2018年9月21日金曜日

【本】幕末・維新 井上勝生 岩波新書

大河ドラマ「西郷どん」がいよいよ大詰めになってきました。

そこでの各出来事の描き方が、史実とかなり異なる筋書に演出されている様に感じて、図書館でこの本を借りて読みました。

日本人は幕末や明治維新は学校で習いますが、どういうつながりや意図でそれらが行われていたのかは、当然ながら明治新政府の視点からの歴史を教わっている事になります。

又、一般の人は小説や劇、ドラマ等で幕末・維新のあたりの話を沢山聞かされていて、坂本竜馬や西郷隆盛などアイドルの様に刷り込まれているキャラもあります。

小説やドラマは作者は人気を呼ぶためのフィクションの演出をしている事が多いと思いますが、その作品があまりに有名になってしまい、その小説に感化された次世代の人が、それを信じてドラマを作ったり、、という連鎖が起こり、いつの間にか人々の間にそれが真実の常識かの様に定着してしまうという事が、TVや映画、ネット情報などが普及した近代では頻繁に起こっている様に思われます。

それに、輪をかけているのは政府や企業などがしかける世論誘導、市場喚起の為の情報刷り込み。

この本は、学校で習ったりドラマで見せられて作られてきた幕末・維新の構図を、ガラガラと崩壊させて、本当はどうだったのか?と考えさせられる本と言えましょう。

攘夷を強行に主張しながらも、幕府や周りの人の圧力に弱く、勅令内容が左右にブレる孝明天皇。

勤王と言いながら、偽の詔勅を天皇の威を借りたり、軍事圧力やクーデターで朝廷を脅迫して従わせようとする政治家志士や公家。

実は外国からの植民地化の意思が弱かったにも関らず、それを強大な海外からの危機と煽り立てる手法。

そこには、実にドロドロとした政治駆け引きと偶然の差配が重なった結果としての歴史があるという事が分かりやすく書かれています。

もしかしたら、明治新政府とならずに徳川慶喜大統領制による国の運営が続くという事になっていたとしても、それはそれで今の日本とあまり変わらない姿になっていたのかもしれないという気にもなります。

歴史に関して、誰の話が真実なのかは判断できませんが、この本に書かれている姿は、今の日本の政治家や企業がやっている事と余り変わらない姿であり、リアリティを感じます。

NHKの大河ドラマは、今の日本では日本史の知識を大衆に植え付ける媒体である事は間違いないと思いますので、多様な説の番組を作ってくれれば良いのにと思ってしまいます。(少なくとも、明らかな嘘演出は止めて欲しい)

元となる脚本が無いとドラマは作れないのだと思うので、司馬遼太郎と異なる史観での娯楽ヒットコンテンツを誰かが作らないといけないのでしょうが。

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