少年向けの本ですが、宇宙に出た時のとても素敵な印象が書かれていますので、抜き書きしてみます。
以下 抜粋
宇宙船のハッチを開けて、初めて宇宙空間へ泳ぎ出た瞬間。僕を包んだのはそれまで感じたことのない静けさでした。
宇宙には空気がありません。
空気がなければ、音もしません。
そういうことは知識として知っているけど、実際に宇宙に行き、本物の無音を経験してみると、想像以上の驚きが走りました。
「ここは命が存在しない場所だ」。そんなふうに、僕の身体は感じました。
本能が危険を察知し、シグナルを発しているのが分かります。
宇宙服を着ているから大丈夫だとはわかっていても、本能は反応するんです。
「音がない」ということ、ただそれだけのことが、これほど鮮やかに感じられるとは!
予測したり想像したりすることと、体感することとの間には、じつに大きな開きがあるものなのだと思い知りらされました。
知っているつもりでいたけれど、本当には知らないこと。世の中にはそういうことが山ほどあります。
僕は宇宙飛行士として長い間訓練を積んできました。
宇宙で撮影された地球の写真ももちろん何枚も見てきました。
ですから地球が美しいということは、写真を通してよく知っていたはずでした。けれども宇宙に出て気が付きました。僕は知っている「つもり」だったのだと。
広い宇宙にぽつんと浮かんでいる、宇宙服を着た僕。その僕に向き合うように、地球はありました。 大きくて、丸い地球。
ゆっくり回転し、青く、白く、輝いている。ここの生命があるんだ!と主張しているような、力強さを。
命の気配がしない宇宙空間のなかで、地球だけが大きく光り輝き、生きているよと訴えているのです。
そのとき僕と地球は、対等な1対1の存在でした。
地球を見つめている僕と同じように、地球もまた、宇宙のただなかにひとりで存在している。
「地球さん、こんにちは」。僕はそう呼びかけたくなりました。
地球は僕と同じ、ひとつの命だ。僕も地球も、同じように宇宙に浮かんでいる。
そう実感したら、地球が親しい友達のように思えました。
ふるさとも、思い出も、家族も友達も、なにもかもがあの地球のなかにあるんだ。
僕はそこで暮らし、そこで死ぬ。僕は間違いないく地球の一部だ。
命は地球で生まれ、地球に戻る、、、。
こんなこと、わざわざ宇宙に行かなくてもわかる人もいるでしょう。
でも僕は、宇宙に出てみなければわかなかった。
地球が「いきもの」であることや、同時に広大な宇宙のなかのひとつの「もの」であること。
そして自分自身も地球に属する小さな「いきもの」で、宇宙を構成するひとつの「もの」であること。
地球をひとつの生命体として感じ、こんなふうにいのちを実感するなんて。
それは、頭で理解するというより、感じてわかる、という体験でした。
以上
最近、ネットで調べて、「何でも分かったつもり」になってしまいがちな事を自分でも感じていたので、この野口さんのみずみずしい体験記は、忘れていた事を思い出させてくれた気がしました。
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