2016年12月4日日曜日

【本】「国際協力」をやってみませんか? 山本俊晴 小学館

著者の山本さんは、国境なき医師団などで国際協力
活動をやられ、NPO法人 宇宙船地球号 も主催さ
れていた方です。

国際協力の表も裏も知った上で、国際協力をどう
考えて進めて行けば良いかを、初心者向けに書いて
くれています。

ボランティアや国際協力とは何か?から書かれて
います。

国際協力は「緊急援助」と「開発援助」の2つが
あるとのこと。

「緊急援助」は自然災害や戦争などが起こった時
に、水や食べ物、服やテント、医療などを緊急に
行って”外国人が”支援してあげる”というもの。

「開発援助」は比較的安定している状態の所に
行って、外国人が現地の人に必要な事はあり
ませんか?と相談して、お金や技術などをお手伝
いするというもので、途上国の人たちが主役。

日本政府も国連もその90%以上は「開発援助」
をしています。

日本の新幹線や首都高速なども、海外からのお金
で作られ、1990代までその返済をしていました。

「緊急援助」は瞬発的に動かなくては意味がない
ので、政府が1年半かけて法案を通してから、、で
は遅すぎる。だから、民間のNGOが主役になってい
る。国連で緊急援助はつの組織(世界食糧計画WFP,
国連難民高等弁務官事務所UNHCR、国連平野維持活動
PKO)だけ。

国際協力は、「考える人(何をするか決める)、
つなぐ人(実行計画に移す)、やる人(実施する)」
の3つから成り立つが、国連や日本のJICAなどは
皆「つなぐ人」の役割を担っている。やる人は
基本的に現地の人が行う。

国際協力は、純粋な人道的な見地という表の顔
だけではなく、当然 裏の顔も持つ(世の中の殆
どがそうですね)。

国連は、5大国(安全保障国=第2次大戦の連合国)
にとってメリットが無いと動かない。
日本のODAも国益になる様に行う(日本企業が現地
進出しやすいようにインフラ作り支援をしたり、
それらの工事は日本企業が請け負ったりする)。
「開発援助」は、現地のエライさん=大金持ちに
とってメリットのある事を要望してくるので、
貧困層にメリットがあるかは分からない。逆に
インフレになって、貧困層は苦しむ事になると
いう事態も起こりえる。

支援する方、支援される方ともにWinWinでない
と持続的な支援は成り立たない。

今の世界で起こっている色々な問題の根本的な
原因についての山本さんの考えは、

①世界人口の増加
 人間の本能、宗教(旧約聖書には「産めよ
 増やせよ、大地に満ちよ」と教えている)、
 天敵がいなくなったの3点によって、留まる
 所を知らない。

②自己実現の欲求、果てしなき欲望
 資本主義はいつも右肩上がりを要求される。
 貧富の差の拡大、競争社会の導入など。

世界の人口数が今のままでも、途上国の人々が
皆、現在の日本人と同じような生活をしよう
とすると、エネルギーや資源など全く足りなく
なる。

開発援助を行って、進んで行く先は結局 地球号
の破滅に向かう とも考えられる。

先進国は消費レベルをもっと下げ、途上国も
含め、ある程度のレベルで我慢するという事が
必要になるのでは との事。

それらの問題に対して、新しい形の経済活動の
模索が必要ではないかとの事。

一つが「自然資本主義」 再生可能資源だけを
使う仕組みにする。石油などの使ったら無くな
ってしまう様な資源は使わない様にする。

もう一つが、「レンタル」にする。
全ての機器とか物をレンタルにしたら、リサイ
クルが浸透する。ユーザーは物に金を出すので
はなく、サービスに対して金を出すという仕組み。
サービスならば、資源が枯渇したり、ゴミが出た
りする事はないでしょうとの事。

又、「国際協力」は現地で活動する人の事が
イメージされやすいが、日本に居ても出来る事
は沢山ある。

省エネ生活をする事。社会貢献をしている企業
の商品を選んで買う事、会社員は会社で「社会的
責任」への行動をしていくこと。国内で「つなぐ
人」として協力(例えばNGOのイベント協力など
でも)する事、国際協力について勉強して、
状況を他の人にも知らせてあげる事などなど。

勿論、国連や青年海外協力隊などに参加して
国際協力師(プロ)として活躍するという道
もあり、その道への進み方も記されています。

国際協力は表も裏も矛盾もある、難しいもの
ですが、進めて行かないと人類はダメになって
しまうという気持ちでやっておられるとの事。

この本は、本音で、難しさや世の中の仕組みの
実態を現場を踏まえて分かりやすく説明して
くれます。

人道的イメージだけで国際協力を考えている
人にはショックな本かもしれません、しかし
その上でも、山本さんが人類や地球を何とか
して行きたいと考えられている想いが、強く
伝わってきます。

本気で、国際協力を考えている人には絶好の
本だと思いました。

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