2018年12月15日土曜日

【本】神、この人間的なもの なだいなだ 岩波新書

著者の なだいなださん は精神科医であり、作家でもあります。

なだいなださんは、無宗教の人なのだと思いますが、宗教と精神科医の関係を、二人の人の対話という形式で表現しています。


読んで う~ん と考えてしまいました。


三大宗教のキリスト、仏陀、ムハンマドは、なぜ一神教を唱えたのか。どうして「奇跡」を起こしたのか。キリストは何故 処刑されたのか。

弟子たちにはどういう心理的な動きが起こったのか。その後の教団はなぜ&どう変化していったのか。


という事を心理学の立場で説明しています。


無宗教の私には、そういう事だったのか、とても分かり易いと感じましたが、これも一つの解釈という見方をしないといけないのだという心の声もします。


多分、各宗派の信者の方々からは、違う感想が出るのでしょう。


宗教とは何か? 科学と宗教の関係は? なぜ一神教なのか?という疑問を抱いている人には、読まれる事をお勧めする一冊です。


なだ氏の主張は、三大宗教の始祖は絶対神の下で全ての人は平等という事を説きたかった。部族間戦争や権力闘争、格差の弾圧などからの離脱を狙ったものだった。
でも、弟子の時代や現代でも元に戻ってしまってきている。

始祖から後で作られていった宗教は、集団帰属感を得る為の事が多くなり、離脱の思想が伝わっていない。
愛国心や愛社精神なども形を変えた部族意識。

人間はそこからどうしても抜け出せないのか?という投げかけと感じました。

う~ん。

【家 住み手が書く】爽やかで、頼もしい家を創る17 パッシブハウスという考え方

「パッシブハウス」という言葉は、今回の家の検討をするまで全く知りませんでした。

アクティブは積極的で元気がある印象の単語であるのに対して、パッシブは受け身で消極的という単語の印象を持っていましたので、「パッシブハウス」と初めて聞いた時は、あまり魅力的に感じませんでした。


でも、中身を知ったら興味が湧いてきました。


パッシブハウスジャパンという組織があり、代表理事の森みわさんの記事からの引用ですが、

”パッシブハウスは、太陽からの熱を取り入れ、風を通して流すというエネルギーの出入りを重視して設計。近い考え方に「高断熱高気密」がありますが、こちらは魔法瓶のように熱の出入りがなく保温のみの状態。
パッシブハウスでは、あくまで自然なエネルギーの流れを活かすという点が違います。

省エネや光熱費の減少は基本ですが、快適で健康に暮らせるという健康メリットが大きいです。しっかりと断熱をすると外気の影響を受けないので、床や壁、天井、窓壁の表面温度が整い、部屋の中の温度ムラが無くなります。その結果、余計な対流がなくなると、身体に負担がかからないようになり、エアコンの温度設定や風量が抑えられて過乾燥などからも解放されます。”

との事。


ホームページに行くと「欲望つめ放題、なのに、世界レベルで本質的にエコな家。おまたせしました。日本の皆さん。それ、技術で叶えます。 それがパッシブハウスです。」と出ています。ドイツが発祥の考え方です。


非常に簡単に言うと少ないエネルギーで快適に暮らせるように、断熱を高め、太陽熱を上手く取り入れたり遮ったりする家です。

1台のエアコンで家じゅうが快適に暮らせる事を実現します。

太陽熱も、南側の窓とそれ以外の窓で性能を変えたり、庭がある場合は南は落葉樹で夏の日差しを遮り、冬は葉っぱが落ちるので太陽熱を自然に沢山取り込める様にする。夏は夜間の涼しい空気を利用する等の工夫をしていきます。


パッシブハウスと認定されるには、どれだけ省エネで暮らせる家の性能があるかを計算して指定基準のクリアが条件です。

エネルギー基準が満たされれば、どんな種類の断熱材や工法を使っても良いのです。


日本でも既に何軒もパッシブハウス認定を受けた家が作られ始めています。

但し、有名なあるパッシブハウスでは壁の厚さが確か40㎝ぐらいもあるとの事。
従来の木造軸組みの柱は10.5cmか12㎝の太さなので、それよりもずっと厚い壁を作って達成している。やはり少し特別な作り方をしないといけなさそうです。


でも、南関東の気候ではもっと緩い断熱でも快適に暮らせるレベルはあるだろうし、これに透湿工法を組み合わせて行ける可能性があると考えました。
このパッシブハウスの方法は、電気機器に頼らないで快適性を追求するという事に使えそうだと考えました。

2018年12月13日木曜日

【家 住み手が書く】爽やかで、頼もしい家を創る16  湿度を考える

温度とペアで湿度についても考えておく必要があります。

湿度は人に与える影響は、もしかしたら温度より大きいのではという気がします。


同じ高温下でもカラッとしているのと、ムシムシしているのでは不快度が全く異なります。皮膚から汗が蒸発が出来れば、自在に体温調節が出来るからでしょう。


関連して、体感温度も湿度に大きく影響をうけます。

最近 エアコンのコマーシャルで言われている新28度というのは28度でも湿度が高くなければ快適ですよ。という意味ですし、冬で室温が低くても湿度が高ければあまり寒く感じません。


でも、実際にありがちなのは夏や梅雨時は家の中も高湿になって、冬は過乾燥になるという真逆の傾向。
これを起こさせにくくしなければなりません。

湿度は、結露=カビや腐りの発生にもつながりますので、建物の寿命も縮めてしまいます。


湿度のコントロール方法として、ポピュラーなのは加湿器と除湿器(含むエアコン)、換気システムですが、今回はできるだけ電気を使わずに調湿する事を考えます。


その為にも既に書いた、セルローズファイバーや、無垢材等の調湿性のある天然素材の多用を行います。

でも、同様の建てかたをされたお宅を拝見すると、それだけではまだ調湿性が足りそうもないという印象を受けました。

もうひとひねり出来ないか?と考えました。

2018年12月12日水曜日

【家 住み手が書く】爽やかで、頼もしい家を創る15  快適温湿度 熱環境を考える

快適な暮らしには、快適な温湿度環境を作る必要があります。

まずは温度ですが、温度の元となるのは熱なので、それを考えました。


住宅のパンフレットやチラシ等を見ると、「高気密高断熱」とか次世代省エネ基準とか必ずセールストークに書かれています。

少し詳しく書く会社は、Q値だUa値だと書いています。


最初は何が何だか分かりませんでした。
でも、だんだん慣れてくると、結局は家の中の熱(暖かさや涼しさ)をどれだけ外に漏れない様にするかという事を言っているにすぎない事が分かりました。


以前使われていたQ値という指標も、最近使うUa値も考え方は同じです。(C値はスキマの面積を表すので少し違います。)


熱の逃げやすい場所としては、窓、壁、屋根、床になります。


海外ドラマを見ると、真冬でも家の中で半袖で暮らしてるのが出てきます。年中 同じ格好で暮らせるというのが憧れの生活なのかもしれません。

でも、私にはそれが快適生活には思えません。
外出する時は冬の寒さや夏の暑さに耐える様に身体を慣らす必要があります。

家の中でも冬は長袖、夏は半袖で四季を感じながら暮らして行くのが自然で快適な生き方だと思います。勿論、暑すぎたり、寒すぎるのはダメですが、季節にあった快適温度帯が作れれば良いと考えました。


それを実現していく為に、断熱性能や排熱のしくみ等を考えていきます。


Q値やUa値という数値は、断熱材を厚くしたり、窓を小さく、少なくする等をすれば作っていく事はできます。床面積が大きければQ値は小さくなる、等の計算上のマジックも有ります。


一方で、断熱材を厚くすると壁も分厚くなりコストが上がる。窓を小さくすると部屋が暗くなる。窓が少ないと風通しが悪くなる。等のデメリットも起こってきます。


これらのバランスをどう作っていくのかがポイントになります。


世の中では、無暖房無冷房で暮らせるという言われる断熱レベルがあります。でもそれには非常に厚い断熱材の層を設ける必要もあり、コストが高くなります。
工務店さんの標準の木造軸組み工法ではなく特別な作り方を加える事になってしまうと考えます。


私は前提として停電や燃料が停止された状態でも過ごしていける家を考えるという事にしていますので、そういう状況下で冬は太陽の熱(ストーブ何台分もの熱量がある)をどう活かすか=陽だまりの暖かさをどう屋内に取り入れるか。夏の暑さの中でも、自然の力で少しでも涼しい空気や風を取り込めるか=木陰の涼しさを持ち込めるか。を考えました。


もしも、井戸があれば年中一定の熱源、冷却源になりますので、これらの悩みはかなり簡単に解消できるかもしれませんが、残念ながら井戸はコストや大きさから断念しました。


熱の伝わり方には、伝導、対流、輻射という3つのルートがあり、断熱では伝導と対流をコントロールする事が出来ます。
輻射は体感温度にも大きく影響し(体感温度は室温と壁の温度の真ん中になると言われています)、役にも立つし、害にもなりうるので良く考える必要があります。

2018年12月11日火曜日

【家 住み手が書く】爽やかで、頼もしい家を創る14  天然素材 内壁・天井

壁も天然素材を使いたいと考えました。

最低必要な機能は透湿性能を持たすことですので、ビニールクロスは使いません。
ビニールは石油化学物質でもあります。


前述の山本順三さんに話を伺って、壁紙にチャフウォールというホタテ貝の殻から作ったものを塗ると、透湿性に加えて、臭いも取ってくれるとの事。汚れても簡単に自分で筆で上塗りすれば良いとの事でした。


確かに、体験館の空気は良い感じなのを実感しました。但し、触った時にはザラザラ感があり、もしも小さな子供などがこすったら擦りむいてしまうかもという気がしました。


壁紙はオガファーザーというドイツで一般的な天然素材の物に決めました。
透湿性があり、調湿性塗料を上に塗れば張替え不要、表面で静電気が起きないので埃を引き寄せないとの事。


又、実際に住んでおられるお宅訪問で、壁を漆喰にされているお宅がありました。
そこは、猫も飼われているのですが、一切臭いがしません。又、猫が壁をひっかいても傷がつかないとの事。漆喰なので白くてとてもクリーンな印象も受けました。


漆喰はお城や土蔵で使われているという位のイメージしか持っていなかったのですが、調べてみると無機材ですので不燃性や徐々に硬くなっていく事、調湿性、ホルムアルデヒド等の有害物質の吸着分解、強アルカリなのでウィルスなどに効果、表面つるつる(塗り方に依る)という様な事が言われているのを知りました。

ですが、塗り壁ですので、施工費は高くなります。


そこで、場所毎にどういう壁にするかを決めていきました。

2018年12月10日月曜日

【家 住み手が書く】爽やかで、頼もしい家を創る13  天然素材 無垢材

次は、「気持ち良く、健康」の具現化について書いていきます。

大きく分けて、天然素材を使う事と、温湿度、そよ風の取り込み方、音、明るさ、防虫、室内空気などが関係してきます。

色々な事項を、電気に頼らずに同時に成立させていくという事を探していきました。


まずは、天然素材について。

シックハウスという事が以前に大きな社会問題として取り上げられました。新建材からホルムアルデヒド等が出てきて、それが身体に悪影響を与えるという話だったと思います。

その後、ホルムアルデヒドを出さない建材が多く普及してきています。
丸清さんはそういう建材の使用に加えて、ホルムアルデヒド吸収分解せっこうボードを標準に使っています。


私は仕事で関連の事を調べたりしていた事もあり、化学物質が人間にかなり大きな影響を与えると思っています。

ホルムアルデヒドを出す物質は勿論の事、石油化学物質もなるべく使いたくありません。

石綿の様に、法律上安全とされている物質でも後日危険性が判明するという事がこれからもあるでしょう。だから、出来るだけ天然素材を使いたいと考えていました。


天然材で作られた家では、疲れた脳が回復しやすく、身体も活動的な状態になり、睡眠の質も向上するという九州大学での実験結果も出ています。


折角、木造構法で作るのですから「木のぬくもり」、「木のやさしさ」を感じられる様にしたいと思いました。


「木」は経年変化を楽しめるという事もあります。又、調湿性と断熱性があります。よって、木(無垢材)を使う事で温湿度環境を整える効果も期待できます。


木が家の中で露出するのは、柱と床になります。特に、いつも身体に触る床は重要です。


ネットや本で無垢材の床について情報収集すると、各樹種による特徴が色々と書かれています。色、傷つきやすさ(硬さ)、冷たく感じるか(断熱性)、肌触り感など。


傷つきにくさと冷たく感じるかは相反する所があり、全てを満たす答えは無いのだと知りました。
誰だって傷はつけたく無いし、冷たいのも御免だと思います。でも、優先順位をつけて決めていく必要があります。コストもあり、施主の悩み所です。


私の場合は、工務店さんが自社の製材所で国産天龍材の檜と杉を扱われており、その10㎝角ぐらいのサンプルを1週間貸してもらい触りまくりました。厚さは1.5cmと3㎝のもの。

踏んだり、撫でたり、匂いをかいだりしました。檜は匂いはすばらしく、杉は踏んでも触っても感触がすばらしい。最後に、冷凍庫で凍らせた保冷材を板の上に置いて反対側に冷たさがどう伝わるか断熱性の実験をしてみました。

すると、圧倒的に杉の方が熱が伝わりにくいと感じました。数十分経っても厚さ1.5㎝でも裏面が冷たくなりません。


同じ温度の金属と木を触って金属の方が冷たく感じるのは、人体からの熱の移動スピードが早い(沢山熱を汲みだされてしまう)からと言います。
そういう意味で、杉板は足を置いても、熱がその接触部分から逃げていかないのであまり冷たさを感じません。
檜は無垢材の中では断熱性が高い方ですが、少し冷たさを感じますし、踏み心地も硬くてつらいと思いました。


後日、合板でもやってみると非常に冷たい。寸法精度は高いのでしょうが、明らかに無垢材とは違う思想の材料という事が分かります。

断熱性は木材中の気泡の多さできまるので、断熱性が高いほど柔らかく傷つきやすいのですが、このテストをしているのと平行して、床を無垢杉にされたお宅を2軒 拝見し、確かに傷つきやすいが、小さな凹みなどはスチームや水で修復もさせられるし、傷は生活の歴史だと思っているとのお話をお聞きして納得しました。
又、実際の床も見せていただいて違和感ありませんでした。


最終的に、ハダシでも気持ちよく、冷たさも感じにくい杉材(水周り以外)にする事にしました。厚みは実験の結果で差が出なかったし、その下に合板も敷くので耐力的にも大丈夫と判断して1.5㎝としました。


実際に住んでみて、気に入っています。兎に角、肌触りが良いので本当にハダシの生活です。スリッパは使いません。
適度に柔らかさがあるし、冷たさを感じにくいので、床に直に座るのも有りです。寝転ぶ事もあります。 

夏場や梅雨時も床はベタベタしません爽やかです。

2018年12月8日土曜日

【家 住み手が書く】爽やかで、頼もしい家を創る12 地震対策 耐震設計レベルを考える

地震の記事を読むと、震度xとか、少し専門風に書いてあるものは何百ガルの加速度などという書き方をしている物もあります。


本家本元の気象庁のドキュメントを見ていくと、震度(揺れの大きさ)と加速度(ガル)の関係は、地震の周期(秒)によってある関係を持っていると定義されています。


横軸に周期、縦軸に加速度と置いて図を書くと、震度Xというのは1~2秒の周期のあたりがもっとも加速度が小さく、周期がそれより短くなっても、長くなっても加速度は上がるというVの字のような形になっています。
よって、例えば地震の加速度は、揺れの周期と共に語らなければ意味がありません。


一般に木造の耐震設計3というのは600ガルに対応できる様に設計すると聞きます。
これは1~2秒周期では震度7の一番揺れの少ないレベルに相当します。よって、それより下の震度6強はその周期ならば倒壊しないという事ができます。


一方、家には共振周波数があり、木造の家では0.5~2秒が最もダメージを与えやすいキラーパルスと呼ばれています(1~2秒と書いてある本も多い)。

ところが、1秒未満例えば0.5秒の短周期では震度6強は800ガル程度まで加速度は上がる可能性があるという定義になっています。
つまり、耐震強度3は1秒未満の短周期では震度6弱までしかカバーできていないかもしれないと思いました。


という事もあり、耐震強度3の設計に加えて、制振ダンパーも追加する事にしました。


制振ダンパーはオイルを用いるタイプを使い、近くの断層に於ける過去のズレの方向を見て、丸清の河内さんが断層に乗り上げる動きと断層に沿って滑る動きの両方に対応すべくダンパー配置を考えて設置してくれました。


効果計算ではエネルギー耐力が約1.25倍となりましたので、600x1.25=750ガルまで対応できるのでは考えました。

これで0.5秒周期でも震度6強はほぼカバーでき、1~2秒帯では余力を持つ事が想定できます。又、2度目、3度目の余震についてもダンパー吸収がありますので有利に働くでしょう。
表層地盤の倍率分を吸収するという意味でも期待します。


これで、震度6強が来ても倒壊はしないだろうという目途が立ちました。勿論、損傷はあると思いますが、それが致命的にはならないし、比較的簡単に修理できる様に壁構造等は考えます。
ここまでやっても、ダメだったらあきらめもつきます。


但し、一つだけ住み手の立場としては残念な事がありました。それは、制振ダンパーはメーカーを信じるしかないという事です。

例えば10年毎に一々壁を崩してオイルが漏れていないか等は調べられません。
昨今、免震ゴムや制振ダンパーを偽って出荷していたという様なニュースをいくつも聞きます。今回使ったダンパーは、それらとは異なるメーカーで、10年保証(耐久は50年以上)と言っていますが施主としては、確かめる術が無いので、「おまじない」程度に考えておかないといけないのかもしれません。


河内さん経由でメーカーからダンパーの試験結果報告書を取ってもらいました。
あるストレス条件での品質確認結果という事は分かりましたが、なぜそのストレス値なのか、肝心な平均何年で劣化するとか、又は平均何ガルx何回で 故障するという様な信頼性の数字は出てきませんでした。(工業製品で言うMTTF等ですね。)
この辺りは、もっと合理的な品質保証のしくみが出来ると良いと思いました。