2020年2月8日土曜日

【本】あの人の「特別な存在」になる法則 石井裕之 フォレスト出版

コールドリーディングの本。

人は自分の事を「わかってくれる人」を求めているとの事。

コールド(cold) リーデイング(reading)は その場 で 運勢を読む という意味らしい。

つまり、占いのスキルも霊感もないのに、「相手の現在・過去・未来をあたかも読み取っているように錯覚させるテクニック」のこと。


騙そうと思って信じさせるなら悪質。ただ、相手の事を分かってあげるために、まず心を開いてもらうための「きっかけ」として「信じさせるテクニック」を使うのであれば、それは健全な姿勢との事。

考え方と、具体的テクニックもこの本で紹介されています。一部を抜粋すると、



具体例

①「(首を傾げて。。。)あなたは犬を飼っていませんか?」とあてずっぽうにカマをかける。

相手がyesの場合は、
「はい、飼っています。どうしてわかるのですか?」という反応が来る。

相手がNoの場合
「いえ飼っていません」
「(ほっとした感じで)ええ、そうですよね。よかった。もし買っていたとしたら非常に危険なので年のために確認しておきかったのです。犬はあなたにとって運気を下げる動物なので、これからも飼うのはやめたほうがいいですよ」 とすり抜ける。



②「あなたは犬を飼っていますね?」

相手がNoの場合でも、
「いえ、犬は飼っていません」
「でも、ペットは飼っていますよね?」
「はい! 今年からハムスターを飼い始めたんです」

 相手は”犬は”という表現をしたので、最初の質問の領域を拡大して繋げて話をしていく。



③元気のないスタッフに声をかける場合

失敗例
「最近、元気がないみたいだね。相談にのるよ」
「いや、大丈夫です。何も問題ありません」

成功例
「最近、人間関係で行く詰まっているみたいだね。」
「いいえ、人間関係は別に。。。」
「でも、何か悩み事をかかえているよね?」
「え? あの。。実は、〇〇商事の納品トラブルがあってから、営業としての自信をなくしてしまったっていうか、ここのところほとんど眠れなくて。。」

という様に、まずはあてずっぽうの情報を投げかける事で、本当の悩みを口にできるための「きっかけ」を作ってあげることができる。



④相手の返事に臨機黄変に対応する

「あなたは、他人からとやかく指示されるのがお嫌いですね?」
「いえ、私、自分に自信がないので、人からいろいろ言ってもらったほうが楽です」
「もちろん、昔はそうだったでしょう。でも、いまの貴方はずいぶん成長して、自分で判断して行動できるようになってきています」

という風に、、


こういうテクニックがあるという事を知っておくことは、だまされない為に必要なスキルなのかもしれないなと思いました。

2020年2月4日火曜日

【本】雨上がりの川 森沢明夫 幻冬舎

私の読む森沢さんの2冊目の本です。


やっぱり、根っからの悪人は一人も出てこない。

悲しい事はあるが、読後に少し心が温まる。


人間って、捨てたもんじゃないな という気になります。


すっかり、森沢ワールドに引き込まれつつあります。

早速、次の本を物色し始めました。

PS.
コールドリーディングって、ほんとうは相手との心の距離を上手に縮めて仲良しになるためにあるんだ。という言葉が頭に残りました。 (この本を読んだ人にしか分からないですね。。。)

2020年2月3日月曜日

【本】科学の困ったウラ事情 有田正規 岩波科学ライブラリー

著者は国立遺伝学研究所の現役教授ですが、「現状の日本の科学研究に関する不都合な真実」をぶっちゃけています。
これが岩波科学ライブラリーで出されている。

つまみ食いで内容を書くよりも、”はじめに”に書かれている事が全体をよく表しているので、転記します。


「 科学の進展は世の中で華々しく紹介されている。特に医療や健康面で科学への期待は大きく、新聞には優れた成果が続々発表されている。しかし、少し長い時間軸でみてみよう。ヒトゲノムがわかったのに、青色ダイオードがもたらしたような身の回りの変化は何も無い。ガンは相変わらず外科的に治すし、認知症も治療できない。ではニュースで聞く数々の新発見はどうなっているのだろう。

 研究者として肌で感じるのは、商業主義に偏っていく科学界の姿である。日本の政府はお金が無い。大学は自己収入を増やすよう求められ、研究者は「役に立つ」(=カネになる)研究をしろといわれる。そうしたウラ事情により、研究のスタイルや論文の書き方は、いま大きく変化している。しかし、それは世の中にあまり知られていないようだ。

 筆者はそういう困った事情を雑誌「科学」に連載してきた。ようやく1冊の本にまとめることができたので、読んでもらえれば科学の現状がわかると思う。ねぜプレスリリースが実態を伴わないのか、なぜ捏造が増えているのか、なぜ研究者は疲弊しているのか、科学に興味を持ってくれる人には、解決策も一緒に考えてもらいたい。」



本書の中では、色々と具体的な実例で 科学研究の常識と言われる事の裏事情を解き明かしてくれています。

これを読んで感じるのは、科学と呼ばれてきた分野は「商業化」「政治の道具化」がどんどん進んでいる事。

一般人の頭では、旧来の科学者のイメージが残っているが、現実の科学者はどんどん変わっている、変わらざるを得ないようになっている事。



私にとって、科学の商業化と感じる最も身近な例は、テレビの番組で医師や大学教授という肩書で登場してくるコメンテーターが、最新の医療情報ですといって先月米国で発表された論文ではこんなことが(例えば、コーヒーを飲む人はxxガンの発症率がこれだけ少ない等)発表されました。とあたかも正確で日本人にも適用できそうな口ぶりで紹介するバラエティー番組など。

本書によると、臨床前研究の論文成果を検証したところ(うち7割がガン研究)、再現性が得られるのはわずか25%という事実がNature誌で報告されているとの事。しかもインパクトファクター20以上の超有名誌または5~19の有名誌に掲載された論文のいずれにおいても、再現性のないほうが多く引用されているらしい。


そして、著者は「世の中の通念と異なり、われわれ研究者は出版される論文の内容が正しいとは微塵も思っていない。そもそも研究者は捏造データと不正確なデータとを区別しない。研究者には(捏造を含む)不正確なデータから正しい情報を見極める能力が要求されている。疑わしい論文なら引用しないで終わりである。自分で論文内容を精査するのでゴミが混じっていても問題視しない。捏造があまりに悪質で、研究者仲間からも見放された場合のみ、少数の腐ったリンゴとしスケープゴートにされる。痛み腐りつつあるリンゴはたくさん見かけるが、その白黒判定に労力を割きたくないのが実情だ。」との事。



日本の科学の世界。このままで良いはずはありません。

政治からの独立性をどう持たせられるのを、もっと民衆の声として問題視しないとこの悪い流れを変えられないのかなと感じた本でした。

2020年1月24日金曜日

【本】クーデンホーフ光子の手記 シュミット村木眞寿美 河出書房新社

明治時代の町娘が、オーストリア貴族の外交官に見初められて結婚し、欧州へ向けて旅行する間についての本人の手記。


村木さんがドイツ語で光子が書いた手記を日本語に訳した本。
子供たちに若くして亡くなった夫の姿を伝えたくて、思い出しながら手記を書いたものとの事。


当時の若い日本人女性から見た、アジアの国々の人々、インド、中東、欧州の人々。
そして、日本の人々についてがみずみずしい生の言葉で綴られています。


130年前の生の世界を知るのにとても面白い本です。


光子さん自身は、一人 異国の地で 沢山の子供をシングルマザーで育てた すごく強い人なんだと感じました。


現実にあったシンデレラガール物語と言えばよいのでしょうか?

【本】エミリの小さな包丁 森沢明夫 角川書店

私の好きなエッセイストの三浦尭子さんが書いている書評で、「世の男性を虜にして、涙腺を崩壊させる森沢明夫作品の魅力を探る」と書いてあるのを見て、森沢さんを初めて読んでみました。

森沢さんという存在自体を私は知りませんでした。


読んでみて。ハマリました。


確かに虜になって、どんどん読み進める。次のページを読むのが楽しみになりました。


読んで感じたのは、森沢さんは現代の山本周五郎さんなんじゃないかという事。


心がどこか温まる。


文章が上手いというのは当たり前として、主要な登場人物達がみなとても温かい。


物語の中身を書くのは止めておきますが、私は「おじいさん」に感情移入して読みました。


こんな孫娘が来て、一緒に時を過ごせたら どんなに嬉しいだろうかなど、、


森沢さんは、沢山の小説を出されているようなので、次の本を読んでみたいと思います。

2020年1月19日日曜日

【本】ローマ帝国 青柳正規 岩波ジュニア新書

先日のローマ教皇 フランシスコの訪日の時に語られた平和な世界へのメッセージを聞いてから、どうしたらそれが実現できるのかを考えています。

「国連」がその答えか? と思って何冊か本を読んで調べてみましたが、国連は残念ながら政治駆け引きの場、または、今だに第2次大戦後の戦勝国の体制を維持するための機関という事が続いている戦勝国連合による、戦勝国連合の為の組織という事が分かるだけでした。(国連憲章に、まだ敵国条項というのがあって、日本、ドイツはいまだに敵国として扱われているという事を、今の日本人はどれほど知っているのだろうか)


国連は各国が主権を戦わせている場で、日本人がイメージしている地球政府のような理念とは全く違う組織の様です。


一方、EUは多くの国の主権はあるものの、それを超えた主権をEUに認めて行われている連合組織であり、集団自衛(集団的自衛権では無い)を具現化しているという意味で、フランシスコ教皇のか言われた戦争の無い世界を目指した人類の試みだといえるのではないでしょうか?

EUをもっと調べようとした所、古代ローマをお手本としたのでは、、という話にぶつかり、ローマ帝国を調べてみることにしました。


ローマ帝国は何百年では足りないような非常に長い期間ありました。


シーザーとクレオパトラ、暴君ネロ、ハンニバルの像など、一部は面白くエンターテインメントとして映画などにもなっているので、私もそのレベルの認識はありました。


でも、この本を読んで、本当に小さな地域のローマ人が、どいういう風に拡大し、帝国を作り、そして滅びて行ったのかが良く分かりました。


共和制の建前の裏で帝国化をするなど、かなり大胆な政治の動きによって作られたのは、とても興味深いものだと思いました。


しかし、それ以上に感じたのは、シーザー達が活躍した紀元前数百年前の世界を、日本史で見ると縄文時代や弥生時代として、採取や農耕生活で非常に文明度が低い形で生活していると表している事。


記録や石作の遺跡が無いからかもしれませんが、ヨーロッパでの人々の暮らし(都市を持ち、軍隊を持ち、法律を持ち、民主制を持ち、科学技術を持っている)に比べて、日本の古代があまりに未開人的な表現しかされていない事に違和感を感じます。中国史に比べても同様です。

絶対に、そこには活発な社会があったはずです。


こんな貧しい日本史観は、やはり明治政府が政治的に作ったのでしょうか。

ローマ帝国史を読んで、とても寂しく、情けない気がしました。

2020年1月13日月曜日

【本】武器輸出大国ニッポンでいいのか 池内了、古賀茂明、杉原浩司、望月衣塑子 あけび書房

先日は東京新聞の望月さんの著書「武器輸出と日本企業」を読みましたが、今回は宇宙物理等で有名な学者の池内さん、元通産相官僚の古賀さん、武器輸出反対ネットワーク代表の杉原さんの4人が、寄稿して出来ている本。

望月さんとは違う視点での深堀した話が色々と載っていました。


「武器輸出と日本企業」では、”軍産複合体”という言葉が出てきていましたが、この本では”軍産学複合体”として より学問の世界での動きが書かれています。


私自身が理系出身+利益重視で生きてきたので、性能や機能を追求する事を第1に考えてコストや経費面では緩い軍需系に、技術者が惹かれる気持ちを持つ、誘惑を感じるのも分かる気がしています。


しかし、この本の池内さんの一文は心に響きました。
甘えを跳ね飛ばしてくれる気がしました。その章を抜き出してみます。

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研究者の言い訳ー「愛国心」とデュアルユースと自衛論

 現場の研究者たる大学教員や研究所の研究員は軍学共同についてどのように考えているのだろうか。その一例として、2016年4月に国家公務員労働組合連合会が行った、国立試験研究機関に勤める研究者を対象にしたアンケート結果がある(総回答数799)。それに軍学共同に関して、「産学官の共同での研究が強まるなか、防衛相や米国国防総省が予算を提供する『軍事研究・開発』に参画する大学や国立研究開発法人が増えています。こうした『軍事研究・開発』を進めるべきだと思いますか?」という設問に対して、「進めるべきではない」との回答が448件(56%)あったのに対し、207件の「進めるべき」との回答(26%)があった(無回答144件、18%)。20代から30代の若者の半分近くの賛成があり、その理由として①国立研究機関であるから政府の担うべき機能を支援するべきである、②民間への転用可能なら構わない、③科学・技術が発展するから、④研究資金が調達できるから、⑤自衛のため(国防のため)なら軍事研究は許される、が挙げられている。

 告知る試験研究機関の勤務者へのアンケートであるためか、①のような回答が多いのだろう。国から給料や研究費を得ているのだから国の言うことには従うべき、との発想で愛国心が強いのかもしれない。しかし、科学研究の国際性や普遍性を考えないのだろうか。国が命じれば原爆だって作るのだろうか、そもそものスポンサーは国ではなく税金を払う国民であるはずなのに、と考えてしまう。

 ②の意見は、本質的にはデュアルユース問題に関わることで、民生目的と軍事目的の区別がつかず、軍からの資金であろうと結果的に民生目的になれば8あるいは民生目的のつもりで研究すれば)いいのでは、という楽観的発想である。しかし、軍からの金である限り最終的には軍事目的に使われるのは当然であり、確実に民生利用となるわけではないことに気づかないふりをしていると言うべきだろう。この言い方は自分のアリバイのための口実でしかない。私は、研究現場においては軍事目的も民生目的も区別はないが、軍から出る金による研究は軍事目的であり、学術機関からの資金による研究は民生目的であると考えている。両義性とは研究資金の出所のことでしかないのである。そして軍からの資金は、民生目的の研究を軍事目的に横取りするために拠出されると考えるべきなのだ。

 ③と④は、軍事開発であれば比較的潤沢に金が出され、金さえ出れば科学・技術は発展すると言っているに等しい。科学・技術が発展することのみが研究の目標となってしまうと、誰のための研究か、何のための研究か、について省察しないのだろう。また、現在の「選択と集中」という科学技術政策のひずみによって経常研究費が激減してしまい、「研究者版経済的徴兵制」の実態で、事実上文科省の予算配分方式が研究者を軍事研究に追いやっているのである。この問題は大学政策とも深く関係しており、日本のあるべ学術体制として深刻な議論を重ねなければならないと思う。

 最後の⑤の「自衛のためなら軍事研究も許される」と単純に言う研究者は実に多いが、先に述べたように単純な自衛に留まらず軍拡競争に巻き込まれ、最終的には核兵器の保有・使用にまで行き着いてしまうことを忘れている。結局、自分は戦争に巻き込まれないと思い込み、情緒的に国を守ると言って研究費をせしめようとしているだけで、きちんと国の将来を考えているわけではないのは明らかである。

 デュアルユースの議論も含め、研究者は軍学共同に携わるとはどういうことか、現在だけでなく将来の科学・技術はどうあるべきで、軍学共同はいかなる影響を与えるか、などをじっくり考え議論する必要がある。現在の科学者は、過当競争や商業主義に追われて近視眼的になっているという状況を反省すべきではないだろうか。

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以上ですが、勿論 研究者の自覚だけでは解決しない(経済的圧迫なども含め)問題であり、部分ではなく全体での議論や政策が必要になると思います。


後半にある杉原さんの書かれている”軍事費を削って暮らしにまわせ”という章によると、例えば2015年に国連で合意されたSDGsの内、予算措置を必要とする15項目については、世界の軍事費の2/3で達成が可能だとか。また日本にイージス艦3隻分の費用で、全国で必要とされている3300か所の保育所建設費が賄える。安倍政権発足後に膨らんだ軍事費の差額3400億円あれば、保育士の給与を月5万円アップしてもおつりがくるというデータもある。

軍産学複合体が形成されて、戦争が起こるとチェンスだと思い、戦争が終結しないで欲しいと思うような人が増えていくことは、日本人にとって不幸方向だと私には思えました。