植物は、動物よりも何千・何万倍も地上に繁殖している「成功」した生物である事は間違いありません。
動物は、植物無しでは全く生きていけません。
人間は動物なので、動物中心の考え方(脳が指令を出す、危機的状況ではまず逃げる等)や見方をどうしてもしてしまいます。
でも、植物は動物とは真逆の戦略を取って大成功を収めています。
動かないで周りの環境を自分に都合の良いように操る。太陽エネルギーで生き、増殖できる。徹底的な分散戦略で、切られても再生や修復・補完が出来る。など。
植物の色々な能力を、動物視点ではなく調べて知る事は、新しい科学の地平を開いていく事になりそうです。
・脳が無くても記憶ができる
触ると葉を閉じるオジギソウに条件付けをして、それをどれだけ覚えていられるか実験したら40日以上記憶を保っている事が分かった。
発芽や開花がある一定の温度期間を過ぎないと行われないという様な事も常識的に知られている。これらも記憶の一つ。
RNAやプリオン化したタンパク質の利用などが植物の記憶のメカニズムに使われているのではないかというような研究もされ始めているが、その解明は記憶がどの様な生物学機能を持つのかの理解になり、大きな可能性を持つだろう。
・アンドロイドではなくプラントイド
植物の特徴として、太陽光さえあれば自立していく。根は非常に多彩で精密なセンサーかつ、土中でどんどん成長する。などがある。
根は細胞の分裂と膨張のおかげで、堅固な岩をも砕く事ができる。(細胞内の浸透圧ポテンシャルで水の流入により1~3メガパスカル=10~30気圧に相当の圧力を発生する)
又、もう一つの特徴は、同じものを備えているモジュール構造。植物は一つの”個体”とみなすのは難しい。それらは集合体となっている。根の一本一本にはそれぞれ自律的な指令センターが備わっている。それが根の伸びる方向を操作し、本物の群れの様に他の根端と協力して、一つの植物全体の生命にかかわる問題に取り組む。その分散された知性は、生活環境のさまざまな問題を効果的に解決する。そういう知性を持つ。
・擬態力と植物の視覚
ポキラ・トリフォリアータはチリとアルゼンチンの温帯林で成長するつる性植物。
そのポキラは、巻き付いている宿主の木の葉をマネする様に自身の葉の形や大きさ、色を変える事ができる。(多分 自分の遺伝子発現を変化させている)
どうしてそういう擬態が出来るのか。考えられるのはある種の”視覚”を持っているという事。
20世紀初め、様々な葉の表皮細胞をレンズとして写真を撮る事が実験された。マイクロレンズアレイで昆虫の目の様に植物も見れるのではないか。でもその理論は無視されていた。でもこの5年間に次々と驚きの発見があり、単細胞生物にも視覚がある事が証明され、理論も再評価されるようになった。
・運動能力 筋肉が無くても動く
植物の運動は、たいては”水力”運動で、液体であれ水蒸気であれ、基本的には植物の体の組織を出たり入ったりする単純な水の移動による。
しかも、例えば松かさなどの死んだ組織でも、乾燥した環境では鱗片を開き、湿度が高い時は鱗片が閉じる様に動く。
・動物を操る能力
植物は移動できないので、動物に協力してもらわなければならない事も多い。たいていは利用された動物は植物から報酬をもらえる。しかし、もっと意地悪い行動を植物がする事もある。
動物をだまして手伝わせたり、自分の利益になるような行動をとらせたりする。
私たち人間だけは、動物を操るこの繊細な植物の魔術から逃れられているとは思わないでほしい。それどころか、その反対だ。
例えば、トウガラシ。世の中には何でもトウガラシと一緒に食べる<トウガラシ食らい>がいる。辛くて不快な感覚なのに、地球住民の3分の1以上およそ25億人が毎日 規則的にこの苦痛を自ら求めている。もともとはアメリカ大陸原産。コロンブスが欧州に持ちかえり、1世紀もたたないうちに欧州からインド、アフリカ、韓国などの食文化に入り込んだ。トウガラシはアメリカ大陸からもっとも遠く離れた場所までも征服した。
トウガラシはカプサイシンというアルカロイド(カフェイン、ニコチン、モルヒネなど)を持っている。これは、依存性を引き起こす。辛味が脳にいくと幸福ホルモンのエンドルフィンが製造される。
植物はその中で化合物を作り出す。毒や麻薬、蜜などを作って動物を引き寄せ、操作する。
・分散化能力 自然界のインターネット
植物には動物の脳や心臓のような急所が無い。
根は凄まじい数の、典型的な分散型の非中心的システムで、相互に作用しあう無数のユニット(根端)で構成される。
分散的知性で、決定、問題解決、変化への対応を行っていく。
・その他
砂漠の植物は、空気中の水分を取り出す能力を持つ。
重力の変化も1.5秒で検知した。
植物を見習って、資源を全く消費する事なく野菜を生産できる<ジェリーフィッシュ・バージ>を作る事ができた。太陽エネルギーだけあれば良いので海に浮かべて野菜生産ができる。
持続可能な未来のために、植物が教えてくれる事が沢山ある。
以上 本の興味深かったポイントをあげましたが、植物についてもっと知りたくなりました。