この15年ぐらい、日本のメーカーもオープンテクノロジーと言って、自前主義ではなくて、社内にない技術は積極的に社外から導入しようという話が出てきています。
企業買収という話も一時盛んでしたし、大学との連携というような話、異分野の企業とコンソーシアムの様なものを組むというのも流行りました。
シリコンバレーでのベンチャーの勃興というのが一つのきかっけだと思います。
その流れはすっかり定着してきていますが、その先端技術、面白い技術としてイスラエル発という案件もこの5年ぐらいかなり耳にしたり、実際にコンタクトして付き合ったりもしてきています。
自動車の安全システムに関連する仕事をしている人は、数年前にモービルアイという自動認識カメラ(前方の物体を車か人かなど判別できる)がその世界をあっという間に席巻したことを知っていると思います。このモービルアイがイスラエルの技術で、インテルに巨額で買収された事も。
最初にイスラエルと聞いた時には、中東の小国だけど、どうしてハイテク? という疑問を持った記憶があります。でも、軍隊での習得した軍事技術を使って、退役した人がベンチャーをやっていると聞いて成程とボンヤリ思っていました。
この本を読んで、どうしてイスラエルが中東のシリコンバレーになっているのかが良くわかりました。
イスラエル国防軍に8200部隊という電子諜報部隊があるそうで、そこの出身隊員たちがベンチャーを色々と始めているらしい。(勿論、その他の部隊卒でベンチャーをやっている企業もあるらしいが)
よって、セキュリティ関係(民間企業のセキュリティファイアウォールや、コネクテッド自動車のセキュリティ専門など)のベンチャーも多いとの事。
そして、イスラエスのベンチャーは20社に1社ぐらいは大手企業に買収されるexitができているとの事。これはなかなか高確率。
買ったり、投資したりしているのは、欧米のみならず中国からも膨大な資金が動いているらしい。
ドライビングフォースになっている8200部隊は、徴兵制(18-20歳)で若者に国防を直接担わせる。そのために16歳の時から、素質や能力、創造性、適正に関するスクリーニング検査を行い、ITに関する豊富な知識や他の人とは違った発想法など、特殊な才能を持つ若者だけが8200部隊に配属する。ここに配属されるのは、0.01%という選りすぐられた者だけ。8200部隊は米国の世界最大の電子諜報機関NSA(国家安全保障局)に引けをとらない内容を持っている。
そして、イスラエルのベンチャー大国となった理由の一つに「規制の考えにとらわれない自由な発想」「自分の頭で考え、知恵を絞れ」という考え方がある。
8200部隊に配属された若い兵士たち(男女)は、上官から極めて難しい課題を与えられる。上官は課題を与えるだけで、どのように解決したらよいかの指導は一切しない。
「自分の頭で考え、知恵を絞れ」である。赤ん坊を水の中に投げ込んで、自分で泳ぐことを体得させるような教育法。
この経験は、除隊後 ゼロから始めるベンチャー企業をスタートさせる時に大いに役に立つ。
つまり、8200部隊の強さの秘密は、常識や伝統を超えた発想ができる若者を集めているから。
「8200部隊に入れる若者は、ITの天才だけではない。軍は、若者が従来の常識にとらわれない発想ができるかどうかを、最も重視する。つまり、通常人には見えないような、現象や相関関係を見ることができる人々だ。この要件を満たさないと、8200部隊には入れない」
又、「自分の頭で考える」という事はユダヤ人の、さんざん周囲が豹変して苦しめられてきた歴史に元ずく価値観に結びついている。
「我々イスラエル人は、あらゆる権威を疑う。政治や企業の上司などのいう事を絶対に鵜呑みにせず、疑ってかかり、質問攻めにする。我々は、権威に対する畏れを持っていない」
イスラエル国防軍の兵士たちは、上官の命令が不合理だと思ったら、「その命令はおかしい」と言って別のやり方を提案する権利がある。兵士たちが命令に服従するのは、上官の命令が理にかなっていると思った時だけだ。なぜならば、上官も誤った判断をしている可能性があるからだ。「すべてのことを疑い、質問せよ」というイスラエル人の大原則がここに生きている。
もう一つ、イスラエルがベンチャー国家になれた理由は、ソ連の崩壊に伴い、ソ連で高等教育を受けた者や技術、科学等での優秀なユダヤ人がイスラエスに一気大量に1990年台に移民してきた事。
又、イスラエルは周りを敵国に囲まれた四面楚歌の状態であり、不毛な砂漠の地から国を作る必要があるという事で、すべてを自分たちで作り上げる必要があるから。
軍事技術も、生活技術も。
現在、米国(特にトランプなどは)、欧州、中国から熱い視線と投資を浴びて親密な関係を作っているが、それでも何時でも何物にも包含されずに、自分自身の独立性は維持確保する。 それがイスラエルという国との事。
日本の、長いものには巻かれろ 主義とは真逆で、非常に興味深い国だという事が良くわかりました。
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