2019年6月22日土曜日

【本】すべては救済のために デニ・ムクウェゲ あすなろ書房

2018年ノーベル平和賞に「戦争や武力紛争の武器としての性暴力の撲滅を目指す取り組み」が評価されて受賞されたコンゴ民主共和国(旧ザイール共和国)の医師の書いた自叙伝です。


300ページほどの本ですので、普通ならば1日で読めてしまう厚さの本ですが、その内容の重さ、深刻さに1回で2章読むのがやっと。2週間近くかかってやっと読み終えました。

バイオレンス小説ではなく、これが今、現実にコンゴで起こっている事実という事が心に重くのしかかって来ます。


彼のノーベル賞の受賞のニュースは日本でもずいぶん流れていましたので、存在を知っている人も多いのではないかと思います。

ただ、ニュースで聞くのは、レイプ、性暴力の撲滅を目指し という言葉。

日本で普通使われる 「レイプ」は、性欲による性行為という内容が殆どですが、デニさんが直面している性暴力は、そういう次元の話と、内容ではではない事が分かりました。

同じ単語で表しては、伝わらないのではと感じます。


コンゴでの部族間の民兵による(政府軍も?)部族抗争に於いて、その地域の社会を内部から破壊して制圧するための「金のかからない武器、作戦」としてのレイプ。

コンゴは非常に天然資源に恵まれた、本来ならばとても裕福にもなりうる国なのですが、400もの部族があり、部族主義を扇動し、資源を元に暴力で奪い合う行為、政治が満ち溢れている。欲と恐怖、利己主義とナショナリズムの坩堝になっている様です。

具体的な悲惨な内容や、コンゴ国民がどういう状況を強いられているのかが、つい最近から現時点まで続く現実を赤裸々に描かれています。


具体的な内容は、ここに引用する事もためらってしまう内容です。
その代わりに、デニさんの考えのまとめにあたる部分の一部引用をさせてもらいます。


ここから、

コンゴが必要としているのは公益を重視する起業家だ。そうした起業家の存在こそ、国家が立ち直り、国民が誇りを抱かせる国への生まれ変わるための条件の一つだろう。その夢の実現を望む国民は大勢いる。

 と同時に、ほかの分野でも変化が必要だ。たとえば私は、伝統のいくつかを部族主義に類似するものとしてとらえている。性暴力被害者のために働いていると、つねに直面するのが男性優位主義だ。この地では男性が女性を支配する文化が幅を利かせている。女性を”押し潰し”、二次的役割に押し込める文化だ。キリスト教徒が多いコンゴの国民は、強姦は女性を穢し、さまざまな問題を引き起こすと考えている。そのため、そうした”穢れた”女性を家族や教会のコミュニティから排除しがちだ.会衆の面前で赦しを乞うよう女性に強いることもある。

 私は事あるごとに、そのような時代錯誤の慣行をやめるよう説いている。この地域で猛威を振るっているレイプは性欲とはまったく関係がなく、強姦を働く者たちの動機の大半はそうした欲望とは別物だと強調しながら。

 「それは快楽を得ようとする性的な行為ではなく、獣じみた残虐な行為です。レイプをおこなう人々は、そうすることで権力や鉱物資源を手にできると考えている。あるいは、腹いせにレイプをする人もいる。なぜなら軍が兵士にきちんと給与を払わず、彼らを貧困の中に打ち捨てているからです」

 そうしたメッセージを強かいの指導者たちが理解すれば、たくさんの物事が変わるだろう。そして実際、私は変化を感じている。教会の多くが、とにかく以前よりは女性たちの境遇を暗示はじめた気がするのだ。

引用終わり


コンゴでは2019年に新大統領が誕生したが、今までのこの現実から目を背けてきたカビラ前大統領の勢力が沢山残っている。

良い方向に向かうかは全く分からない状況。国際社会からの一層の支援が必要だろう。紛争鉱物を使わないという取り組みも先進国企業に広がりつつあるが、もっと踏み込んだ事が必要なのだろう。


インドでも女性の虐げられる犯罪の話を沢山聞きます、世界ではこういう悲惨な事が沢山残っているようです。


まずは、この現実は皆がちゃんと知る事が重要だと思います。
内容の重い本ですが、沢山の人に読んでもらいたいと思います。

2019年6月9日日曜日

【心と身体】スマホとガラケー

今まで使ってきたiPhoneを止めて、ガラケーでの生活に戻しました。
(家ではタブレット等でネットにはつなげられます。)

最初の数日は、「何時でも検索できる」、「何時でもニュースを見られる」、「地図サービスが使える」などが無いのでちょっと不便かなという気がしましたが、すぐに慣れてしまいました。

ガラケーは1週間 電池が持つし、軽いから楽だなあと再認識。
料金も安い!!

電車やバスの中でも、久しぶりに文庫本等を読み始めました。

”時間のゆとり” をかなり感じられます。


それで3か月過ごしました。


たまに外出中に検索をしたい時はガラケーのiモードを使いましたが、ガラケーで使えるサイトの数がかなり減っている事が分かりました。世の中はすっかりスマホ前提に動いている事が感じられます。


災害時の連絡のつきやすさなどは、ガラケーの人数がかなり減ってきているので回線容量的にはより安心になって来ているのではと思います。


でも、来年から始まる5G世代が普及していくと、機械間の通信が一気に増えて行き、政府もキャッシュレスを無理やり進めるなど、デジタルでないとコントロールしにくく損をする社会がいよいよ始まりそうな予感もします。


そこで、やはりガラケーからスマホに乗り換える事にしました。

格安スマホも含めて色々調べて契約しましたが、それでもガラケーよりは料金高い。


スマホを再度持ち始めて2週間経ちました。

でも、以前と違って電車やバスでの文庫本は続いています。
スマホを持っても、すぐにいじるという事は無くなりました。

断食と同じ様に、悪化していた体質(気持ちの生活習慣)が回復した様に感じます。
新しい気づきです。


時々、禁スマホ、禁ネットという期間を意識的に作るのが良いのかもしれません。

2019年6月2日日曜日

【本 心と身体】心の潜在力 プラシーボ効果 広瀬弘忠 朝日選書

前回、システマティック・レビューの記事を書きました。

その中で、二重盲検査でないと客観的な分析が出来ないという話がありました。
処方する先生の微妙な表情が、患者へ影響を与えてしまうから、、というのがその理由です。

純粋に薬効を評価するという意味では、二重盲検査手法は良いと思います。

ただし、治療するという観点では心の作用と合わせられれば、さらなる効果が期待できるのではと思いました。


心の効果として有名なのは、プラシーボ効果ですね。
ただの砂糖でも、薬と信じ込んで飲むと薬効に近いものが発現するという事。
昔から知られていますよね。

物質的なものを飲んだりするだけでなく、ダミーの手術や、担当医の説明の仕方一つで治療結果が変わって来るという例は色々と報告されています。

この本は、そういうプラシーボ効果について、具体事例やどういう状況だとプラシーボが起こりやすいのか、活かせるのか、逆にマイナス効果を生む事もあるなどを説明してくれます。


私自身、何を飲んでも直後から効いた感じに好転してしまう事が多くプラシーボ効果が出やすいと感じています。なので、高価な薬など買わずとも、小麦粉+これで大丈夫という思い込み で大抵の事は治ってしまえるのではと思います。

何か真剣に信じて思い込める物事を一つ作っておけば、そこで心の力を引き出せる様にできるという事かもしれません。

宗教なども、その一つになりえるのでしょう。


高度医療や高額な新薬開発などよりも、プラシーボ効果を上手く活用する医術の普及などの方が、QOL向上や医療費低減に大きく貢献しそうな気がします。

製薬会社や医師会(それをバックに持つ政府)などは利害関係があるので、決してそちらに向かおうとはしないのだと思いますが、プラシーボ研究がもっと発展して草の根的でも広がっていけば良いと考えます。

【本】あざむかれる知性 村上宣寛 ちくま新書

サブタイトル ー本や論文はどこまで正しいかー

著者は認知心理学等を研究した大学名誉教授の方。

いきなり骨子となる部分を抜き書きさせていただきます。

「科学が進歩したので、なんでも正しく理解できる様になったかと言えば、そうでもない。職業的科学者が爆発的に増加したので、科学論文も爆発的に増加した。研究成果を宣伝しないと研究費が取れなくなる。それで、マスコミに売り込むためには手段を選ばない研究者もいる。まじめな研究者の科学論文でさえ、さまざまなバイアスから自由ではない。

研究論文は星の数ほどある。実証科学では、ある特定の仮設を支持する研究が100%ということはあり得ない。支持する研究はあるが、支持しない研究もある。ウエブや書物の科学記事の大部分は、自分の意見に添う研究のみを取り上げ、他を無視するという方法で書かれている。つまりは、つまみ食い的評論で、自分の意見を科学的に装っているだけである。無料で読める記事はそれなりの内容である。結局、記事の大部分は疑似科学にすぎない。

幸い、良心的な研究者たちが数多くの研究論文を評価し、まとめ上げたレビュー論文がある。その中でもっとも信ぴょう性が高いのは、ランダム化比較試験をメタ分析という統計技法でまとめたレビュー論文(システマティック・レビュー)である。特定の仮説がどの程度支持できるかに関して多くの論文を効果量という数字でまとめ上げている。それで、つまみ食い的でない、比較的公正な結論が得られる。どんなトピックでも、メタ分析の論文をいくつか読めば、科学の最先端の結論が簡単に手に入る。逆に言えば、メタ分析の論文を読まない限り、つまみ食い的評論に左右され、結論を誤ってしまう。

最近は、多くの重要なメタ分析の論文はオープンアクセスになっていて、PubMed経由で無料で読める。したがって、専門外の分野でも、検索キーワードを入れ、システマティック・レビューというフィルターを付けると、多くの論文が出てくる。そこで、関連する論文をいくつか読めば、ただちに最先端の知識に辿り着く。せっかく良い時代になったのに、読む人は少ないのだろうか。少なくともベストセラーの著者や大衆的なウエブ記事を書く人は読んでいないようだ。」


つまり、実験のやり方やサンプルに偏りや意図的改ざんのある論文も多い。人間がからむ事項の場合は、薬の世界で良くやられる2重盲検査のようなやり方をしないと正しい科学的結果は得られないと考えられます。

これらの事実を前提として、各論文の信ぴょう性を評価しながら網羅的に全体をレビューするシステマティック・レビュー(研究を網羅的に調査し,同質の研究をまとめ,バイアスを評価しながら分析・統合を行う。日本語では系統的総覧?)でないと科学的な証拠性の高い結論は分からないという事を言われています。

その後は、色々なシステマティック・レビュー結果を述べてくれています。


・BMIと死亡率
 アメリカでは20・30才代でBMI=20前後、40才代で22、50才代で24、70才代で26ぐらいが最も死亡率が低い。日本を含むアジアでは、3位減らした数値で考えた方が良い。つまり、40代台で19ぐらい、50代で21、70才代で23ぐらい。

・塩と血圧
 塩分摂取を減らすと血圧も下がる。

・コーヒー摂取量と死亡率は負相関
 1日3杯飲む人は死亡率が21%低い。

・睡眠と死亡率
 最も低いのは7時間睡眠。 その上でも下でも死亡率は増える。

・プロの投資家と結果
 プロ投資家の結果は市場平均と同じ

それ以外に、ダイエットについて、就職面接について、優秀なビジネスマンについてなどなど沢山の項目が出ています。


この本を読んで、なるほどシステマティック・レビューというのは客観性が上がりそうだと思いました。
商業的なダマシを排除して、大まかな傾向はこれで分かりますね。


ただ、こと人間に関する事はこのレビュー結果も鵜呑みにはできないなとも感じました。
色々なパラメータの交互作用がきっとあると思いますので。

生活スタイルや活動の癖、勿論遺伝なども、きっと効いてくるでしょう。
こと健康に関する事は、自分で試して自分で見つけていくという事が必要そうです。


例えばこの本に抗酸化物質のコーホート分析結果で、ビタミンCサプリ多量摂取が高齢で白内障に悪影響を出たので飲むのを筆者は止めたと書かれています。
でも、元情報をあたって見ると加齢黄斑には逆に好影響という報告もあり、要はそこそこの量にしておけば良いのではという事になる気が私はします。


システマティック・レビューを紹介した本ではありますが、この本にも著者のバイアスが当然かかっているのですからね。

2019年5月28日火曜日

【宇宙】オウムアムアの謎

2017年に星間空間からやってきて、太陽系でスイングバイ(加速と方向転換)をして去って行った巨大物体のオウムアムア。

①非常に細長い形
②表面の光の反射が、通常の彗星等の10倍高い。(金属の様)
③重力以外の方法での加速が行われた
  ガスは望遠鏡で見えない。
④棒手裏剣の様に回転している。
  回転の遠心力を考えると、物質の集合体ではなく固体状と推定される
⑤太陽系の惑星公転面にほぼ垂直の方向から来た


というのが観測された情報。


やはり彗星の一種なのでは?というのが公の天文界の見解の様子。

ハーバード教授がもしかしたら宇宙船かも、、という話をしたが検証できず。



というのが状況の様ですね。

勿論ネットでは、既に米国が隠密に着陸して調べて古代の宇宙船だったという事が分かっている、、という様な記事もありました。


とにかく不思議な飛行物体だったという事は皆の一致している話らしいし、データがあまりに少ないので誰も断定的な事が言えないのです。


私は、この1ヶ月ほど アイザック・アシモフのSFにドップリ浸かっているので宇宙観測船だと考えると楽しいなと思います。

①の形。 素直に人工物をイメージさせます。
②やっぱり金属で出来ているのでは?
③何らかの加速を行った。姿勢制御のロケット噴射かもしれないし、他の方法かもしれない。
④SFの宇宙ステーションで良くある、回転により疑似重力を船内に作っている。
⑤太陽系の全体像のデータ収集には最も適した方向から来たのでは?


と、コジツケも出来そうです。

1回来たならば、今後 2回目、3回目の星間物質の訪問があるかもしれませんね。
恐い様な、楽しみな様な、、、、

2019年5月6日月曜日

【本】驚異の再生医療 上田実 扶桑社新書

今年の1月1日に初版発行になった本です。

副題は ~培養上清とは何か~。

著者は名古屋大学医学部名誉教授の方。


NHKで札幌医科大学でやっている脊髄損傷患者への幹細胞投与(本人の幹細胞を培養して大量に増やして再注入する)によって、身体麻痺した患者さんが従来のリハビリ経験とは全く異なる好成績での回復をしたという番組を見ました。

しかも、この治療が来月から健康保険適用になるとの事で、再生医療がついに身近になって来たという事と、その劇的な効果の可能性に驚きました。

そこで、再生医療の前線を知りたくてこの本を読んでみました。


すると、日本ではIPS細胞を用いた研究には大きな金が出ている事。札幌医大がやっているような幹細胞を用いた再生医療の試み、それに加えて培養上清液という物を用いる試みがある事が分かりました。

上田先生は、培養上清液を用いれば、安全かつ低コストにて実効的な再生が出来るという事を発見したとの事。


IPS細胞や幹細胞での研究は、それらの細胞を(分化)増殖して、それを身体に入れることでそれらの細胞が修復作業をしてくれるハズという考え方。

対して培養上清は、幹細胞培養時にできる培養液の上澄みで、細胞から放出される生理活性物質が沢山入った液体(細胞は入っていない)との事。

それを患者さんに投与すると、患者さんが最初から体内に持っている自分の幹細胞を元気にし、その自分の幹細胞の働きで再生組織が作られているという働きを起こす。

しかも、他の人の物で作られた培養上清でも拒絶反応が出にくいし、大量作成や錠剤化も可能との事。


色々な障害に効果を発揮。
アルツハイマー病の人に投与してみたら、かなり劇的に認知症状も軽減されたらしい。


米軍も再生医療を開発中で、妖精の粉と呼ばれているとの事。

テレビで妖精の粉を使った再生医療の中で、切断された指を元通りに再生する治療が紹介されました。設題した指の断面に妖精の粉を乗せて、包帯で包んでおきます。何かすると、切断してなくなってしまった指が伸びてきます。しかも、爪まで再生されているのです。これには、さすがの私(上田先生)もびっくりしました。 

この妖精の粉は作成方法は異なりますが、培養上清と同じ生理活性物質を含んでいると推察できます。どちらも細胞が含まれていないということが共通点です。


IPS方式が持つ課題(癌化の可能性等)や、札幌医大などの幹細胞増殖方式の欠点(時間や費用が膨大)がクリアされ、非常に現実的かつ有効な手法の様です。

実用化されれば、スゴイ可能性がありそうです。


但し、色々な成分が入っている培養上清が、どういう化学メカニズムで効くのかという詳細メカニズムが解明できていないので、日本の行政では薬事化が難しく、製薬会社も乗って来づらいとの事。動物実験は沢山行われているが、人間での治験は日本の仕組みではハードルが高いとの事。

そこで、ノルウェーの有力大学と名古屋大学での国際連携プロジェクトという枠組みを作り2019年から進めようとしている。


上手くいけば、日本の発明なのにノルウェーの大学から特許申請し、EUの製薬会社が作る事になりそう。


上田先生は、実用化されて再生医療が”身近に使える医療”になる事は喜ばしいが、日本でそれが出来ない事に本当にガッカリされているという気持ちが伝わってきます。


尚、先生の論文を見て、アジアの会社が培養上清液もどきを作って、日本のクリニックなどが輸入して商売しているという現実もあるらしい。(美容とかそういう方面でしょうか) ネットを検索すると、確かにいくつかヒットします。


再生医療、しかも 患者自身の自然再生力を用いた再生医療が低コストで出来れば非常に良い方法だと私も思いました。


しっかりした方法で、素早く 検証と実用化を進め、一方でまがい物は規制するという仕組みを日本国行政が進めて欲しいですね。

2019年5月4日土曜日

【本】ファウンデーション(銀河帝国興亡史)シリーズ アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫

英語のブラッシュアップの為に、図書館でペーパーバックを借りて読もう。その前に、その日本語訳本を読んでおこうと考えました。

最初は、アガサクリスティにしようと思い、オリエント急行殺人事件を久しぶりに読みました。面白いのは面白いですが、突然 読者に与えられていない情報を用いてポアロが推理したりする所ですっかり萎えてしまいアガサを使う事を止めました。

その図書館にあったペーパーバッグで次に目についたのは、トムクランシーとアシモフでした。

そんな訳で、このシリーズ1-3巻を図書館から借りてGWに読みました。


SFは学生の頃から好きなのである程度は色々な作品を読んでおり、アシモフのコレも書店の背表紙でも散々見ていたのですがまだ読んでいませんでした。

古典と言ってよい有名作品なので、内容は書きませんがとても面白く、第1巻だけを読んでみるつもりでしたが一気に3巻まで行ってしまいました。


物語の設定やスタイルが斬新(古典なのにこの表現はおかしいかもしれませんが)です。


物質科学と精神科学の2本柱の世界感は、どことなくEEスミスのレンズマンシリーズを連想させました。書かれた年を見ると、レンズマンシリーズに少し遅れて書かれた様なので、それに影響を受けたのか、又はその時代(第2次世界大戦前後)はこういう世界感がアメリカにはあったのでしょうか。


レンズマンシリーズが、正義の銀河連合対悪のボスコーンという対立構図は、執筆当時の第2次大戦の連合国軍対日独伊という構図をイメージ投影して書かれています。

しかし、ファウンデーションシリーズはそういう現実世界の投影ではなく、純粋SFとして書かれている様に思える所が差異かもしれません。


同時代のSF作家のアーサーCクラークと比べても、クラークが技術者的な書き方なのに比べて、アシモフは文科系的な書き方という見方も出来るかもしれません。


現実世界を見ると、遺伝子操作なども含めて科学技術はどんどん進んでしまうが、人間の精神的な進化は殆ど進んでいないのではないかと感じられます。 

アシモフの言う第2ファウンデーションが人間性進化なのかは分かりませんが、少なくとも科学技術の進化をコントロールできるような人間の知恵や意識の進化という両輪が必要なのだろうと多くの人が感じているのではないでしょうか。

XX工業大学など科学技術の推進体制はありますが、人間性を進化させることを研究し進化させる開発体系(政治・経済学のような技術ではなく)も作る事が必要そうです。

すでに有るのかな?