2016年12月18日日曜日

【本】(2)世界の農業と食料問題のすべてがわかる本 八木宏典監修 ナツメ社

<世界の食料問題>
世界70億人の人口の内、飢餓で苦しんでいる
のは9億人。一方、太りすぎは14億人いる。

食料の偏在化が起こっている。

但し、例えば米国では「貧困」と「肥満」
は同義語になりつつある。
貧困だと高カロリー、低栄養の安いジャンク
フードばかり食べて、栄養不良の肥満が
蔓延っている。米国企業の進出による肥満
を生むフードシステムが世界に広がって
いく。

又、世界で飢えにあえぐ9億人の内、7~8割
が食料を生産しているはずの農業生産者だ
という。多数の小規模農家が、少数の食品
流通企業(ウォルマートやテスコの様な多
国籍スーパーなど)に実質支配されている。

又、「緑の革命」の様に増収を目指す動き
の中で、化学肥料を多用する事により、虫
や雑草も増えて、除草剤など農薬を多用し
しなくてはならない事になってきている。
遺伝子操作も同様。

この様に、食料にまつわる問題は非常に
複雑かつ多岐に及ぶ。

<食と農の問題に対する取り組み>
人間の生命維持に欠かすことができない
食料を、必要な時に安定的に入手できる
権利を「食料安全保障」という。

*国連機関の取り組み
WFP 国連世界食糧計画
飢餓問題を根本から解決する事を目的
とし、「緊急食糧支援(災害等が発生し
たら世界どこでも48時間以内に食料を届
ける)」「復興支援・自立支援」を行う。

場合によっては、飛行機で食料を落下さ
せる事もあるし、ゾウを使って運搬する
事もあるというのは有名な話。
国連で最もアクティブな組織と言える。

開発支援では、空腹状態で学校へ通う
世界のすべての子どもへの給食の配給
を目指した学校給食プログラムを行っ
ている。

日本のODAの考え方とWFPの考え方は
近く、日本とWFPは戦略的パートナー
の関係にある。

FAO 国連食糧農業機関
こちらは、助言者の立場で各国に中立
的な討議の場(世界食糧サミットなど)
を提供したりする。

*さまざまな取り組み
フェアトレード
開発途上国の農産物や雑貨などを、
適正な価格で継続的に輸入・消費
する取り組みの事。経済的・社会的
に弱い立場の途上国の人々を搾取す
る事なく、貧困解消や経済的自立を
促し、経済格差を解消する事を目指す。

フードバンク
賞味期限は十分にあるにもかかわら
ず、パッケージ不良や形状が規格外
であるなどの理由で、品質には問題
がないのに売り物にならなかった食
品を企業から提供してもらい、食べ物
に困っている人々に配布するシステム。

スローフード
ファストフード等の席捲に危惧して、
食料供給の多様性を守る為に活動し
ている。
①伝統的な食材や料理方法を守る、
②質のよい食品やそれを提供する小
生産者を守る。
③子供たちを含め、消費者に味の
教育を進める。
というテーマを掲げている。

ファーマーズ・マーケット
地産地消 生産者と消費者が直接触れ合え
る場。

食農体験
生活の中に、さまざまな形で「農」の要素
を入れる。
農につて学んだり体験したりする機会。
週末農業体験やグリーンツーリズム等
がある。


この本には出ていませんが、先日書いた
ユーグレナ社による、ミドリムシの培養
によって飼料やエネルギーを作る事で
穀物を飼料やバイオエネルギーではなく
人間向けに使える様にしていく取り組み
なども、「世界の食料問題を救うビジネ
ス」として取り組みが始まっています。

【本】(1)世界の農業と食料問題のすべてがわかる本 八木宏典監修 ナツメ社 

ナショナリズムや保護貿易主義が台頭
し、戦争が起こり易すそうな世界情勢
ですが、命の基本となる食料問題につ
いて、この本を読みました。
2回に分けて書いてみます。

<世界の農業>
第2次世界大戦後、植民地が独立して
いき、そこを食料供給基地としていた
欧州各国は一気に食料難になりました。

欧州農業は、自給自足から保護を経て
自立へ向かうのですが、EUの前進のEEC
における最初の大きな成果の一つとし
て1962年に農産品の共通価格水準を設
定(保護)をしました。それにより、
今は自立へ向かいつつあります。

米国は大戦前から農産物輸出大国とし
て食料市場を席捲してきました。

アジアは人口が急増して、食料難にな
りましたが、「緑の革命(品種改良、
肥料、かんがいの3点セットで米、
小麦、トウモロコシの生産を倍増さ
せる事に成功)」し、危機を克服。
その後、工業化への成長軌道に乗せた。

アフリカはいまだ食料不足が深刻
なまま。但し、ネリカ(New Rice
 for Africa)米などのアフリカ版
緑の革命への動きは少し出てきつ
つある。

アメリカは北米大陸の真ん中を縦に
通る西経100度線の東西で農業が変
わる。東に行くほど降水量が少ない
のでトウモロコシ、綿花、酪農が
多く、西側は湿潤なので小麦や牧畜
地中海式農業が行われる。

もともと、リンカーンがホームステ
ッド法で未開発の土地64Ha(800m四方)
を無償で払い下げるという法律を作り、
移民達は木を伐採、開墾し家族労働で
耕作していった。
これが「フロンティア・スピリット
(開拓者精神)」の起原。

広い土地は家族労働で行うには限界
があるので、機械化が進み生産性が
大きく向上した。

強大なアメリカ農業だが、3つの
問題を抱えている。(地下水の枯渇、
土壌の劣化、塩類集積)

世界の穀物収穫面積は1961年から2004年
で殆ど変わっていない。農地開発が行わ
れている一方、砂漠化が進んでいるから。

単位面積あたりの収量は増加しているの
で、総生産量は増加している。

巨大穀物商社(穀物メジャー)も5大
メジャーから今は、カーギルとADM(両方
とも米国企業)の二強体制になっている。

畜産では、1980年から2005年の間、先進国
での食肉需要はあまり変わらないが、中国
で一人当たりの消費量が食肉4倍、卵8倍
に増えた。今後も開発途上国での潜在需要
が起こってくる。

水産物への需要も1980年から2005年で倍増。
特に、今まであまり食べていなかった中国
が1980年代後半から食べる様になり、世界
の水産物消費の30%に達する。

養殖は中国を中心に増加中。生産量は漁業
生産量と同じぐらいになってきている。

サケは1990年代にノルウェーとチリが本格
的に養殖に乗り出したので、一気にグロー
バル食品になった。

農産物は人が食べる物以外に、肉を作る
為の飼料需要(大豆の最大輸入国の中国で
は、飼料向けが急増)、バイオ燃料向け需
要増などもあり、取り合いになってきている。

特に、肉を作るためには、直接 穀物を
人間が食べるより大量が必要(牛肉1Kg作る
為にはトウモロコシ11Kg,ハンバーガー1個
分の肉には、おにぎり65個分の米が必要)で、
非常に効率の悪い方向に向かう。





2016年12月4日日曜日

【本】「国際協力」をやってみませんか? 山本俊晴 小学館

著者の山本さんは、国境なき医師団などで国際協力
活動をやられ、NPO法人 宇宙船地球号 も主催さ
れていた方です。

国際協力の表も裏も知った上で、国際協力をどう
考えて進めて行けば良いかを、初心者向けに書いて
くれています。

ボランティアや国際協力とは何か?から書かれて
います。

国際協力は「緊急援助」と「開発援助」の2つが
あるとのこと。

「緊急援助」は自然災害や戦争などが起こった時
に、水や食べ物、服やテント、医療などを緊急に
行って”外国人が”支援してあげる”というもの。

「開発援助」は比較的安定している状態の所に
行って、外国人が現地の人に必要な事はあり
ませんか?と相談して、お金や技術などをお手伝
いするというもので、途上国の人たちが主役。

日本政府も国連もその90%以上は「開発援助」
をしています。

日本の新幹線や首都高速なども、海外からのお金
で作られ、1990代までその返済をしていました。

「緊急援助」は瞬発的に動かなくては意味がない
ので、政府が1年半かけて法案を通してから、、で
は遅すぎる。だから、民間のNGOが主役になってい
る。国連で緊急援助はつの組織(世界食糧計画WFP,
国連難民高等弁務官事務所UNHCR、国連平野維持活動
PKO)だけ。

国際協力は、「考える人(何をするか決める)、
つなぐ人(実行計画に移す)、やる人(実施する)」
の3つから成り立つが、国連や日本のJICAなどは
皆「つなぐ人」の役割を担っている。やる人は
基本的に現地の人が行う。

国際協力は、純粋な人道的な見地という表の顔
だけではなく、当然 裏の顔も持つ(世の中の殆
どがそうですね)。

国連は、5大国(安全保障国=第2次大戦の連合国)
にとってメリットが無いと動かない。
日本のODAも国益になる様に行う(日本企業が現地
進出しやすいようにインフラ作り支援をしたり、
それらの工事は日本企業が請け負ったりする)。
「開発援助」は、現地のエライさん=大金持ちに
とってメリットのある事を要望してくるので、
貧困層にメリットがあるかは分からない。逆に
インフレになって、貧困層は苦しむ事になると
いう事態も起こりえる。

支援する方、支援される方ともにWinWinでない
と持続的な支援は成り立たない。

今の世界で起こっている色々な問題の根本的な
原因についての山本さんの考えは、

①世界人口の増加
 人間の本能、宗教(旧約聖書には「産めよ
 増やせよ、大地に満ちよ」と教えている)、
 天敵がいなくなったの3点によって、留まる
 所を知らない。

②自己実現の欲求、果てしなき欲望
 資本主義はいつも右肩上がりを要求される。
 貧富の差の拡大、競争社会の導入など。

世界の人口数が今のままでも、途上国の人々が
皆、現在の日本人と同じような生活をしよう
とすると、エネルギーや資源など全く足りなく
なる。

開発援助を行って、進んで行く先は結局 地球号
の破滅に向かう とも考えられる。

先進国は消費レベルをもっと下げ、途上国も
含め、ある程度のレベルで我慢するという事が
必要になるのでは との事。

それらの問題に対して、新しい形の経済活動の
模索が必要ではないかとの事。

一つが「自然資本主義」 再生可能資源だけを
使う仕組みにする。石油などの使ったら無くな
ってしまう様な資源は使わない様にする。

もう一つが、「レンタル」にする。
全ての機器とか物をレンタルにしたら、リサイ
クルが浸透する。ユーザーは物に金を出すので
はなく、サービスに対して金を出すという仕組み。
サービスならば、資源が枯渇したり、ゴミが出た
りする事はないでしょうとの事。

又、「国際協力」は現地で活動する人の事が
イメージされやすいが、日本に居ても出来る事
は沢山ある。

省エネ生活をする事。社会貢献をしている企業
の商品を選んで買う事、会社員は会社で「社会的
責任」への行動をしていくこと。国内で「つなぐ
人」として協力(例えばNGOのイベント協力など
でも)する事、国際協力について勉強して、
状況を他の人にも知らせてあげる事などなど。

勿論、国連や青年海外協力隊などに参加して
国際協力師(プロ)として活躍するという道
もあり、その道への進み方も記されています。

国際協力は表も裏も矛盾もある、難しいもの
ですが、進めて行かないと人類はダメになって
しまうという気持ちでやっておられるとの事。

この本は、本音で、難しさや世の中の仕組みの
実態を現場を踏まえて分かりやすく説明して
くれます。

人道的イメージだけで国際協力を考えている
人にはショックな本かもしれません、しかし
その上でも、山本さんが人類や地球を何とか
して行きたいと考えられている想いが、強く
伝わってきます。

本気で、国際協力を考えている人には絶好の
本だと思いました。

2016年11月15日火曜日

【本】僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。 出雲充 ダイヤモンド社

最近、ネットでニュース等を見ていると
「ユーグレナ」の広告を本当に多く見か
けます。

ユーグレナ 日本名ではミドリムシ。

美容系の雑誌などでも、この数年良く
名前を見ます。

東大発のベンチャーで、ミドリムシの
油を搾ってジェット機の燃料にもして
しまおうという記事を読んだ事もあり
ます。

この本は、ベンチャー企業の株式会社
ユーグレナ社長の出雲さんの想いと
経緯が書かれています。

学生時代に最貧国バングラディッシュ
を訪問して、バングラの「飢餓」問題
は乾パンを送っても解決できない。
バングラは山ほどコメが取れるが、
それ以外の健康に必要な栄養素が不足
している。

国連がやる乾パン支援の飢餓対策で
は解決しない、

「飢餓」にはこういう形もある事を
知ったとの事。

それを解決するには、どうしたら良い
かをずっと悩み、探している中で、
豊富な栄養素を、光合成で作り増殖す
るミドリムシに行きついたとのこと。

ミドリムシの大量培養が出来れば、
食料や燃料、二酸化炭素問題を解決
できるというのは、1989年に既に
大学教授により提唱されていて、
大量培養も何人もの研究者が研究
したが成功せずに、お蔵入りにな
っていたテーマだった事を知った。

そこからは、親友の研究者と2人3脚
で、成功を念じて、信じて、がむしゃら
に突っ走って。 世界発 成功した
とのこと。

その過程では、本当に様々な方々の
応援・支援を受けて何とか危機を切り
抜けて、今があるとのこと。

出雲さんの、純粋な願い=夢が、
非常にポテンシャルの高いミドリムシ
という素材と組み合わさって、周りの
人を巻き込んで行った様子が良く分か
りました。

広告を見ると、美容やサプリメントと
いうイメージが強いですが、株式会社
ユーグレナでは、本気でバングラの
飢餓をミドリムシで対策しようという
行動もされつつあります。

こういう、人類や地球を救う想いと
活動。チャンスがあれば、私もぜひ
参加したいと思いました。

2016年11月12日土曜日

【バレーボール】東京オリンピックの会場

有明アリーナか横浜アリーナか という
話が出ており、バレーボール協会として
は有明アリーナに拘っている様ですね。

「レジェンド」という言葉もニュース
で踊っています。

ファン&納税者として、横浜アリーナ
で何が悪いの? という印象です。

巨額の金を使って、記念体育館を作り
たいという事が理解できません。

そこで、それ以降は毎年バレーの世界戦を
定期開催するとでも言うのならば、分か
らないでもありませんが、たった2週間
のイベントに引っ掛けて建物が欲しいと
いうのは良く理解できません。

スーパーリーグなど、バレーボールだ
けを1年中やる専用体育館にしようと
しているのでしょうか? コンサート
会場としても使える様に検討している
との事ですので、違う様です。

少なくとも、「レジェンド」などという
情緒的な言葉で税金を数千億円も使って
欲しくないと思います。

嘆願するのは良いですが、使い方につ
いてしっかりしたプランを示すのが
最低必要ではないでしょうか?

横浜アリーナをベースに、不足分を
どう安く補うかという点も、次善の
策としてバレーボール協会で検討さ
れると良いと思います。


2016年11月5日土曜日

【美味しいもの】日本酒 山形の酒

寒くなって、先週から晩酌は熱燗
を飲むようになりました。

例年より1-2週間 早いかもしれま
せん。コートも11月第1週にもかか
わらず着てしまった日もあるので、
これも、例年より1-2週間早い感じ
です。


日本酒は本当に沢山の種類があり
ますので、皆さん お気に入りがあ
るのだと思います。

スーパーは近所の酒屋でも、旨いと
評判の有名ブランド酒が売られてい
てますし、紙パックで1000円以下の
物でも美味しいものありますね。


11月になると、そろそろ気になる
のが、今度の正月にはどの酒を飲む
か? という事。

日常は安酒が多いですが、正月だけ
は好きな酒を飲もうと決めているの
です。


昨年は、近所の酒屋で「生産本数
限定の貴重酒」と書かれた一升瓶を
ついつい買ってしまい、後で後悔し
ました。


今年は、心に決めた銘柄があります。
それは、「上喜元」。酒田の酒です。

知ってる人は知っている、旨くてコスパ
がとても良いお酒。

近所の酒屋には置いていないのですが、
先日 ビックカメラの酒コーナーで
売っているのを発見しました。

今から 楽しみです。

2016年11月4日金曜日

【囲碁】2016 名人戦 高尾さん

7冠の井山さんを4勝3敗で破って、
高尾九段が名人になられました。

とても素晴らしい事だと思います。


井山さんファンの方からは叱られ
そうですが、私は高尾さんが勝た
れて良かったと思います。


井山さんには、7冠になって絶対王者
というイメージが出来ていて、他の
全てのプロ棋士の人たちが萎縮して
いる様な印象をこの半年感じていま
した。

それを崩せたのですから、しかも、
28歳に40歳が勝ったのですから。

若い層からベテランまでプロ棋士の
方たちに希望とやる気が沸いてくる
のではないでしょうか?

井山さん自身も、さらに強くなら
なければという目標ができました。


私は通勤電車の中で囲碁教則本
を読む事だけが囲碁の学習なので
すが、羽根直樹さんと高尾紳路
さんの本は本当に何度も読んでい
ます。

このお二人の事は、勝手に私は
「先生」と思っています。

だから、なおさら嬉しかった。


平成の四天王の皆さんが、再度
タイトルを取り合って、若い層
とぶつかりあってくれれば、
囲碁の世界がもっともっと
活気が出ると思います。


ちなみに、最後の5分をネットの
生中継で見ていました。

ヨセの最後の所になるので、
多分 あのお二人には一本道
だったはず。

殆どノータイムで石を置いて
いける所だったのではないか
と推測します。

しかし、井山さんは、最後ま
で、可能な限り時間をかけて
打たれていました。

心理プレッシャーをかけてい
たのでしょうか?相手が疑心
暗鬼になるとミスが起こるか
もしれない。

これが、プロ魂なのかもしれ
ませんね。そういう面も楽し
ませていただきました。