2015年2月7日土曜日

【本】イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか 宮田律 新潮社

ISILによる人質事件がありました。従来 中東は親日という話は良く聞いていましたが、どういう構

図になっていて、その中の今回の事件はどういう位置づけなのか理解できていませんでした。遅れ

ばせながら、イスラム教徒からみての日本を知るために読みました。

2013年の本です。



歴史も踏まえて沢山の事があるのですが、ポイントを抽出すると

・イスラム教もキリスト教もユダヤ教も同じアブラハムを起源とおく1神教の兄弟宗教。


・イスラム教はムハンマドで興されたが、もともとイスラムという言葉は「平和」そ意味する言葉。殺

人などを禁じる宗教。イスラム教は宗教というだけでなく、政治・社会運動も含めた宗教と世俗を一

体で考えイスラム共同体を理想とする。


・イスラム帝国は中世どんどん拡大していったが、拡大に於いては軍事的行動もあるが、寛容性が

あり相手が異教徒でも人頭税と地租を納めればイスラム国家により、その信教の自由は制度上保

護される。こういう寛容性のある治世により、オスマン帝国などは広く、そして何世紀も栄えた。(イ

スラムの拡大に対抗する為もあり、ルターの宗教改革が起こった)


・十字軍(キリスト教)は排他的な動きをしたため、イスラムでも他の宗教者への排他的な対応が始

まった。又、オスマン帝国の低下に伴い、欧州の植民地主義が台頭、近代は旧オスマン帝国やア

ジアは植民地化された。


・特に中東では、欧州からの過酷な扱いを受けていた。そんな時に、日露戦争で日本が欧州の大

国に勝った事により、憎い敵をやっつけてくれたと喝采した。その後も、日本は武力介入を一切し

ないで、支援援助をずっとして来た事や、イランが欧米から封鎖された時も日本はイランの石油を

買った事などもあり、日本を対欧米とは違う恩義のある国という認識をされてきている。


・又、日本人の生活習慣や国民性や振る舞いは、イスラムの人から見るとイスラム教で教えている

生活態度を最も具現化している国民と見えるらしい。

トルコの親善隊が明治時代に日本に来た時に、海難にあい大難破した。その時の日本民の手厚

い対応も感激された。


・イスラム教の中で原理主義者集団の思想は、イスラム社会を攻撃されたら復讐するというのでは

なく、積極的にイスラム社会を増やしていこうとする動き。イスラム社会を拡大する為の戦闘を「ジ

ハード」という名を道具と使っている。本来(そして通常のイスラム教徒の)の「ジハード」とは、戦争

を意味するのではなく、自分自身の精神的向上を目指す心を表す。暴力的よりもいかに自分自身

を宗教的に豊かにしようかとか、日々をいかに充実させようという思いである。


・一方で、アフガン市民の中ではタリバン政権時代の方が、そうじゃない時代よりも何倍も腐敗が無

く良かった。何故、外国は腐敗した政権に味方する支援をしたりするのか?という感情もあるとの

事。(現在のISISのシリアも、腐敗したアサド政権よりもイスラム的に身内では清廉なIS支配の方が

良いと考える人もいる。)


・イスラムの戒律では必ず土葬にして、火葬はしない。遺体が焼失するという事はイスラムでは重

大な意味を持つ。最後の審判の日に復活し、神の前で裁きを受ける肉体が喪失したという事にな

る。



との事。新聞やTVニュースをボンヤリ聞いているだけでは分からない姿を少し知る事が出来まし

た。勿論 一面の見方かもしれませんが。

政治と歴史と欲望と思惑、怨念が絡まり合った悲しい状況です。



今回の人質事件を見てみると、ニュースや新聞で報道されている事では非常に不可解な部分が多

く、この事件も政治と欲望、思惑に操られているのではないかと感じます。


・全く軍事的素養が無く、お金もないはずの湯川氏が何故シリアに何回も行った(派遣かされた?)

のか?


・現地事情も危険も良く知っている後藤氏が、わずか1週間で帰ってこれるという計画で行ったの

か? 彼に1週間で無事帰ってこれると信じ込ませたのは何か?資金は何処から出ているの

か? 10月に拉致されて11月にもメール連絡が出来ているのに、奥さんが12月になって危険な状

況に陥っていると初めて認識したのは何故か?


・湯川さん殺害映像が流れた後、突然の様に後藤氏礼賛的記事がマスコミに溢れ、政府の後藤氏

は救出したいと言い出した様に見えるのは何故か?


・後藤氏殺害映像が流れた後すぐに何日には後藤氏がどこからどこへ移送されたとか、パイロット

焼殺映像が流れた後にはすぐに、殺害は1月上旬だったという報道がされている。これらの情報

は、当然ヨルダン、日本政府とも事前に把握していた事は明確だと思うが建前交渉をマスコミも含

めて一切追求しようとしないのは何故か? 


などなど、不自然さが目立つ様に思えます。

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