2017年7月27日木曜日

【本】遺伝子も腸の言いなり2 藤田紘一郎 三五館

*環境と遺伝子のただならぬ関係

・ガンの不安を抱えて生きるか、健康な身体にメスを入れるのか

ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが乳ガン発症を回避する為に両方の乳房の乳腺を切除する手術を受けたと告白手記を載せました。
このニュースで、日本の医学界はすぐに反応し、翌日の新聞では「乳房予防切除」を行える病院のリストをいち早く発表しました。
しかし、この様な手術は本当に「ガンの予防」なのでしょうか。
この論法だと、「ガンの完全な予防」は人体の主要な臓器をすべて取り除くことになってしまいます。

私(著者)は、ガンになりやすい遺伝子を持っていて、将来ガンになる確率が高いからといって正常な組織を摘出してしまうことには賛成できません。それには理由があります。

それは、遺伝子は親から受け継いだものだけを一生持ち続けるのではなく、環境によってある程度は、遺伝子の振る舞いを変えられる事がはっきりしているからです。

「遺伝子の振る舞いを後天的に変え、病気を予防する」。
これが私達にとって、自分自身で健康寿命を延ばすことのできる、画期的な方法となるはずです。


・セントラルドクマ説だけでは説明ができない

遺伝子が同じクローンマウスでも尾の形が異なったり、一卵性双生児やクローン動物、挿し木などでも環境によって個体差が生じます。

又、1960年代にハワード・テミンは、遺伝情報はRNAから逆向きにも流れ、DNAの情報が逆転写酵素の働きで上書きされる事を証明しました。
エイズウイルスの感染もこの逆転写酵素を用いて、感染細胞のDNAを乗っ取る事で完成するのです。


・ヒトゲノム解析でわかってきたこと

ヒトとチンパンジーでは98.8%のゲノムは同じでたった1.2%の遺伝子の違いしかありません。
近年の研究によって、生命のあり方をコントロールしているのは「環境からの信号」であることが大きいと分かってきています。
この信号を元に、転写因子と呼ばれる調節タンパク質によってコントロールされ、遺伝子が活性化したり、不活性になったりする、つまり遺伝子のスイッチがオン・オフされるということで説明できるのです。
最近注目されている「エピジェネティクス」(後天的遺伝子制御変化)がそれです。


・遺伝子の水平移動

遺伝子の水平移動は起こります。この事を考慮する事なく、遺伝子組み合え農作物を環境に導入すれば、どんな重大な結果を招くのか、モンサント社(世界の遺伝子組み換え食物市場の90%を誇るアグロバイオ企業)もそれを許しているアメリカも認識していないとは思えません。

実際に人間が手を加えた遺伝子が環境に広がり、他の生物の遺伝子にも変化を及ぼしているということが現実に起こっています。
例えば、遺伝子組み換えナタネからハマダイコンへの遺伝子拡散や、大豆とツルマメの交雑が指摘されています。
除草剤耐性を持つ遺伝子組み換え作物の摂取で、腸内細菌にその耐性遺伝子が伝播することが明らかになっています。

トウモロコシは大増産されて、牛の飼料にも使われていますが、もともと草を食べていた牛の胃はトウモロコシを消化しようとして酸性になります。
O-157は牛の中性の胃の中で穏やかに暮らしていたのが、酸性の環境に耐えられる様な遺伝子を獲得し、ベロ毒素を作る様に進化したのです。病原性大腸菌O-157が騒がれだしたのはこの20年程です。
牛に無理やりトウモロコシを食べさせた人間により出現したのです。


・日本人が取り入れた「海藻を消化する遺伝子」

実は私達の腸の中に、日本人が誇るすごいものがいる事が分かっています。フランスの生物学研究所チームの調べでは、海藻を消化する酵素は日本人の腸内にのみ存在しているとの発表がありました。
日本人が長い間、習慣的に海藻を使った料理を食べて海洋微生物を摂取する事で、腸内に住むとされる細菌の一種が、海藻を消化する遺伝子を取り入れることが出来たのではないかと考えられています。

遺伝子は環境の影響を受けて変化しますし、種から種へ伝搬して変わっていくものなのです。
「それなら、自分の意志で環境を変えれば、遺伝子も変えられるの?」と思った方、じつはそのとおりです。あなたの健康や幸せは、あなた自身が運命を握っていて、良い環境をつくる努力が、そのまま遺伝子の変化に直結してくるのです。


*エピジェネティクスの可能性は無限だ。

エピはギリシャ語の「上の、別の、後から」という意味を持ち、本来の遺伝情報の「上につく別の遺伝情報」や「後で獲得した遺伝情報」という意味です。そして、エピジェネティクスによって変化した遺伝情報の事を「エピゲノム」(後天性遺伝情報)と呼びます。

環境によりDNAを変化させられるしくみの一つがメチル化です。DNAは4種類の塩基からなりますが、そのうちのシトシンにメチル基がつき、5-メチルシトシンになると、遺伝子のスイッチはオフ状態になって動かなくなります。

もう一つの仕組みは、DNAがまきついているタンパク質のヒストンのアセチル化です。

これら以外に、最近興味深いものが発表されました。
愛情が遺伝子を変化させているのではないかという実験です。
又、摂取する食べ物によっても、エピジェネティックな変化が起こることが報告されています。

80才以上の50人を対象に、20代の頃の環境を再現した場所を作り、そこに50日間住んでもらうと、老化度を測る「皮膚圧=肌のはり」が30%以上の人で20代と同様の皮膚圧に戻っていたとのこと。

私たち生物をコントロールしていえるのは遺伝子だけではなく、環境でもあるという事を述べてきました。
進化の方向も、生活環境や腸内環境、物事の受け止め方といった「環境」が決めるということです。

つまり、「腸が変われば考えが変わり、考えが変われば遺伝子が変わり、遺伝子が変われば運命が変わる。」と言えるかもしれません。




この本では、最後に 実践! 腸思考法として10個ポイントが書かれています。


自分で環境を変えて、遺伝子の発現を制御したら色々面白い 自分の可能性を開花させる事もできそうですね。。。。


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