「ラテン系」な人と言うと、なんだかお気楽でノー天気な人というなんとなくネガティブな印象と、人生を楽しむ術を知っているというポジティブな印象が私の中では同居しています。
でも、実際に「ラテン」の人とはどいういう考え方や性質の人、振る舞いなのかはちゃんと知っていませんでした。
この著者は歌手・作家・エッセイストという多面的な顔を持ち、メキシコと東京の2拠点を行き来して暮らしている方との事。
読んでみると、人生に対するスタンスが今の日本(東京?)と真反対だけど、もしかしたら少し前までの日本もラテン系の考え方をかなりしていたのが、いつの間にかギスギスの競争、自分本位の社会になってきてしまったのではないかという気になりました。
沢山の ハッとする事が書かれているのですが、煎じ詰めると、ラテンの人達は「人と人のつながり」「家族」を人生で最も大切な事と考えている。
例え貧乏や弾圧を受けて困っても、仲間や家族とのつながりを信じていられるのでそれらにも負けずにポジティブに向かっていける。という事でしょうか。
連動して、経済的に成功する事よりも、人と人の繋がりを豊かにする事の方が価値があるという考えになるようです。
日本は非常に高い自殺率になっています。
それに比べてラテンの国の自殺率は桁違い少ないのが実情です。
生活満足度も高く、少なくとも日本人やアメリカ人よりは、ぶっちぎりに「幸福に生きている」という事はまぎれもない事実のようです。統計を見るまでもなく、ラテンアメリカに暮らした経験のある人なら、明らかにその事を体感しています。
面白い話が紹介されていました。
ブラジルで紹介されているイソップ童話は以下の様になっているそうです。
抜粋します。
’冬になって食物が無くなると、キリギリスはアリを訪ねます。
「私が汗水流して働いていた時にあなたは何をしていたの?」
アリの意地悪な問いに、キリギリスは答えます。
「私は歌ってみんなを楽しませ、元気づけていたのよ」
それを聞いた、働くことしか知らず、生きる喜びを感じた事のなかったアリは反省し、
「では、これからは踊って暮らしましょう」
とキリギリスを迎え入れて、食物を分けて一緒に踊りながら、楽しく冬を越したのです。’
この話を聞いて、なんだ、ただのご都合主義じゃないか、これじゃ怠け者用擁護じゃないか、なんて思う方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、このアリは、決して自殺なんて考えないでしょう。歌うのも他人を楽しませるにも立派な仕事。そして、地味に孤独に働いてばかりいた人も、ちょっとした発想の転換で、一緒に幸せになれるという、ある意味 ずっと現代的な教訓がここにはあります。
そうです。ラテンの社会では、人を楽しませたり、感動を与えたりする事は、立派な仕事として認められているのです。
との事。
又、こんな例も出ています。
日本では、「お金が無いから結婚できない。」という話があるが、ラテンでは 「お金がないからこそ、あるいは就労状況が不安定だからこそ、結婚して二人分の収入で、生活費をシェアする方が現実的」と考えています。
個人主義で自己完結しないといけない日本。人との絆がセーフティネットになっているラテン。
軍事独裁政権を倒していくのも、音楽と歌によって国民が力を集結するという例も多いとの事。
この本を読みながら、ラテンの生き方にどんどん魅力を感じていく自分を発見しました。
もっともっと、ラテンを知りたい、浸かってみたい。
面白い本です。
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