2019年8月1日木曜日

【本】日本コンプレックス(1) 高月靖 バジリコ株式会社

副題が「韓国人の対日意識の深層」

この本で使う”コンプレックス”という単語は、「劣等感」ではなく「複雑な」の方の意味との事。

2019年1月末 発刊の本なので、この数ヶ月の輸出規制対立フィーバーの直前の若い世代から中年までの韓国人男女が、日本に対してどういう意識を持っているのかのインタビューの本です。

まずは、戦後から国交正常化を挟んで現在に至る過程の振り返りが載っています。
その部分を抜粋します。

歴史経緯

日本の敗戦=光復を経て朝鮮半島では朝鮮人民共和国が発足するが、米国はこれを否認し軍政を開始。やがて1948年8月及び9月に、それぞれ南の大韓民国政府、北の朝鮮民主主義人民共和国政府が樹立される。米軍政庁をバックに韓国で初代大統領に就任した李承晩は、それまで33年を米国で過ごした亡命家だ。
李承晩は日本統治時代の下級管史約7万人の対日協力者=「親日派」を行政の実務者として起用。一方で、反日ナショナリズムを政権のイメージ強化の手段としてアピールしつつ、日本を中心とした経済圏に韓国を組み込もうとする米国にも反発する。

そうした中、1951年より日韓国交正常化交渉が始まるが、対立が続き進呈がない。1960年4月 李政権の独裁政治、不正選挙に対する市民や学生の大規模な蜂起が発生し、李は退陣しハワイへ亡命した。

1961年5月に陸軍少将だった朴正煕を中心としたクーデターが起こり63年に大統領となる。朴は日本の陸軍士官学校を卒業した元帝国軍人。朴は反共と経済開発をクーデターの大義名分とした。経済開発の為に日本との協力を探りはじめた。
懸案とされた請求権問題は1962年10月、大平正芳外相との会談で妥結。、日本が有償及び無償の経済協力と民間投資を行う代わりに、両国間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」ことが確認された。一方で竹島問題を巡っては双方の主張が平行線のまま解決が見送られ、国交正常化後に話あう事で合意。朴は又、ベトナム戦争への派兵をして米国から累計10億ドル近い見返りを手にした。これらを土台に、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる高度成長へ突き進んでいく。

日本で観光目的の海外渡航が自由化されたのは1964年。韓国では1989年に完全自由化。こうした不均衡は1970年代に入り、日本人男性による買春ツアー=妓生観光としてクローズアップされていく。

朴は1979年10月暗殺され、又クーデターで全斗換が大統領に。全政権は、日本と両首脳の公式相互訪問を実現。

日本では1988年のソウル五輪をまたいで韓国ブームが起こる。
1988年に盧泰愚政権の民主化政権が発足。冷戦崩壊と共に日韓の結びつき圧力も弱まる。1993年からの金泳三政権では歴史認識問題(歴史教科書、靖国参拝、竹島、慰安婦)が新しい日韓の懸案事項として浮上。かつて強権的な政治体制下で「解決積み」とされてきた歴史認識のわだかまりが民主化によって溢れ出た格好。

1998年からの金大中政権では、歴史問題に区切りをつけて未来を志向する「日韓共同宣言」が署名された。しかし続く廬武鉉政権、李明博政権で竹島及び慰安婦問題が改めて争点化。両国の首脳がお互いに訪問しあうシャトル外交は朴槿恵政権から途絶えた。

これらの経緯を分かった上で、現在の韓国人の意識を色々聞いた。


・49才男 貿易会社経営キムさん
1960年代生まれの韓国人は祖父母が日本統治時代に青年期を過ごした世代。
「日本が嫌いという韓国人も沢山います。主な理由は歴史のせいでしょう。一定世代より上はそうした教育を受けたりもしましたし、その両親の世代が体験したことを直に聞かされたりしますから。どうしても拒否感を感じるんです。いまの40代以上がそうですね」
一方、キムさん世代は、日本に対して全く別の感情を抱いた人も少なくない。彼らが若者だった1980~90年代に韓国で日本文化ブームが沸き起こっていたから。その時代、キムさんはよく東京に遊びに出かけたという。日本文化と聞いて何を連想するか、韓国人に聞けばおおむね同じ答えが返って来るでしょう。マンガ、アニメ、映画、音楽、AV。

両国間の摩擦について。
「両国の政治家が、自分たちの立場のために韓日の問題を利用する傾向がありますよね。核の脅威をもてあそぶ北朝鮮、靖国参拝など日本の内政にいちいち干渉してくる韓国、、これらは政治家が作り出したプロパガンダなんですよ。それぞれの側が、こういた問題を政治的に利用している。その気になれば簡単に解決できるのに、お互いが問題化させ続けようとしている部分があると思います。韓国人が日本人と友人として会う時、普通はこうした問題は関係ありません。でも慰安婦問題とか歴史問題について話し合うとなれば、敏感にならざるを得ない。国民としての立場がありますから。そうなると宗教的な問題みたいで、もうどうしようもありませんよね」


・17~21歳 男 オタク少年たちの日韓関係 キム、シン、チェ、チョン、パクの5人
戦後は日帝残滓として排除が求められた韓国語中の日本語。だが最近になって新しくまた韓国に根付いた日本語もある。その代表例が「オタク」だ。5人の海外文化全般への関心に占める日本の比重がどれくらいか聞くと、キム 100%,シン50% ,チェ 80%。韓国では日本旅行が盛んに行われている事への認識は、手近に行けるし、安くいける、食事も口にあうからぐらいではないかとのこと。物価も安いし。

「アメリカのアニメに対して日本のアニメは雰囲気やイメージが理解できて、共感できる。例えば桜の花びらが舞うといったシーンも、韓国に似た情景がありますから。近くにあってよく似た国同士だから、日本アニメのほうが共感しやすいんだと思います。」
中国の印象は、「あまり好きではない」。

歴史問題について
慰安婦は気の毒と思うので取り上げて話題にする事自体は良いと思うが、韓国も自身がベトナムでやった事への謝罪も考えるべきだと思う。政治と国民や文化は分けて考えるのが良いのでは。「韓国の反日デモ?ほとんどないんじゃないですか。反日感情を持っている人はいますよ。でもだからって、日本人が嫌いというわけじゃない。慰安婦問題とかそういう問題に接して、ただ何となく日本が悪い。嫌いだと言っているだけ。周りがそういう感情を持っているから、ただ何となく自分も同調しているという人が多いんじゃないでしょうか」

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