2019年7月6日土曜日

【本】系外惑星と太陽系 井田茂 岩波新書

何で、地球にはプレートテクトニクスがあるのに火星や金星には無いのかを知りたくて、何冊かプレートやマントル対流、太平洋に関する科学啓蒙書を読んでみましたが、よく分かりませんでした。既に分かっている事や歴史しか書いていなかったり、同じ現象を違う内容で説明していたりする事が分かりました。

つまり、研究者の著者の皆さんは狭い範囲での知見、又は、学説の進化がこの10年でもかなり早い分野なのだなという印象です。


そんな中、やっとこの本を読んで腑に落ちた気がします。2017年に発刊の本なので、2019年の今ではもう古い内容なのかもしれませんが、分かっていない事は分かっていないとはっきり書いてくれています。又、天文学と地球物理の分野としての違い、それを両方俯瞰しないと理解できない事があるという事を知りました。(一般の人は、その違いが分かっていません。。)

そういう意味では、何冊か読んだ本は地球物理学者の書かれた本だけだったかもしれません。


この本の著者は、たまたま両ジャンルの経験を持っていた事で、俯瞰が出来た様です。


・マントル対流自身は、水星、金星、火星でも起きているはずであるが、これらの惑星ではプレートテクトニクスは確認されていない。なぜ地球だけ表面が動くのかは大きな謎である。


・金星は地球の80%の質量のある惑星だが、その大気は90気圧もあり、惑星質量に応じた大気量になっていない。組成も、地球は窒素78%、酸素21%、アルゴン1%。地球本体も含め地球全体で考えると、窒素は太陽組成に比べて何ケタも少ないのだが、大気中では主成分になっている。地球では大気の質量は全体に比べて非常に小さくて、窒素は大気に集まっているから。酸素は極めて反応性が高く、化学平衡的には平衡と言えない。岩石や海と反応して酸素が取り除かれるのに、負けじと光合成生物がどんどん生産している。金星の大気は二酸化炭素96.5%、窒素3.5%。光合成生物がいない事で酸素は無く、プレートテクトニクスが働かない為、二酸化炭素がそのまま残っている。


・なぜ地球に磁場があるのかも分かっていない。地球の磁場はコア(Fe等が液体になっている外核部分)で発生している。熱により対流すると考えられてきたが、一番小さくコアが冷めやすいはずの水星と地球が磁場を持っており、火星、金星の磁場を持っていない。木星・土星のガス惑星、天王星・海王星の氷惑星も強い磁場を持つが、それらは水素層の流動で作られていると考えられている。


・1995年から太陽系外で惑星が見つかりだした。(系外惑星)
 そのデータから、太陽系をは大違いで、水星軌道よりも太陽に近いような領域で、木星的な巨大惑星がいくつも観測されている。これにより、太陽系のイメージとは異なる惑星系が宇宙には沢山ありそうという事が分かってきた。
ちなみに、系外惑星の検出ではデータは1980年代から取れていたのだが、それがまさか恒星にごく近い距離の巨大惑星を表しているとは想像できなかった。一度、そういう太陽系ライクという思い込みを捨てたら、沢山の系外惑星が見つかりだした。既に数千の数になっている。但し、検出方法まだまだ発展途上で、今の方法だと太陽系の構成を遠くから見つける事はできそうもないレベル。
(ドップラー効果を使う視線速度法、惑星の影を使うトランジット法、惑星重力による空間の歪みを使うマイクロレンズ法。)


・系外惑星の実体より、過去に正しいと考えられてきていた惑星形成モデルでは通用しない事が分かってきた。
但し、円盤仮説は観測で沢山発見されて裏付けられた。一方、発見された惑星の中には、水素・ヘリウムよりも軽く見えるものや、木星クラスの巨大惑星なのに岩石で出来ているような質量と思えるものがある。


・発見された系外惑星では、楕円軌道を描いているものもかなりある。これは、大きなガス惑星が3以上誕生すると、その相互作用が起こる。3つだと1つは系外に飛び出させられ、残りの2つは恒星近くと遠くで楕円軌道になる。
よって、宇宙空間をさまよっている浮遊惑星は沢山できる。実際に重力マイクロレンズ観測によって木星質量クラスの光を発しない天体が多数、銀河系内をさまよっていることが発見されている。


・ハビタブルな星が、「水が液体で表面にいられる」という事ならば、浮遊惑星でもそういう状態の可能性はある。
地球の地熱の半分はマグマオーシャン時代の熱、半分は放射性物質の崩壊熱。 厚い温室効果被膜(大気など)があり、地熱があれば水が液体でいられる星は、恒星の熱が無くても成り立つ可能性がある。


上記以外でも色々な常識が覆る事が満載の本ですが、観測力の向上によって色々な事が分かるにつれ、ますます現状の宇宙はどうやって作られてきたのか、地球や太陽系はどうやって作られたのか、生命は、、という謎がますます深まってきています。今まで学校で教わってきた事はガラガラと音をたてて崩れつつあるようです。

しかも毎年毎年謎が深まっているという実態が良く分かり、とても面白いと思いました。とてもHOTだし、これからもっともっとエスカレーションしていくでしょう。


人類は、次の100年で太陽系開拓に入ると思いますが、それを考えて行くにもこの分野目が離せません。


また、色々と想像の羽根を広げる余地もありそうです。

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