2016年9月20日火曜日

【本】記憶をあやつる 井ノ口馨 角川選書

著者は大学教授の分子農学者の方。

脳と記憶の関係を研究されています。

そして、2015年 人工的に「記憶を作る」
ことに成功という論文を発表されました。

映画のトータル・リコールの様に、記憶
を操れる日がだんだん近づいて来ている
のです。

脳の中では、短期間の記憶と古い(長期
間)の記憶(遠隔記憶と言うらしい)で
は、格納されている部位が違うとのこと。

又、言葉によって他の人に伝えるられる
「陳述記憶」と身体が覚えるという様な
「非陳述記憶」も場所が違うとのこと。

身体が覚える「非陳述記憶」は、小脳に
記憶されます。

一方、「陳述記憶」でまず短期記憶は、
海馬などに蓄えられます。その後、
しばらくする(遺伝子が発現してたん
ぱく質が作られると)と、遠隔記憶と
してその情報が大脳に転写されるとの
こと。

この転写は寝ている時に行われて、
夢を見るというのは、この転写作業に
関連するらしい。

パソコンに例えれば、短期記憶はメモ
リーで、それをハードディスク等に保
存すると長期記憶になるという感じ。

記憶のメカニズムは、神経細胞集団
という形での記録し、その一部細胞は
関連する他の記憶と共有される。
(それにより、連想や関連として
思い出す事ができる様になる)

転写が終わった海馬の記憶は、新し
い細胞が生まれる事で消去されてい
きます。加齢によって、新細胞の
誕生ペースが落ちると、消去が間に
合わなくて、だんだんメモリーの
空領域が無くなってきて、パフォー
マンスは落ちるは、新しい事は覚え
られなくなるば、、という状況に
なるとのこと。、、ナルホド。

認知症だとちょっと前の事は忘れ
てしまうが、古い事は覚えている
という話を良く聞きますが、記憶
している場所が違うから、そういう
事になるのですね、。

教授が2015年に発表した、人工的に
「記憶を作る」というのは、マウス
を使って、別々の記憶(神経細胞集
団)を同時に刺激して励起する事で、
人工的に関連つける事ができたとの
こと。

例えば、「カレーライスを食べた」
という記憶と、全然別の日の「遠足
に行った」という独立した記憶を
関連つけて、本人に「遠足でカレー
を食べた」という記憶に変えてしま
った。という様な感じでしょうか。

井ノ口教授は、この技術を進めて
いくと、重大な災害や犯罪などの
被害者が体験により心に負った
トラウマが原因になって、悪夢や
睡眠障害等が現れてしまうPTSD
という心の病の治療に繋げる事が
出来るのではとのこと。

脳の仕組みが少し分かり始めまし
たが、まだまだ分からない事の方
がよっぽど多いとのこと。

メカニズムが分かってくると、
皆がサヴァン症候群の人の様に
一目見ると写真の様に記憶する事
も可能になるかもしれませんね。

次の10年 まだまだ急速な脳科学
の進歩が起こりそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿