会が間違った道へ進んでしまったんです。それがとりわけ進歩的な人々の間で問題視されており、いまの政界でも『親日残滓』の精算を求める声は小さくありません」 3つ目は”日本政府がちゃんとした謝罪をしていない”ということ。

元慰安婦女性のカミングアウトと日本政府を相手取った提訴をきっかけに、1991年から慰安婦問題が両国間の重要懸案として浮上。日本政府は日韓基本協定と付属協定に基づいて日本側に追加補償の義務はないとの立場に立ちつつ、反省と謝罪を繰り返した。韓国政府も当初は同じ認識に立っていたが、1992年から慰安婦問題を請求権問題の例外として補償を要求する方針に転換。そして日本がこれに応じなかったことが、韓国ではそれまでの反省や謝罪に矛盾すると受け止められた。こうして、「『日本の謝罪は見せかけだけであり誠意がない』という理解が定着する。そしてさらに歴史認識問題の解決には『日本が反省していることを示す、真の謝罪が必要だ』という世論が形成されていった。

否定的な感情の裏側に、「韓国メディアと教育が日本に対して非常に批判的な事」も関わっている。日本に関する問題でメディアが敏感に反応する裏側には、裏切者と非難されないように「安全でいたい」という心理が関わっているようだ。そのには批判以外を許さない社会の圧力も関わっている。

慰安婦問題について
「記念館のようなものは必要だと思います。私たちは慰安婦の歴史を学ばなくてはいけませんから。でもそれは相手を憎むことが目的ではありません。再びその歴史が繰り返さないようにするためです。競い合うかのように対立の構図を作り出すのは、賢明とは言えません。しかし、私が見る限り、扇動やプロパガンダのような部分もあるのではないかと思います。」「韓国もベトナムで、非常に大きな過ちを犯したでしょう。ベトナム戦争に参加し、多くの無辜の市民に被害を与えました。だから私たちもベトナムへ行って謝罪し、そんな歴史を繰り返さないよう努めなくてはいけない。実際のところ、日本でもそうやっている方たちは沢山います。」
「より多くの人が研究して話し合い、二度と繰り返さないよう決意する。こうしてこそ問題が完結されるのではないかと思います。その意味で例えばドイツで行われているやり方は、とてもうまくいっているのではないでしょうか。彼らは過ちを二度と繰り返さないという誓いを繰り返しており、それは信頼に足るものです。私たち韓国と日本も、いずれそういう関係になれればいいと思います」


・57才 男 「ナヌムの家」(一部の元慰安婦女性が暮らす老人福祉施設)アン所長 
アンさんが目指すのは”正しい歴史”を取り戻すことだ。「日本に対して肯定的な考えも沢山ある一方で、歴史的に整理すべきことは整理しなくてはいけに。といってもそれは、誰かを捕まえて処罰しようということではありません。おばあさんたちを取れて行った人たちをつかめて処罰するとか、そんなことがいまの私たちにできるはずもないでしょう。そうではなく、事実を記録して”正しい歴史”を打ち立てる。これが私たちがやらなくてはいけないことなんです。」「1965年の対日請求権は朝鮮半島の植民地市販で発生した財産権を巡る問題についてであり、各地の戦場で発生した慰安婦の被害は含まない、また戦争犯罪に時効はないというのが私たちの立場です。しかし日本大使館の関係者とも非公式で3~4回は無しをしたことがありますが、彼らはおばあさんたちの請求権は1965年の国交正常化と同時に消滅したという立場で一貫していました。これでは話にならない。ではどうするかというと、第3国に知らせていくしかない。そこで2011年にアメリカのニュージャージー州に建てられた記念碑を皮切りに、グレンデール市をはじめ各地に建てられていったんです。」「日本はいま平和に暮らしていますが、例えばアフリカの内戦のように女性に対する人身売買や性暴力の被害は現代にも続いている問題です。以前ここを見学に来た外国人が「ナヌムの家」をベンチマークにして、アフリカで被害にあった女性のシェルターを運営している例もあります。そうした視点から考えた時、日本がいまからでも問題を認めて、”本当の謝罪”をすることには、大きな意義があると思います。そうしてこそ日本は国際社会から支持され、リーダーシップを発揮できるようになるのではないのでしょうか」


抜粋は以上

読んでみて、最後のアン氏は政治的な匂いも感じますが、他の方々は まじめで正直な人々という印象を受けました。まじめであるからこそ、教育やマスコミ報道によって知らないうちに常識が作られていきます。これは日本も勿論同じで、まじめにテレビニュースや新聞、政府発表を良く勉強する人ほど刷り込まれていくように思えます。日本人の方が、近代史を殆ど学習していないので、より刷り込まてやすいかもしれません。一方、韓国の人は、意外に冷静な見方をしているなという印象もありますね。

この本でインタビューを受けた人は、なんらか日本と関わりの深い人ばかりなので偏っているのだとは思いますが、それでも市民の感覚はこういう感じなのかという事が分かる面白い本でした。

今回の日韓問題も、政治とそれを煽るマスコミによって作られる劇の様な面があると思います。

韓国=約束を守らない国 という日本人の新常識にならんとしている感覚(マスコミや政府発表の記事から作られている)も、冷静に自分を見て行く必要がありそうに思いました。


【本】日本コンプレックス(1) 高月靖 バジリコ株式会社

副題が「韓国人の対日意識の深層」

この本で使う”コンプレックス”という単語は、「劣等感」ではなく「複雑な」の方の意味との事。

2019年1月末 発刊の本なので、この数ヶ月の輸出規制対立フィーバーの直前の若い世代から中年までの韓国人男女が、日本に対してどういう意識を持っているのかのインタビューの本です。

まずは、戦後から国交正常化を挟んで現在に至る過程の振り返りが載っています。
その部分を抜粋します。

歴史経緯

日本の敗戦=光復を経て朝鮮半島では朝鮮人民共和国が発足するが、米国はこれを否認し軍政を開始。やがて1948年8月及び9月に、それぞれ南の大韓民国政府、北の朝鮮民主主義人民共和国政府が樹立される。米軍政庁をバックに韓国で初代大統領に就任した李承晩は、それまで33年を米国で過ごした亡命家だ。
李承晩は日本統治時代の下級管史約7万人の対日協力者=「親日派」を行政の実務者として起用。一方で、反日ナショナリズムを政権のイメージ強化の手段としてアピールしつつ、日本を中心とした経済圏に韓国を組み込もうとする米国にも反発する。

そうした中、1951年より日韓国交正常化交渉が始まるが、対立が続き進呈がない。1960年4月 李政権の独裁政治、不正選挙に対する市民や学生の大規模な蜂起が発生し、李は退陣しハワイへ亡命した。

1961年5月に陸軍少将だった朴正煕を中心としたクーデターが起こり63年に大統領となる。朴は日本の陸軍士官学校を卒業した元帝国軍人。朴は反共と経済開発をクーデターの大義名分とした。経済開発の為に日本との協力を探りはじめた。
懸案とされた請求権問題は1962年10月、大平正芳外相との会談で妥結。、日本が有償及び無償の経済協力と民間投資を行う代わりに、両国間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」ことが確認された。一方で竹島問題を巡っては双方の主張が平行線のまま解決が見送られ、国交正常化後に話あう事で合意。朴は又、ベトナム戦争への派兵をして米国から累計10億ドル近い見返りを手にした。これらを土台に、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる高度成長へ突き進んでいく。

日本で観光目的の海外渡航が自由化されたのは1964年。韓国では1989年に完全自由化。こうした不均衡は1970年代に入り、日本人男性による買春ツアー=妓生観光としてクローズアップされていく。

朴は1979年10月暗殺され、又クーデターで全斗換が大統領に。全政権は、日本と両首脳の公式相互訪問を実現。

日本では1988年のソウル五輪をまたいで韓国ブームが起こる。
1988年に盧泰愚政権の民主化政権が発足。冷戦崩壊と共に日韓の結びつき圧力も弱まる。1993年からの金泳三政権では歴史認識問題(歴史教科書、靖国参拝、竹島、慰安婦)が新しい日韓の懸案事項として浮上。かつて強権的な政治体制下で「解決積み」とされてきた歴史認識のわだかまりが民主化によって溢れ出た格好。

1998年からの金大中政権では、歴史問題に区切りをつけて未来を志向する「日韓共同宣言」が署名された。しかし続く廬武鉉政権、李明博政権で竹島及び慰安婦問題が改めて争点化。両国の首脳がお互いに訪問しあうシャトル外交は朴槿恵政権から途絶えた。

これらの経緯を分かった上で、現在の韓国人の意識を色々聞いた。


・49才男 貿易会社経営キムさん
1960年代生まれの韓国人は祖父母が日本統治時代に青年期を過ごした世代。
「日本が嫌いという韓国人も沢山います。主な理由は歴史のせいでしょう。一定世代より上はそうした教育を受けたりもしましたし、その両親の世代が体験したことを直に聞かされたりしますから。どうしても拒否感を感じるんです。いまの40代以上がそうですね」
一方、キムさん世代は、日本に対して全く別の感情を抱いた人も少なくない。彼らが若者だった1980~90年代に韓国で日本文化ブームが沸き起こっていたから。その時代、キムさんはよく東京に遊びに出かけたという。日本文化と聞いて何を連想するか、韓国人に聞けばおおむね同じ答えが返って来るでしょう。マンガ、アニメ、映画、音楽、AV。

両国間の摩擦について。
「両国の政治家が、自分たちの立場のために韓日の問題を利用する傾向がありますよね。核の脅威をもてあそぶ北朝鮮、靖国参拝など日本の内政にいちいち干渉してくる韓国、、これらは政治家が作り出したプロパガンダなんですよ。それぞれの側が、こういた問題を政治的に利用している。その気になれば簡単に解決できるのに、お互いが問題化させ続けようとしている部分があると思います。韓国人が日本人と友人として会う時、普通はこうした問題は関係ありません。でも慰安婦問題とか歴史問題について話し合うとなれば、敏感にならざるを得ない。国民としての立場がありますから。そうなると宗教的な問題みたいで、もうどうしようもありませんよね」


・17~21歳 男 オタク少年たちの日韓関係 キム、シン、チェ、チョン、パクの5人
戦後は日帝残滓として排除が求められた韓国語中の日本語。だが最近になって新しくまた韓国に根付いた日本語もある。その代表例が「オタク」だ。5人の海外文化全般への関心に占める日本の比重がどれくらいか聞くと、キム 100%,シン50% ,チェ 80%。韓国では日本旅行が盛んに行われている事への認識は、手近に行けるし、安くいける、食事も口にあうからぐらいではないかとのこと。物価も安いし。

「アメリカのアニメに対して日本のアニメは雰囲気やイメージが理解できて、共感できる。例えば桜の花びらが舞うといったシーンも、韓国に似た情景がありますから。近くにあってよく似た国同士だから、日本アニメのほうが共感しやすいんだと思います。」
中国の印象は、「あまり好きではない」。

歴史問題について
慰安婦は気の毒と思うので取り上げて話題にする事自体は良いと思うが、韓国も自身がベトナムでやった事への謝罪も考えるべきだと思う。政治と国民や文化は分けて考えるのが良いのでは。「韓国の反日デモ?ほとんどないんじゃないですか。反日感情を持っている人はいますよ。でもだからって、日本人が嫌いというわけじゃない。慰安婦問題とかそういう問題に接して、ただ何となく日本が悪い。嫌いだと言っているだけ。周りがそういう感情を持っているから、ただ何となく自分も同調しているという人が多いんじゃないでしょうか」

2019年7月28日日曜日

【本】日本と朝鮮の100年史 和田春樹 平凡社

日韓の関係を理解していく上で、両国の近代史での関係をちゃんと知る必要があるなと思い。この本を手にとりました。2010年発行の本です。

この本の著者は東大名誉教授で、ロシア・ソ連史が専門。満州や北朝鮮もソ連下の話が多いので、必然的にそれらも調べて専門家になっていったとの事。マスコミ情報や一般的に流布されている情報からではなく、日本、韓国、北朝鮮、中国、そしてロシア・ソ連の内部文書などを学者として比較分析する事で何が起こっていたのかを解き明かしており、歴史の事実を知るには中立的にとても良い本ではと感じました。


これを読んで、私がいかに無知であったかを知り驚きました。
受験勉強で、近代史を年表的には見ているハズですが、全然 理解できていませんでした。

そういう流れの連鎖だったのか、、という事を書きだしてみたいと思います。


・1871明治4年 日本新政府は日清修好条規
これは、李氏朝鮮(朝鮮半島の王国)の宗主国の清と日本で対等条約を結んでおくため。
この当時 李氏朝鮮は鎖国状態。


・1876明治9年 日朝修好条規
江華島事件を起こし、朝鮮に不利な不平等条約。開国させた。
ペリーが日本にしたのと同じ事を、日本が朝鮮王国に対して行った。


・1885明治18年 天津条約(日本と清の間)
朝鮮王国内でクーデター勢力を日本が応援したした事件が幾つか起こり、清の朝鮮支配とぶつかる。
天津条約(日清両国兵の撤兵、出兵の時は相互に通知する)を締結。


・1894 日清戦争
日清戦争と言っても、日本と清が直接戦ったというよりも、朝鮮の支配権を清から日本が横取りしようとし起こしたという感じ。
朝鮮の内乱(東学党の乱)を鎮めるために、朝鮮から依頼があったという形で清が兵を送った。
天津条約を理由に、日本は頼まれていないのに出兵。仁川に上陸し、王宮に侵入し占領。
国王の父を擁立して、新政権を立ててクーデターを起こさせる。
国王と朝鮮新政府に「清から独立」「清の軍を追い出して欲しい」と日本に依頼せよと迫る。
結果、「清国からの独立」を宣言。追い出し要請は出されなかったが、勝手に日本軍は清軍を攻撃。
→日清戦争の勃発
平壌を落とし、南満州と中国の旅順まで日本が制圧。


・1895.4 下関条約 (日本と清)
日本の要求は、朝鮮から清の退去(独立を認めよ)、遼東半島、台湾の移管、賠償金。
但し、三国干渉(ロシア、ドイツ、フランス)により、遼東半島まで日本が取るのはダメという
横やりが入り、遼東半島は清に返却。

三国干渉で日本をヘコませたという事で、中国、朝鮮でのロシア株が上昇。
中国はロシアに満州に鉄道建設を許す。朝鮮は国王(高宗)と王妃(閔妃)がロシアに接近。


・1895.10 閔妃殺害、
高宗はロシア公館に逃げ込みクーデター。日本の朝鮮支配の企てが崩れる。
日本はロシアと交渉するも不調。但し、ロシアの関心が朝鮮にはあまり無いと理解した。


・1897  高宗は王宮に戻り、「大韓帝国」を宣言して皇帝になる。独立国を内外に示す。


・1900 中国の義和団事件があり、ロシア、日本含め連合軍が出兵して乱を鎮める。
ロシアは満州を占領。
ロシアが清の満州を取るなら、日本は朝鮮を取るという 満韓交換論が日本で出てくる。
高宗は中立国になりたいと考え、ロシアと組んで日本に承認を求めるが、日本は拒否。


・1902 日英同盟
日本がどこか(ロシアや朝鮮など)と戦争しても英は中立を守る。
もし第3国がロシア側について戦争になったら、英は日本側について戦争する。という内容
これを持って、日本はロシアと交渉。


・1904 日露戦争
韓国は中立を宣言していたが、日本は上陸しソウルを占領。
日韓議定書(日本の保護を受け入れる、日本の戦争に協力する、朝鮮の地は日本が戦争の為に接収しても構わない)に調印させる。
→日本が朝鮮を完全占領。
続いて日本軍は満州に入り、満州戦争、日本海海戦へ。


・1905 ポーツマス講和会議 (日本とロシア)
日本が韓国を完全に自由に処分する事をロシアに認めさせた。他に遼東半島、南満州、南樺太を割譲。
★司馬遼太郎の「坂の上の雲」などに出てくるロシアの脅威に立ち向かうための戦いというのは、虚構。当時のロシアはロシア革命の直前で弱体化しており、東征などの意思はなかった。


・1905 第2次日韓協約
韓国は全ての外交権を失う(日本が外交する)


・1907 第3次日韓協約
高宗は退位、全て内政を日本の統監握る事にした。


・1910 韓国併合条約に署名させる
韓国皇帝が統治権を日本天皇に譲与する。日本天皇は、これを受け取り併合に同意する。という内容。
→「大韓帝国」は消え、日本の植民地となる。


・第2次大戦
 1945.6  沖縄戦
 1945.7 ポツダム宣言(日本への降伏要求の最終宣言)米、中、英
 1945.8 広島原爆
 1945.8 ソ連対日宣戦布告
 1945.8 長崎原爆
  1945.8 ポツダム宣言受諾、
 1945.8.15 玉音放送
 1945.9 正式降伏


・1945.8.15  トルーマンがスターリンに朝鮮の38度線分割占領を提案


・1948.8  大韓民国成立(憲法に領土は朝鮮半島全土と記載)
  1948.9  朝鮮民主主義人民共和国成立(憲法に、首都はソウルと記載)
  大韓民国も北朝鮮もどちらも朝鮮全土制覇は目指して国作り。
 1949.10 中華人民共和国成立


・1950.6 朝鮮戦争
国力の高い北朝鮮の金日成がスターリン、毛沢東の事前承諾を得た上で韓国に進撃。半島武力統一を狙う。
北朝鮮を中国。ロシアが支援。地上では中国軍と米軍の戦い。空中ではソ連軍(パイロットはソ連、機体はミグ)と米軍の戦いになった。
(金日成はキリスト教徒、父のいる満州で行き中国共産党に入る。満州事変等 抗日武装闘争=パルチザン活動を行う。当時、ソ連・中国・朝鮮人が一緒になって抗日パルチザンをしていた。1945.5中国共産党朝鮮工作団団長。1945.9朝鮮の本山へ上陸)


・1953.7  朝鮮戦争休戦協定


・金正日
北朝鮮は設立の時から「抗日遊撃隊国家」というスローガンで来た。日本は戦っていくべく相手。
金正日の2人目の奥さんは大阪生まれの在日朝鮮人。
金正日の時代になって、遊撃隊国家から正規軍国家に変えて行った。狙いは強盛国家(政治大国、軍事大国、経済大国)。
開国方針に舵を切る。小国として大国の狭間を切り抜けて独立を保つのが自分たちの道だと考える。
小泉首相との会談。金正日は日本からのプラント導入をしたく国交正常化に持っていきたかった。拉致者5人を一時帰国させたが、日本は返さないかった(安倍晋三)。これで日朝断絶状態に。これは金正日の汚点になっている。2度目の小泉訪朝。今度こそはという感じだったが、今回も約束が覆る様な事になれば、もう小泉さんとは付き合えないという状態。しかし、持ち帰った横田めぐみさん遺骨のDNA鑑定が、警視庁は結果不明、帝京大学は別人という結果を出した。それで細田官房長官は他人と判断し、北朝鮮との関係を再度遮断した。(火葬した骨のDNA鑑定って本当に出来るのか??)
金正日からすると2度も小泉首相との約束が破られるという結果になったと見える。大きな政治的負担となった。
福田首相の時代になって、再度北朝鮮から交渉のアプローチがあったが、短命首相だったために実現しなかった。


以上 ですが、明治から昭和に於ける日本の朝鮮半島、朝鮮の人達に対して国が行った行為と大きな流れをしっかり理解してから、関係性を見る必要があると感じました。 
こういう歴史を理解している日本国民ってあまりいないのではないかと思いました。

2019年7月20日土曜日

【本】韓国人が身勝手にみえる理由 中村欽哉 三交社

最近の日韓関係はかなり悪くなっています。日本と韓国のマスコミ報道や政府の発表を見ていると、お互いに想定していた相手の反応と異なる反応の応酬で、収拾の切り口が見えない様です。

日本人の私から見ると、珍しく政府の言う「約束を守らない信用できない韓国」という話に共感を覚えます。約束を破ったのに何故ゴメンの一言も無いのだろうかとの疑問もわきます。但し、日本のマスコミや政治家の対立を煽る報道は大人気ない様に思えます。

一方、韓国政府と韓国マスコミの報道は、良く調べないままに色々な事を感情的に言いふらしている様に見えます。又、日本からの提起している問題を、挙国一致の反日プロパガンダにすり替えようとする動きに見えます。しかも、それを韓国国民も疑いもせずに賛同しているような印象です。


あまりにチグハグな成り行きに、兎に角、同じ事実や状況に対して、日本人の解釈と韓国人の解釈が根本的に異なっているのだろうと感じました。


そこで、韓国人(朝鮮民族?)の感じ方はどういう風になっているのかを知りたくて、 韓国人の感じ方について、少し前の時代の本、現在(昨年)の本、そして朝鮮民族のベースになっている儒教とはどんな考え方なのかの本を読んでみる事にしました。


この本はその1冊目。1996年発刊の本ですので、日本でいうと昭和末~平成初の頃にあたる、少し前の時代の韓国人についての本です。やっぱり、色々と基本的な文化や生活風習、常識の違いがあるようです。

こういう考え方、こういう事を大事にする人達なのか という事を理解するのがよさそうです。

以下 ナルホドと思ったポイントの抜粋をします。

1.身勝手にみえる韓国人

・コリアン・タイム:
定められた時間より遅れて会議や行事が始まったり、約束した時間に遅れてやってくる事を意味します。
韓国人の時間感覚は、約束の時間に15分遅れは会釈だけ、30分までなら軽い詫び言ですむ。1時間以上遅れたら、相手を納得させるだけの遅れた理由がなければならない。但し、謝らないで、相手に遅れた理由を説明する必要がある。との事。

これは、よくいえば個人主義、普通に言えば自分勝手な行動様式である。相手のことなどは考えない。相手をまたせること等に心の痛みは少しも感じない。感じるほうが不思議なのである。

日本人は約束の時間を守る事が大事だと考える。相手を15分とか待っても来ない時は帰ってしまう事もある。韓国人は時間よりも会う事が大事だと考える。相手がいくら遅れても先に帰ってしまうという事はない。

歴史的な時間感覚も違う。日本人には遠い過去と思われるようなことがらについても、韓国人は、つい昨日のような感覚で話かけてくる。500年ほども昔になる豊臣秀吉の朝鮮侵略が、今でも数年前のことのように生々しく語られる要因の一つには、この時間の感覚にあるのではなかろうかと思われる。


・チームプレーが出来ない韓国人:
1910年~1945年までのあしかけ36年間、日本は朝鮮半島を植民地支配した。
その時代を韓国人は「日帝時代」とか「強占時代」と呼んでおり、日本に対する憎悪がぎっしりと缶詰のようにつみこまれた時代と感じている。

その間、朝鮮人はつねに日本からの独立を思い続け、実施に独立闘争を繰り返し行ってもきた。その頃、朝鮮人の教師たちは、次のようなことを密かに生徒に教えていた。「1対1の勝負なら、ならず朝鮮人は日本人に勝つ。しかし、3対3の勝負となれば、かならず日本人が勝ってしまう。なぜ集団になると負けてしまうのかを良く考えなければならない。」

韓国企業では、仲間や部下に教える様に指導すると、「ここは会社で仕事をするところです。教えるところではありません。学校へ行くか、自分一人で勉強すればいいんです。」と答え、まわりにいた韓国人も、その答えに同調した人が多かったという。

但し、単に自分本位という事ではなく、一度仲間意識が出来、一人ひとりの役割分担が明確に理解されるとスゴイ組織力を出す。

・韓国人は職人や汗をかく仕事を差別する
肉体労働蔑視は続いており、日本で大学を卒業した人が寿司職人になるなどと聞くとビックリする。

韓国では料理屋は長続きしない。日本で3代続て100年になるおでん屋がある事に韓国人女性料理店経営者は驚いた。”韓国では食べ物商売の社会的評価が低いのです。経営者も従業員もあまりよくみられません。”とのこと。

・年下にはぞんざいな言葉で
韓国人にとって年齢は大切だ。年をとっているだけでも「尊敬」の対象となるから。
一家内の序列は 祖父→父→兄→自分 となる。

家の外では年上や上役、家の中では父親、母親、兄には必ず丁寧語を使わなければならない。父親は子供に対して絶対君主であり、長男は弟達に対して専制者のような存在である。この中に姉妹は含まれない。形式的には、女性は「出て行く者」として家族の成員としてあつかわれていなかったから。

朝鮮王朝時代の身分制度はもう存在しないが、社会的身分(職業の差や職制の差)および年齢による上下関係が複雑にからみあって、序列の決まりが現在の韓国人社会に強く残っている。
だから、いつでも自分がどの位置にいるのかという事が一番気がかりになる。

韓国人は上昇志向が極めて強い民族であるといえる。
自分を目立たせる。積極的に自分を売り込む。大きな声で話す。自分の力で出来ないことでも、出来ないとはいわない。仲間と協調しない。などはいかにして自分を高い位置にいると見られたいかという努力の表れ。


2.ウリ(われわれ)は韓国理解のキーワード

・ウリは共同体意識を表す言葉。
韓国人は「私の家」「私の国」「私のお母さん」「私の先生」というような言い方はできない。全て、ウリをつけて「我々の家」「我々の国」「我々のお母さん」「我々の先生」という言い方をしないといけない。

そして、ウリ意識は入れ子の構造になる。

・第1ウリ集団 家族
韓国では8親等までが家族と考えられる。意識の上では大家族になる。
家族内は一心同体にならなくてはいけない。

・第2ウリ集団 会社の部や課=コネ集団
非常に親しい人間関係になる。新人も基本はウリ内の人とのコネを持っている人が入って来る。

・異なるウリとウリは交じり合わない。
韓国人は未知の相手にはとんでもなく無愛想である。すぐ目の前に壁を作ってしまう。だが、その壁が崩れるとお互いにベタベタした関係を望んでいる。壁が無くなると、次は奥座敷に土足で踏み込む様な付き合いをしなければならない。


3.ウリよがりの韓国人

・強力な家族意識
「同本同姓は結婚できない。」韓国の金海金氏は300万人をこす大集団だが、この300万人同士は結婚できない。
「同族経営は会社の基本理念。」

・「親は子より大事」=儒教の「考=先祖を敬う」が最も大事
日帝時代に日本の支配者たちは、そういう「考第一」意識をもっていた朝鮮人に、何よりもまず優先させるべきこととして、天皇への「忠」を押し付けた。これは彼らから見るととんでもない事。

・「ありがとう」と「ごめんなさい」 軽々しく礼をしてはいけない
韓国では家族の間では、「うれしい」は使うが「ありがとう」は使わない。当然なされるべき行為にたいしては「ありがとう」という感謝を意味する言葉は必要ないという。
よって、レストラン等でもウエイトレスやウエーターに何か用事を頼んでも「ありがとう」という言葉を使ってはいけない。

「ありがとう」「すみません」「ごめんね」という言葉を韓国人は気軽には使えない。本当に感謝しなければならないとき、本当に謝罪しなければならないときにしか使えないのだ。

この習慣のちがいを知らずにいると、日本人側からは、「韓国人はお礼を言わない、謝る事を知らない、なんと尊大な民族なのだ」という見方になってしまう。

韓国人からは、「日本人は謝ってばかりいる軽薄な人間」と見えてしまうのだ。その気軽に謝る軽薄な日本人が、一番大きな過ちである日帝時代の朝鮮支配にたいしては、すこしも謝ろうとしないのだから、韓国側から反省を促す声が、ますます大きくなっていることも理解できるだろう。

・馴染みなると損する  通うほど高くなる寿司屋
ウリ内に入ってしまうと、助け合うのが当然と考えられてしまうので、馴染み客=ウリになると、お店の利益アップに貢献するように高い値段を言われても当然という意識になる。

・一族
血筋をこの上もなく大切にする韓国社会では、過去における一族の尊厳は現在生きている一族の尊厳と同じように、まもらなければならないのである。
以前、大昔の事についての文を書いたら、その登場人物の十数代もの子孫たちの猛烈な抗議にあきれてしまった。韓国で誰もが一族の名誉を大切にし、それを誇りにする。それが李朝時代の儒教思想にもとづいているのはいうまでもない。


4.韓国人の差別構造

・在韓中国人を差別、在日韓国人はもはや韓国人ではない =ハングルが不自由だから

・唯日史観
物事がうまくいったのは自分に能力があったからだと韓国人は考える。上手くいかなかったのは、誰かが悪かったのだと他人のせいにする。又、「運が悪かった」と運勢に責任をおわせるのも韓国人の口癖である。

他人に責任を押し付ける身勝手な癖は、日本を相手に責任をなすりつける時などは舌鋒が鋭くなる。韓国に存在するネガティブなものは、すべて日本のせいであるという解釈法を「唯日史観」という。韓国で一時はやっていた言葉で、韓国の知識人たちは自嘲をこめて使っている。

一方、日本を追いかけ打ち負かす「克日」という言葉もあった。
なかなか「克日」が出来ないので、「離日」という言葉が流行るようになった。日本は世界の中の一つの国にすぎない。先進国は日本ばかりではない。アメリカ、ドイツ、フランスなどからも技術を導入しようという発想。

抜粋は以上 
上記 外にも色々と韓国人の感じ方が書かれているが、今日はここまで。

勿論、日本で発刊された本なので、日本人が読んで気持ちよくなるような演出をしてある本でしょうから鵜呑みにはできませんが、

韓国人の風習、考え方を頭において、現在の日韓のお互いの反応を見ていると、現在の韓国マスコミ、政府の言い方はこういう文化ルーツがあって言っているのか、と考える切り口にはなりそうです。

2019年7月6日土曜日

【本】系外惑星と太陽系 井田茂 岩波新書

何で、地球にはプレートテクトニクスがあるのに火星や金星には無いのかを知りたくて、何冊かプレートやマントル対流、太平洋に関する科学啓蒙書を読んでみましたが、よく分かりませんでした。既に分かっている事や歴史しか書いていなかったり、同じ現象を違う内容で説明していたりする事が分かりました。

つまり、研究者の著者の皆さんは狭い範囲での知見、又は、学説の進化がこの10年でもかなり早い分野なのだなという印象です。


そんな中、やっとこの本を読んで腑に落ちた気がします。2017年に発刊の本なので、2019年の今ではもう古い内容なのかもしれませんが、分かっていない事は分かっていないとはっきり書いてくれています。又、天文学と地球物理の分野としての違い、それを両方俯瞰しないと理解できない事があるという事を知りました。(一般の人は、その違いが分かっていません。。)

そういう意味では、何冊か読んだ本は地球物理学者の書かれた本だけだったかもしれません。


この本の著者は、たまたま両ジャンルの経験を持っていた事で、俯瞰が出来た様です。


・マントル対流自身は、水星、金星、火星でも起きているはずであるが、これらの惑星ではプレートテクトニクスは確認されていない。なぜ地球だけ表面が動くのかは大きな謎である。


・金星は地球の80%の質量のある惑星だが、その大気は90気圧もあり、惑星質量に応じた大気量になっていない。組成も、地球は窒素78%、酸素21%、アルゴン1%。地球本体も含め地球全体で考えると、窒素は太陽組成に比べて何ケタも少ないのだが、大気中では主成分になっている。地球では大気の質量は全体に比べて非常に小さくて、窒素は大気に集まっているから。酸素は極めて反応性が高く、化学平衡的には平衡と言えない。岩石や海と反応して酸素が取り除かれるのに、負けじと光合成生物がどんどん生産している。金星の大気は二酸化炭素96.5%、窒素3.5%。光合成生物がいない事で酸素は無く、プレートテクトニクスが働かない為、二酸化炭素がそのまま残っている。


・なぜ地球に磁場があるのかも分かっていない。地球の磁場はコア(Fe等が液体になっている外核部分)で発生している。熱により対流すると考えられてきたが、一番小さくコアが冷めやすいはずの水星と地球が磁場を持っており、火星、金星の磁場を持っていない。木星・土星のガス惑星、天王星・海王星の氷惑星も強い磁場を持つが、それらは水素層の流動で作られていると考えられている。


・1995年から太陽系外で惑星が見つかりだした。(系外惑星)
 そのデータから、太陽系をは大違いで、水星軌道よりも太陽に近いような領域で、木星的な巨大惑星がいくつも観測されている。これにより、太陽系のイメージとは異なる惑星系が宇宙には沢山ありそうという事が分かってきた。
ちなみに、系外惑星の検出ではデータは1980年代から取れていたのだが、それがまさか恒星にごく近い距離の巨大惑星を表しているとは想像できなかった。一度、そういう太陽系ライクという思い込みを捨てたら、沢山の系外惑星が見つかりだした。既に数千の数になっている。但し、検出方法まだまだ発展途上で、今の方法だと太陽系の構成を遠くから見つける事はできそうもないレベル。
(ドップラー効果を使う視線速度法、惑星の影を使うトランジット法、惑星重力による空間の歪みを使うマイクロレンズ法。)


・系外惑星の実体より、過去に正しいと考えられてきていた惑星形成モデルでは通用しない事が分かってきた。
但し、円盤仮説は観測で沢山発見されて裏付けられた。一方、発見された惑星の中には、水素・ヘリウムよりも軽く見えるものや、木星クラスの巨大惑星なのに岩石で出来ているような質量と思えるものがある。


・発見された系外惑星では、楕円軌道を描いているものもかなりある。これは、大きなガス惑星が3以上誕生すると、その相互作用が起こる。3つだと1つは系外に飛び出させられ、残りの2つは恒星近くと遠くで楕円軌道になる。
よって、宇宙空間をさまよっている浮遊惑星は沢山できる。実際に重力マイクロレンズ観測によって木星質量クラスの光を発しない天体が多数、銀河系内をさまよっていることが発見されている。


・ハビタブルな星が、「水が液体で表面にいられる」という事ならば、浮遊惑星でもそういう状態の可能性はある。
地球の地熱の半分はマグマオーシャン時代の熱、半分は放射性物質の崩壊熱。 厚い温室効果被膜(大気など)があり、地熱があれば水が液体でいられる星は、恒星の熱が無くても成り立つ可能性がある。


上記以外でも色々な常識が覆る事が満載の本ですが、観測力の向上によって色々な事が分かるにつれ、ますます現状の宇宙はどうやって作られてきたのか、地球や太陽系はどうやって作られたのか、生命は、、という謎がますます深まってきています。今まで学校で教わってきた事はガラガラと音をたてて崩れつつあるようです。

しかも毎年毎年謎が深まっているという実態が良く分かり、とても面白いと思いました。とてもHOTだし、これからもっともっとエスカレーションしていくでしょう。


人類は、次の100年で太陽系開拓に入ると思いますが、それを考えて行くにもこの分野目が離せません。


また、色々と想像の羽根を広げる余地もありそうです。

2019年6月29日土曜日

【本】地球46億年気候大変動 横山祐典 講談社 ブルーバックス

地球が誕生してから、その表面の気候は絶えず変化を遂げてきた。それを、最新(2018年発刊)の知見で説明してくれる本です。


隕石が絶え間なく降り注ぐマグマオーシャンから始まって、全球凍結したスノーボールアースなどを経て、現時点はどういうタイミングになるのか。


どうやって大昔の事を推測するのか等、科学知見の辿った筋道含めて説明してくれています。


何故 地球には酸素があって、火星や金星には無いのかなどは、今までは生物が誕生できる水の問題かと漠然と思っていましたが、それだけではない(火星にも以前 水はあったし)という理屈を初めて知りました


へー と思った点を書き出してみます。

・気候を考えていく上で、数百万年までの短い(!)時間スケールで重要な大気海洋雪氷圏を「エキソジェニックシステム」と呼び、1000万年を超える超長期スケールで、バックグラウンドで気候の形成を担っている固体地球(核、マントル、地殻など含む)を「エンドジェニックシステム」と呼んでいる。
この2つの作用がいつも同時に働いている。


・過去の気温もある程度分かってきている。
 46億年~25億年前の太古代、20億年前の頃、10億~5億年前のカンブリア紀、おルドビス紀、4億年前デボン紀、1億年前白亜紀(恐竜がいた)などは、現在よりも10度ぐらい気温が高かった。
 直近の過去65万年では、気温の上下は色々あるが、氷期と氷期の間に間氷期が短くあり、現在は第5番目の間氷期。


・地球を「生命の星」にした2回の酸化イベント(GOEとNOE)があった。
金星、火星の大気には酸素はほとんど無く、二酸化炭素が95%以上を占めている。
地球も40億年前は酸素濃度は現在の10万分の1だった。
それが、GOE(great oxidation event)が25~20憶年前の期間に起こって一気に現在の100分の1のレベルまで増加した。次は5~7憶年前にNOE(Neoproterozoic Oxygenation Event)が起こり、ほぼ現在の酸素濃度になった。

GOEは、プレートテクニクスによって引き起こされた。
プレートテクニクスは金星、火星では起こっておらず地球独特のメカニズム。
地殻がマグマから出来た時は、苦鉄質岩(玄武岩)だった。それは鉄やマグネシウムを多く含むので、シアノバクテリアが発生する酸素も直ぐに酸化反応で地殻に取り込まれてしまう。ところが、プレートテクトニクスでプレートが沈み込むと同時に大量の水をマントルに運び込むのでマントルにて苦鉄質岩からケイ素や酸素に富んだケイ長質岩(花崗岩や流紋岩)が生成され、大陸地殻がケイ長質岩にとって変わられた事で岩による酸素吸着が急速に減少したため。

NOEもプレートテクトニクスによって、大陸とその周りの広い浅瀬が出来た事により有機物が分解せずに地表近辺に蓄積され、そこから二酸化炭素が沢山供給される事でさらに光合成が活性化されて起こった。


・NOEが終わり大気に酸素が増えた5億年前に、生物進化が一気に加速するカンブリア爆発が起こった。


・恐竜の時代は超温暖化時代だった。南極にも北極にも氷がないグリーンハウス・アース状態。炭酸ガス濃度は現在の3~6倍。
白亜紀は特異的に火山活動が活発な時期だった事が海底火山で分かる。その火山性炭酸ガス。又、海面が上がっていたために非常に広い浅瀬地域が出来、そこで作られた炭酸塩岩(サンゴなどから)が、マグマと合わさって炭酸ガスの放出もある。


・でもその後、急激な寒冷化が始まった。
これも地殻変動で、造山活動によりできた新しい岩達の風化により二酸化炭素が吸収された為と考えられる。


・ミランコビッチサイクルーーこれは有名な話なのでここでは割愛。
地球公転軌道の離心率、自転軸の傾き、歳差運動により、2,4,10年サイクルで気候に変動を与える。


・海は熱輸送だけでなく、二酸化炭素を捕集しておく大きな器。
深層海流などで熱の分配がおこり気候に影響を与えている。(熱塩循環)
グリーンランド沖と南極近郊で海水が冷やされ+塩分濃度アップ=比重アップで海水が深層に流れ込む滝を作っている。
グリーンランドの氷河が溶けて、真水が沢山供給されるとこの熱塩循環が弱まり、北半球は寒冷化、、南半球は温暖化 が起こる。


以上

現在の気候や酸素生命圏を生み出しているのがプレートテクトニクスの作用だというのは面白いと思いました。

一方で、なぜ地球だけにプレートテクトニクスが起こったのか、起こり続けているのかも知りたくなりました。月の存在が関係するのかな?

2019年6月27日木曜日

【心と身体】コーヒーショップだと集中して読める。 BGMの効果

以前から、家の自室で本を読むのと街のコーヒーショップで本を読むのでは、コーヒーショップの方がはるかに集中して、早く読める事を感じていました。


自室で読んでいると、もっと楽な姿勢があるのでは?とか、ついスマホやパソコンに逸れてしまったり、コーヒーもがぶ飲みしてしまったりとか、兎に角 1冊の本を一度に読み切ってしまう事がなかなかできません。


でも、コーヒーショップだと、1-2時間で1冊以上読み終わってしまう事も。


自分はケチだから、料金を払っているお店では元を取らなくてはと潜在意識の中で思っているのでは? などど分析してみたりしていました。


でも、ある時フト、これはカフェの雑音が逆に集中力を上げてくれているのでは?と考えました。

そこで、ユーチューブで日本のカフェの音という動画があるので(本当にユーチューブには色々な物がありますね9、それを自室で再生しながら本を読んでみました。


すると、、、集中力が上がるのです。
途中で、他の事に気を取られる事も少ない。


それが分かってからは、もうお金を払ってカフェで本を読むのではなく、自室で自分で好きに入れたコーヒーを飲みながら、カフェの音を流して読むようになりました。

BGMの効果は凄いです。


寝る時も、海岸の波の音(これもユーチューブ)を耳元で小さく流すと、本当に1分もたたないうちに寝てしまいます。


色々なシーンで、どういう音が効果を出すのか 今後も見つけていけるかもしれませんね。楽しみです。

2019年6月26日水曜日

【本】理化学研究所 山根一眞 講談社ブルーバックス

科学技術系の文を沢山書かれてきている山根さんが理化学研究所を訪問してその「今」を明らかにする。との事。


勿論、理化学研究所はこんなにスゴイ、魅力イッパイだとPRする様に書くという狙いの本である事は間違いないと思うのですが、それでも そんな事もやっているのか、出来るかもしれないのか、、と驚きのある本でした。


何にも知らなかったので理化学研究所って、何となく特定の企業とつるんでいる印象の、官だか民だか分かり難い研究機関というイメージを私は持っていました。


その歴史をこの本で知りました。以前のトップが研究成果を商品化して、そのライセンス料で研究費を稼いで自由に独立して研究できるようにしていこうという発想で、取り組んで来た組織とのこと。

理研ビタミン社の「ふえるわかめちゃん」
株式会社リケンのピストンリング
株式会社リコーの複写機
など

理化学研究所からの商品や企業が生まれてきました。

今も、色々な企業や機関との共同研究も盛んにやられている様子。


現在の理化学研究所でのトピックスとしては、、

・世界1の規模のサイクロトロンを保有
新しい元素を発見できる。周期律表で113番目の元素を合成、ニホニウムと命名。
研究を進めると原子力発電所での使用済み核燃料も、中性子をあてて放射線を出さない物質に消滅処理を行える可能性がある。
生物に重イオンビームを照射して、突然変異を多発させて色々な品種を作る事ができる。

・世界最強の放射光施設 スプリングエイトを持つ =スーパー顕微鏡
光合成を担う触媒の姿が明らかになった

・X線自由電子レーザー施設SACLAを持つ
太陽の光の100億倍x10億倍の強力光パワー。超解像度。
光合成の触媒の原子構造も解析できた。

・スパコン「京」を持つ
放射光分析と京の計算能力を使い、住友ゴムはとんでもなく省エネなタイヤを開発。

・バイオリソース拠点を持つ
細胞や遺伝子を凍結保存等して集め、保管、増殖し販売する。
実験用マウス 7818系統
細胞 1万855株
微生物材料 2万5176株
遺伝子材料 380万8264株

・IPS細胞を使って、再生医療の目途。加齢黄斑変性症。
 3次元の臓器作成。--ハゲ、歯の再生医療の目途。

・固体の水 アクアジョイント

等。

これ以外にも、テラヘルツとか量子コンピュータとか、ポピュラーなテーマの技術研究もしているらしい。


本 1冊を通して、とにかく 理研は元気! というイメージを持ちました。

理科系の中高生あたりが読むと啓発されそうです。


私は、核廃棄物を無害化できる可能性という話が目からウロコの驚きでした。

2019年6月25日火曜日

【本】アメリカの大学の裏側 アキ・ロバーツ 竹内洋 朝日新書

最近、日本の大学の入試裏操作や、博士取得がどんどん減っていたり、研究者は非常に不安定な生活を送っている等の話を良く聞きます。一方、ノーベル賞を取った研究者はアメリカに渡った人が多かったり、アメリカの大学と研究は質が高そうというイメージがあります。


この本は、親娘での共著になっており、アキさんはウィスコンシン大学のテニュア(終身雇用)准教授をされています。米国大学事情をマスコミ的に伝えるのではなく内側から見た赤裸々な姿として教えてくれます。


この本を読んで、アメリカの大学ビジネス(?)の事情が理解できたのと同時に、ボンヤリ今まで持っていたイメージの裏側が見えてきました。


読んで、私が エッ! そうだったの?と思った点を書いてみます。


・アメリカ人は大学教授にあまりいい印象を持っていない。
終身雇用がほぼ約束されるテニュアを持つ大学教授に風当たりが強い。アメリカの一般企業は解雇が日常茶飯事で行われる。雇用が不安定なアメリカではテニュアは特権階級的にとられるのも否めない。又、インテリ層の大学教授は浮世離れしていて、大学の講義内容なども現実社会では全く応用性がないと思っている人は多い。
テニュアを排斥しようとしている州もある。


・大学世界ランキングが発表されているが、TOPは英語圏の欧米で占められている。審査では論文の「引用度」が大きな割合を占めるが、英語が公用語でない日本は圧倒的に不利になる。引用頻度の審査対象とされる学術誌は殆どが欧米で占められている。


・アメリカの学部生にとっての「名門」大学は、アイビー・リーグ。ブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学の8校、全て私立。


・1975年ではテニュア教授が45%いたが、今は25%以下に減っており、非常勤講師などが4倍に増えている。テニュアの募集には非常に大人数が集まるので、エリート大学出身者以外が足切りされる事が多い。結果、テニュア職員間のネットワークはエリート大出身者になって行き、さらに有利になる。


・優秀な人材を確保する為に、「配偶者雇用」を実施している大学もある。


・アメリカの大学の授業料はどんどん上がってきている。アイビーリーグげは平均年5万$=500万円。カナダの大学の方が安く、内容も悪くないので、アメリカの高校生はカナダの大学に行くことも。


・国や州からの公的資金が減らせれてきているのも、授業料高騰の原因の一つ。LGBT対応など新しく付加しなくてばいけないサービスも増えている。


・エリート私立大学は、巨額の寄付金を集めるので裕福。
それらは気前よく奨学金を出す。低所得家庭出身の学生の大学資金を支援する事で、裕福な学生ばかりを優先入学させて階級の再生産を促しているという悪いイメージを払拭しようとしている。しかし、低所得という定義は世間離れしており、アメリカの平均世帯所得が5万$なのに、6万5千$を基準としている。授業料だけでなく大学生活にかかる費用は全額カバーしてくれる。返済不要。


・通常の大学は破産しはじめる所もでてきている。又、一般学生は2/3が奨学金ローンを抱えて、ローン地獄に。


・名門大学では、学業の成績が良くないといけない。しかし、それだけとは限らない。学力だけでなく、学生の個性や人物の全体像を評価するホリスティック入試をおkなっている。ホリスティック入試では、貧困層出身者(親が大卒でなく、初めて大学に進学せうる世代=First Generation)、運動や芸能に優れた才能、リーダーシップ力、ポランティア活動など、ユニークな人生経験、親や近い親戚にその大学の卒業生がいる事などが有利とされる。それに加えて、「アフォーマティブ・アクション」と呼ばれる積極的差別是正措置でマイノリティ人種入学を優先する所もある。


・親や近い親戚にその大学の卒業生がいるのは「レガシー」と呼ばれて、合格率は一般生に比べてハーバードでは5倍になる。さらに、お金持ちの子供は、運動、芸能、ボランティア、色々な経験などをするゆとりがあり、有利になる。


・アメリカの政財界のリーダーの半分はわずか12校の名門大学卒で占められている。
そして、過去、名門校はWASP(アングロサクソン系プロテスタント白人)と呼ばれる支配階級の白人が占めていた。ところがユダヤ系やカトリックの生徒が高成績で入ってくる様になり、それらに乗っ取られないようにホリスティック入試を考え出したという経緯がある。


・ホリスティック入試で実際に一番威力があるのがスポーツ選手、次がマイノリティ人種、レガシーと早期決断応募者、ファーストジェネレーションの学生の順で、貧困層出身というのは殆ど恩恵がない。
ちなみに、アジア系は勉強が出来るのでマイノリティではなく白人扱いになっている。


・”アメリカの大学は入学は簡単だが、卒業が難しい”と言われるが、それは勉強が難しいからという事ではない。エリート校にマイノリティ枠で入って学力が劣る生徒たちも、しっかり奨学金をもらって生活して白人とかわらない90%以上の卒業率になっている。一方、一般大学の学生は、途中で経済的に続けられなくなり卒業できないというのが実態。


・アメリカの大学では、ABCDFの成績評価で、C以上が合格だが。殆どはAしかとらない。これは「成績のインフレ」。Bとか付けると生徒から先生が問い詰められる。そいうクレームが先生の大学からの評価にも影響するという事で、インフレさせて丸く収める風潮とのこと。4年生大学で、42%の成績がAになる。
学生は「お客様」扱いになってきている。


ポイント抽出は以上


これらの中で、特に驚いたのは「入学は簡単だが卒業は難しい」というのが経済的理由だったという話。私は、てっきり厳しい勉学を習得しないと卒業できないという制度なのかなと誤解していました。 ナーンダという印象。


アメリカの大学は、商売=ビジネス の色が濃いのだとこの本で良く分かりました。


現在の日本の大学はどうなのか? 公費支給を削って削って、期限付き雇用がどんどん増えてきている日本の大学も、アメリカ化まっしぐらに進んでいるのではという気がしました。

2019年6月22日土曜日

【進化途中?】最近の路線バス

最近の路線バスに乗ると、とても使いづらいと感じます。
乗りたくないな、、と。


いわゆるノンステップバスというやつですね。

シニアが使い易い様に、低床にして前半部はシニア向けの座席や車いすスペースを作っています。その反面、後半分は段々と高くなる床で狭い2人掛け用ベンチシートが並んでいる。


考え方は、理解はできます。

昼間の乗客の大半はシニア層なので、シニアが乗りやすい構造にしているというのですね。しかし、現役世代はそうとう出入りや居住性の悪い座席レイアウトを強いられる事になっています。

でも、シニアの人数は益々増えて、後半分にもシニアが座る様になりつつあります。
そいう人を見ると、ただでさえ危ない足元が本当に危ない。


全世代が気持ちよく乗れる路線バスに早く移行して欲しいなと思います。


技術としては、電気自動車(EV)化して、インホイールモータ等を採用すれば全面低床で、電車の様に長いベンチシートの構造のバスが今でも十分作れるはず。
そうなれば、全てがシニア向けかつ現役向けの席として使えます。


経済性で、、とかバス会社側の理屈はあるのだと思いますが。

高齢者免許返納のムーブメントもありますし、良いバスが走ればお客数も必ず増えると思います。

まだまだ進化途中という事ですね。

【本】すべては救済のために デニ・ムクウェゲ あすなろ書房

2018年ノーベル平和賞に「戦争や武力紛争の武器としての性暴力の撲滅を目指す取り組み」が評価されて受賞されたコンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)の医師の書いた自叙伝です。


300ページほどの本ですので、普通ならば1日で読めてしまう厚さの本ですが、その内容の重さ、深刻さに1回で2章読むのがやっと。2週間近くかかってやっと読み終えました。

バイオレンス小説ではなく、これが今、現実にコンゴで起こっている事実という事が心に重くのしかかって来ます。


彼のノーベル賞の受賞のニュースは日本でもずいぶん流れていましたので、存在を知っている人も多いのではないかと思います。

ただ、ニュースで聞くのは、レイプ、性暴力の撲滅を目指し という言葉。

日本で普通使われる 「レイプ」は、性欲による性行為という内容が殆どですが、デニさんが直面している性暴力は、そういう次元の話と、内容ではではない事が分かりました。

同じ単語で表しては、伝わらないのではと感じます。


コンゴでの部族間の民兵による(政府軍も?)部族抗争に於いて、その地域の社会を内部から破壊して制圧するための「金のかからない武器、作戦」としてのレイプ。

コンゴは非常に天然資源に恵まれた、本来ならばとても裕福にもなりうる国なのですが、400もの部族があり、部族主義を扇動し、資源を元に暴力で奪い合う行為、政治が満ち溢れている。欲と恐怖、利己主義とナショナリズムの坩堝になっている様です。

具体的な悲惨な内容や、コンゴ国民がどういう状況を強いられているのかが、つい最近から現時点まで続く現実を赤裸々に描かれています。


具体的な内容は、ここに引用する事もためらってしまう内容です。
その代わりに、デニさんの考えのまとめにあたる部分の一部引用をさせてもらいます。


ここから、

コンゴが必要としているのは公益を重視する起業家だ。そうした起業家の存在こそ、国家が立ち直り、国民が誇りを抱かせる国への生まれ変わるための条件の一つだろう。その夢の実現を望む国民は大勢いる。

 と同時に、ほかの分野でも変化が必要だ。たとえば私は、伝統のいくつかを部族主義に類似するものとしてとらえている。性暴力被害者のために働いていると、つねに直面するのが男性優位主義だ。この地では男性が女性を支配する文化が幅を利かせている。女性を”押し潰し”、二次的役割に押し込める文化だ。キリスト教徒が多いコンゴの国民は、強姦は女性を穢し、さまざまな問題を引き起こすと考えている。そのため、そうした”穢れた”女性を家族や教会のコミュニティから排除しがちだ.会衆の面前で赦しを乞うよう女性に強いることもある。

 私は事あるごとに、そのような時代錯誤の慣行をやめるよう説いている。この地域で猛威を振るっているレイプは性欲とはまったく関係がなく、強姦を働く者たちの動機の大半はそうした欲望とは別物だと強調しながら。

 「それは快楽を得ようとする性的な行為ではなく、獣じみた残虐な行為です。レイプをおこなう人々は、そうすることで権力や鉱物資源を手にできると考えている。あるいは、腹いせにレイプをする人もいる。なぜなら軍が兵士にきちんと給与を払わず、彼らを貧困の中に打ち捨てているからです」

 そうしたメッセージを強かいの指導者たちが理解すれば、たくさんの物事が変わるだろう。そして実際、私は変化を感じている。教会の多くが、とにかく以前よりは女性たちの境遇を暗示はじめた気がするのだ。

引用終わり


コンゴでは2019年に新大統領が誕生したが、今までのこの現実から目を背けてきたカビラ前大統領の勢力が沢山残っている。

良い方向に向かうかは全く分からない状況。国際社会からの一層の支援が必要だろう。紛争鉱物を使わないという取り組みも先進国企業に広がりつつあるが、もっと踏み込んだ事が必要なのだろう。


インドでも女性の虐げられる犯罪の話を沢山聞きます、世界ではこういう悲惨な事が沢山残っているようです。


まずは、この現実は皆がちゃんと知る事が重要だと思います。
内容の重い本ですが、沢山の人に読んでもらいたいと思います。

2019年6月9日日曜日

【心と身体】スマホとガラケー

今まで使ってきたiPhoneを止めて、ガラケーでの生活に戻しました。
(家ではタブレット等でネットにはつなげられます。)

最初の数日は、「何時でも検索できる」、「何時でもニュースを見られる」、「地図サービスが使える」などが無いのでちょっと不便かなという気がしましたが、すぐに慣れてしまいました。

ガラケーは1週間 電池が持つし、軽いから楽だなあと再認識。
料金も安い!!

電車やバスの中でも、久しぶりに文庫本等を読み始めました。

”時間のゆとり” をかなり感じられます。


それで3か月過ごしました。


たまに外出中に検索をしたい時はガラケーのiモードを使いましたが、ガラケーで使えるサイトの数がかなり減っている事が分かりました。世の中はすっかりスマホ前提に動いている事が感じられます。


災害時の連絡のつきやすさなどは、ガラケーの人数がかなり減ってきているので回線容量的にはより安心になって来ているのではと思います。


でも、来年から始まる5G世代が普及していくと、機械間の通信が一気に増えて行き、政府もキャッシュレスを無理やり進めるなど、デジタルでないとコントロールしにくく損をする社会がいよいよ始まりそうな予感もします。


そこで、やはりガラケーからスマホに乗り換える事にしました。

格安スマホも含めて色々調べて契約しましたが、それでもガラケーよりは料金高い。


スマホを再度持ち始めて2週間経ちました。

でも、以前と違って電車やバスでの文庫本は続いています。
スマホを持っても、すぐにいじるという事は無くなりました。

断食と同じ様に、悪化していた体質(気持ちの生活習慣)が回復した様に感じます。
新しい気づきです。


時々、禁スマホ、禁ネットという期間を意識的に作るのが良いのかもしれません。

2019年6月2日日曜日

【本 心と身体】心の潜在力 プラシーボ効果 広瀬弘忠 朝日選書

前回、システマティック・レビューの記事を書きました。

その中で、二重盲検査でないと客観的な分析が出来ないという話がありました。
処方する先生の微妙な表情が、患者へ影響を与えてしまうから、、というのがその理由です。

純粋に薬効を評価するという意味では、二重盲検査手法は良いと思います。

ただし、治療するという観点では心の作用と合わせられれば、さらなる効果が期待できるのではと思いました。


心の効果として有名なのは、プラシーボ効果ですね。
ただの砂糖でも、薬と信じ込んで飲むと薬効に近いものが発現するという事。
昔から知られていますよね。

物質的なものを飲んだりするだけでなく、ダミーの手術や、担当医の説明の仕方一つで治療結果が変わって来るという例は色々と報告されています。

この本は、そういうプラシーボ効果について、具体事例やどういう状況だとプラシーボが起こりやすいのか、活かせるのか、逆にマイナス効果を生む事もあるなどを説明してくれます。


私自身、何を飲んでも直後から効いた感じに好転してしまう事が多くプラシーボ効果が出やすいと感じています。なので、高価な薬など買わずとも、小麦粉+これで大丈夫という思い込み で大抵の事は治ってしまえるのではと思います。

何か真剣に信じて思い込める物事を一つ作っておけば、そこで心の力を引き出せる様にできるという事かもしれません。

宗教なども、その一つになりえるのでしょう。


高度医療や高額な新薬開発などよりも、プラシーボ効果を上手く活用する医術の普及などの方が、QOL向上や医療費低減に大きく貢献しそうな気がします。

製薬会社や医師会(それをバックに持つ政府)などは利害関係があるので、決してそちらに向かおうとはしないのだと思いますが、プラシーボ研究がもっと発展して草の根的でも広がっていけば良いと考えます。

【本】あざむかれる知性 村上宣寛 ちくま新書

サブタイトル ー本や論文はどこまで正しいかー

著者は認知心理学等を研究した大学名誉教授の方。

いきなり骨子となる部分を抜き書きさせていただきます。

「科学が進歩したので、なんでも正しく理解できる様になったかと言えば、そうでもない。職業的科学者が爆発的に増加したので、科学論文も爆発的に増加した。研究成果を宣伝しないと研究費が取れなくなる。それで、マスコミに売り込むためには手段を選ばない研究者もいる。まじめな研究者の科学論文でさえ、さまざまなバイアスから自由ではない。

研究論文は星の数ほどある。実証科学では、ある特定の仮設を支持する研究が100%ということはあり得ない。支持する研究はあるが、支持しない研究もある。ウエブや書物の科学記事の大部分は、自分の意見に添う研究のみを取り上げ、他を無視するという方法で書かれている。つまりは、つまみ食い的評論で、自分の意見を科学的に装っているだけである。無料で読める記事はそれなりの内容である。結局、記事の大部分は疑似科学にすぎない。

幸い、良心的な研究者たちが数多くの研究論文を評価し、まとめ上げたレビュー論文がある。その中でもっとも信ぴょう性が高いのは、ランダム化比較試験をメタ分析という統計技法でまとめたレビュー論文(システマティック・レビュー)である。特定の仮説がどの程度支持できるかに関して多くの論文を効果量という数字でまとめ上げている。それで、つまみ食い的でない、比較的公正な結論が得られる。どんなトピックでも、メタ分析の論文をいくつか読めば、科学の最先端の結論が簡単に手に入る。逆に言えば、メタ分析の論文を読まない限り、つまみ食い的評論に左右され、結論を誤ってしまう。

最近は、多くの重要なメタ分析の論文はオープンアクセスになっていて、PubMed経由で無料で読める。したがって、専門外の分野でも、検索キーワードを入れ、システマティック・レビューというフィルターを付けると、多くの論文が出てくる。そこで、関連する論文をいくつか読めば、ただちに最先端の知識に辿り着く。せっかく良い時代になったのに、読む人は少ないのだろうか。少なくともベストセラーの著者や大衆的なウエブ記事を書く人は読んでいないようだ。」


つまり、実験のやり方やサンプルに偏りや意図的改ざんのある論文も多い。人間がからむ事項の場合は、薬の世界で良くやられる2重盲検査のようなやり方をしないと正しい科学的結果は得られないと考えられます。

これらの事実を前提として、各論文の信ぴょう性を評価しながら網羅的に全体をレビューするシステマティック・レビュー(研究を網羅的に調査し,同質の研究をまとめ,バイアスを評価しながら分析・統合を行う。日本語では系統的総覧?)でないと科学的な証拠性の高い結論は分からないという事を言われています。

その後は、色々なシステマティック・レビュー結果を述べてくれています。


・BMIと死亡率
 アメリカでは20・30才代でBMI=20前後、40才代で22、50才代で24、70才代で26ぐらいが最も死亡率が低い。日本を含むアジアでは、3位減らした数値で考えた方が良い。つまり、40代台で19ぐらい、50代で21、70才代で23ぐらい。

・塩と血圧
 塩分摂取を減らすと血圧も下がる。

・コーヒー摂取量と死亡率は負相関
 1日3杯飲む人は死亡率が21%低い。

・睡眠と死亡率
 最も低いのは7時間睡眠。 その上でも下でも死亡率は増える。

・プロの投資家と結果
 プロ投資家の結果は市場平均と同じ

それ以外に、ダイエットについて、就職面接について、優秀なビジネスマンについてなどなど沢山の項目が出ています。


この本を読んで、なるほどシステマティック・レビューというのは客観性が上がりそうだと思いました。
商業的なダマシを排除して、大まかな傾向はこれで分かりますね。


ただ、こと人間に関する事はこのレビュー結果も鵜呑みにはできないなとも感じました。
色々なパラメータの交互作用がきっとあると思いますので。

生活スタイルや活動の癖、勿論遺伝なども、きっと効いてくるでしょう。
こと健康に関する事は、自分で試して自分で見つけていくという事が必要そうです。


例えばこの本に抗酸化物質のコーホート分析結果で、ビタミンCサプリ多量摂取が高齢で白内障に悪影響を出たので飲むのを筆者は止めたと書かれています。
でも、元情報をあたって見ると加齢黄斑には逆に好影響という報告もあり、要はそこそこの量にしておけば良いのではという事になる気が私はします。


システマティック・レビューを紹介した本ではありますが、この本にも著者のバイアスが当然かかっているのですからね。

2019年5月28日火曜日

【宇宙】オウムアムアの謎

2017年に星間空間からやってきて、太陽系でスイングバイ(加速と方向転換)をして去って行った巨大物体のオウムアムア。

①非常に細長い形
②表面の光の反射が、通常の彗星等の10倍高い。(金属の様)
③重力以外の方法での加速が行われた
  ガスは望遠鏡で見えない。
④棒手裏剣の様に回転している。
  回転の遠心力を考えると、物質の集合体ではなく固体状と推定される
⑤太陽系の惑星公転面にほぼ垂直の方向から来た


というのが観測された情報。


やはり彗星の一種なのでは?というのが公の天文界の見解の様子。

ハーバード教授がもしかしたら宇宙船かも、、という話をしたが検証できず。



というのが状況の様ですね。

勿論ネットでは、既に米国が隠密に着陸して調べて古代の宇宙船だったという事が分かっている、、という様な記事もありました。


とにかく不思議な飛行物体だったという事は皆の一致している話らしいし、データがあまりに少ないので誰も断定的な事が言えないのです。


私は、この1ヶ月ほど アイザック・アシモフのSFにドップリ浸かっているので宇宙観測船だと考えると楽しいなと思います。

①の形。 素直に人工物をイメージさせます。
②やっぱり金属で出来ているのでは?
③何らかの加速を行った。姿勢制御のロケット噴射かもしれないし、他の方法かもしれない。
④SFの宇宙ステーションで良くある、回転により疑似重力を船内に作っている。
⑤太陽系の全体像のデータ収集には最も適した方向から来たのでは?


と、コジツケも出来そうです。

1回来たならば、今後 2回目、3回目の星間物質の訪問があるかもしれませんね。
恐い様な、楽しみな様な、、、、

2019年5月6日月曜日

【本】驚異の再生医療 上田実 扶桑社新書

今年の1月1日に初版発行になった本です。

副題は ~培養上清とは何か~。

著者は名古屋大学医学部名誉教授の方。


NHKで札幌医科大学でやっている脊髄損傷患者への幹細胞投与(本人の幹細胞を培養して大量に増やして再注入する)によって、身体麻痺した患者さんが従来のリハビリ経験とは全く異なる好成績での回復をしたという番組を見ました。

しかも、この治療が来月から健康保険適用になるとの事で、再生医療がついに身近になって来たという事と、その劇的な効果の可能性に驚きました。

そこで、再生医療の前線を知りたくてこの本を読んでみました。


すると、日本ではIPS細胞を用いた研究には大きな金が出ている事。札幌医大がやっているような幹細胞を用いた再生医療の試み、それに加えて培養上清液という物を用いる試みがある事が分かりました。

上田先生は、培養上清液を用いれば、安全かつ低コストにて実効的な再生が出来るという事を発見したとの事。


IPS細胞や幹細胞での研究は、それらの細胞を(分化)増殖して、それを身体に入れることでそれらの細胞が修復作業をしてくれるハズという考え方。

対して培養上清は、幹細胞培養時にできる培養液の上澄みで、細胞から放出される生理活性物質が沢山入った液体(細胞は入っていない)との事。

それを患者さんに投与すると、患者さんが最初から体内に持っている自分の幹細胞を元気にし、その自分の幹細胞の働きで再生組織が作られているという働きを起こす。

しかも、他の人の物で作られた培養上清でも拒絶反応が出にくいし、大量作成や錠剤化も可能との事。


色々な障害に効果を発揮。
アルツハイマー病の人に投与してみたら、かなり劇的に認知症状も軽減されたらしい。


米軍も再生医療を開発中で、妖精の粉と呼ばれているとの事。

テレビで妖精の粉を使った再生医療の中で、切断された指を元通りに再生する治療が紹介されました。設題した指の断面に妖精の粉を乗せて、包帯で包んでおきます。何かすると、切断してなくなってしまった指が伸びてきます。しかも、爪まで再生されているのです。これには、さすがの私(上田先生)もびっくりしました。 

この妖精の粉は作成方法は異なりますが、培養上清と同じ生理活性物質を含んでいると推察できます。どちらも細胞が含まれていないということが共通点です。


IPS方式が持つ課題(癌化の可能性等)や、札幌医大などの幹細胞増殖方式の欠点(時間や費用が膨大)がクリアされ、非常に現実的かつ有効な手法の様です。

実用化されれば、スゴイ可能性がありそうです。


但し、色々な成分が入っている培養上清が、どういう化学メカニズムで効くのかという詳細メカニズムが解明できていないので、日本の行政では薬事化が難しく、製薬会社も乗って来づらいとの事。動物実験は沢山行われているが、人間での治験は日本の仕組みではハードルが高いとの事。

そこで、ノルウェーの有力大学と名古屋大学での国際連携プロジェクトという枠組みを作り2019年から進めようとしている。


上手くいけば、日本の発明なのにノルウェーの大学から特許申請し、EUの製薬会社が作る事になりそう。


上田先生は、実用化されて再生医療が”身近に使える医療”になる事は喜ばしいが、日本でそれが出来ない事に本当にガッカリされているという気持ちが伝わってきます。


尚、先生の論文を見て、アジアの会社が培養上清液もどきを作って、日本のクリニックなどが輸入して商売しているという現実もあるらしい。(美容とかそういう方面でしょうか) ネットを検索すると、確かにいくつかヒットします。


再生医療、しかも 患者自身の自然再生力を用いた再生医療が低コストで出来れば非常に良い方法だと私も思いました。


しっかりした方法で、素早く 検証と実用化を進め、一方でまがい物は規制するという仕組みを日本国行政が進めて欲しいですね。

2019年5月4日土曜日

【本】ファウンデーション(銀河帝国興亡史)シリーズ アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫

英語のブラッシュアップの為に、図書館でペーパーバックを借りて読もう。その前に、その日本語訳本を読んでおこうと考えました。

最初は、アガサクリスティにしようと思い、オリエント急行殺人事件を久しぶりに読みました。面白いのは面白いですが、突然 読者に与えられていない情報を用いてポアロが推理したりする所ですっかり萎えてしまいアガサを使う事を止めました。

その図書館にあったペーパーバッグで次に目についたのは、トムクランシーとアシモフでした。

そんな訳で、このシリーズ1-3巻を図書館から借りてGWに読みました。


SFは学生の頃から好きなのである程度は色々な作品を読んでおり、アシモフのコレも書店の背表紙でも散々見ていたのですがまだ読んでいませんでした。

古典と言ってよい有名作品なので、内容は書きませんがとても面白く、第1巻だけを読んでみるつもりでしたが一気に3巻まで行ってしまいました。


物語の設定やスタイルが斬新(古典なのにこの表現はおかしいかもしれませんが)です。


物質科学と精神科学の2本柱の世界感は、どことなくEEスミスのレンズマンシリーズを連想させました。書かれた年を見ると、レンズマンシリーズに少し遅れて書かれた様なので、それに影響を受けたのか、又はその時代(第2次世界大戦前後)はこういう世界感がアメリカにはあったのでしょうか。


レンズマンシリーズが、正義の銀河連合対悪のボスコーンという対立構図は、執筆当時の第2次大戦の連合国軍対日独伊という構図をイメージ投影して書かれています。

しかし、ファウンデーションシリーズはそういう現実世界の投影ではなく、純粋SFとして書かれている様に思える所が差異かもしれません。


同時代のSF作家のアーサーCクラークと比べても、クラークが技術者的な書き方なのに比べて、アシモフは文科系的な書き方という見方も出来るかもしれません。


現実世界を見ると、遺伝子操作なども含めて科学技術はどんどん進んでしまうが、人間の精神的な進化は殆ど進んでいないのではないかと感じられます。 

アシモフの言う第2ファウンデーションが人間性進化なのかは分かりませんが、少なくとも科学技術の進化をコントロールできるような人間の知恵や意識の進化という両輪が必要なのだろうと多くの人が感じているのではないでしょうか。

XX工業大学など科学技術の推進体制はありますが、人間性を進化させることを研究し進化させる開発体系(政治・経済学のような技術ではなく)も作る事が必要そうです。

すでに有るのかな?

2019年4月20日土曜日

【家 住み手が書く】庭の雑草対策

庭の雑草対策はいくつかの方法があるようです。

土の部分にグランドカバーになる植物を植える。例えばクローバーなど。

防草シートを敷き、その上に砂利を敷く。

コンクリートでのタタキにする。

ウッドチップを敷き詰める。

タイルやレンガなどを敷き詰める。

インターロッキングブロックを敷き詰める。

などなど。



グランドカバー植物、防草シート+砂利、ウッドチップ、インターロッキング敷、コンクリートのタタキを部分部分で使ってみました。


1年過ぎてその防草効果は、

グランドカバーは白クローバーを生やしたら、全てを覆いつくすぐらいに増殖してしまい、他の雑草は生えてきません。但し、一冬越したクローバーは狂暴化・巨大化します。時々 刈り取ってやる必要が起こっています。

防草シート+砂利はシート脇や隅から雑草が出てきます。但し、本数は少ないので手で取っても大した手間ではありません。

ウッドチップも木のスキマから何本か雑草が伸びました。本数は少ない。

コンクリートのタタキは全く草が生えません。

インターロッキングを敷き詰めた所も雑草は生えてきません。

今回、庭木への事も考えて透水性インターロックを使いました。

透水性だとかなり強い雨が降っても水は染み込んでいくので水たまりはできませんし、雨が上がった後にとてもサッパリした感じです。

コンクリートのタタキはいかにも濡れているという感じになりますが、透水性インターロックはスッキリしている感じですがすがしさが感じられます。


普通のインターロックより少し高めですが、使ってよかったなと思います。