2019年6月29日土曜日

【本】地球46億年気候大変動 横山祐典 講談社 ブルーバックス

地球が誕生してから、その表面の気候は絶えず変化を遂げてきた。それを、最新(2018年発刊)の知見で説明してくれる本です。


隕石が絶え間なく降り注ぐマグマオーシャンから始まって、全球凍結したスノーボールアースなどを経て、現時点はどういうタイミングになるのか。


どうやって大昔の事を推測するのか等、科学知見の辿った筋道含めて説明してくれています。


何故 地球には酸素があって、火星や金星には無いのかなどは、今までは生物が誕生できる水の問題かと漠然と思っていましたが、それだけではない(火星にも以前 水はあったし)という理屈を初めて知りました


へー と思った点を書き出してみます。

・気候を考えていく上で、数百万年までの短い(!)時間スケールで重要な大気海洋雪氷圏を「エキソジェニックシステム」と呼び、1000万年を超える超長期スケールで、バックグラウンドで気候の形成を担っている固体地球(核、マントル、地殻など含む)を「エンドジェニックシステム」と呼んでいる。
この2つの作用がいつも同時に働いている。


・過去の気温もある程度分かってきている。
 46億年~25億年前の太古代、20億年前の頃、10億~5億年前のカンブリア紀、おルドビス紀、4億年前デボン紀、1億年前白亜紀(恐竜がいた)などは、現在よりも10度ぐらい気温が高かった。
 直近の過去65万年では、気温の上下は色々あるが、氷期と氷期の間に間氷期が短くあり、現在は第5番目の間氷期。


・地球を「生命の星」にした2回の酸化イベント(GOEとNOE)があった。
金星、火星の大気には酸素はほとんど無く、二酸化炭素が95%以上を占めている。
地球も40億年前は酸素濃度は現在の10万分の1だった。
それが、GOE(great oxidation event)が25~20憶年前の期間に起こって一気に現在の100分の1のレベルまで増加した。次は5~7憶年前にNOE(Neoproterozoic Oxygenation Event)が起こり、ほぼ現在の酸素濃度になった。

GOEは、プレートテクニクスによって引き起こされた。
プレートテクニクスは金星、火星では起こっておらず地球独特のメカニズム。
地殻がマグマから出来た時は、苦鉄質岩(玄武岩)だった。それは鉄やマグネシウムを多く含むので、シアノバクテリアが発生する酸素も直ぐに酸化反応で地殻に取り込まれてしまう。ところが、プレートテクトニクスでプレートが沈み込むと同時に大量の水をマントルに運び込むのでマントルにて苦鉄質岩からケイ素や酸素に富んだケイ長質岩(花崗岩や流紋岩)が生成され、大陸地殻がケイ長質岩にとって変わられた事で岩による酸素吸着が急速に減少したため。

NOEもプレートテクトニクスによって、大陸とその周りの広い浅瀬が出来た事により有機物が分解せずに地表近辺に蓄積され、そこから二酸化炭素が沢山供給される事でさらに光合成が活性化されて起こった。


・NOEが終わり大気に酸素が増えた5億年前に、生物進化が一気に加速するカンブリア爆発が起こった。


・恐竜の時代は超温暖化時代だった。南極にも北極にも氷がないグリーンハウス・アース状態。炭酸ガス濃度は現在の3~6倍。
白亜紀は特異的に火山活動が活発な時期だった事が海底火山で分かる。その火山性炭酸ガス。又、海面が上がっていたために非常に広い浅瀬地域が出来、そこで作られた炭酸塩岩(サンゴなどから)が、マグマと合わさって炭酸ガスの放出もある。


・でもその後、急激な寒冷化が始まった。
これも地殻変動で、造山活動によりできた新しい岩達の風化により二酸化炭素が吸収された為と考えられる。


・ミランコビッチサイクルーーこれは有名な話なのでここでは割愛。
地球公転軌道の離心率、自転軸の傾き、歳差運動により、2,4,10年サイクルで気候に変動を与える。


・海は熱輸送だけでなく、二酸化炭素を捕集しておく大きな器。
深層海流などで熱の分配がおこり気候に影響を与えている。(熱塩循環)
グリーンランド沖と南極近郊で海水が冷やされ+塩分濃度アップ=比重アップで海水が深層に流れ込む滝を作っている。
グリーンランドの氷河が溶けて、真水が沢山供給されるとこの熱塩循環が弱まり、北半球は寒冷化、、南半球は温暖化 が起こる。


以上

現在の気候や酸素生命圏を生み出しているのがプレートテクトニクスの作用だというのは面白いと思いました。

一方で、なぜ地球だけにプレートテクトニクスが起こったのか、起こり続けているのかも知りたくなりました。月の存在が関係するのかな?

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