2017年7月15日土曜日

【本】なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか(1) 伊藤剛 光文社新書

カバーの本文抜き書きには、”もしも、 目の前に「戦争」と「平和」と書かれた2つのカードが並べられたとして、「どちらを選びますか?」と問われたら、きっと多くの人が「平和」のカードを選ぶのではないだろうか。
にもかかわらず、世の中から「戦争」がなくなったことは一度もない。  
戦争を始めるのはたいてい権力者ではあるが、それを拡大させていくのは私たち大衆心理の影響も大きいと思うからだ。そこに難しい政治的な知識や判断はきっとはたらいていない。”とのこと。


この本を読んで、戦争と平和に関して色々な気づきを得る事が出来ました。 気になった点を紹介したいと思います。


・言葉に対するイメージ
グーグル画像検索をすると、「戦争」は誰でも同じ様な戦闘や武力の画像が出る。殆どの人が同じ様なイメージを持つ。
一方、「平和」では鳩やピースマーク(日本と世界ではマークが違う)などが、バラバラ出て統一的なイメージが無い。


・「積極的平和」
世界では、”戦争だけでなく貧困や搾取、差別などの構造的な暴力が亡くなった状態”を意味する。
英語ではPositive peace.安倍政権の「積極的平和」は、彼は英語ではProactive contributorto peaceと言っている。逐語訳では率先して平和に貢献する存在となるが、欧米の軍事ではProactiveは「先制攻撃」のニュアンスで使われる言葉。日本国内向けと、海外向けで言葉のマジックを使い与えるイメージを変えている。<言葉の悪用ですね>

・昔から「権力者は言葉を言い換える」ことをしている。
侵略→進出 全滅→玉砕 敗戦→終戦 占領軍→進駐軍
福島第1原発事故では、
事故→事象 汚染水→滞留水 老朽化→高経年化
PKO派遣では
兵站→後方支援

・「遺憾の意を表す」というのを良く聞くが、
辞書によると、「謝罪」の意味は全く含まれていない。
個人的に残念 と言っているだけ。

・権力者の法則ー戦争シナリオの作られ方
戦争プロパガンダの共通法則
①我々は戦争をしたくない
②しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
③敵の指導者は悪魔の様な人間だ
④我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命の為に
 戦う
⑤我々も誤って犠牲を出すことがある。だが、敵はわざ
 と残虐行為におよんでいる
⑥敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
⑦我々の受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
⑧芸術家や知識人も正義の戦いを支持している
⑨我々の大義は神聖なものである
⑩この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である

・「ナイラの証言」
イラク戦争の時、クエート政府が大手PR会社に金を払い、全くの作り話「ナイラの証言」を作った。これにより、アメリカは戦争に入っていった。

・権力者とメディア
ラジオの登場で瞬時に情報が伝わる様になった。
ヒトラーはメディアの影響力に早くから注目。
まず全国民1人に1台のラジオ所有を目指して受信機の生産に力を入れた。それを安値で提供。首相になった当初からヒトラー政策の中心にあったのは経済政策。
 高速道路などの大規模公共事業
 「各家庭にフォルクスワーゲンを」自動車産業を促進

ヒトラー就任後に失業率は激減。GDPも右肩上がり、さらに「歓喜力行団」と呼ばれる国民に様々なレジャーを楽しませる組織を作り、客船による旅行やコンサートなどを安い値段で提供した。そうやって国民の圧倒的な支持を獲得していく中で、ナチスの思想を広めていった。
 ラジオでは「何度も同じフレーズを連呼」し国民の頭に刷り込んでいく。
右腕のゲッペルスは軍にもプロパガンダ部隊を作り、多くの戦場で映画クルーの様に撮影、編集して、自国の映画館で上映させた。ゲッペルスの表現手法は「娯楽と感動」こそが人々を国家的行動に駆り立てるというもの。

・戦争にPRという商売がある。
CNNやNYタイムズ、米3大ネットワークなど国際メディアにいかに自らの主張を取り上げてもらうかの戦いをしている。

・PRと広告の違い
広告はCMや看板などの広報場所の枠を売る。PRはこの「枠」を使わずに、世の中にも情報を届ける戦略を考える。
事実に反する「ねつ造」はしてはならないが、メディアのニュースバリューの基準に照らして「情報を切り出す」例えば、ボスニア戦争で「民族浄化」という言葉を作って、セルビア人=悪 というイメージを人々に固定した。

以下 2につづく

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