2014年7月5日土曜日

【心と身体・松平バレーボール】素早く跳ぶ身体の使い方

「一流選手の動きはなぜ美しいのか」 小田伸午 角川選書 を読みました。


古武術での身体の使い方などは、甲野善紀さんの本なども沢山出ていますが、

この著者の小田氏はラグビー日本代表のトレーニングコーチをしていた人。

でも、書かれている事はかなり似通っています。



・主観と客観の違い

スポーツを科学的にみる時は、写真やビデオなどで身体の動きを分析した

りしますが、身体部分の位置の変化=客観に囚われるのではなく、どいう

いう身体感覚=主観にすれば、結果としてそいう身体の変化になるのか

という事が大事。 客観と主観にはGAPがある。


力を出そうとしてリキむと、逆に筋力が消されて物理的な力が出なくなる。など。



・筋力に対する誤解

武術の達人は筋力による力ではなく、重力落下を使った身体技法「膝の抜き」を使う。

それにより、自分の身体の重力落下の力を相手に伝えて影響を与える。



又は、地面反力を使う。

足裏を地面と平行にしたまま足を地面からほんの数ミリ抜き上げ、身体が下に落下した

所で、すかさず足裏全体で接地し踵近辺で体重を受け止める。こうするとジャンプ後に

落下して受け止めた時と同じぐらいの地面反力が得られる。

これを使うと素早く跳ぶ身体使いが出来る。



ミュンヘン五輪に向けた松平全日本の時、

当時のコーチ陣は、筋力が全てとは思っていなかった。「外力=重力、地面反力」を

活かす筋力の使い方を目指していた。


190cmを超える大型選手(森田、大古、横田など)が、相手より早いクイックを跳ぶ

能力を身につけたり、アクロバットの様な身体つかいを練習したり、コート1周を

逆立ちしたまま歩いたりする練習に明け暮れました。


これらには、力を入れるのではなく、力感を抜いた身体つかいを自然に覚えるメニュー

が組み込まれていました。


森田選手が、一人時間差をあれほど効果的に使えたのは、他の外国選手よりも素早く

跳ぶ身体の使い方が出来た事が効いています。



その後の時代は、ウエイトトレーニングが進歩的科学的トレーニングとして流行し

てしまいました。


筋力は必要なだけあればよく、外力の使い方こそが習得すべき事なのに、ウエイト

トレーニング病=筋力信仰 の様なものが出来てしまいました。



(最近の木村沙織選手の記事で、ウエイトトレーニングを頑張る!という発言を読み

ましたが、ちょっと不安を感じます。


ぜひ ウエイトトレーニングと同時に、力を抜き 外力を使う身体の使い方のトレ

ーニングを全日本では取り組んでいただきたいと思います。)



・立って止まっている人が素早く前に動くには。

右足を1m先の地点に素早く一歩踏み出すにはどうするか?

①左足のつま先に荷重して、つま先で身体を蹴りだして右足を踏み出す。

②左足の踵に荷重して、身体を押し出して右足を前に踏み出す。



正解は②。一流選手は②をやる。


以前、全日本のレシーブ練習をTVで放映していた事がありました。

そこで、佐野選手のレシーブのスロービデを見たのですが、まさにこの②

をやられていました。 


その映像を見た時は、理屈は分かりませんでしたが、他の選手の動きと足の

形が違う。右に跳んでいるのに左足で蹴っている。と思いました。

やはり、達人の素早い動きになっていたのですね。



この小田氏の本では、頭部はいつでも垂直に保つ。顔は顎を上げぎみにして目

の緊張を抜く、観の目(対象物その物を見るのではなく、遠方や八方を見る様

な見かた)が達人の身体つかいとして挙げられていました。



こういう視点で、各選手の動きを見ていくと、又、新たな発見がありそうで楽しみです。

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