古武術での身体の使い方などは、甲野善紀さんの本なども沢山出ていますが、
この著者の小田氏はラグビー日本代表のトレーニングコーチをしていた人。
でも、書かれている事はかなり似通っています。
・主観と客観の違い
スポーツを科学的にみる時は、写真やビデオなどで身体の動きを分析した
りしますが、身体部分の位置の変化=客観に囚われるのではなく、どいう
いう身体感覚=主観にすれば、結果としてそいう身体の変化になるのか
という事が大事。 客観と主観にはGAPがある。
力を出そうとしてリキむと、逆に筋力が消されて物理的な力が出なくなる。など。
・筋力に対する誤解
武術の達人は筋力による力ではなく、重力落下を使った身体技法「膝の抜き」を使う。
それにより、自分の身体の重力落下の力を相手に伝えて影響を与える。
又は、地面反力を使う。
足裏を地面と平行にしたまま足を地面からほんの数ミリ抜き上げ、身体が下に落下した
所で、すかさず足裏全体で接地し踵近辺で体重を受け止める。こうするとジャンプ後に
落下して受け止めた時と同じぐらいの地面反力が得られる。
これを使うと素早く跳ぶ身体使いが出来る。
ミュンヘン五輪に向けた松平全日本の時、
当時のコーチ陣は、筋力が全てとは思っていなかった。「外力=重力、地面反力」を
活かす筋力の使い方を目指していた。
190cmを超える大型選手(森田、大古、横田など)が、相手より早いクイックを跳ぶ
能力を身につけたり、アクロバットの様な身体つかいを練習したり、コート1周を
逆立ちしたまま歩いたりする練習に明け暮れました。
これらには、力を入れるのではなく、力感を抜いた身体つかいを自然に覚えるメニュー
が組み込まれていました。
森田選手が、一人時間差をあれほど効果的に使えたのは、他の外国選手よりも素早く
跳ぶ身体の使い方が出来た事が効いています。
その後の時代は、ウエイトトレーニングが進歩的科学的トレーニングとして流行し
てしまいました。
筋力は必要なだけあればよく、外力の使い方こそが習得すべき事なのに、ウエイト
トレーニング病=筋力信仰 の様なものが出来てしまいました。
(最近の木村沙織選手の記事で、ウエイトトレーニングを頑張る!という発言を読み
ましたが、ちょっと不安を感じます。
ぜひ ウエイトトレーニングと同時に、力を抜き 外力を使う身体の使い方のトレ
ーニングを全日本では取り組んでいただきたいと思います。)
・立って止まっている人が素早く前に動くには。
右足を1m先の地点に素早く一歩踏み出すにはどうするか?
①左足のつま先に荷重して、つま先で身体を蹴りだして右足を踏み出す。
②左足の踵に荷重して、身体を押し出して右足を前に踏み出す。
正解は②。一流選手は②をやる。
以前、全日本のレシーブ練習をTVで放映していた事がありました。
そこで、佐野選手のレシーブのスロービデを見たのですが、まさにこの②
をやられていました。
その映像を見た時は、理屈は分かりませんでしたが、他の選手の動きと足の
形が違う。右に跳んでいるのに左足で蹴っている。と思いました。
やはり、達人の素早い動きになっていたのですね。
この小田氏の本では、頭部はいつでも垂直に保つ。顔は顎を上げぎみにして目
の緊張を抜く、観の目(対象物その物を見るのではなく、遠方や八方を見る様
な見かた)が達人の身体つかいとして挙げられていました。
こういう視点で、各選手の動きを見ていくと、又、新たな発見がありそうで楽しみです。
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