2018年8月26日日曜日

【本】睡眠のはなし 内山 真 中公新書

表紙裏のPR文の所に「睡眠学入門の決定版」とありますが、本当に多岐にわたる睡眠に係る疑問を教えてくれます。

その中で、ソウダッタノカと思った所を書いてみます。

睡眠にレム(Rapid Eye Movement)睡眠とノンレム睡眠があるというのは聞いていましたが、目的が違うという事。

レム睡眠は、眼球が素早く動くのでレムと名前が付けられましたが、猫ではヒゲがピクピクする事も。

睡眠前半に深いノンレム睡眠が多いが、これは睡眠をとる前に何時間起きて活動していたかに影響される。
一方、レム睡眠の出現は、早朝に最も多く出現するというように体内時計のリズムに支配されている。

レム睡眠は夢を見る睡眠。ノンレムと違う特徴がある。

・脳は起きている時に比べてほんの少し機能が低下し
 た程度の状態。
・レムの間は、身体の感覚入力を遮断する。音にも
 反応しない。
・全身の筋肉の緊張が著しく低下して弛緩している。
 脊髄のレベルで脳からの運動指令が絶たれた状態。
 その為に、夢を見ている時に動こうと思っても動
 けない状態を体験する事がある。これがひどく
 なったのが、金縛り。医学的には「睡眠麻痺」。
・脈拍、呼吸数は増加し不規則になり、呼吸が浅く
 なる。
・陰茎あるいは陰核の持続的勃起が生じる。瞳孔は
 小さくなる。
・ほとんどの場合、夢見を体験していて、起こされ
 た時の目覚めが良い。

レム睡眠の意義は、主に骨格筋の緊張を積極的に抑制する事で身体を非動化させ、外部の昼夜のリズムに合わせて運動器を休める事。又、覚醒に向けて脳機能のウォーミングアップをしている状態。

ノンレム睡眠には、まどろみ期、軽睡眠期、深睡眠期の3段階がある。

深い眠りの時の特徴は、

・起こされると、ぼんやりした状態から脱するの
 に時間がかかる。
・瞳孔が開いているので、無理やり起こされると
 しばらくの間まぶしくて目を開けていられない。
・呼吸が深くなり、すやすやと寝息をたてる状態。
・寝汗が継続的に出て、内部体温を下げる。=
 脳の温度を下げて休ませる。
・鮮明な夢を見る事はない。
・成長ホルモンが活発に作られる。

ノンレム睡眠の意義は、主に脳を休ませる事にある。
長時間覚醒していればいるほど、脳は疲弊して、その後の深いノンレム睡眠が増加する事が分かっている。

レム睡眠は筋肉を休める為のものなので、爬虫類などにもあるが、高等生物になると脳を積極的に休める仕組みが必要になりノンレムが発達した。

身体が休むレム睡眠の時には脳は目覚めていて、脳が休むノンレム睡眠の時には、筋肉は完全に休まないというシステムは、眠っている時の無防備な時間を最小限にするという利点があったのではないかと考えられる。


冬眠。実は、人間にも、冬眠する哺乳類と同様の身体機構が生まれつき備わっている。食欲の秋。
秋は感傷的になりやすい=不活発状態になる。


体内時計のしくみ。脳の奥の視交叉上核という神経細胞群が体内時計として働いている。

時計機能を担うタンパク質が作られる。
このタンパク質がある程度多く製造されると、フィードバックで製造過程が抑えられるいう仕組みが時を刻む機能の中核。

タンパク質が作れられて多くなり、ある量まで達すると製造は抑えられ、タンパク質が減り始める。
今度 ある量まで減るとまた製造が活発化して量が増える。このサイクルが約24時間なのだ。


眠りと記憶と忘却

久しぶりに野球のバッティングをするとなかなか打てない。どんなに一生懸命に練習してもその最中には効果が上がらない。
しかし、2~3日練習を繰り返していると、ある時突然にうまく打てる様になっている。
ピアノでうまく弾けない所を集中的に練習する。その最中はそれほどに指が運ばなかったのが、次の日になるとうめく弾けるようになっている。
こんな経験は、スポーツが好きな人、楽器を演奏する人にとって思い当たることと思う。

ハーバード大の研究チームは、新しい技法を身につけるためには、覚えたその日に6~8時間眠る事が欠かせないという研究結果を発表した。

習得しようとする技能によって、練習による向上度に差はあるが、練習後に十分睡眠をとる事で手続き記憶は強化され、練習した以上に技能が巧みになっていくことを示している。
そして、技能の複雑さが増すほどに睡眠後の技術向上度は大きくなり、さらにこの睡眠中の技能向上度は苦手な動作ほど大きくなるという。
瞬間的な記憶を保持しておく作動記憶の課題を用いて睡眠をとることで成績が著しく向上することを明らかにした。



猫のレム睡眠中枢を部分的に破壊すると、金縛り状態を起こす機能が失われる。そうすると、レム睡眠(=夢を見ている?)中に、身構える動作や獲物にとびかかる動作、威嚇する動作などを示す。
生まれた時から実験室で飼育されてきた、つまり捕食行動を必要としない環境で育った猫であるにもかかわらず。

レム睡眠中には、動物も人も危機に対処する行動をリハーサルし、いつでも行動できるよう練習しているという。そうであれば、私たちの夢が心地よく縁起の良いものでなくていいのだと納得できる。

加齢に伴う朝方化
歳をとるとだんだん早起きになってくる。
これは加齢により体内時計が全般的に朝型化していくるため。青年期は女性に比べて男性は夜型傾向が強いが、45歳を超えるころから男性が朝型化していき、55歳くらいになると女性と男性が逆転し、男性の方が朝型になる。夫婦の場合、朝型化の起こっていない妻がそれに合わせた生活をしようとすると、入眠障害になる事がある。

睡眠障害

レストレスレッグス症候群(むずむず足症候群)ドパミンの働きの低下による。ドパミンの働きを助ける薬物や、鉄分を補う事で解決する事あり。

周期性四肢運動障害(睡眠中に、何かを蹴るような感じで脚が勝手にピクンと反復して周期的に動いて目が覚める)。これもドパミンの働きがが低下して起こる。


以上。それ以外にも、沢山の睡眠に関連する話がこの本には満載です。

今まで生きて来て、なんとなく 難しい課題に直面した時に、一所懸命考えても考えがまとまらない時に、一晩寝たら翌日は良いアイデアが閃くという事を何度も実感していました。

この本で、睡眠中に確かに情報処理や整理、分析が行われているという事が分かり合点がいきました。

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