2019年6月2日日曜日

【本】あざむかれる知性 村上宣寛 ちくま新書

サブタイトル ー本や論文はどこまで正しいかー

著者は認知心理学等を研究した大学名誉教授の方。

いきなり骨子となる部分を抜き書きさせていただきます。

「科学が進歩したので、なんでも正しく理解できる様になったかと言えば、そうでもない。職業的科学者が爆発的に増加したので、科学論文も爆発的に増加した。研究成果を宣伝しないと研究費が取れなくなる。それで、マスコミに売り込むためには手段を選ばない研究者もいる。まじめな研究者の科学論文でさえ、さまざまなバイアスから自由ではない。

研究論文は星の数ほどある。実証科学では、ある特定の仮設を支持する研究が100%ということはあり得ない。支持する研究はあるが、支持しない研究もある。ウエブや書物の科学記事の大部分は、自分の意見に添う研究のみを取り上げ、他を無視するという方法で書かれている。つまりは、つまみ食い的評論で、自分の意見を科学的に装っているだけである。無料で読める記事はそれなりの内容である。結局、記事の大部分は疑似科学にすぎない。

幸い、良心的な研究者たちが数多くの研究論文を評価し、まとめ上げたレビュー論文がある。その中でもっとも信ぴょう性が高いのは、ランダム化比較試験をメタ分析という統計技法でまとめたレビュー論文(システマティック・レビュー)である。特定の仮説がどの程度支持できるかに関して多くの論文を効果量という数字でまとめ上げている。それで、つまみ食い的でない、比較的公正な結論が得られる。どんなトピックでも、メタ分析の論文をいくつか読めば、科学の最先端の結論が簡単に手に入る。逆に言えば、メタ分析の論文を読まない限り、つまみ食い的評論に左右され、結論を誤ってしまう。

最近は、多くの重要なメタ分析の論文はオープンアクセスになっていて、PubMed経由で無料で読める。したがって、専門外の分野でも、検索キーワードを入れ、システマティック・レビューというフィルターを付けると、多くの論文が出てくる。そこで、関連する論文をいくつか読めば、ただちに最先端の知識に辿り着く。せっかく良い時代になったのに、読む人は少ないのだろうか。少なくともベストセラーの著者や大衆的なウエブ記事を書く人は読んでいないようだ。」


つまり、実験のやり方やサンプルに偏りや意図的改ざんのある論文も多い。人間がからむ事項の場合は、薬の世界で良くやられる2重盲検査のようなやり方をしないと正しい科学的結果は得られないと考えられます。

これらの事実を前提として、各論文の信ぴょう性を評価しながら網羅的に全体をレビューするシステマティック・レビュー(研究を網羅的に調査し,同質の研究をまとめ,バイアスを評価しながら分析・統合を行う。日本語では系統的総覧?)でないと科学的な証拠性の高い結論は分からないという事を言われています。

その後は、色々なシステマティック・レビュー結果を述べてくれています。


・BMIと死亡率
 アメリカでは20・30才代でBMI=20前後、40才代で22、50才代で24、70才代で26ぐらいが最も死亡率が低い。日本を含むアジアでは、3位減らした数値で考えた方が良い。つまり、40代台で19ぐらい、50代で21、70才代で23ぐらい。

・塩と血圧
 塩分摂取を減らすと血圧も下がる。

・コーヒー摂取量と死亡率は負相関
 1日3杯飲む人は死亡率が21%低い。

・睡眠と死亡率
 最も低いのは7時間睡眠。 その上でも下でも死亡率は増える。

・プロの投資家と結果
 プロ投資家の結果は市場平均と同じ

それ以外に、ダイエットについて、就職面接について、優秀なビジネスマンについてなどなど沢山の項目が出ています。


この本を読んで、なるほどシステマティック・レビューというのは客観性が上がりそうだと思いました。
商業的なダマシを排除して、大まかな傾向はこれで分かりますね。


ただ、こと人間に関する事はこのレビュー結果も鵜呑みにはできないなとも感じました。
色々なパラメータの交互作用がきっとあると思いますので。

生活スタイルや活動の癖、勿論遺伝なども、きっと効いてくるでしょう。
こと健康に関する事は、自分で試して自分で見つけていくという事が必要そうです。


例えばこの本に抗酸化物質のコーホート分析結果で、ビタミンCサプリ多量摂取が高齢で白内障に悪影響を出たので飲むのを筆者は止めたと書かれています。
でも、元情報をあたって見ると加齢黄斑には逆に好影響という報告もあり、要はそこそこの量にしておけば良いのではという事になる気が私はします。


システマティック・レビューを紹介した本ではありますが、この本にも著者のバイアスが当然かかっているのですからね。

2019年5月28日火曜日

【宇宙】オウムアムアの謎

2017年に星間空間からやってきて、太陽系でスイングバイ(加速と方向転換)をして去って行った巨大物体のオウムアムア。

①非常に細長い形
②表面の光の反射が、通常の彗星等の10倍高い。(金属の様)
③重力以外の方法での加速が行われた
  ガスは望遠鏡で見えない。
④棒手裏剣の様に回転している。
  回転の遠心力を考えると、物質の集合体ではなく固体状と推定される
⑤太陽系の惑星公転面にほぼ垂直の方向から来た


というのが観測された情報。


やはり彗星の一種なのでは?というのが公の天文界の見解の様子。

ハーバード教授がもしかしたら宇宙船かも、、という話をしたが検証できず。



というのが状況の様ですね。

勿論ネットでは、既に米国が隠密に着陸して調べて古代の宇宙船だったという事が分かっている、、という様な記事もありました。


とにかく不思議な飛行物体だったという事は皆の一致している話らしいし、データがあまりに少ないので誰も断定的な事が言えないのです。


私は、この1ヶ月ほど アイザック・アシモフのSFにドップリ浸かっているので宇宙観測船だと考えると楽しいなと思います。

①の形。 素直に人工物をイメージさせます。
②やっぱり金属で出来ているのでは?
③何らかの加速を行った。姿勢制御のロケット噴射かもしれないし、他の方法かもしれない。
④SFの宇宙ステーションで良くある、回転により疑似重力を船内に作っている。
⑤太陽系の全体像のデータ収集には最も適した方向から来たのでは?


と、コジツケも出来そうです。

1回来たならば、今後 2回目、3回目の星間物質の訪問があるかもしれませんね。
恐い様な、楽しみな様な、、、、

2019年5月6日月曜日

【本】驚異の再生医療 上田実 扶桑社新書

今年の1月1日に初版発行になった本です。

副題は ~培養上清とは何か~。

著者は名古屋大学医学部名誉教授の方。


NHKで札幌医科大学でやっている脊髄損傷患者への幹細胞投与(本人の幹細胞を培養して大量に増やして再注入する)によって、身体麻痺した患者さんが従来のリハビリ経験とは全く異なる好成績での回復をしたという番組を見ました。

しかも、この治療が来月から健康保険適用になるとの事で、再生医療がついに身近になって来たという事と、その劇的な効果の可能性に驚きました。

そこで、再生医療の前線を知りたくてこの本を読んでみました。


すると、日本ではIPS細胞を用いた研究には大きな金が出ている事。札幌医大がやっているような幹細胞を用いた再生医療の試み、それに加えて培養上清液という物を用いる試みがある事が分かりました。

上田先生は、培養上清液を用いれば、安全かつ低コストにて実効的な再生が出来るという事を発見したとの事。


IPS細胞や幹細胞での研究は、それらの細胞を(分化)増殖して、それを身体に入れることでそれらの細胞が修復作業をしてくれるハズという考え方。

対して培養上清は、幹細胞培養時にできる培養液の上澄みで、細胞から放出される生理活性物質が沢山入った液体(細胞は入っていない)との事。

それを患者さんに投与すると、患者さんが最初から体内に持っている自分の幹細胞を元気にし、その自分の幹細胞の働きで再生組織が作られているという働きを起こす。

しかも、他の人の物で作られた培養上清でも拒絶反応が出にくいし、大量作成や錠剤化も可能との事。


色々な障害に効果を発揮。
アルツハイマー病の人に投与してみたら、かなり劇的に認知症状も軽減されたらしい。


米軍も再生医療を開発中で、妖精の粉と呼ばれているとの事。

テレビで妖精の粉を使った再生医療の中で、切断された指を元通りに再生する治療が紹介されました。設題した指の断面に妖精の粉を乗せて、包帯で包んでおきます。何かすると、切断してなくなってしまった指が伸びてきます。しかも、爪まで再生されているのです。これには、さすがの私(上田先生)もびっくりしました。 

この妖精の粉は作成方法は異なりますが、培養上清と同じ生理活性物質を含んでいると推察できます。どちらも細胞が含まれていないということが共通点です。


IPS方式が持つ課題(癌化の可能性等)や、札幌医大などの幹細胞増殖方式の欠点(時間や費用が膨大)がクリアされ、非常に現実的かつ有効な手法の様です。

実用化されれば、スゴイ可能性がありそうです。


但し、色々な成分が入っている培養上清が、どういう化学メカニズムで効くのかという詳細メカニズムが解明できていないので、日本の行政では薬事化が難しく、製薬会社も乗って来づらいとの事。動物実験は沢山行われているが、人間での治験は日本の仕組みではハードルが高いとの事。

そこで、ノルウェーの有力大学と名古屋大学での国際連携プロジェクトという枠組みを作り2019年から進めようとしている。


上手くいけば、日本の発明なのにノルウェーの大学から特許申請し、EUの製薬会社が作る事になりそう。


上田先生は、実用化されて再生医療が”身近に使える医療”になる事は喜ばしいが、日本でそれが出来ない事に本当にガッカリされているという気持ちが伝わってきます。


尚、先生の論文を見て、アジアの会社が培養上清液もどきを作って、日本のクリニックなどが輸入して商売しているという現実もあるらしい。(美容とかそういう方面でしょうか) ネットを検索すると、確かにいくつかヒットします。


再生医療、しかも 患者自身の自然再生力を用いた再生医療が低コストで出来れば非常に良い方法だと私も思いました。


しっかりした方法で、素早く 検証と実用化を進め、一方でまがい物は規制するという仕組みを日本国行政が進めて欲しいですね。

2019年5月4日土曜日

【本】ファウンデーション(銀河帝国興亡史)シリーズ アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫

英語のブラッシュアップの為に、図書館でペーパーバックを借りて読もう。その前に、その日本語訳本を読んでおこうと考えました。

最初は、アガサクリスティにしようと思い、オリエント急行殺人事件を久しぶりに読みました。面白いのは面白いですが、突然 読者に与えられていない情報を用いてポアロが推理したりする所ですっかり萎えてしまいアガサを使う事を止めました。

その図書館にあったペーパーバッグで次に目についたのは、トムクランシーとアシモフでした。

そんな訳で、このシリーズ1-3巻を図書館から借りてGWに読みました。


SFは学生の頃から好きなのである程度は色々な作品を読んでおり、アシモフのコレも書店の背表紙でも散々見ていたのですがまだ読んでいませんでした。

古典と言ってよい有名作品なので、内容は書きませんがとても面白く、第1巻だけを読んでみるつもりでしたが一気に3巻まで行ってしまいました。


物語の設定やスタイルが斬新(古典なのにこの表現はおかしいかもしれませんが)です。


物質科学と精神科学の2本柱の世界感は、どことなくEEスミスのレンズマンシリーズを連想させました。書かれた年を見ると、レンズマンシリーズに少し遅れて書かれた様なので、それに影響を受けたのか、又はその時代(第2次世界大戦前後)はこういう世界感がアメリカにはあったのでしょうか。


レンズマンシリーズが、正義の銀河連合対悪のボスコーンという対立構図は、執筆当時の第2次大戦の連合国軍対日独伊という構図をイメージ投影して書かれています。

しかし、ファウンデーションシリーズはそういう現実世界の投影ではなく、純粋SFとして書かれている様に思える所が差異かもしれません。


同時代のSF作家のアーサーCクラークと比べても、クラークが技術者的な書き方なのに比べて、アシモフは文科系的な書き方という見方も出来るかもしれません。


現実世界を見ると、遺伝子操作なども含めて科学技術はどんどん進んでしまうが、人間の精神的な進化は殆ど進んでいないのではないかと感じられます。 

アシモフの言う第2ファウンデーションが人間性進化なのかは分かりませんが、少なくとも科学技術の進化をコントロールできるような人間の知恵や意識の進化という両輪が必要なのだろうと多くの人が感じているのではないでしょうか。

XX工業大学など科学技術の推進体制はありますが、人間性を進化させることを研究し進化させる開発体系(政治・経済学のような技術ではなく)も作る事が必要そうです。

すでに有るのかな?

2019年4月20日土曜日

【家 住み手が書く】庭の雑草対策

庭の雑草対策はいくつかの方法があるようです。

土の部分にグランドカバーになる植物を植える。例えばクローバーなど。

防草シートを敷き、その上に砂利を敷く。

コンクリートでのタタキにする。

ウッドチップを敷き詰める。

タイルやレンガなどを敷き詰める。

インターロッキングブロックを敷き詰める。

などなど。



グランドカバー植物、防草シート+砂利、ウッドチップ、インターロッキング敷、コンクリートのタタキを部分部分で使ってみました。


1年過ぎてその防草効果は、

グランドカバーは白クローバーを生やしたら、全てを覆いつくすぐらいに増殖してしまい、他の雑草は生えてきません。但し、一冬越したクローバーは狂暴化・巨大化します。時々 刈り取ってやる必要が起こっています。

防草シート+砂利はシート脇や隅から雑草が出てきます。但し、本数は少ないので手で取っても大した手間ではありません。

ウッドチップも木のスキマから何本か雑草が伸びました。本数は少ない。

コンクリートのタタキは全く草が生えません。

インターロッキングを敷き詰めた所も雑草は生えてきません。

今回、庭木への事も考えて透水性インターロックを使いました。

透水性だとかなり強い雨が降っても水は染み込んでいくので水たまりはできませんし、雨が上がった後にとてもサッパリした感じです。

コンクリートのタタキはいかにも濡れているという感じになりますが、透水性インターロックはスッキリしている感じですがすがしさが感じられます。


普通のインターロックより少し高めですが、使ってよかったなと思います。

【本】スーパーカブはなぜ売れる 中部博 集英社インターナショナル

私はバイクには乗っていないのですが、昔からスーパーカブは気になっていました。

なにせ、1リッターで100Kmぐらい走れるというコストパフォーマンス(とエコ度)が非常に高い乗り物という点が、ケチな私には大いに関心が湧きます。

ガソリン価格がリッター150円になっても、近くの駅まで行くのにバスだと180円、スーパーカブだと10円以下で行けてしまうのですから。


昔から業務用で使われているし、世界中で1億台も使われている事は、耐久性や実用性も完全に実証されています。


という事で、この本を読んでみました。

すると、スーパーカブという商品が出来上がり、売れて世界でヒットする経緯は技術だけではない、本当に多くの挑戦的な試みを知恵を働かせて仕掛けて来た事を知りました。

良く出来た小説の様に、いや 小説以上にドラマチックな展開で、ものすごくワクワクしながら読んで行きました。

勿論、本田宗一郎さんは凄いですが、それをプロデュースしていった藤澤武夫さんの凄さ。実行していった当時のホンダ社員達。皆の本気や熱い気持ちを感じられるように思いました。


どうして、スーパーカブが企画されたのか、どうやって技術開発されたのか、どうやって商品化し、世界中の人達に愛される様になったのかが、失敗や逆転も含めてつぶさに書かれています。


バイク愛好家でなくとも、池井戸潤さんの小説が好きな人ならきっと大好きになると思います。
娯楽としてもお勧めの一冊です。

尚、ビーチボーイズの little honda という曲がどうして生まれたのかの謎も、初めて知りました。そういう事だったのですね。

【家 住み手が書く】通風雨戸の使用実感

春になって、だんだん日の出が早くなってきました。
毎日1分ぐらいづつ早くなってきます。

私の好きな事の一つに、朝日よって自然に目覚めるという事があります。


マンション住まいの時は、自然とそうなっていたのですが、戸建では防犯の為に雨戸を閉めて寝るという事になると、そのままでは真っ暗な室内で朝を迎える事になってしまいます。


でも、通風雨戸(ブラインドの様な構造になっていて、羽根の角度を色々と変えられる雨戸)にしたので、少し羽根を開けておくと、良い具合に朝日を感じて起きる事ができます。

とっても便利で気持ち良い朝を迎えられます。


勿論、防犯機能は保持したままです。

又、少し羽根を開けると、夜でも家の外で起こっている事を中から視認する事もできます。


今どき、雨戸??という印象はあるかもしれませんが、メリットがかなり多いと思います。

・手動なので、災害停電時などでも素早く開け閉めできる。

・横滑りなので、開け閉めの騒音がシャッターに比べて小さい。

・横滑りなので、屈んだり。背伸びをする必要なく、開け閉めにあまり力もいりません。

・構造がシンプルなので故障しにくく、たとえ滑りが悪くなってもレールを掃除するとか、戸車を買ってきて付け替えるなどでメンテが済んでしまいます。

・ロックをしたまま羽根の角度で開口できるので、防犯状態を保ったままで、
  風を取り入れる事ができる。
  日光を取り入れる事ができる。
  必要以上な日光を遮る事ができる。
  外の様子を見る事ができる。

デメリットとしては、戸袋のスペースが必要になる。電動はない。という事でしょうか。

1年の使用実感としては、通風雨戸は本当に便利と感じています。