2016年7月3日日曜日

【本 バレーボール】伸びる人のデータの読み方、強い組織のデータの使い方 渡辺啓太 日本文芸社

言わずと知れた、火の鳥ニッポンのアナリストの渡辺さんが
書いた、眞鍋Japanがデータ活用によってどう戦術立案をして
いたのかの説明本です。

とにかく、緻密な生データ(インドメーション)の収集蓄積と、
それを使った分析・立案(インテリジェンス)がどの様に行わ
れているのかを詳しく知ることができます。

ここまでやっていたのか、、、 これならば選手もスタッフ
も本当に一丸になって目標に進んでいたんだ という事が
具体的に良くわかりました。

スタッフの皆さんも、寝食を忘れて、身銭も切ってロンドン
でのメダル獲得に向けて進めた3年間。

根性ではなく、データに基づいた分析を使って、戦術を決めて
いくだけではなく、選手育成のツールにも大いに活用している
姿がわかります。

バレーの世界で、「データバレー」という言葉は80年代から
使われていました。実は、イタリアで「データバレー」という
データ蓄積・分析用のアプリソフトが開発された事がきっかけ
だったそう。

渡辺さんは大学生の時から全日本女子チームに専任のアナリスト
として雇われ、データ活用を突き詰めていった様子。
「アタック決定率」などという指標は世界中で使われていますが、
70個もの日本独自のもっと具体性をもった指標を案出して敵味方
の分析に活用していれるとのこと。たとえば「アタック効果率」
など。

ちなみに
アタック決定率=「アタック決定本数」÷「アタック総打数
(アタッカーが打った総数」

アタック効果率=(「アタック決定本数」-「被ブロック数
(ブロックされてしまった数)」-「アタックミス本数」)
÷「アタック総打数」

トランジション成功率=相手のアタックをブロック、もしく
はディフェンスしたあとのアタックで相手コートに返した数
÷(相手のアタック数ー相手のアタックミス数)

※トランジションとはラリー中に攻守が入れ替わる場面の事
で、具体的には、相手チームのアタックをレシーブし、自チーム
のアタックへと展開し、守りから攻めへ転じる状況を指す。

それ以外に、「おとり」で飛ぶ事による効果率なども作って
アタックしていない他の選手の動きをキチンと評価してあげら
れる様にした。

ロンドンの韓国と戦った銅メダル決定戦。WSを江畑選手で
行くか迫田選手で行くかが前日のスタッフミーティングの
議題だった。韓国はキム・ヨンギョンのレフトからの攻撃
力を少しでも低下させる戦術を考えるべきで、その為に日本
のライト側に少しでも強いブロッカーをぶつけなければなら
なかった。ライトの攻撃力を上げるには、江畑選手、新鍋
選手、迫田選手という選択肢があったが、アナリストして
迫田選手を推した。スタッフで議論を重ねて、最終的に
眞鍋監督は迫田選手を先発に起用する決断をした。

そして監督は、迫田選手に「韓国戦では、石田のユニフォーム
を下に着て、戦おうじゃないか」と提案した。
「親友の分もお前ががんばれ!」と眞鍋監督は選手の力
を大舞台で引き出そうとした。

その前の中国戦でも、戦略的にスタメンに新鍋選手を起用
した。これまではオポジット(セッターの対角位置に入る
ポジション)には、ネット際の的確な判断力などが評価さ
れ、山口選手が起用されることが多かったのだが、新鍋選手
を起用することで、木村選手のレセプションの負担を軽減
する効果を狙った。木村選手が攻撃に専念しやすい状況を
作り出す事を狙い、それが発揮された。

戦術立案は4つの視点から考えている。
①相手の弱いところをいかにつけ込むか
②相手の強いところをいかに防ぐか
③自分たちの強みをいかに生かすか
④自分たちの弱いところをいかに隠すか

そして、「相手の視点に立って戦術を練る」。

練習等では、”どれだけ足りないかを具体化する事で目標
を達成する”ことを目指す。 曖昧な点を数値化して具体
目標と進捗を明確にする。

加えて、相手チームの弱点や、自分チームの上手に
出来た記録の映像などを集めて見せて、大試合前に
選手のモチベーションアップを行った。

この本を読むと、よくぞここまでやってくれたと感心
しました。昔の「ミュンヘンへの道」で松平チームが
やっていた様な熱意と工夫と努力でチームを作って
いった事がよくわかります。

今度のリオオリンピックでは、さらにこれらを進化さ
せて行ってくれていると信じます。

どんな、火の鳥になって生まれ変わって来るのか楽しみ
です。

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