次に、特定期間・特定場所への影響になるだろう気候制御のアイデアを見ていきます。
気候制御は、ある特定の自然条件が満たされていないと実行できないものが多いです。
又、気候制御は気を付けるべき点が3つあります。
一つは武器になること。もう一つは思わぬ影響(副作用)が起こる事。三つ目は地球では沢山の遠隔相関があるので、遠くの地域に思いもよらない影響がおきて当たり前です。
気候制御を実施するには相当慎重でなければなりません。
★雲を操る
・巻雲を消して放射冷却を利用する。
技術的に不明点が多いのと、副作用が読めません。
・雲をもっと白くする
上空に層積雲のある海域で船で海水を小滴にして噴き上げるというアイデアがあります。雲が白くなり海水温が下がれば台風も抑えられるという話もあります。この増白方法は風で波が砕けるのとあまり変わらないので、安全性は高いと考えられます。又、効果は4日程しか持たないので現状復帰性も高いと言えます。コストも比較的低くできそうです。
但し、実は 海水の吹上で本当に雲が白くなるかは分かっていません。又、増白されたとしても実際に効果が出るかは分かっていません。そして、これをするには積層雲を求めて海をあちこちと動き回って海水を噴き上げる事になります。現状では、「まだ知らない事が多く、夢を語っている」レベルとの事。
★身の回りの反射率を高める
・屋根を白く塗るなど反射率をあげて クールルーフ。
室内の冷房費用が下がるというオマケもつきます。
但し、町全体では温暖化にプラスかマイナスか定かでありません。
・農地を白く
麦畑を耕した場合と耕さない場合とで比較したら、耕さずに切株などを畑に放置しておいた方が反射率が1.5倍になり気温が下がるというシミュレーションは出ています。農地を白くするというアイデアはこれから詰めていくべきものでしょう。
・海の反射率を高める
船でマイクロバブルを作るという案があります。船も水との摩擦が少なくなって省エネになる。しかし、海面の反射率が上がると水中に入る光が減るので、藻類などに始まる海の生態系にどういう影響を与えるのかが皆目わかっていません。
反射率の高い藻類をつかうという案もあります。ケイ藻が増えると大気中のCO2を吸収するし、魚のえさでもあるので海が豊になるという話もあります。但し、繁殖した藻類がウイルスにやられてたちまち消滅してしまう例もあり、ウイルス制御は必須。又、赤潮の様になったら逆に海の生態系に悪影響になる可能性もあります。
捕集貯留アイデア
空気捕集は既に植林や造林で行われているし、地殻とマントルを形成するケイ酸塩鉱物はCO2を捕集します。
生物を使う物としては、
樹木を増やすのが一つ、もう一つは海洋肥沃化をして藻類を育てる(繁殖に足りない鉄や窒素を撒く、火山灰を撒くなど)という考えもあります。海洋肥沃化は他への影響が大きい可能性があるので実験以外は国際的に禁止になっています。
私たちの海の理解度はその程度なのです。、
岩石の風化によるCO2捕集は、貯蔵という意味でも最適なのですが、風化は時間がかかるのが難点。それを加速する可能性で土の微生物や地衣類、カビやアリ、ゴカイなどの活用が考えられていますが、風化の条件の要因解明がまず必要です。分からない事ばかりです。
貯留には、CO2を回収して地下の地層に押し込むなどが言われていますが、本当に長期間保持させておけるのか不明ですし、そもそも地震国の日本では適地が無い事になります。
植林して炭素を1000年ぐらい木として固定する事は出来そうですが、農地から森になると反射率が落ちてしまいます。
あと、現状についての話がいくつか書かれています。
この本では、色々なアイデアが紹介されてますが、話があちこちに飛び、しかもどれも副作用が分からない、、で止まっている印象を受けます。
勿論、難しいし、人類の知識水準がそこまで至っていないのでしょう。
でも読んでいて、CO2同様にフラストレーションが溜まってしまいました。
こういうまとまりの無い議論が温暖化をめぐってはなされているだとしたら大変です。
色々なアイデアを複合したり、大きな副作用が出ないように多様なアイデアを小規模に行うなどのマネジメント面はどれだけ議論されているのでしょう。
全体を俯瞰してまとめ上げていくという機関が必要ですね。
アイデアだけなら、私も一つ。
植物の中には水よりも比重の重い種類もあります。
そういう木(又はゲノム編集などで成長の早い杉などに大比重を発現させて)を植林して、育った木は日本海溝などに沈めていくのはどうでしょう。深海では腐敗は遅いでしょうし、プレート移動で地殻に引き込まれていけば、新たに石炭層という形でCO2が貯留できる様になるのではないでしょうか。つまり、人工的に石油層、石炭層を作っていくというもの。
これなら、副作用の少ない安全策になるのではないでしょうか。