2019年11月16日土曜日

【本】樹の上の忠臣蔵 石黒耀 講談社

石黒さんの本を読むのは、「死都日本」「震災列島」「昼は雲の柱」につづく4冊目です。

「死都日本」は巨大カルデラ噴火の話で、精密な地学の科学知識に裏付けされた破局的クライマックスSF小説。ただし、日本の在り方に対する、著者の提案が随所に盛り込まれていて面白い。科学読み物という性格も持っています。火山学者からも内容に折り紙付きです。


「震災列島」も地震という地学知識を基にしたストーリーですが、どちらかと言うと刑事ものに近いサスペンス推理劇場で、ハラハラしながらどんどん引き込まれていきます。


「昼は雲の柱」も地学知識で富士山噴火をベースにした話に、神話を組み合わせた小説。富士山噴火ってそうなんだと、科学読み物の性格も少し入ったSF.



そして、今回の「樹の上の忠臣蔵」は、お笑いかつ歴史の裏の人間模様や社会の因果関係を緻密に描く、お笑い実録小説とでも言うのでしょうか?



4冊のどれも、そうだったのか、、という新知識欲を満たしてくれた上で、各冊違った面白さがある本なのですが、私には、特にこの本がハマリました。


漫才小説としても抜群に面白いし、忠臣蔵から明治維新につながる新しい話にも、なるほどと思わせるものがいっぱい。

石黒さんの本、特に前記3冊は、緻密な調査や知識をベースに書かれている物が多いのですが、この歴史小説はどこまでが事実で、どこからがフィクションなのかが分かりません。もしかしたら、人物表現以外の各種イベントは事実なのかもしれないと思いながら、でもフィクションはどこだ?というのが気になります。


4冊 どの本も、”読者自身でもっと調べてごらんよ” と著者に言われているような気になります。

学術的エンタメという分野を石黒さんは開拓されてきているのかと思いました。


この本が出版されてもう10年以上。

石黒さんの次回作を心待ちしたいと思います。

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