世間によくある心理学系の本とは違い、心理学の答えを導きだした学者のプロセス(式にあたる)も書きたいという気持ちで書かれた本とのこと。
心理学といえば、ユング等の名前がすぐに出てきて、夢診断とか深層心理とかの話になりがち。でも、そういう目に見えないものの話をするのではなく、心理学でも事実に元ずく、実験心理学というものがこの半世紀できてきた。本書は研究手法によって心理学を分類して説明するとのこと。
歴史的な話を含めて、どういう手法で各答を調べ、検証していったかが分かりやすくかかれています。
著者の方の意図とはずれてしまうかもしれませんが、私が面白いなと思った所を書き出してみます。
・情けは人の為ならず
「親切は他人のためでなく、巡り巡って自分のためになる」という意味だが、それは、親切な行為をすることで自分の中の「自己肯定感」が高まり、自分のことを愛せる人間になれるから。多幸感を感じられる。実際、「世話好きな人」は、みなポジティブで躍動感があり、幸せそうに見える人が多い。 逆に、人をいじめると、実は自分が傷つくことになる。
・美しい人は、きっと心も美しい
人には美人ステレオタイプ(偏見)がある。「顔の美しい人は、天真爛漫で、狡猾さやアザトサがない」と感じている事が、実験ではっきり浮き彫りになっている。 ただし、そういう人がちょっと失敗すると、イメージとのギャップが大きいので必要以上に幻滅されてしまう。逆に、第1印象がキレイでない人がちょっとした気の使い方やふるまいにより、評価が急上昇する可能性がある。
・信じる者は救われる。信じ続ければかなう
このポジティブ発想は心理学では正しいものと考えられている。相手を心から信じて期待すると、相手が願いどおりになってくれるような働きかけを「期待した側」が積極的にとるようになる。以心伝心ではない。「期待した側」の実質的なグッドアクションに起因している。
・なぜ初対面が大事なのか?
人と出会うと相手の全体像をあっという間に作りこんでしまう。ひとたび作られた印象は修正されにくく、むしろ増幅していくことが分かっている。初対面で人間的な温かさ、人懐っこさを感じさせれば、ほぼ未来永劫に高評価が続く。(そうなると、同じことをした場合でも、相手からはやたらとポジティブに解釈してくれる事になる。)
・悪いことはもっと悪い事を呼ぶ
ブロークン・ウインドウズ(割れ窓)現象がある。 街に窓の割れた車を1台放置しておくと、その近隣では急激に他の凶悪犯罪も増える。非社会的・非道徳的なことがいつまでも放置されているのを目のあたりにし続ける事は、誰もを苛立たせ、しだいに狂気にかりたてる。 ニューヨーク市のジュリアーニ市長は割れ窓現象撲滅を政策として正式採用し、その結果 ニューヨークのイメージはガラリを変わり犯罪も減少した。
・共感してもらうと、人は「お返し」をしたくなる
相手に共感し、ときには相手以上に「私はあなたと同じ感情になっているんですよ」という事を表現すると、相手から信用してもらえるようになる。泣いている相手には泣かないでと言うのではなく、一緒に泣くことで共感する。
・アメとムチの法則
相手をやる気にさせる方法として語られる事があるが、そんなに単純なものではない。ムチがきついと何もしないほうが得だと思い全く動かなくなる。 現実は、「アメと無視」が合理的。相手が望ましい行為をしてくれたら、それを大げさなくらいに褒めちぎり喜んでみせる。嫌な行為をしたら、叱責も非難もせず単に無視する。
・マインドコントロール
「アメ」には2種類の与え方がある。その2種類の使い分けで人間の行動は簡単にコントロールされる。
一つ目は「連続強化」良いことをしたら必ずアメをあたえる。2つ目は「間欠強化」アメを与える場合とあえて与えない場合を意図的に設ける(頑張っても、必ずしも報酬が与えられるわけではないという状況を作る)。
人間、連続強化だけでは飽きてくる。長期間にわたって相手を操ろうとする人は2種を組み合わせている。
最初のころは連続強化によって信頼関係を強固なものとするが、それが完成したら、今度は間欠強化に切り替え、相手に意外性を与える。新興宗教など、巧妙なプログラム化している場合も。
「自分で決めたものは良い」という幻想も、誰でも心に抱いている。自分で選んだ気にさせる事でコントロールできる。
・記憶の達人の覚え方
複数の言葉などを覚えなければならないとき、「なぜならば」という理屈をつければ覚えやすい。
また、記憶力の良い生徒は丸暗記ができる生徒ではなく、理解しようとする生徒である。自分のすでに知っている事と新しい情報を結びつける。
・集団が「ありがちなウソ」を作る
人が集まると、それだけで「とりあえず合意しよう」とする雰囲気になる。すると、たとえそれが偏見であるとわかっているつもりでも、誰もが納得するような判断に、無意識のうちに全員が偏りがちになる。集団性が偏見を拡張してしまう。犯人の目撃情報などについても集団で思い出させるとエラーを起こしやすくなる。不正確な情報ばかりが増えてしまう。
・食べながら反論するのは難しい
一緒に食事をしながら話をすると、相手に対して好意を持ちやすい。人は、何かを食べている時は、簡単に説得されやすく、しかも騙されやすい状態になる。
・強制的に思い出させると「偽りの記憶」が増える
人は繰り返し想起するほどに、「絶対に間違いない」という確信を自分の中でどんどん強めてしまう。だから、初めの想起の時点から時間が経過すると、正しい情報も間違えた情報も、どちらも頭の中で真実となってしまう。
これ以外にも、沢山の事が書かれている本です。
心理学を理由も含めてちゃんと知りたいと思った人に、良い本かと思います。
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